ピンク電話
特殊簡易公衆電話の通称。店舗内に設置される公衆電話で、電話機の色がピンク色であるため「ピンク電話」と呼称される。昭和の時代の喫茶店などの飲食店に多く設置されていた。貨幣やプリペイドカード(テレフォンカード)でかけられる一般の公衆電話(緑色や灰色)はNTTの管理であるが、ピンク電話は電話を設置している施設が管理するため、正確には公衆電話ではない。飲食店が家庭用の電話を店舗の業務用に兼用し、かつ店舗に入店した顧客が硬貨を投入したら発信できる機能を持っている。つまり受信は通常の固定電話で、発信は公衆電話になる。
NTT東日本のホームページには「ピンク電話」というタイトルのページがあるが、掲載されているのはナンバーディスプレイ対応のCUBE型インテリアホンで、今どきのプッシュボタン型で(普及しているピンク電話は丸い穴の並んだダイヤル式でボタン型ではない)、色はピンクではない。
携帯電話の普及によって、固定電話機の加入者数は減り、公衆電話の設置個所も激減したが、震災や携帯電話回線のトラブル時には、携帯電話はつながらなくなり、固定電話が重要になる。NTTのピンク電話は、家庭の黒電話と同じく、加入者の資産ではなくNTTからの貸与である。そのため今でも古い店舗にはダイヤル式のピンク電話が現役で働いている。新しいピンク電話の加入契約は少ないと思われるが、前述のようにNTT東日本がまだ契約の案内を掲載しているので現行のサービスである。(2022年8月現在)
NTTの電話機は電電ファミリーの各社が納品してきた。ダイヤル式の黒い固定電話(いまでもNTTから一般家庭に多く貸与されている)は岩崎通信機(岩通)、プリペイドカード(テレカ)が使える灰色の公衆電話はアンリツがつくっている。岩通のホームページでは「1951年に4号自動電話機(黒電話)を電気通信省に納品、1963年に600型電話(同じく黒電話)を日本電信電話公社(現NTT)に納入」とある。アンリツのホームページの沿革にも「1953年、料金後納式の4号式公衆電話機の量産化を開始」とある。ピンク電話のメーカは不明。(2023年5月)
電話機用の測定器としては安藤電気のテレフォンユニットテスタ(AE9302B/AE9303B)などがある。ISDNサービスを使うには電話機をISDN端末につなげば良いが、端末の試験にはISDN疑似交換機を使う(岩通や安藤電気がつくっていた。AE7311など)。多くの電話機から交換機に電話がかかり回線が混雑した状態をつくる(交換機に呼を与えて負荷試験をする)のが疑似呼(ぎじこ)で、たくさんの電話機の代わりをする測定器である。別名、コールシミュレータという(電話の負荷試験機ということだと、英語ではcall generator、「呼の発生器」の方が適切かもしれない)。電話機と交換機はインターネットの普及によってデータ端末(今のスマホも含む)とルータになり、疑似呼は過去の製品になったが、アンリツの看板製品、EFシリーズ(EF104A、EF111A、EF202A、EF203A、EF204A、EF401Aなど)があった。つまり、岩通やアンリツは電話機と電話機(や交換機)の試験器の両方をつくるメーカだった。いまや電話機は無線機器(携帯電話)が主流になり、擬似交換機や疑似呼という有線通信の測定器(伝送交換装置用測定器)は生産を終了している。