力行
商用電源からモータや電池へ電力を供給(または充電)している状態。反対にモータの回転エネルギが電力供給側である商用電源に流れ込み、モータが発電機になっている状態や、電池から商用電源へ電力を放電している状態を回生という。インバータ制御で使われる用語。
モータに電気を与えて駆動(回転)させている、通常のモータの使用状態が力行である。回生はモータの負荷側から電気が逆流し、モータには商用電源側からは電力が与えられていない。
ブレーキは通常は機械的な運動エネルギの消費だが、負荷からの電気エネルギを電源側に戻すこともブレーキとなる。回生機能を活用して、モータを動力源にしている電車や自動車が減速することを、回生ブレーキと呼ぶ。
鉄道では、動力車のモータ(主電動機)などから車輪に動力を与えて加速する、または速度を一定に保っている状態を力行と呼んでいきた。自動車ではアクセルペダルを踏んでいる状態である。ブレーキ時に発電する「回生」の対義語として「力行」は使われる。動力を与えていない状態で、レールや路面との抵抗のために少しづつ速度が落ちていくのには、「惰行」(だこう)という呼称がある。動力が与えられず惰性で進んでいるのではなく、力が車輪に伝わって行っているという意味で、「惰行」に倣って「動力で行く」を略したのが「力行」という熟語と推測される。惰行は力行が行われていない状態なので学術的には回生である。回生と惰行は同じ状態を視点を変えて表現している。
力行の語源は、漢語のそのままの意味である「力を尽くして物事を行う」といわれる。仏教用語や中国古典書では「教えを実践するために力を尽くす」、「勉学や仕事に励む」で、勉学力行や勤倹力行などの四字熟語がある。特別な専門用語として、本稿で解説した鉄道・電気工学分野の「モータの動力を車輪に伝えて車両を加速させる(アクセルを入れる)状態」をさすことばである。これは漢語や仏教・中国古典とは、漢字は同じだが全く異なる用法(意味)である。
「力行」をGoogleで英語に翻訳するとpower runningになったが、この英単語を逆に日本語にすると「力行運転」になった。この日本語をまた英語にするとpowered driving、また日本語にすると「動力駆動」と表示され、力行はどこかに行って消えてしまった。つまり力行は該当する1つの英単語がない。また、本来の漢語の意味で翻訳されていない。つまり、意外なことだがGoogleでは本稿の特別な意味が採用されている。Googleの採用基準は魔訶不思議だと筆者は感じる(あくまで感想)。それとも電気自動車が普及して、力行の意味は本稿が主流になったということか。Googleは時流に合わせた翻訳をしているとしたら恐るべしである(これもあくまで感想)。
読み方は「りきこう」以外に「りっこう、りょっこう、りょくこう」もあるという解説もある。

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