計測関連用語集

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詳細説明

HDO

読み方:

えっちでぃーおー

カテゴリー:

#オシロスコープ

(High Definition Oscilloscope)
レクロイ(現テレダイン・レクロイ)の高分解能オシロスコープ形名。同社は2012年10月に、それまでデジタルオシロスコープが踏襲してきた8ビットのADコンバータを12ビットにしたHDO4000とHDO6000の2シリーズを発表し、高分解能オシロスコープという新しい機種群を提案した。HDOはHigh Definition Oscilloscopeに由来すると推測される(メーカが命名する形名の意味は、通常は公表されることはない)。同社HPでは「テレダイン・レクロイの高分解能オシロスコープ (HDO ®)」という表記がされている。®(Rマーク)はRegistered Trademark(登録商標)を意味する記号。

同社の現在の12ビットモデルを下から周波数帯域順に並べると以下(2025年1月、同社HPより)。
WaveSurfer 4000HD(200MHz ~ 1GHz) 2019年11月発売
HDO6000B(350MHz ~ 1 GHz) 2021年4月発売(2012年発売品をBモデルへリニューアル)
WaveRunner 8000HD(350MHz ~ 2GHz) 2019年10月発売の8chモデル
WavePro HD(2.5GHz ~ 8GHz) 2018年5月発売(発売時価格475万~1115万円、MSOモデルあり)
WaveMaster 8000HD(6GHz ~ 65GHz) 2023年9月発売(高速オシロスコープの高分解能化)

同社は200MHzから65GHzまで、ミドルクラスの汎用オシロスコープから高速な広帯域オシロスコープまで高分解能モデルをラインアップしていることがわかる。テクトロニクスも4シリーズB MSO(200MHz~1.5GHz)から6シリーズB MSO(1GHz~10GHz)の3モデルが12ビット対応している。横河計測の汎用オシロスコープDLM3000も2024年9月に12ビットのDLM3000HD(350MHz/500MHz)にリニューアルした。リゴルが2024年11月にリリースした同社初の8chオシロスコープ、MHO/DHO5000(500MHz/1GHz)も12ビットである。200MHzから数GHzのオシロスコープは高分解能がほぼ標準になってきたといえる。

High Definitionは「高解像度」、「高精細」だが、ADコンバータのビット数はオシロスコープでは分解能(resolution)と呼ばれるため、日本語では「高分解能オロスコープ」と呼ばれている(「高解像オシロスコープ」や「高精細オシロスコープ」ではない)。テレダイン・レクロイはHDO4000/6000発売以降に、従来の8ビットモデルを順次12ビット化し、形名の最後をHDとしてリリースしている。オシロスコープでHDは高分解能を示す、という暗黙の了解がオシロスコープメーカにはあるようで、横河計測が2023年に多チャンネルオシロスコープのDLM5000シリーズを12ビットに改良したモデルはDLM5000HDである。また、キーサイト・テクノロジーは2024年9月に、汎用オシロスコープのInfiniiVision 3000G Xシリーズ(8ビット)を10年ぶりに更新した14ビットモデル、InfiniiVision HD3シリーズ(200MHz~1GHz)をリリースした。レクロイ、横河計測、キーサイトが「高分解能はHDにする」という法則に従って形名を命名している。テクトロニクスは特別に区別してHDとは呼称していない(5シリーズMSOなどにはHDモードがあり、高分解能になる)。
HDOはDSOやMSOのように複数メーカの形名として採用されていないが、「HD」はオシロスコープの共通形名となった。2024年は横河計測のDLM3000HDとキーサイト・テクノロジーのHD3という、ミドルクラスの代表機種にHD形名が登場したので、汎用オシロスコープの高分解能モデルの形名、HD元年となった、と筆者は思っている。

2000年代初頭に輸入開始された中華系オシロスコープの先達であるリゴルは、2010年代に発売したDS1000Zシリーズ(50~100MHZ/4ch、200mMHz/2ch、MSOモデルあり、51,800~153,000円 2025年1月現在)がヒットし、より小型化したエントリーからミドルクラスの後継モデル、DHO800/900シリーズを2023年秋に発売した(DHO802:70MHz/2ch/49,500円 ~ DHO924S:250MHz/4ch/25MHz信号発生器内蔵/145,000円 2025年1月現在)。このモデルは12ビット、つまり高分解能で、同社は高分解能モデルの形名をDHOとしている(デジタル入力があるMSOタイプの形名はMHO。つまりDSO、MSOの高分解能モデルがDHO、MHOである)。この形名にはいわくがある。
同社は2022年に初の12ビットモデル、HDO4000シリーズ(200MHz~800MHz)を発売した。12ビット高分解能で100万円以下という衝撃的なモデルだった。HDOが高分解能モデルの正式形名となるかと思いきや、同社は2022年11月08日に形名をDHO4000に変更した。「先にHDO形名を使ったメーカがあり、商標などの関係があった」とされるが定かではない。本当だとすればレクロイ以外にHDO形名は使えない。DSOやMSOのようにメーカ共通の形名とはならない、ということになる。アルファベット3文字は商標登録ができるので他社が使えない可能性は十分にある(そのため計測器メーカなどの形名はアルファベット2文字が多い)。

HDOはアルファベット3文字なので、本稿以外の意味でも多く使用される。化学分野で遺伝に関連するヘテロ二本鎖核酸はHDO(heteroduplex oligonucleotide、ヘテロ・デュプレックス オリゴ・ヌクレオチド)。OAKLEY(オークリー)が特許を持つレンズ技術にHigh Definition Optics® (HDO®)があり、サングラスなどが商品化されている。株式会社H.D.O(エイチディーオー)は広島県の自動車関連の会社。
業務用厨房機器で有名なホシザキ株式会社には「HDO-1A デッキオーブン」がある。テレダイン・レクロイ同様に製品の形名にHDOが使われている!つまり他社でも容易にこのようなHDO形名が存在する。この場合はHDOの後に数字が続かないので本稿のHDOの商標を侵害しないのであろうか? 識者がいらしたらご教授を賜りたい。

参考記事
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