AI-RANアライアンス
(Artificial Intelligence - Radio Access Network Alliance)
RAN(無線通信ネットワーク ※1)とAI(人工知能)を融合させ、通信インフラの効率向上や新たなサービス創出、世界標準化を目的とする国際的な産学連携組織。規格の策定は行わない。2024年2月に企業/大学(11社)で設立され、2025年12月現在は104社が参画している(Founding Member:11社、General Member:104社)。11社は以下(通信事業者2社、通信機器メーカ2社、半導体ベンダ3社、IT企業2社、大学2校)。
1. 通信事業者:Softbank(ソフトバンク)、T-Mobile(ティーモバイル。ドイツテレコム傘下の米国大手携帯電話事業者)
2. 通信機器会社:Nokia(ノキア。フィンランド発祥の通信インフラ・技術開発企業。かつては世界最大の携帯電話会社として一世を風靡した)、Ericsson(エリクソン。スウェーデン発祥の世界的な通信技術企業。3G以降の基地局で有名)
3. 半導体デバイス:ARM(アーム)、NVIDIA(エヌビディア)、SAMSUNG(サムスン)
4. IT企業:Microsoft(マイクロソフト)、DeepSig(ディープシグ。AIネイティブな無線通信を研究する米国のテクノロジー企業。アンリツは「DeepSig社のAI/ML技術を用い無線通信システムの課題を解決するための高度なスペクトラムセンシングを実現した」と2024年2月に発表している。)
5. 大学:Northeastern University(ノースイースタン大学。米国ボストン。トンマーソ・メロディア教授、Tommaso Melodia)、東京大学(中尾教授)
つまり、欧米の通信・IT企業に、日本からはソフトバンクと東京大学が参画して設立した団体である。東京大学の中尾教授は5Gの基地局を設計するなど、この業界で著名な先生である。ソフトバンクのデータセンタにはNVIDIAのサーバが導入され、AI寵児のNVIDIAとは親密である。NEC、富士通は設立メンバではないが参画している(NTTはいない)。General Member の104社には計測器メーカとしてキーサイト・テクノロジーとローデ・シュワルツ、Viaviソリューションズ(※2)が含まれている。キーサイトとViaviは2025年のInteropやCOMNEXTで1.6T(1.6テラ)の光伝送テスタを提案している、現在の世界最先端・最速の通信計測器メーカである。
5G以降のモバイルネットワークをAI時代に適応させるべく、3つのワーキングGr(AI on RAN、AI for RAN、AI and RAN)が活動している。別のいい方をすると、研究領域は次の3つである。
AI for RAN (AIによるRAN能力向上、RANの最適化) : AIで通信効率を高めて電力消費を減らす。周波数の利用効率の改善。
AI and RAN (AIとRAN処理の統合) : 通信とAI処理を同じ基盤で行い、リソースを有効活用する。設備の利用効率の改善。
AI on RAN (RAN上でのAI展開、AIを基地局に統合) : 基地局がAIサービスを提供し、低遅延を実現する。新規サービスの創出。
(※1) 基地局(端末と無線で通話する機器)やその制御装置など、無縁通信のアクセス網をRANと呼称している。日本語では「無線通信ネットワーク」や「モバイル通信ネットワーク」と表記(表現)されているが、RがRadioであることに筆者は素朴な疑問を感じる。なぜMobile(モバイル)を使いMANと呼称しないのか(LANとWANの中間の「大都市圏ネットワーク」をMAN:Metropolitan Area Networkといってしまったので、いまさら使えないのか)。また、日本語も「モバイルアクセスネットワーク」や「無線アクセス網」といわず、「アクセス」を略すので意味が伝わりにくい(と筆者は思う)。無線通信が始まったときに使われた周波数がRF(Radio Frequency)といわれる。ただしRFは無線だけでなく高周波(high frequency)という意味で使われることも多い。Radioの意味、用法は一筋縄ではいかない。
(※2) (Viavi Solutions) ドイツの通信計測器メーカ Wandel&Goltermann (ワンデル・ゴルターマン)、米国の計測器メーカWAVETEK(ウエーブテック)、カナダ発祥で光測定器をラインアップするJDSファイテル、さらにFLUKE(フルーク)の一部製品群が加わった、欧米の通信計測器メーカ。2000年~2005年はActerna(アクテルナ、アクターナ)という会社だった時期もある。キーサイト・テクノロジー、ローデ&シュワルツ以外の無線と有線(光ファイバ通信)の計測器が合体した企業。同業のEXFOは、より最先端の光伝送測定器や光コネクタの端面検査機器をつくっている。メインテクノロジーが日本の販売店をしているVeEX(ヴィーエックス)もViaviと競合するが、最先端というよりハンドヘルドの機器が多い。これら海外企業と競う唯一の国産がアンリツだが、同社には1.6Tテスタはない(2025年12月現在)。
2025年のバルセロナ NWCでAI-RANアライアンスは10のデモンストレーションを行った。3つにはキーサイト・テクノロジーが計測器を提供している。同社は2025年12月16日(火)に「6G x AIフォーラム」をお茶ノ水 ソラシティで開催し、S5040A Open RAN Studio Player & Capture Applianceを展示した。S5040AはオープンRANのトラフィックを構築、再生(play)、捕捉(capture)、測定する。スペクトラムアナライザ、信号発生器、AC電源アナライザ(PA2200シリーズ IntegraVisionパワー・アナライザ)などの同社の従来モデルと併用して使用される。キーサイト・テクノロジーで形名の頭がSのモデルは、S93015B(PNAシリーズVNA用のSパラメータ測定およびパワー測定の不確かさをリアルタイムで表示するソフトウェアオプション)などがあるが、本体形名では珍しい。今後、移動体通信のモデルで増えるのかもしれない。
6G x AIフォーラムのキーサイト・テクノロジーの展示。
(左)左下のDU EmulatorがS5040A。(右)手前がS5040A。


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