光トランスポンダ
(optical transponder)
トランスポンダは無線の増幅中継器として良く使われることばだが、有線通信の光ファイバ通信でも「光電波長コンバータ」や「光増幅中継器」などのことをトランスポンダと呼称している。業容を拡大しているデータセンタでは、WDM回線を使ったデータセンタ間の通信では、400ZRやOpenZR+という方式のコヒーレント通信をするトランスポンダがROADMなどの伝送装置に実装されるようになった。トランスポンダは小型化が進み、装置というよりは部品のサイズになった(※)。光トランスポンダは光トランシーバとも呼称される。
2024年のInterop(インターロップ)やCOMNEXT(コムネクスト、旧FOE)では400G/800Gが主なテーマになった。光・伝送の通信回線アナライザをつくる計測器メーカ(Viavi SolutionsやEXFO、アンリツなど)は、計測器の光コネクタにはSiPhx(サイフィックス)やInnoLight(イノライト、中国メーカ)の光トランシーバを装着していた。SiPhxやInnoLightの光トランスポンダはUSBメモリを一回り大きくした位のサイズで、LCコネクタなどの光ファイバを2本装着できる構造になっている。計測器メーカは送受信の光コネクタを光トランスポンダで装着できるようにしている。400G/800Gの光伝送は、各装置(計測器含む)の送受信の光コネクタには光トランスポンダが装着され、その先の光ファイバで400Gや800Gの伝送が行われる。
(※) 光トランシーバの小型化はNECの資料によると、2016年のサイズを100%とすると、2019年頃には24%まで小型化された。その後も小型化は進み2024年には4%になっている。つまりこの8年間で4%のサイズになった。(NEC技報 Vol.75(2023年) No.1(6月)、オープンネットワーク技術特集 ~ NEC Open Networksを支える光デバイス技術~800G超の光伝送技術~ 図2 伝送容量当たりの消費電力の推移
を参考に考察)
SiPhxは2022年頃から400G/800Gの光デバイス(光トランスポンダ)をつくっている。Si(シリコン)ベースの変調方式を採用した安価で量産に向いた商品をつくっている。株式会社サイフィックスはつくばに技術開発センターを2024年につくった。InnoLightは2023年のComnextでは中国パビリオンの中の1社だったが、2024年には独立したブースになった。ブースは古河電工やフジクラと同じ大きさ(計測器メーカのブースは同等か、それ以下の大きさ)。EML(電界吸収変調レーザー)という変調器付きレーザーの方式でSiPhxとは方式が異なる。SiPhxはDML(直接変調レーザー)。Cohernt社(コヒーレント社、光デバイスとOSAなどの光計測器の両方をラインアップ)や三菱電機もEML方式。InnoLightは400Gでは世界シェアが高く、GAFA(ガーファ)のデータセンタ向けに何千個単位の光トランスポンダを販売しているといわれる。三菱電機製の光トランスポンダを使った波形測定のデモをキーサイト・テクノロジーのブースで展示していたが、量産では国産デバイス企業は中国や欧州企業には勝てない、といわれている。最先端の光デバイスの製造でも中国企業の躍進がすさまじい。