TOSシリーズ
(TOS series)
一般にはオンラインゲームのMMORPG「Tree of Savior(※)」があるが、計測器でTOSシリーズといえば、菊水電子工業(菊水)が製造・販売する安全関連試験機器の名称で、既知の人達にとってはブランドである。電気用品安全法などの安全規格に準拠した試験を行う機種群(カテゴリー)の同社の製品群の呼称で、ニックネーム(通称)になっている。TOSシリーズは耐電圧試験や絶縁抵抗試験だけでなく、アース導通試験器、漏れ電流試験器、部分放電試験器などの様々な安全試験器がある。研究開発、品質保証、生産ラインと、幅広い用途で使用される。国産で一番の競合は日置電機である。また、菊水の耐圧試験器は5kVまでで、10kV~100kVという高圧機器用途では双興電機製作所やムサシインテックがラインアップしていたが、2024年に10kVに対応したモデル(TOS5051、TOS9311)が発売された。
PCRシリーズは同社の交流電源のブランド(形名)である。直流電源のPMCシリーズも大変よく売れたベンチトップの小型電源である。同社は主力製品群である電源や安全規格の製品に一貫して同じ形名(頭の3文字の大文字アルファベット)を継続していて、この機種群では継続性があることがわかる(「老舗」であることをアピールしている)。一貫した形名を継続し続けることは、それだけで有意義な(広告などによる経費をかけない、無料の)マーケティング戦略である。新製品に従来品とは全く異なる形名を命名し、それが一体、何の製品なのかユーザが想像できない場合も多いが、(菊水電子工業が意図しているかは不明だが)一貫した形名が大きな宣伝効果を生んでいる、と筆者は常々 思っている。
他社にも良く知られたシリーズ(10年以上販売された代表的なモデル名)があり、オシロスコープではテクトロニクスのTDSシリーズと横河電機(現横河計測)のDLシリーズは1990年代から2010年代に国内市場を2分した汎用オシロスコープである。計測器ユーザは知らないうちにそれらのシリーズ名を覚えてしまう(計測器に関係ない人には全くわからない、ニッチな世界である)。
TOSの読み方は「ティーオーエス」だが、TOSシリーズは「トス シリーズ」と発音されることが多い。モデル名も「トス キューサンゼロイチ(TOS9301)」のように呼ばれていることを耳にする。
(※) PC向けMMORPG「Tree of Savior (ツリーオブセイヴァー)」と、その派生作品である「Tree of Savior:風の響き」や「ツリーオブセイヴァー:ネバーランド」などが含まれる。MMORPGとはMassively Multiplayer Online Role-Playing Game。Tree of Saviorは2015年に韓国でサービスが開始され、日本では2016年からネクソンが、2019年にはIMC Gamesが運営し、サービスが続いている。


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