波形なまり
(The corners of the waveform are rounded.)
オシロスコープで矩形波(くけいは、方形波)を観測すると、立ち上がり(または立ち下がり)の部分で、波形が定常値となる基線に届かない現象のこと。理想的な矩形波を入力した場合でも、入力容量の影響などで、表示(測定結果)が下図のように「角が丸くなる」。本来、急峻に鋭い波形になるところが、なだらかな変化になる現象を「なまる」という。
現在のデジタル通信は方形波のパルス列で1や0を判断しているが、波形なまりがあると0と1の判定が難しくなる。信号の速度は年々高速化されていて、波形なまりの度合いをオシロスコープのアイパターンで確認している。
日本語には「鈍る」や「訛(なまり)」があり(※)、鋭くない形状を「なまっている」と表現した。波形がなまっている状態を「波形なまり」と呼んでいる。電気技術者の使う独特のことばである。アンプの出力電圧値が飽和して頭打ちになることを「サチる」や、周波数特性を「f特」というのは英語由来の表現だが、波形なまりは日本語が語源である。重畳(ちょうじょう、重ねて畳み込む)など、物理・数学分野の技術用語(日本語)は独特である。
「波形なまり」を「波形訛」と解釈するとwaveform accentになる。訛は英語でaccent(抑揚のアクセントと同じ)。「なまる」を「鈍る」と解釈すると「鈍い(にぶい)波形」はdull waveformである。「鈍い」の英語はdull。ただし「なまり」「なまる」は角が丸くなることなので、英訳するとThe corners of the waveform are rounded.(波形の角が丸くなっている)やNo sharp corners in the waveform.(波形の角が鋭くない)である。「波形がなまっている」ことを的確に英語で表現するのは難しい。
余談だが計量(秤、はかり)の用語で、最大測定値をひょう量、最小表示値を目量(めりょう)という。これは元の日本語を略したことばである。説明されないと、用語を見た(読んだ)だけでは意味がわからないことばである。
※ 日本語の「なまる」は次のように複数の意味で使われている。
・切れ味が悪くなる。「包丁がなまる」。
・鋭さが失われる。勢いが弱まる、にぶる。「体がなまる」「勘がなまる(反対は「勘が鋭い」)。
・技量・働きの冴え(さえ)がなくなる、にぶる。「腕がなまる」。
漢字の「鈍る」は「にぶる」と「なまる」の2つの読み方がある。「なまる」は「訛る」という字もある。
こんなに様々な表現があるので、「波形がなまる」も電気技術者からすると、一般の用法として「なまる」の解説に加えてほしいところである。意味「角が丸くなること」→用例「波形がなまる」。

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