校正対象
(calibration target)
会社で保有している機器(設備資産)の内、具体的にどの計測器を校正の対象品にするかは重要である。ISO 9001などでは校正対象についての具体的な規定はなく、その会社のユーザ(使用者、管理者)が決めることになっている(ユーザによって計測器の位置づけや使用する理由は様々なので、一義的には決められない)。校正対象の規定の例を2つ紹介する。
例1.アナログの物理量を測定するものは、精度が規定されているので対象。デジタル系のモデルは対象外。
たとえば電圧を測定するマルチメータは対象だが、同じく電圧測定をしているロジックアナライザ(ロジアナ)は対象外。ロジアナは設定されたしきい値(スレッショルド)を元にLow/High(0か1)を判断して2値を表示する。決められているしきい値を元に判定するだけで、仕様に電圧の測定精度(誤差)はない(測定精度に元づき電圧値を表示するものではない)。経年変化によって測定値がずれることはあるが、Lowを誤ってHighと表示するようになったら故障なので、校正や調整ではなく修理となる。つまり校正の対象外である。プロトコルアナライザやICE(マイコン開発支援装置、デバッガ。アイスと呼称)もデジタル系計測器なので対象外。
例2.製品の検査(合否判定)に使うものは対象。
商品の品質(仕様に合致しているかなど)を評価して合否判定し、結果を記録に残し、場合によっては書類(成績書など)をエビデンスとして使うことを想定しているなら、校正の対象。測定した結果を目安として使用する(測定者によってばらつきがあっても良いとする)場合は対象外。
上記はあくまで例で、計測器ユーザが自社の状況に合わせて校正対象のモデルを決定して良い(ただしその根拠は、ISOの監査では確認されるので、理由を明瞭に説明できないといけない)。