Inter BEE
(International Broadcast Equipment Exhibition)
正式名称は「国際放送機器展」。1965年に始まったので、2024年は60周年となった。音、映像、放送、通信などの分野のプロ向けイベントで、海外メーカや外国人も多く参加・来場する大きな展示会。CEATECを開催するJEITAが主催。現在は幕張メッセで毎年、11月頃に開催。2024年の展示コーナは、出展会社が多い順に、1.映像制作/放送関連記載部門、2.プロオーディオ部門、3.エンターテインメント/ライティング部門、4.メディア・ソリューション部門(1が約50%で一番多い)。開催概要には「日本随一の音と映像と通信のプロフェッショナル展として、コンテンツビジネスにかかわる最新のイノベーションが国内外から一堂に会する国際展示会」とあり、Inter BEEのサブタイトルはBroadmedia & Entertainmentである。
2024年の会場から、計測器について述べる。部門1にはリーダー電子、アストロデザインが大きなブースを出している。テレビ・オーディオ測定器メーカでは、この2社が隆々とやっている。シバソクの計測器部門を引き継いだアサカも出展しているが、計測器は主力でないので展示していない。テクトロのビデオ部門を譲渡されたTelestream(テレストリーム)は、テクトロニクス製(旧製品)とテレストリーム製(新製品)の2モデルのラスタライザを展示している。テレダイン・レクロイはいまやオシロスコープとプロトコルアナライザ(プロアナ)の2枚看板で、HDMI / Display Portという映像系I/Fのプロアナを出展している。その他に、計測器をつくっているメーカとしては精工技研(光電圧プローブ)、スタック電子(FETプローブ)、フォトロン(高速度カメラ)が出展しているが、各社ともに展示品は計測器ではない。フォトロンは高速度カメラとは別の事業部門(映像システム事業本部)が取り扱かっている国内外の映像系ソリューション(アプリケーションソフトウェアなど)を3つのブースで紹介している。DX×IP PAVILIONには東陽テクニカが自社製品のプロアナSYENESIS(以下の参考記事が詳しい)を、丸文は販売店をしているEXFO(エクスフォ)の光伝送測定器を展示している。
部門2にはデータレコーダやロードセルをつくるティアック(TEAC)が大きな展示をしているが、出展社名は「タスカム/ティアック」である。一般には計測器ではなく音響機器メーカとして知られる同社が展開する業務用音響機器ブランドがTASCAM(タスカム)である。ブースには音響機器が並び、タスカム事業部が説明員をしている(つまり計測器はまったく展示していない)。ブースは来場者で盛況で、同社の主力事業が何であるかを象徴している(※)。プロオーディオ部門に計測器を展示しているのはコーンズテクノロジー(通信計測チーム)である。Audio Precision(オーディオプレシジョン)のオーディオアナライザを4モデルも並べている。丸文はSiemens(シーメンス)の音響可視化装置(旧LMS社)などを取り扱っているので、出展している(Inter BEEでは2箇所の展示となる ※※)。
(※) データレコーダのトップブランドだったソニー(ソニーマグネスケール/ ソニー・プレシジョン・テクノロジー)は、TEAC同様に、オーディオや情報機器用途のテープレコーダ(やテープ)をつくったメーカである。そのためにテープを使った計測器であるデータレコーダもつくり、TEACとソニー(前述の計測器子会社)は1990年代までデータレコーダの国産2トップとして競った。ただし、記録媒体としてのテープがコンピュータなどのIT機器で使われなくなり、テープの生産が終了するとソニーはデータレコーダからも撤退した。つまりソニーの主流の事業ではなくなったからである。TEACの本業もオーディオや映像である。計測器は同社の一番目の事業ではないことは明らかである。同様に大手メーカが計測器を手掛けていても売上構成の一番目が計測器以外の事業であるメーカは少なくない。たとえば計測器の老舗、横河電機は計測器事業が本業ではなくなったため、分社化して横河計測ができた。海外のローデ・シュワルツも無線機と計測器の2つが大きな事業で、計測器単独のメーカではない。現在、計測器だけでビジネスを続けられるメーカは少なくなる傾向である。国内計測器市場は伸びず、縮小しているといわれる。
(※※) 丸文株式会社は半導体やエレクトロニクス機器を輸入する技術商社だが、以前から多くの計測器を取り扱ってきた。同社の事業は1.デバイス、2.システム、3.ソリューションの3事業体制で、ソリューション事業をアントレプレナ事業本部という。その中のイーリスカンパニー 情報通信課がEXFOの販売をしている(測位タイミング課はGPSや時刻同期装置を取り扱っている)。システム事業本部の計測機器課がSiemens以外にEndevco(エンデブコ、加速度ピックアップ)、Baker Hughes(ベーカーヒューズ、旧Druck、圧力校正器)を、通信機器課がBird(バード、高周波パワーメータ)など、物理量測定器からRFまで多岐にわたっている。