テレメトリ
(telemetry)
日本語では「遠隔情報収集」。テレメータ(遠隔計測装置)などを使って、遠隔地の測定結果をコントロールセンタに送信すること。テレメータ(telemeter、遠くのメータ)は「遠地の測定結果を収集する装置」で、テレメトリは「遠隔測定の手法」を指す。
テレメトリもテレメータも遠隔制御でデータ収集する技術のため、2つの用語は似たような使い方がされる。一般には遠隔データ収集装置であるテレメータがメジャーで、各種の商品が多くのメーカから発売されている。そのため、そのような既存の装置ではなく、「遠隔制御による計測手法や、制御手法そのもの」をPRしたいときには「テレメトリ」と表現される。
たとえば、2024年1月にJAXA(宇宙航空研究開発機構、ジャクサ)が月面着陸に成功した月面探査機SLIM(スリム)は、テレメトリ―(遠隔制御用のデータ収集)を使用している。SLIMはカメラで月面を撮影し、宇宙用に開発した特別に高速のFPGAによって、撮影画像を地図と照合して自分の位置を把握し、機体を制御して着陸に臨む。管制室のモニタには、SLIMの高度の時間変化推移や状態(降下中か着陸したか、バッテリの残量など)がリアルタイムで示される。このモニタの表示は「テレメトリー画面」と呼ばれている。つまり、着陸までの一連の動作は遠隔制御でデータ収集することで成り立っているので、状態を表示している画面を「テレメトリー」といっていると推測する。ここでは「遠隔制御の手法全体」をテレメトリーといっている。遠隔地のデータ収集手法のことであるテレメトリという用語の応用使用例である。
上記でご承知のように、テレメトリはテレメトリ―とも表記される。
宇宙開発や原子力などは、近くで計測することが困難なため、このような分野ではテレメトリ技術(遠隔測定法)が早くから開発されてきた。安全保障(軍事、セキュリティ、インテリジェンスなど)の分野では遠隔監視が行われ、収集したデータのことをテレメトリと呼んでいる。このようにテレメトリは広範に使用されることばである。