計測関連用語集

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詳細説明

電気計測器レンタル事業協会

読み方:

でんきけいそくきれんたるじぎょうきょうかい

カテゴリー:

#規格/団体/イベント

(measuring instrument rental business association)
計測器をレンタルする主要8社が加盟した業界唯一の団体(1990年代から2000年代に存在)。
国内の計測器市場の動向に伴う計測器レンタル会社を概説する。日本の高度経済成長は1973年までを指すが、1970年代はマイクロプロセッサ(MPU)が登場する。1971年にインテル は世界初の4ビットマイコン4004を出荷、その後1974年 8ビット インテル 8080とモトローラ 6800、1980年に16ビット MC68000、と高性能デバイスが開発される。1980年代は計測器もMPUを搭載してデジタル化するようになり、様々な産業・工業分野に使われ、2000年代まで新しい計測器の開発・販売が電気計測器市場の拡大を牽引した。ICE(アイス、マイコン開発支援装置、デバッガ)は代表的なデジタル系の計測器である。初めての計測器レンタルは1976年にオリエント測器レンタル(現オリックス・レンテック)の設立で始まった。1980年代には6社の計測器レンタル会社が創業し(1983年 テクノレント~1987年 横河レンタ・リース)、1996年に最後の住銀レックスが設立されている。
2001年に日本の携帯電話は従来のアナログからデジタル方式が導入される(NTT DoCoMoのW-CDMA)など、1990年代後半は無線通信インフラの変換期だった。日本には携帯電話機(ガラケー )メーカが10社以上あり、1996年時点で計測器レンタル会社は約10社あり、レンタル市場は活況だった。2000年代はデジタルカメラ、液晶モニタ、DVDレコーダなどの情報家電製品が高速シリアルインタフェースを装備し、高額な広帯域オシロスコープ(数百万円/台)がレンタルされた。ただし、2010年代には日本の携帯電話メーカは激減し、家電メーカも後退し、計測器は販売・レンタル共に市場が縮小した。TV放送のインフラ投資だった地上波のデジタルへの移行(地デジ、ISDB-T)も放送局の設備投資は2001~2003年に終わり、2011年までに各ユーザの受信機器(TVやチューナなど)の更新も完了した(2010年代にはテレビ・オーディオ測定器からテクトロニクスやシバソクが撤退)。

計測器市場が活況で計測器レンタル会社が多くあった1990年代に、計測器レンタルの発展を促進し、健全な市場を形成するための業界団体として「電気計測器レンタル事業協会」は設立された。当時の資料には「実績ある優良8社が情報交換とより高度なサービスを目指して協会を設立。全社がISO 9002を取得。一部の企業はISO 14001も取得」とある。協会の営業部会では各社の売上を合算し、計測器レンタル市場のポテンシャル(売上規模)を推定した。技術部会では計測器メーカからの新品購入時の納入時不良(DOA)など、計測器メーカの品質について話し合った。2004年時点の所属会社は、オリックス・レンテック、テクノレント、ニチエレ、東京リース レンタル事業本部、日立キャピタル レンタル営業本部、昭和ハイテクレント、横河レンタ・リース、住銀レックスである。
計測器レンタル会社は2008年頃から減り始め、2020年代にはオリックス・レンテック、横河レンタ・リース、SMFLレンタル(三井住友ファイナンス&リース株式会社のレンタル会社。前述の住銀レックスがニチエレを吸収した、住友銀行系列のファイナンス会社)の3社にほぼ集約された。ただし、オリックス・レンテックは3Dプリンタやロボットなど、時代の先端の機器(計測器以外の商材)を次々とラインアップし続けていて、計測器が主力ではない。横河レンタ・リースも(計測器の老舗、横河電機 のグループ会社だが)電気計測器の市場規模(国内の販売額)の伸び悩みに伴い、IT機器の事業を伸ばしている(同社はHPのコンピュータの国内トップのリセーラで、IT機器のソリューションベンダー、SIerの側面を持つ)。

「電子計測器&システム[ガイドブック]2005(電子情報技術産業協会編、電波新聞社発行)」には電気計測器レンタル事業協会が広告を出している。広告の写真は「携帯電話で話すビジネスマン」を想像させる。横河レンタ・リースは1987年に設立し、毎年売上を30%伸ばしたが、累損一掃は10年後の1997年である。計測器レンタル会社は毎年、何十億円も計測器を購入するので、銀行からの融資(借金)が欠かせない。黒字化には何年もかかる。1990年代の計測器レンタルは利益が出る優良事業で、ファイナンス(ノンバンク)各社が参入していたが、2000年代の光海底ケーブルバブルなど、通信計測器の不良債権化(※)に耐えられないレンタル会社は事業から撤退していった。
(※)レンタル会社は将来利益を出すと思われる有望な商品を目利きによって事前に仕入れ、何年もかけて投資額を回収していく。通信計測器は単価が高いので利益も大きいが寿命が短く、高額な出費で購入したが倉庫に鎮座し一度も出荷されず(受注ゼロ)、廃棄される場合もある。これは購買担当者が目利きを誤り、不良資産をつくった(商品の不良債権化)という事態である。レンタルはリースと違い、利幅は大きいが博打の要素がある。いわゆる株取引のトレーダのような才覚が必要で、計測器全体を俯瞰して、メーカが発売した新製品が今後ヒットするか投資判断をしないといけない。計測器の広範な知識があり、その手腕を振るいたい(大きく儲けたい)者にとって、レンタル会社の「計測器の購買力」は魅力的な職種だった。

計測器レンタル各社を年表で述べる。1976年9月、オリエント測器レンタル(株)設立。1983年11月、三井物産と三井リース事業がハイテク関連機器のレンタル事業を目的にテクノレント(株)を設立。1986年頃、第3のレンタル会社 日本エレクトロレント(株)設立。「USのレンタル会社エレクトロレントの日本進出」というキャッチフレーズを筆者は記憶している。資産家オーナが儲かる新事業として計測器レンタルに目をつけ、オリエント測器レンタルやテクノレントからヘッドハンティングした。後に会社名を「ニチエレ」に変更。1987年、ケンウッドの計測器部門と昭和リースが昭和ハイテクレント(株)(SHR)を設立。昭和リースは協和銀行(現りそな銀行)のリース会社で、銀行系リース会社と計測器メーカの出資。同年、横河電機と芙蓉総合リース(現みずほ銀行のリース会社)が横河レンタ・リース(株)(YRL)を設立。SHRとYRLは設立母体が似ている。SHRには岩崎通信機の営業が数人、転職している。同様に計測器メーカからレンタル会社への転職者は少なくない。
この時点で主要な計測器レンタル会社は5社(オリックス、テクノレント、ニチエレ、SHR、YRL)以外に現場測定器を含む電気工事機器に特化した「エヌ・ティ・ティ・レンタル・エンジニアリング(株)」(略称:NTTREC、エヌ・ティ・ティ・レック)、日本リース(株) レンタル事業本部、日立レース・レント(株) (日立キャピタル、日立リースの子会社)、マイテック(リコーの子会社)などがあった。後に通信計測器を主体にした(株)横浜画像通信テクノステーションもあった。
1993年、横河レンタ・リースはマイテックと統合(存続会社はYRL)。1996年12月、住銀リースが住銀レックス(株)を設立。大手都市銀行の三菱・三井・住友は計測器レンタル会社を持たなかった。YRL設立から約10年が経過し、住友銀行系の計測器レンタル会社が設立される。2005年、新生銀行が昭和リースを買収し、2008年に昭和リースは昭和ハイテクレントを吸収(SHRの終了)。2007年から住友銀行と三井銀行の合併によるグループ企業の再編が始まり、ニチエレを吸収した住銀レックスは2013年にSMFLレンタル(株)に商号変更。

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計測器中古市