計測関連用語集

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詳細説明

伝送交換

読み方:

でんそうこうかん

カテゴリー:

#伝送/交換装置用測定器

(transmission/exchange)
基幹通信網の設備には、情報を遠隔地に伝達する伝送装置(変調や多重によって信号の形式を変えて高速・大容量化する)と、端末同士をつないで通信線路(呼)を確立する交換装置がある。伝送と交換は2つの大きな仕組みのため、伝送交換と呼称される。インターネットなどのネットワークサービスを提供する電気通信事業者の設備を、工事/維持/運用を監督する国家資格である電気通信主任技術者には、「伝送交換」と「線路」の2種類がある(伝送交換設備には、伝送、交換、無線、データ通信、通信電力がある)。日本の基幹通信網を担っているNTTに通信装置を納入している通信機器メーカも、伝送と交換は別組織になっている会社が多い。たとえば日本電気の玉川事業場は伝送、我孫子事業場は交換を担当している。
伝送/交換装置用測定器は、通信計測器の大きな1カテゴリーで、世界の伝送(通信)方式が大きく変わった1990年代には新同期網の敷設のために、SDH/SONETアナライザなどの(1千万円/台、以上する)高額なモデルが発売されて活躍したが、最近はこの分野のインフラ投資が少ないため、伝送/交換装置用測定器の新製品は少なくなった。1990年頃のメインプレーヤーだったHP(後のアジレント・テクノロジー、現キーサイト・テクノロジー)は2000年代初頭の光海底ケーブルバブル以降に光通信測定器を縮小し、伝送/交換装置用測定器(OmniBERなど)から撤退した。アンリツは「OTN/SDH/SONET関連測定器」というタイトルでラインアップしている(2023年現在)。アンリツの競合だった安藤電気は2000年代初頭に横河電機に吸収され、現在は伝送/交換装置用測定器から撤退したが、光通信測定器の光スペクトラムアナライザは世界No.1である。
海外ではM&Aが盛んで、通信計測器メーカであるViavi(ヴィアヴィ) Solutionsは、伝送/交換用測定器メーカのWandel&Goltermann(ワンデル・ゴルターマン)や光測定器のJDSファイテルを吸収した会社である(無線通信の計測器もラインアップしている)。高速の有線通信は電気でなく光になるため、キーサイト・テクノロジーが伝送/交換測定機器や光測定器からほぼ撤退した(※)現在、ViaviやEXFO (エクスフォ)は次世代の有線通信用の計測器を提供する代表的なメーカとなっている。現在は「伝送交換」という表現より「コアネットワークの評価測定器」という表現が適切かもしれない。

2000年以降のインターネットの普及によって、ネットワークはIP化され、ルータなどが交換機に取って代わった。通信の主体は電話機(音声)ではなくデータ端末になった(携帯電話もネット検索やLINEなどのネットワーク端末で、もはや実態は電話機ではない)。NTTに交換機を納入していた電電ファミリーのNFOH(日本電気、富士通、沖電気、日立製作所)は、すでに交換機をつくっていない。日立製作所とNECは2004年に基幹系ルータ・スイッチ事業で合弁しアラクサネットワークスを設立(日立60%、NEC40%)した(NECの我孫子事業場から交換機の技術者が日立の横浜事業所に異動)。沖電気(OKI)はルータの事業から撤退して、交換機の技術を活かしてATMなどの店舗機器を主力事業に、業態を転換している。ROADM(ろーだむ)など伝送ということばは残るが、交換機の消滅とともに「伝送/交換」という表現は過去のものとなった。

当サイトでは「伝送・交換装置用測定器」というカテゴリー名を使用しているが、より適切な名称が確立されれば変更することが望ましい。日本電気計測器工業会(JEMIMA)の電気計測器の機種分類では「有線通信測定器・光測定器」という名称で統計データを示している(2022年12月発行、電気計測器の中見通し)。ここでいう有線通信測定器とはプロトコルアナライザ、IP関連測定器(ネットワーク負荷試験機など)、伝送/交換装置用測定器(誤り率測定器やSDH/SONETアナライザなど)を含んだ名称である。この3カテゴリーの売上は2000年以前よりも減少して、光測定器と合わせた額でも、2023年~2026年の売上予想は、オシロスコープ(1カテゴリー)の約60%程度の見込みになっている。
キーサイト・テクノロジーが伝送/交換装置用測定器や光測定器のラインアップをいち早く激減したことは、先見の明があったかもしれない。アンリツは有線より無線の測定器が強いので(携帯電話などの無線通信システムの進歩・発展に伴い)大手の通信計測器メーカとして存続しているが、無線でなく有線に偏重していた安藤電気は会社がなくなってしまった(安藤電気の電気計測器No.1カテゴリーはプロトコルアナライザと光測定器だった)。

(※) キーサイト・テクノロジーはOTDR光スペクトラムアナライザなどは生産中止したが、光の基本測定器である光パワーメータ光源は継続してラインアップしている。同社は光通信に使われる光計測器を幅広くラインアップするのではなく、光部品評価に特化している。そのため、偏波シンセサイザなどの光の偏波に関するモデルのシリーズ化を進めている。

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