光計測 3A
1980年代中頃から2000年代頃まで、アンリツ(Anritsu)、安藤電気(ANDO)、アドバンテスト(ADVANTEST)の3社は国産の光測定器(※1)メーカの代表だった。3社の社名(企業ロゴ、ブランド)がAで始まるので、有線通信の計測器業界では「光計測器(または光測定器)メーカの3A(スリーエー)」や、略して「光の3A」と呼ばれ、「国産メーカの3Aが光計測器で競っている」ことを象徴するワードだった。2000年まではキーサイト・テクノロジーもラインアップが豊富で、光測定器の世界No.1メーカだった。JDSファイテルなど、ユニークな光測定器の海外メーカもあったが、国産の大手計測器メーカが通信計測器に注力していた1990年代は「光の3A」の輝かしい時代だった。移動体通信向けの無線測定器と有線通信の光測定器が、1980年代~2000年代の約30年間は、大きな売上で日本の計測器市場を牽引した。2000年代の初頭にキーサイト・テクノロジーは光計測器のラインアップを縮小、安藤電気は光海底ケーブルバブルの影響で経営悪化して横河電機が資本参加(2004年に安藤電気は解体)、アドバンテストは2010年代に計測器事業から撤退し(※2)、アンリツの光測定器ラインアップも(2000年頃と2024年を比較すると)減少した。
(※1) 当時の3Aがラインアップしたのは光ファイバ通信を筆頭に、光通信用の計測器である。そのため、その実態は光測定器ではなく光通信測定器である。だが、3Aやキーサイト・テクノロジーという大手計測器メーカは光通信ではなく光と呼称している。現在では通信以外の用途(たとえばブルーレイディスクなどの記録媒体)にも使われている(2000年以前に開発された光通信用途の光パワーメータや光スペクトラムアナライザなどは、現在では測定波長範囲を約400nmの短波長帯まで伸ばしている)。そのため、現在では光計測器という呼称は妥当性を得ている。
(※2) アドバンテストには計測器の事業部門はなくなったが、2010年代に新規事業として無線式ロガーを発売している。同社は通信計測器で蓄積した高周波の要素技術で、テラヘルツ計測を模索している。
1980年以降の通信計測器とアドバンテストについて概説する。光ファイバの整備率は、2020年に99.1%で、光ファイバ通信網は全国に配備されている。光ファイバ通信は1970年代に基礎研究から実用化まで進み、日本電信電話公社(現NTT)は1981年に商用を開始した。研究開発に必要な光測定器はアンリツと安藤電気(電電ファミリーの2社)が担った。OPMや光源、OSA、O/E変換器やE/O変換器、光ロステスタ(OLTS)、OTDR、分散の測定器など、ほぼすべての光通信用の計測器が開発され、1970年代からNTTに納品された。
アドバンテストは1954年にタケダ理研工業として創業したDC~低周波の計測器メーカである。1960年代にデジタル式のマルチメータ(DMM)を発売し、TR-6364などがデジボル(デジタルボルトメータの略)の愛称で普及した。横河電機も計測器の老舗だが、1963年以降はYHPが高周波を担ったので、横河電機のラインナップ(担当する領域)は低周波になり、タケダ理研工業と競合した。2社ともに独立系の計測器メーカで電電ファミリーではない(アンリツはNTT、安藤電気は日本電気の資本が入っている)。
タケダ理研工業は1985年に社名がアドバンテストになり、この頃に通信計測器に参入した。光部品の評価装置をはじめ、光通信の基本測定器から工事用モデルまで揃えた。1991年はガラケーの走りとなる小型の携帯電話mova(ムーバ)が発売された年である。アドバンテストは1990年代に移動体通信向けを主力とするスペクトラムアナライザ(R3200シリーズなど)を開発し、アンリツとほぼ同等のラインアップを揃える、無線と有線の両方をカバーする通信計測器メーカとなった。ただし、2000年代に子会社のエーディーシーに多くの計測器を移管し、自社に残したSA(スペアナ)やNA(ネットアナ)も2010年代に生産終了し、計測器事業部門はなくなった。多くのラインアップがあった光計測器は子会社移管の頃に生産中止になっている。光パワーメータと光波長計だけは中止せず、現在もエーディーシーの現役モデルとなっている(2024年5月現在)。同社は光部品などの設計・製造で使われる電圧電流発生器のシェアが高く、短波長帯のOPMは発光素子などの評価に使われている(つまり往年の光通信用の長波長帯のOPMではない)。
1990年代後半に横河電機も通信計測器(無線と有線の両方)に参入したが2000年代に撤退している(約10年間で終焉)。
「光測定器」か「光計測器」か、主要な計測器メーカや文献の表記を調べた。現役モデルがあるベンダはホームページの表記、過去メーカは残る資料を調べると、測定器や測定機器などの「測定」の方が、「計測」よりも多かった(2024年5月)。ただし、3Aの内の2社が「計測」のため、本稿の用語名を「光計測」とした(以下を参照)。
「光測定器」と表記しているメーカ:横河計測、キーサイト・テクノロジー(英語はPhotonic Test & Measurement)、NTTレンタル・エンジニアリング株式会社(NTT REC、光測定機器)、株式会社オプトサイエンス(光通信用ファイバコンポーネント測定器)、グレイテクノス株式会社(photom、光通信測定器)、Thorlabs(ソーラボ、試験・測定関連製品)、原田産業株式会社(EXFOの販社、光ファイバ用測定器・ツール)、マルチ計測器(光ファイバー測定器)、電子計測器&システム[ガイドブック]2005(電波新聞社発行。光の章は旧安藤電気が解説)。
「光計測器」と表記しているメーカ:アンリツ、アドバンテスト(2000年頃の総合カタログ)、エーディーシー。
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