フォールトロケータ
(fault locator)
TDRによるケーブルの障害箇所の検出器(ケーブル障害位置測定器)。位置(location)を特定する物がロケータ(locator)である。ケーブルの欠陥(fault)の位置を探し出す、という意味である。通常は電線(銅線のメタルケーブル)の障害位置検出に使う計測器などの機器を指している。1980年代には大手計測器メーカがラインアップしていたが、現在は主に海外メーカが、アタッシュケース型やハンディサイズのモデルをつくっていて、各種の商社が取り扱っている。計測器のTDRで有名な株式会社グッドマンのラインアップが豊富である。
株式会社新エネルギー総合研究所のホームページには「送電線事故点標定装置(フォールトロケータ)による大型風車ウィンドファームの事故対策」という記事がある。つまり、電線の障害位置を特定する装置をまさに「フォールトロケータ」と呼称している。電力会社の業界では「送電線の故障点標定装置」のことを「フォルトロケータ―」と呼んでいる(フォールトロケータではない)。中堅の計測器メーカとして、保護継電器用の三相のデジタルパワーメータ(デジタル電圧電流位相差計)をラインアップする近計システムは、電力会社向けの計測機器、監視装置に注力している。同社の製品ページで、SFL-2000サージ受信型故障点標定装置やNEO-5000ネットワーク対応型総合計測装置は、「フォルトロケータ―」というタイトル(分類)に掲載されている(2024年現在)。このタイトルは電力会社の装置名称に合わせていると推測される。
電線ではなく光ファイバケーブルの障害位置測定器は、一般にはOTDRや光パルス試験器というが、アンリツの光パルス試験器の現役モデル、ネットワークマスタ MT9090Aには「ドロップ ケーブル フォルト ロケータ モジュール MU909011A」がある。メタルケーブルのTDRだった「フォールトロケータ」という呼称を最近のOTDRが使っている例といえる。アンリツと並ぶ国産OTDRベンダ、横河計測(旧安藤電気)の製品名にはフォールトロケータはない(製品の機能紹介として「フォルトロケータ」という記述はある)。
海外の計測器メーカもOTDRをフォールトロケータと呼称している。JDSファイテルなどの光通信測定器を継承したViavi(VIAVI Solutions Inc.、ビアビと呼称)は、光ファイバーネットワークの障害位置特定用の「OVF-1 ビジュアルフォルトロケータ」がある(日本法人、VIAVIソリューションズのホームページより)。同社ホームページでの表記は「フォルトロケータ」である。VeEX(ビーエックス)も「FL41 光ケーブルフォルトロケータ(パワーメータ付き)」がある(日本総代理店のメインテクノロジー株式会社のホームページより)。これらは屋外で使用する現場測定器なので、形状がハンドヘルドである。ビジュアルフォルトロケータはペンライトのような小型サイズで、まるで工具のようである。
TDRのラインアップが豊富なメーカ&商社の株式会社グッドマンも、海外製のOTDRを取り扱っているが、メーカの品名はOptical TDRではなくOpticl fault locatorである(つまり、fault locatorとTDR:Time Domain Reflectometry/Reflectometerはほぼ同義に使われる)。
Viaviと並ぶ光測定器メーカで、伝送関連モデル(光通信を使った伝送機器・ネットワーク機器の測定器)もラインアップするEXFO(エクスフォ)にはOTDRだけでなく、メタルケーブル用の障害位置測定器 MAX-610がある。同社ホームページでは「MaxTester 610 copper test set」とあり、フォールトロケータという名称ではないが、これはまさにフォールトロケータである(copperは銅のことだが、銅線であるメタルケーブルは「カッパー」と呼ばれることが多い)。
文部省の外来語のカタカナ表記の指針では語尾は伸ばさないので「ロケータ」が適切だが、語中は伸ばさないということはない。faultは故障のことでフォールト(かフォウルト)が適切な表記と筆者は考える。野球でフェアゾーンに入らなかった打球をファール(またはファウル)というが、「ファル」などという表記は聞いたことがない。ただし、上記のように実際には各社が「フォルトロケータ」や「フォルトロケータ―」などの表記を使い、統一されていない。権威ある電力業界で「フォルト」と呼称しているので、この表記が標準である、という見解もある。ファイバとファイバー、レーザとレーザーなどの基本用語も業界団体やメーカによって表記が統一されていない。