高周波電源
(high frequency power supply)
通常の交流電源よりも高い周波数(数kHz~数百MHz)を出力できる特殊用途の電源。一般に電源は機器を動かすエネルギ源だが、高周波電源は物質にエネルギを与えて変化させる目的で使われる(プラズマ化や加熱など)。別名、RF電源やRFジェネレータ(電源ではなく「RFの発生器」という意味)とも呼ばれる。
高周波電源は半導体や液晶の製造装置に必須である。半導体や液晶の製造工程ではCVD(化学気相成長)、エッチング(削る)、スパッタリング(薄膜形成)などをプラズマで行う。プラズマとはガスに高エネルギを与えてイオンと電子に電離させた第四の物質状態で、主に真空中で生成される。0.1nm(ナノメートル)単位の微細な回路パターンのエッチングや、薄膜を積層(成膜)する高速・精密な物理化学処理に利用される。高周波によって電子は効率良く運動エネルギを得てガス分子と衝突・電離し、プラズマを生成するので、高周波電源が必要になる(13MHz帯が良く使われている)。半導体内部の回路線幅の微細化によってnm単位の精細なエッチングや薄膜形成(成膜)をするために、高周波電源は交流の極性を変化(周期的な超高速反転)させてプラズマを維持・制御する。高周波電源の1番目の用途はプラズマ化(高密度のプラズマの安定的な生成、制御)である。また、高周波誘導加熱は対象物を急速に加熱できるため、洗浄プロセスでも高周波電源を使って有機物などの汚れを効率的に除去している。工業用途だけでなく医療では、低周波では届かない体の深部を温める「高周波治療」にも使われる。このように、一般のAC電源が「家電、工場のモータ、照明」用途なのに対して、高周波電源は「半導体製造、誘導加熱、治療」などに使われる。
メーカは、プラズマ用では国産の(株)アドテックプラズマテクノロジー(本社:広島県福山市)、(株)ダイヘン(受変電機器やEV充電器以外に高周波電源をラインアップ)、(株)ノダRFテクノロジーズ(2002年設立の専業メーカ)、外資では(株)アルバック (ULVAC、真空技術を核に真空成膜用の高周波電源をラインアップ)、Advanced Energy(アドバンストエナジー、静電表面電位計のトレック社を買収した世界的な電源メーカ)。高周波誘導加熱(IH)用では高周波熱錬(株)(NETUREN)、日本高周波(株)などがある。上記のメーカは装置用の大型の電源をつくるメーカで、いわゆる交流安定化電源をつくっている計測用電源メーカ(菊水電子工業、高砂製作所、エヌエフ回路設計ブロックなど)ではない。つまり高周波電源は「電源」の名がついているが計測器ではなく、半導体製造装置に組み込まれる電源機器である。計測器ではないが、半導体装置という計測器に関係が深い電源で、RFパワーメータまで登場するので本稿で取り上げている。計測器ではないが、間違いなく計測関連用語である。
高周波電源の出力測定・監視には、高周波電力計(高周波パワーメータとRFパワーセンサ)が使われる。特に通過型電力計を使ったアプリケーションがあり、前述の日本高周波とBird Electronic(米国 バード、販売:丸文のシステム営業第1本部 通信機器課、2025年12月現在)がつくっている。丸文(株)は通信計測器から振動センサまで幅広く計測器を取り扱っているが、SEMICOM Japan(半導体の大きな展示会、旧セミコンショー)にはBird社のみで大きなブースで出展している(2025年12月)。無線通信計測器のRFパワーメータ(しかも国産のフジソクが生産終了したアナログ表示の通過型電力計。キーサイト・テクノロジーもアンリツもローデ・シュワルツもつくらない)が半導体市場に使われているのは、筆者には新鮮な驚きである。
一般の計測用AC電源にはスイッチング方式とリニア方式があり、両者とも出力周波数はDC~数kHzだが(リニア方式のバイポーラ電源と信号源を使うと数MHz程度まで可能)、圧倒的に1kHz以下(特に商用周波数 50Hz/60Hz)の需要が大きい(商用電源 100~240Vで動作する機器へ電源を安定供給)。一般に周波数を高くするとトランスなどの周辺機器を小さくできるので、電源が小型になる。本稿の高周波電源とは違うが、軽量を求められる航空機では400Hzの交流電源が採用されている。電動工具のグラインダ(※1)は据え置き型が主流だが、240Hz~400Hzの交流電源を使った可搬型があり、高周波グラインダと呼ばれる。ここでいう高周波は本稿の高周波とは異なる。50/60Hzが多い一般電源と比較して高周波という意味である。高周波とは比較する物によって決まる(高周波グラインダに使われる240kHzは高周波電源の数百MHzに比べてまったく高周波ではない)。文脈によって高周波の具体的な値があるので、高周波は一律に数値が決まっていない(決められない)。高周波の意味を理解するには知識が必要で、科学技術用語は奥が深い。
(※1)(grinder) 高速回転する円形砥石(ディスク)で、金属や石材、木材の切断、研削(削る)、研磨(磨く)を行う電動工具。街中の靴修理店に必ずあり、かかとなどを交換して貼り付けた後で、仕上げのバリ取りに使われている。高周波グラインダは、専用のインバータ電源を使用して高出力・高速回転を実現したプロ用電動工具である。

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