計測関連用語集

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詳細説明

重電メーカ

読み方:

じゅうでんめーか

カテゴリー:

#その他

(heavy electrical manufacturer)
重電機器メーカのこと。家電(軽電)ではなく、大型の電気機械をつくるメーカ。社会インフラの機器、設備(発電機タービン、受電・変電設備、メタクラ、鉄道、航空機など)をつくるメーカ。日本では三菱重工業(略称:MHI:Mitsubishi Heavy Industries、略称:三菱重工)、日立製作所、東芝が大手3大(総合)重電メーカといわれる(※)。三菱重工、日立、東芝の3社は、原子力発電所を設計・製造・保守できる、世界で数社の中の3社である(海外では米国のウエスチングハウス、フランスのアレバがある)。富士電機、明電舎、日新電機までで、総合6重電メーカと表現することもある。
重電機器の一部を作るメーカとして、ダイヘン(受変電機器)、東光高岳(変電・配電機器)、戸上電機製作所(電力用開閉器)、日東工業(分電盤)などもある。海外ではアメリカのGE(ゼネラル・エレクトリック、以前は原子力発電所を手掛けていたが現在は重電メーカではない)、スイスのABB(アセア・ブラウン・ボべリ)が有名。日本には「日本ABB」のような現地法人がある。売上高世界ランキングなどの分類では「重電・重工業メーカ」という項目で、川崎重工業(略記:KHI)、IHI(旧石川島播磨重工業)、住友重工((略記:SHI)などの重工メーカが含まれている。MHI、IHI、KHIを代表的な3重工(Heavy Industries)メーカと呼ぶこともある。

重電メーカは(商用周波数などの高周波ではない)電力測定器や、振動計温度測定器など、多くの現場測定器、汎用計測器を使う、計測器のヘビーユーザである。代表的な記録計のデータレコーダは自動車、鉄道、飛行機などの重電機器の評価に多く使われ、現在でも重電メーカの保守部門ではニーズが高い(ただしデータレコーダは現在ではほとんど生産中止である)。
世界で活躍する重電メーカがあるのは欧州、北米と日本。中国、韓国には欧米や日本のような総合重電メーカはほとんどない。半導体や家電で世界を席巻する韓国のサムソンのグループ内には(造船会社などはあるが)総合重電メーカはない。「中華思想、儒教」ではなく、「騎士道、武士道」で中世を形成した地域(欧州と日本)に重電メーカは成立しているという学説もある。

(※) 3大重電メーカは日立、東芝、三菱電機、とする解説も多い。総合電機の国産トップ3ならそれで良いが、重電メーカの場合は、百歩譲って「日立、東芝、三菱重工(&三菱電機)」というのが妥当と筆者は思う。三菱の重工・電機メーカの歴史を簡単に説明する。
1884年(明治17年)に、三菱の創業者 岩崎彌太郎は政府から工部省長崎造船局を借り受け、長崎造船所として造船事業を開始し、後に三菱造船(株)となる。同社は船舶以外に重機、航空機などもつくり、1934年(昭和9年)に社名を三菱重工業(株)に変更。1921年(大正10年)に三菱造船(株)電機製作所を母体に三菱電機(株)を設立。1970年(昭和45年)には三菱重工の自動車部門が独立して三菱自動車工業(株)ができる。つまり三菱重工の1部門が独立したのが三菱電機や三菱自動車。なので、三菱グループでは、三菱UFJ銀行(旧・三菱銀行)、三菱商事、三菱重工業が「三菱御三家」と呼ばれている。
総合電機メーカに分類される三菱電機は、(重電ではなく電機の)扇風機や冷蔵庫などの家電をつくったが、それだけではなく発電機やエレベータなどの大型の機器(家電ではなく重電に分類される)も創業初期の頃からつくった。つまり、三菱電機は重電機器もつくるので、三菱重工と被る製品がある。たとえばエアコンでは、三菱重工の「ビーバーエアコン」、三菱電機の「霧が峰」。三菱重工は重電機器としてのチラー(液体の温度をコントロールするための機械)の1種としてエアコンをつくり、三菱電機は家電製品としてのエアコンをつくっている。
計測器でたとえると、安全規格測定器の絶縁抵抗試験器(ベンチトップ型絶縁抵抗計であり、耐圧試験器)で、菊水電子工業EMC測定器に並ぶカテゴリーとして絶縁耐圧試験器などのTOSシリーズをラインアップしているが、日置電機メガー(ハンドヘルド型の絶縁抵抗計)から絶縁耐圧試験器にラインアップを広げた(2社は違うアプローチで、同じ機能のモデルをつくった)。三菱重工は船や機械の重電機器が本業で、三菱電機は冷蔵庫や洗濯機の電気製品が本業だが、両社の位置づけや関係性は簡単ではない。

原子力発電所などの発電所の主機(補機でない機械)であるタービンは三菱重工、発電機は三菱電機が担当していることが多い。両社は「発電機分野での事業統合の検討」を2022年に発表し、統合会社の前身となる準備会社、エムティージー株式会社が設立された。「三菱電機と三菱重工業は、発電機事業のジョイントベンチャーを2024年に設立する。カーボンニュートラル実現に向けた取組の加速化など、電力を取り巻く世界環境が大きく変化する中、発電機事業を統合し、両社の技術・資産を結集することで、市場競争力をさらに強化する。新会社には両社の火力、原子力、水力の各発電事業を分割・承継させる。出資比率は三菱電機が51%、三菱重工が49%となる予定で、新会社は神戸市に設立される。」(一般社団法人 日本原子力産業協会、2023年6月12日の原子力新聞に掲載)

三菱電機は音響機器(オーディオ)や半導体などもつくり、ソニーや日本電気などと並ぶ総合電機メーカなので、一般には三菱重工よりも知名度が高い。同じく重電メーカの富士電機(株)が、電話部門を分離した富士通信機製造株式会社(現富士通)のほうが有名なのとおなじである。重電メーカよりも家電メーカ、情報機器メーカ(コンピュータや通信機器など)が一般の人には馴染みがある。

参考用語
参考記事
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