掃引
(sweep)
測定値を画面にグラフ表示する計測器で、波形を描画していくこと。波形測定器の代表であるオシロスコープ(オシロ)や、スペクトルの測定器であるスペクトラムアナライザ(スペアナ)や光スペクトラムアナライザ(光スペアナ)で使われる基本用語。掃引信号発生器は周波数をある範囲で下から上に一定時間で変えていく可変信号発生器で、周波数を安定的に可変することを掃引と呼んでいる。
テクトロニクスの冊子「オシロスコープのすべて」(2017年発行)では「掃引:オシロスコープの電子ビームが、CRTディスプレイ上を水平方向に左から右へ移動すること」と解説されている。オシロも水平軸(時間軸)を掃引していて、最近のモデルは波形更新レートや波形取込レートなどの性能をPRしている(掃引時間と波形更新(取込)レートは定義が異なる)。
現在のオシロはCRTを使っていないので、上記の説明はアナログオシロスコープについてである。掃引の説明として「電位を時間に対して振ることにより波形を描画していくこと。一定速度で上昇する電圧によって輝点を左から右へ移動させること。」などがあるが、これは昔ながらの古いオシロをイメージした解説といえる。現在主流のデジタルオシロスコープはメモリのデジタルデータをトリガ設定によって画面に表示しているので、「時間を可変して電圧を描画している」とうのは正確ではない。掃引の意味には「図形(グラフ)を描画する、輝点を移動する」ことも含まれるが、それは時間とは限らないし、掃引信号発生器は描画していない。
振動試験では振動数を徐々に変化させて対象物の周波数応答を確認する試験があり、「振動数(や周波数)を掃引する」と表現している。つまり、時間や周波数(振動数)などを可変することを広く掃引と呼称している。
sweepの意味は「掃く」。ほうきで掃くように左から右に波形が現れたり、
周波数が下から上に変化したりすることをsweepと呼称し、日本語では「掃引」という熟語をあてた。
RFやマイクロ波、ミリ波では可変信号発生器をスイーパというが、波長スペクトルの測定器である光スペアナと併用される波長可変光源は別名
チューナブルレーザー光源といい、スイーパではない。sweepでなくtunableというのは、光源の発信波長(LDの中心波長)をtune(チューン、調子を整える、調整する)できる、という意味である。実態は波長を下から上へ可変(掃引)して、光スペアナで波長特性を測定するので、無線通信のスイーパ(掃引信号発生器)とスペアナの組み合わせと同じ使い方である。「それならtunableといわずに無線と同じくsweeperといってほしい」と計測器初心者の声が聞こえてくるが、機種群(カテゴリー)によって(同じことでも)異なる表現や用語を使うことが多い。計測器は知っている人達だけのニッチな世界である。