低電圧差動プローブ
(low voltage differential probe)
USB、HDMIなどの、2000年以降に規格化・普及した高速なシリアル通信は、省エネの低電圧になっている。そのためコモンモードノイズの影響を受けないように差動方式で伝送される規格が多い。これらの信号測定には広帯域オシロスコープと広帯域な差動プローブが使用される。広帯域な差動プローブはパワエレ分野で使われる「高電圧差動プローブと対比して「低電圧差動プローブ」と呼ばれる。非破壊最大入力電圧が低いので、高電圧入力や静電気によって破損することがあり、取り扱いには注意が必要である。
メーカによっては「広帯域差動プローブ」や「高周波差動プローブ」と呼んでいる。高電圧差動プローブはその名の通り高い電圧を測定することが主眼だが、低電圧差動プローブは、高電圧ではなく低い電圧ながら広帯域な(高周波を測定できる)プローブなので、「広帯域(または高周波)差動プローブ」という名称が妥当と筆者は思う。高電圧差動プローブをまるで「狭帯域(低周波)差動プローブ」と呼ぶようなネーミングで、用途に即していないので、初心者にはわかりにくい。
広帯域オシロスコープ(高速オシロスコープ)を多くラインアップするテクトロニクス、キーサイト・テクノロジー、テレダイン・レクロイは低電圧差動プローブを同様に多くつくっている。各社の名称(分類)は、テクトロニクスが「高電圧差動プローブ」、「低電圧差動プローブ」の2分類、キーサイト・テクノロジーが「高電圧差動アクティブプローブ」、「高周波差動アクティブプローブ(<10GHz)」、「高周波差動アクティブプローブ(≥10GHz)」の3分類、テレダイン・レクロイが「 差動プローブ(≦1.5GHz)」、「差動プローブ(4~6GHz)」、「差動プローブ(8~30GHz)」の3分類である(2024年8月現在、各社HPより)。テクトロニクスよりもキーサイト・テクノロジーやテレダイン・レクロイの方が、具体的な周波数が書いてあり、初心者向きの分類に思える。
最も広帯域なオシロスコープとして、2018年にキーサイト・テクノロジーが発売したUXRシリーズ(周波数帯域110GHz)は(以下の参考記事で取材)、入力が1mmの同軸コネクタである。110GHzに対応するアクティブプローブはまだ世の中にはない(実現することはほぼ不可能と思われる)。同社のMX0031A InfinniMax 4 高周波差動アクティブプローブは52GHzまで対応している。