国際画像機器展
(International Technical Exhibition on Image Technology and Equipment)
産業用カメラと画像処理の展示会。毎年12月初旬にパシフィコ横浜で開催する。CMOSなどの画像系の半導体デバイスも展示される。産業用カメラや画像処理ソフトウェアのトップブランドは海外メーカが多いため、輸入商社も多く参加する。計測の観点では、カメラを使った検査装置が一堂に会するイベントである。
アドコム・メディア株式会社が1978年から毎年開催。後援は、日本映像処理研究会(IAJ:Imaging Association Japan)と日本インダストリアルイメージング協会(JIIA:Japan Industrial Imaging Association)。2024年の46回国際画像機器展のテーマは従来と同じ「国内最大・最先端のマシンビジョンが集う展示会」。国内外からマシンビジョン、ロボットビジョン業界を中心に画像処理の最先端技術が展示された。
2024年の出展社を述べる。カメラメーカではオムロン センテック株式会社と東芝テリー株式会社が大手。前社は産業用カメラの幅広いラインアップが特長。後社は東芝と協力して表面探傷スコープなどのカメラ応用機器を新規開発して展示。株式会社ジェイアイエイコーポレーション(JAI、ジャイ)は3CMOSカメラのトップメーカ(国産+デンマーク)。CMOSの雄、ソニーセミコンダクタソリューションズは出展していないが、ソニーの販売店が合弁してできた株式会社レスターがイメージセンサなどのデバイスを展示している。インフィニオン テクノロジーズ(Infineon)は自動車向けのデバイスが有名だが、日本法人のC3事業本部(マシンビジョン関連)が、USBの高速画像伝送ソリューションを展示。浜松ホトニクスは広範な波長のセンサをラインアップしていて、探傷機器向けのX線センサなどを出展。
Teradyne(テラダイン)は大きなブースにグループ企業のDALSA(ラインカメラで世界トップ、ダルサ)、e2v(CMOSセンサ、フランスのトムソンの半導体部門 ※)、Teradyne FLIR(※)などを展示している。計測器ではコーンズテクノロジー株式会社の産業機材部がTHz(テラヘルツ)を使った厚み計測や、3D表面形状計測の機器を展示。同社は「Teradyneグループのカメラ」の販売店なので、FLIR(日本法人:フリアーシステムズ)のサーモグラフィや音響カメラ、ガス検知カメラをメインに、電子デバイス部が出展。同じく計測器を多く取り扱っている丸文株式会社も光コンポーネント課などがデバイスを並べ、計測器は出展していない。計測器の範疇ではその他には、株式会社ディテクトが高速度カメラを、株式会社菅原研究所がストロボスコープを出展。
輸入商社では株式会社リンクス(LINX)が大きなブースで展示。HALCON(画像処理ソフト、ハルコン)とBASLER(エリアカメラで世界トップ、バスラ)に加えて2年前からTeradayneも取り扱いを開始。①DALSA、➁Photometries(顕微鏡などの微細な光を捉えるサイエンスカメラ)、➂FLIR(一般的な産業用エリアカメラ、ここでいうフリアーは赤外ではなく可視光)。株式会社アルゴ(ARGO)もビジョン(※※)関連のカメラ商社として大きなブースに、各種カメラだけでなくHeadwall社のインライン検査用ハイパースペクトルカメラ(数百万~2千万円)を展示。株式会社エーディーエステック(ADSTEC)はカメラ商社で、Teradyneの販売店としてDALSA、e2v、FLIRのサーモグラフィなどを展示。
BASLERの日本法人、バスラ―・ジャパン株式会社も出展し、アプリケーションとしてカメラを使った検査機器を最前列に展示している。説明員は「FA(工場の自動化)向けの照明機器メーカ」であるシーシーエス株式会社(CCS、以下の国際画像機器展の2ページ目で取材)の営業マンがしている。従来、BASLERの販売は前述のLINXがしていたが、2023年からCCSも代理店になった。同社は国際画像機器展と同時期に横浜駅東口のホールで自社イベント「マシン・ビジョン・ソリューションEXPO」を開催している。同社の照明の競合である、国産の株式会社レイマック(Leimac)も検査用照明とコントローラを使ったインラインの検査機器を展示している。
エバ・ジャパン株式会社は2013年からハイパースペクトルカメラに注力した国産の老舗で、ターゲットスペクトルカメラを展示。コニカミノルタ株式会社のセンシング事業部も最近買収したフィンランドのSPECIM社のハイパースペクトルカメラを展示。つまり、この展示会はカメラを使った検査機器がたくさん並んでいる。
携帯電話向けのカメラメーカや通信キャリアに試験ボードを提供してきた株式会社ネットビジョンは車載カメラをターゲットに日本ケミコンのカメラモジュールを併設展示(以下のテクトロニクス・イノベーション・フォーラムを参照)。平河ヒューテック株式会社のデバイス事業部はIEEE 1588(以下の国際画像機器展の取材で解説)で規定されたPTP(時刻同期)レイヤ2スイッチ(L2スイッチ)などを展示。
※ Teradyne e2v(イーツーブイ)の日本法人であるテレダイン・ジャパン株式会社のビジョンソリューションズ(東京都豊島区)が説明員をしている。旧レクロイ(現テレダイン・レクロイ)のオシロスコープなどを販売するテレダイン・ジャパン株式会社は府中市なので、同じ会社でも別カンパニーである。Teradyne FLIRの日本法人であるフリアーシステムズジャパン株式会社は、赤外線カメラ(サーモグラフィ)と可視光カメラを取り扱っている。ここにいる説明員は産業用光学検査カメラ(可視光)Grで、CMOSを使ったステレオカメラ(視差があり距離を測定できる)などを展示。レクロイやFLIRと聞くと筆者は計測器を連想するが、このブースには計測器はない。説明員の会社名が計測器メーカと同じなので混乱する(名刺を見て会話すると話が通じない)。
※※ カメラによる撮影~データ認識までを、産業用カメラや画像処理の業界では「ビジョン」と呼称している。出展社に「あなたの会社は何の会社ですか?」と聞くと、「ビジョン」という単語が返ってくる(マシンビジョンではなく、ビジョンである)。国際画像機器展はビジョンの展示会ともいえる。
「産業用カメラは海外メーカのDALSAやBASLERが世界的に有名で、商社のLINKSが扱っていたが、BASLERは日本法人ができ、商流(販売店)を増やした。対する国産メーカ大手はオムロン センテックと東芝テリー。」 このことはこの展示会に集まる業界関係者の暗黙の常識といえる。あまりにも基礎知識なので、筆者のような業界関係者でない人には、このことを理解するには時間がかかる。TeradyneやFLIRは(計測器ではなく)カメラやCMOSセンサである。ビットランやアバールデータも常連の出展社で、熟年の電気技術者はICEやROMライタを連想するが、展示しているのはカメラや画像処理である。カメラ関係の計測器として、ハイスピードカメラと回転計(ストロボスコープ)が出展されている。



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