通過型電力計
(inline power meter)
高周波電力計の1種で、同軸伝送路間に挿入し、進行波電力や反射波電力を測定するインライン(通過形)のRFパワーメータ(モニタ)。国産のフジソクが老舗で、1943年からつくっている。同社の製品カタログには「通過形電力計は、無線送信機の空中線回路に挿入し、方向性結合器の原理を用いて前進電力と反射電力をそれぞれ検出し、指示計に示す。送信電力の調整とアンテナの整合調整に使う。」とある。フジソクは日本電産(現ニデック)の関連会社に吸収され、2022年に旧フジソクの高周波関連計測器(通過形電力計など)はすべて生産終了した。
通過形電力計はほとんど指示計器(表示部がアナログのメータで、針が測定値を指示する)で、高周波コネクタ(N型コネクタなど)が2つ付いている。伝送路で、送信機側からの進行波電力を測定するコネクタと、アンテナなどからの反射波電力を測定するコネクタである。海外のBird(バード、1942年創業)も通過形電力計の老舗で、現在最も多くのラインアップがある(日本の代理店は丸文株式会社 システム事業本部)。ポータブルワットメータの名称で、本体にエレメントと呼ばれるセンサを指し込んで使う。電力や周波数に応じてエレメントを選択することで広いアプリケーションに対応する。主に業務用無線などのアナログの無線通信で使われている。現在の無線通信は携帯電話を代表にデジタル方式が主流なため、無線通信の大手計測器メーカ(キーサイト・テクノロジー、アンリツ、ローデ・シュワルツ)は通過形電力計をつくっていない(※)。
表示部がなく、外観はコネクタが2つ付いた箱である、パワーセンサと呼ばれる製品もある。デジタル無線通信に対応したモデルが多く、アンリツには通過型高電力センサMA24104Aがあった(生産終了)。その製品説明には「GSM/EDGE、WCDMA/HSDPAのようなデジタル変調信号、CW波の平均電力を測定する。センサ内にはADコンバータ、電源、マイコンが搭載されていて、完全な小型パワーメータ」とある。製品には電源スイッチと出力コネクタがあり、PC(または同社の計測器)と接続して測定値の表示を行う。上記Birdのデジタル波対応パワーセンサも同じである。
空中線監視装置やマイクロ波電源などの高周波機器のメーカである日本高周波株式会社は、同軸コンポーネントの1つとして通過形電力計と終端形電力計をつくっている。形式:RM-NJ-031Aは周波数範囲:50MHz ~ 500MHz、定格電力:30Wの新製品で、2023年、2024年のマイクロウェーブ展に出展している(それ以前の出展は未確認)。
半導体製造装置に使われる高周波電源(RFジェネレータ)の試験は、電源の出力に通過形電力計(またはパワーセンサ)とダミーロード(高周波電力測定で、50Ωに終端する機器)を接続してパワー測定を行う。Birdや日本高周波は、このアプリケーション関連の機器をラインアップしている(Birdは従来品より高精度なモデルを提案している)。前述のアナログ無線の検査用途よりも、現在は半導体市場向けの通過形電力計の売上の方が大きい。半導体市場は規模が大きく、(売上の好不調の変動はあるものの)おおむね堅調である。つまり通過形電力計はプロダクト(製品群)としては通信だが、アプリケーションは通信ではなく半導体装置なのである。半導体製造装置の世界的な展示会、SEMICON Japan 2024では丸文は大きなブースにBird製品を並べて、Birdだけを展示している。主力が半導体市場になったことも、無線通信分野に注力しているキーサイト・テクノロジーなどが通過形電力計をラインアップしていない理由の1つかもしれない。
国産の老舗、旧フジソクの計測器が生産中止のため、丸文は設備の置き換えを狙って「フジソク製品型式とBird代替品」の一覧表を配布してPRしている(2023年MWEなど)。日本高周波が新製品を発売したのも、フジソク製品の後継機種を探している引き合いに応えるためと推測される。
品名は、フジソクは周波数カウンタ付通過形電力計や終端通過複合型電力計、日本高周波は通過形電力計、Birdは通過型電力計、アンリツは通過型ピークパワーセンサなどである。つまり通過形と通過型という、形と型の2パターンの漢字が使われ、統一されていない。
通過形電力計は進行波と反射波を測定している。2つの波の関係を示すのがSWR(定在波比)である。アマチュア無線で、アンテナの調整に使うSWR計(SWRメータ)は通過形電力計と同じ原理、構造をしている。
※ アンリツはRFパワーメータではなくRFパワーセンサとしては通過型をラインアップしている(たとえば「MA24105A 通過型ピークパワーセンサ」など。キーサイト・テクノロジーやローデ・シュワルツも同じく通過型パワーセンサがある。
MWE 2023に展示された2社の通過型電力計


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