計測関連用語集

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詳細説明

ARM

読み方:

あーむ

カテゴリー:

#エミュレータ

RISCプロセッサで有名な英国のARM社のこと、またはARM社が提供するプロセッサ設計データ(ARMアーキテクチャ)を元に製造されたマイコンの総称。ICEに慣れた人はARMと表記するが、一般には「アーム」と表現されることの方が多い。
ARM社は電子回路の開発・設計をする英国企業で、自社工場を持たず製品販売もしないが、米国インテルモトローラなどがARM社とライセンス契約をしてARMマイコンを製造・販売した。設計データはARM6、ARM10など複数のアーキテクチャがあり、アーキテクチャをカスタマイズできるライセンス契約をしたインテルのようなメーカはStrongARMと呼ぶ製品を自社開発した。消費電力あたりのパワー効率が高い為、2000年代には携帯電話の組込み用マイコンとして世界でもっとも多く採用された。ARM社自身はICチップの製造・販売などは行わず、設計情報をチップメーカーに提供し、製品の販売額などに応じたライセンス料を得る事業モデルである(ファブレスのさらに一歩進んだモデル)。

ARMは「Advanced RISC Machines」の略で、CISCの特長も取り入れたRISCといえる。「ARMアーキテクチャ」は「ARM系プロセッサ」とも呼称される。ARM系プロセッサはメーカが異なっていても命令セットを共有しているためソフトウェアの互換が容易で、組込みシステム(産業機器や家電製品の一部として組込まれるコンピュータシステム)への採用が進んだ。マイクロプロセッサ市場のうち、パソコン向けはインテルの86系プロセッサと各社の互換製品(サードパーティ)が主流だが、スマートフォンやタブレット端末などの携帯機器ではARM系製品のシェアが高い。インテル系製品の強かったサーバ市場でも、サーバ向けに特化したARMプロセッサが開発され、電力効率を重視するデータセンターなどに導入が始まっている。
まとめると、ARMとはマイクロプロセッサの設計を行なう英国企業。また同社によるマイクロプロセッサの設計(アーキテクチャ)や、それに基づくプロセッサ製品などの総称である。

日本のキャリア(携帯電話事業者)であるソフトバンクは2016年にARM社を傘下に収めた(ソフトバンクはITベンダーから始まり通信事業者になったが、さらに半導体メーカまで吸収した)。GPU大手の半導体メーカであるNVIDIA(エヌビディア)はインテル、AMDというCPUメーカに対抗して半導体市場のNo.1デバイスメーカになろうと、2020年にソフトバンクからARMを買い取ると発表したが、欧州での規制をクリアできず2022年に断念している。
ARMのビジネスは図面のライセンス。これは半導体の工程の上流を抑えていることを意味する。微細加工の進歩による集積度の向上で高密度チップにはトランジスタが数百億個あり、今後も増えつつける。
「建築にたとえれば、1つのチップを設計する作業は、大都市を丸ごと設計するようなもの。能力のある設計事務所でも、ビルや住宅などの細かい部分は出来合いの図面を買ってきて貼り合わせたり修正したりしながら、都市全体の図面を描いていくしかない。アームはビルや住宅の図面を設計事務所に売る会社である。2021年8月に英国政府の競争・市場庁は買収に異議を唱える報告書を公表した。欧州最後のテクノロジー企業が米国人(エヌビデイア)に売却されようとしている。」(「2030 半導体の地政学」 2021年11月 日経BP発行、より抜粋)
インテルさえもARMから図面を買わないと設計ができない。ARMだけでなく、最先端の露光装置でオンリーワンのASLM(オランダ)などは、半導体で欧州が存在価値を示す切り札といえる。半導体が純粋な技術の話ではなく、軍事などの経済安全保障の問題である所以である。

計測器情報:ARM関連のICE製品例

参考用語
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