計測関連用語集

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詳細説明

汎用オシロスコープ

読み方:

はんようおしろすこーぷ

カテゴリー:

#オシロスコープ

従来のオシロスコープ(オシロ)と2000年中頃から発売された広帯域オシロを区別するために、電気技術者が普段使いする一般的なオシロ、1台/人で使っているモデルを汎用オシロ、高速なシリアル通信などの特定の規格を評価する通信アナライザである広帯域オシロを高速オシロ、という名称で当サイトは分類している。

A/D変換器の進歩・低価格化・普及によってデジタルオシロスコープが1990年代から普及し始め、それまでのオシロはアナログオシロスコープと呼称されるようになった(「アナログオシロ」という呼称、分類名が誕生し、公式な名称となった)。2000年代に周波数帯域が6GHz以上のオシロスコープが開発され、高速シリアル通信インタフェースを搭載した情報家電機器の普及を背景に、2010年代には最高周波数帯域は数10GHzに達した。これらのプロダクト(製品のカテゴリー)はオシロだが従来のオシロとは全く使い方が異なり、広帯域オシロ(または、高速デジタル回路の評価用途なので、高速オシロ)と呼称された。
ところが、広帯域オシロではない従来のモデルを呼称する名称は生まれず、単に「オシロスコープ」としかいわれない。「オシロの本流は(広帯域オシロではなく)従来のオシロなので、「○○オシロ」などという呼称はしない」というメーカの意思かどうかはわからないが、広帯域(または高速)オシロの対比名称はない。基本測定器である従来のオシロと、通信アナライザ(専用器)である広帯域オシロを一緒くたにすると、大変違和感があり、誤解を生む。そこで当サイトでは「汎用オシロ」、「高速オシロ」と呼称して分類している。「汎用オシロ」という表現はオシロメーカはほとんど使わないので、広帯域オシロに対比する用語(分類、カテゴリー)を創設したが、広く一般に認知されている用語ではない。
日本電気計測器工業会(JEMIMA、ジェミマ)は電気測定器のカテゴリーを大きく2つに分類している。オシロやスペクトラムアナライザなどの基本測定器を「汎用測定器」※、移動体通信用や光測定器など(特定の通信方式に対応する専用器)を「通信測定器」と呼称して、統計データを公開している。つまり汎用と通信は基本測定器と専用器を象徴することば(用語、名称)といえる。広帯域オシロ(専用器)でないオシロは汎用オシロと呼ぶのが妥当と思われる。「狭帯域オシロ」や「基本オシロ」よりもスマートな名称(命名である)と筆者は思う。

汎用オシロは、目安として周波数帯域2GHzまでで、それ以上を高速オシロとしている(メーカによって異なる)。主要各メーカの周波数帯域別のモデルを以下の参考記事「オシロスコープの動向と、最新1GHz帯域モデルの各社比較」に表にしている。技術者が普段使いする汎用オシロの主力(ボリュームゾーン)は周波数帯域200MHz~500MHzだったが、マイクロプロセッサ(CPUマイコン)や低速シリアル伝送の普及などで、組込みシステムの開発を中心に2000年以降は1GHz帯が主流になっている。このクラス(ミドルクラス)はMSO(ミックスドシグナルオシロ)が標準である。

中国・台湾メーカが2000年代にローエンドモデルで日本市場に参入し、国産のオシロメーカは横河計測(旧横河電機株式会社・T&M事業部)と岩崎通信機を除いてほぼ駆逐された。現在のオシロはほとんどデジタルだが、アナログ全盛時代は岩崎通信機が国内No1メーカだった。菊水電子工業も1980年代まではオシロが主力製品だった。日立電子やケンウッド(現テクシオ・テクノロジー)のオシロは工学系の学生実験に多く使われた。横河電機は後発でデジタルオシロに参入し、DLシリーズは汎用オシロの代名詞としてテクトロニクスTDSシリーズと日本市場を2分した。DL1600シリーズは周波数帯域150MHzで価格50万~100万円(オプション構成による)で、100MHz以下のローエンドからミドルクラス顧客にシェアを伸ばした。ところが100MHzで10万円以下という価格帯のリゴル(Rigol:中国)、Goodwill(グッドウイル:台湾、現テクシオ・テクノロジー、TEXIO)が秋葉原の計測器ショップに並び、ほとんどの日本メーカは撤退することとなった。最近はテクトロニクスだけでなくキーサイト・テクノロジーも10万円前後の低価格モデルをラインアップしている。国産2社はミドル以上(350MHz~500MHz/1GHz)を主戦場にしている。USBの普及によってスタンドアロンではないPC接続型の汎用オシロも増えた。パソコンとUSB接続して使用するUSB計測器の代表であるUSBオシロは、英国のPico Technology(ピコテクノロジー)が老舗だが、キーサイト・テクノロジーも2018年にラインアップに加えている(Streamline P924xAシリーズ)。

計測器メーカは汎用オシロや高速オシロという分類(名称)はしていない。たとえば下位モデルから、「ハンドヘルド(可搬型)」、ベンチトップを「ローエンド(エントリークラス、学校などの教育向け)」、「ミドルクラス(周波数帯域MHz~GHz帯のボリュームゾーンの機種群)」、「ハイエンド(GHz以上、通常はこれが高速オシロに相当)」などに分類している。以下のローデ・シュワルツの参考記事に分類(名称の例)がある。

※ JEMIMAではオシロはすべて汎用測定器で、広帯域オシロを通信測定器には分類していない。これはプロダクトとしては適切だが、アプリケーションでは広帯域オシロは通信測定器である。大手オシロメーカの周波数帯域別の販売台数は、2021年に「1GHz以上」が「1GHz未満」を上回り、2023年はさらに差が開いている(以下の発表会の配布資料より)。この事実はJEMIMAの発表する統計データからは読み取ることはできない。

オシロスコープ校正 新製品発表会

参考用語
参考記事
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