ラインアイ
(lineeye)
京都に本社がある低速のプロトコルアナライザ(オンラインモニタ)のメーカ。2000年に、積水化学工業株式会社の電子機器開発メンバーがセキスイグループから出資を受けて設立した開発型ベンチャー企業。創業メンバーが1986年から積水化学工業で開発していた製品名(通称)がラインアイだったといわれている。「line(データが流れる回線)のeye(目)」とは、オンラインモニタの名称(製品名)として、洒落たネーミングである。
現在の主力商品は、通信データ解析処理に関連する保有特許をベースとした小型で高性能のデータ通信用計測器(いわゆるRS-232Cなどのハンドヘルドのラインモニタ)やインタフェース変換器。
1980年以降のプロトコルアナライザ/オンラインモニタの概要(歴史)とラインアイの登場・位置づけを簡単に以下に述べる。
1970年代はマイクロプロセッサの登場と進歩によってコンピュータが発展を始めた時代である。当時はアナログの電話回線しか遠地への通信手段がなく、コンピュータのデジタルデータは、モデムを使ってアナログに変換され、電話回線によって伝送された。全国の端末と中央のコンピュータをつなぎ、JR窓口での乗車券発行(先の日付の指定席の予約)や、異なる銀行間の送金をATM端末で行うなどのオンラインサービスが始まると、データ通信の需要は増大した。データ通信のための基本的な計測器として、回線アナライザ、いわゆるプロトコルアナライザが1980年頃に登場する。遠地の複数のコンピュータをつないだオンラインのデータ通信は、需要とコンピュータの進歩によって増加し、プロトコルアナライザの需要も1980年代に増大した。社会インフラだけでなく工場内の通信もデジタル化されていった。1980年代にRS-232Cなどのプロトコルアナライザ(プロアナ)として、hp(当時はYHP)の4951A/Cなどがあったが、電電ファミリーの安藤電気は早くから電電公社(現NTT)にデータ回線のアナライザを納品してきたので、ポータブルのAE-5104B、AE-5105を同時期(1980年代)に発売して国内シェアNo.1となった。AE-5104は前身のAE-5103(ベンチトップ)を小型化して、プリンタオプションを装備した可搬型のラップトップ型計測器で、屋外にも持ち運べた。社会インフラとしてのオンラインデータ通信の増加、電子機器のデジタルI/Fの普及、工場内通信のデジタル化、などの時流に乗ってRS-232Cプロアナは広まり、安藤電気のAE-5104B/5105は国内の標準機種となった。
AE-5104/5105よりさらに小型のオンラインモニタ(シミュレーションはできず、オンラインでモニタができるプロアナ)の、みえちゃん(ビッツ社)やラインアイ(積水化学工業)も1980年代後半に発売された。プロアナはデジタル系の計測器のため、ICE同様に電子機器のベンチャー企業が参入しやすい。1990年代はISDNなどの高速デジタル通信サービスが開始され、LANの普及もあり、計測器メーカはISDNプロアナやLANプロアナをリリースした。低速のRS-232Cなどのプロアナは計測器メーカではなく新興ベンチャー企業のハンドヘルドのオンラインモニタが主流になっていき、2000年代以降、ラインアイがほぼ市場を独占した。
2024年現在、プロアナは2極化している。1つは、シリアルバスの普及によってバスアナライザといわれるモデルが活況。たとえばBluetoothプロアナでは、コーンズテクノロジーが販売する、テレダイン・レクロイが買収したFrontline(フロントライン)社製品や、ガイロジック株式会社が取り扱うELLISYS(エリシス)がある。高速のギガビットLANをキャプチャ―するSynesisは東陽テクニカが販売している。このように国産ではなく海外メーカが主体。また、大手計測器メーカは高速のプロアナからは撤退している(※)。
2つめはラインアイに代表される低速モデル。RS-485などは鉄道信号の通信規格などの使われていて、ラインアイ製品は事実上のデファクト・スタンダードになっている。ラインアイはUSB2.0のプロアナなど、新製品をリリースし続けているが、高速な規格のモデルはラインアップしていない。低速プロアナも計測器メーカではなくラインアイなどのベンチャーがメインプレーヤである。
1980年代からプロアナを発売し、2000年にラインアイとして独立し、可搬型の低速プロアナに特化し、2000年代にトップシェアとなった。現在のラインアイ社は大手計測器メーカではできないプロアナのポジションを確立している。
(※)安藤電気(現横河計測)は2000年代にプロアナを生産中止。キーサイト・テクノロジー(旧hp、YHP、アジレント・テクノロジー)もNetwork Analyzer J6800シリーズを2000年代に中止して以降は後継機種がなく、ほとんどプロアナから撤退状態が続いた。2020年頃から高速の通信規格であるPCI Express用のプロアナを発売している。P55xxAシリーズのPCIe GEN5用プロアナをKeysight World 2023に出展している。外観はマザーボード(Backplane)に刺したボード類で、一般的なプロアナとは異なる。PCIe 5.0は最先端規格なので、そのような規格には必ずプロアナが必要になる。高速のバスアナライザの1種といえる。
テレダイン・レクロイはオシロスコープが有名だが、最先端の規格に対応したプロアナメーカを買収し、バスアナライザのラインアップを充実させている。PCIe 5.0やMIPIなど、高速のプロアナ(シリアル通信のバスアナライザ)がある。これらキーサイト・テクノロジーやテレダイン・レクロイの例は、最先端の規格に対応したプロアナをつくったベンチャー企業を買収して自社ブランドにする手法である。送り返すが、大手計測器メーカはプロアナ(高速も低速も)を自社開発することはなくなった。


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