目黒電波測器
1944年に設立し2016年まで73年間あった、映像関連測定器(FM放送などの信号発生器、オーディオアナライザ、ジッタメータなど)のメーカ。正式名称:株式会社目黒電波測器。2016年3月31日に解散し、4月1日付で株式会社計測技術研究所
(計測技研、計測用電源と映像機器のメーカ)と合併し、計測技研の目黒電波事業部となった。同社の電子計測器事業と位置付けられている(従来の計測技研の製品群である電源は、パワエレ事業部と称している)。目黒電波事業部はGNSS(全地球航法衛星システム)、VICS(道路交通情報通信システム)、ETC(高度道路交通システム)などの評価・検査機器をつくっている。GPS関連計測器は有名で、たとえば人工衛星関連会社には同社のMSG2000シリーズなどのGPS測定器が多く採用されている。RF分野のスペクトラムアナライザも2018年頃に開発している。
計測技研は2026年3月31日をもって、旧目黒電波測器事業(信号発生器、GNSS信号発生器、オーディオ・アナライザ)を株式会社エービーオーへ譲渡した(2026年1月16日発表)。エービーオーはオーディオをはじめ幅広いジャンルの電子電気計測機器を設計開発・製造する会社である。オーディオアナライザやAM/FM信号発生器などの目黒電波と同じ製品群をラインアップしている。2026年4月1日からはエービーオー製品に加えてMEGURO製品の8モデルが同社HPに掲載された。8モデルの販売や保守サービスは継続されるが、譲渡されないMEGRO製品は販売を終了する。TechEyesOnlineの計測器ページでは、譲渡されないモデルは計測技研として掲載している。
通信装置メーカである松下通信工業(パナソニックモバイルコミュニケーションズ)は計測器もラインアップしていた。panasonic(松下)ブランドの計測器といえば、目黒電波測器と同じく、オーディオ&ビデオ(映像)用の計測器が多かったが、アナログオシロスコープもあり、低周波の基本測定器から通信測定器まで幅広くラインアップしていた。ただし、松下電器のグループ再編の中で、計測器は撤退してしまったので、現在ではその全容(どんな製品群の歴史があったかや、ラインアップなど)はほとんどわからない。それに比べると目黒電波は名前も残り、通信計測器をつくり続け、「MEGURO」ブランドは健在といえる。
海外メーカはM&Aが盛んで、EXFO(エクスフォ)やViavi Solutions(ヴィアヴィ)だけでなくキーサイト・テクノロジーも昔から他の計測器メーカを吸収してラインアップを広げている(古くはLAN/WAN
プロアナ、最近ではIXIAなど)。目黒電波は国産計測器メーカ2社が1社になった好例だった(計測器メーカはなかなか市場原理による統合・M&Aが行われない)。計測技研が主力事業のパワーエレクトロニクスへリソースを集中させるという事業再編によって、目黒電波測器は10年所属した計測技研から他社に譲渡されることとなった。フジソクのRF測定器(終端型電力計など)が、需要があるにも関わらずM&A先のニデック(旧日本電産)関連企業で生産終了(撤退)したことと比べれば、MEGUROが存続しているのは幸運と筆者は思う。
Baker Hughes(ベーカー・ヒューズ)社は圧力測定器(Druck、ドラック社)や流量計(Panametrics、パナメトリクス社)や非破壊試験機(旧GE)などの計測器群をラインアップする会社だが、(会社はもう存続せず、ベーカー・ヒューズ社なのに)ブランドとして旧社名(DruckやPanametrics)を今も全面に出してPRしている。目黒電波も会社はなくなったが、ブランドと共に数モデルが残った。
計測器はニッチな世界で、特定のユーザに長く使用されるので、古くからの会社名を使うことが営業的に有利に働く。ただし、三栄測器やタケダ理研工業のように、会社が計測器を主力事業としなくなった場合は、老舗計測器といえども社名はなくなる(ブランドは抹殺・消去される)。消去された計測器群は歴史には残らない。計測器の「三栄(サンエイ)」や「タケダ(武田)」を知る人はいまでは高齢者だけになった。日立電子(日立ブランドの計測器)も一部のオシロスコープは知られているが、その他は良くわからない。三田無線研究所のようにファンが語りついでいる事例は稀である。
計測器情報:目黒電波測器の製品例

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