計測関連用語集

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詳細説明

バートウェーブ

読み方:

ばーとうぇーぶ

カテゴリー:

#オシロスコープ #伝送/交換装置用測定器

(BERTWave)
アンリツのMP2100シリーズ、MP2110シリーズの品名。BERT(バート)にオシロスコープ機能を盛り込んだ製品で、アイパターンBERの両方の測定が1台でできる。
デジタル伝送の品質評価は、オシロスコープで時間波形を表示してアイパターンを確認することと、BERT(パルス・パターン・ジェネレータと検出器の組み合わせによるビット誤り率測定)の2つで行われる。PCI Express (PCIe)のような高速データ通信ではオシロスコープ(アイパターン測定)とBERT(BER測)が規格試験(コンプライアンステスト)で規定されている(以下のテクトロニクス記事に例がある)。アンリツはBERTの世界No.1ベンダである。
BERTのトップメーカである同社が、「BERTでアイパターン測定もできたら1台で済む」、と開発したのが「オシロ機能のあるBERT」のBERTWave(バートウェーブ)である。初号器のMP2100Aは大画面にアイパターンを表示して、製品の外観は最近主流の大画面オシロスコープのよう(オシロスコープのように操作部はなく、コネクタと表示部しかない)。MP2100シリーズは、MP2100B、MP2101AバートウェーブPE、MP2102AバートウェーブSSなどがあったが、2017年に後継のMP2110Aが発売された。MP2100よりも小型で、外部のモニタに表示させるため、本体に表示部はない(外観はコネクタが並ぶ箱)。2019年3月には「4チャンネルのサンプリングオシロスコープを搭載できるオプション」を発売、2021年7月にはサンプリングオシロスコープの機能を強化し、PAM4の評価に必要な機能を追加するシグナルプロセッシングソフトウェア(オプション098)を開発した。業界ニュースとして「MP2110AサンプリングオシロスコープのPAM4評価機能を強化」と報じたメディアもあった(MP2110AをBERTではなくオシロ、と表現している!)。

BERTは1990年代まではPPGとED(Error Detector、エラー検出器)の2筐体で、サイズも大きなベンチトップで、もっぱらBERTS(バーツ、Bit Error Rate Test Sets)と呼ばれたが、技術革新によってPPGとEDは小型になり、モジュール化され1筐体で可搬型になった。当時のアイパターン測定はリアルタイムオシロスコープよりも帯域が広いサンプリングオシロスコープで行われた(キーサイト・テクノロジーDCAなど)。ところが2000年代後半からリアルタイムオシロスコープの周波数帯域が広くなり、2010年代には数10GHzモデルが登場する(広帯域オシロスコープと呼称)。アイパターン測定はGHz帯域のリアルタイムオシロスコープで行われるようになり、サンプリングオシロの需要は減少した。
キーサイト・テクノロジーは2018年に周波数帯域110GHzの世界最速のオシロスコープを発表する(以下のキーサイト・ワールド 2018が詳しい)。同社はアンリツに次ぐBERTメーカである。2023年の自社イベントでは「64Gbaud(ボー)を超えるPAM4信号のBER測定は、同社の広帯域オシロスコープを使い、取得した波形から誤り率を算出する方法で120Gbaudまで対応できる」と提案した。送受信で64Gbaud超のPAM4をリアルタイムに評価できるBERTはまだ存在しない(アンリツも実現できていない)ので、オシロスコープがBERTの代わりになる(以下のKeysight World 2023年の記事が詳しい)。アンリツのBERTWaveと全く逆のアプローチである。

2000年代以降に広帯域なリアルタイムオシロスコープが登場し、BERTもラインアップするキーサイト・テクノロジーはオシロスコープでBER測定するソリューションを提案した。BERTメーカのアンリツはBERTにサンプリングオシロスコープ機能を搭載して、BERTでアイパターン測定ができるモデルBERTWaveを開発した。いまやBERTとオシロスコープが競合する時代となった。
広帯域オシロスコープでキーサイトと競っているテクトロニクスはBERTをラインアップしていない。2023年のテクトロニクス・イノベーション・フォーラムでは、BERTやオシロスコープとは全く違う手法によるPCIeの評価手法を提案している。リンク・トレーニングによるマージン・テスタTMT4である(以下の記事が詳しい)。高速デジタル通信の品質評価のアプローチは、3社ともに特長がでている。

参考記事
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