チャンバ
(chamber)
chamberは小さな部屋、空間のこと。たとえば環境試験器では試験槽(試験容器)をチャンバといい、「環境試験チャンバ」、「バーンインチャンバ」などの呼称もある。thermostatic chamberを日本語にすると「温度が静的なチャンバ」で、恒温槽(温度が一定な恒温の槽)のことである。この場合、チャンバは「槽(箱型の容器)」を指している。恒温槽の心臓部は試験槽なので、環境試験の機器自体のことをチャンバと呼ぶことも多い。
チャンバは多くの装置で広範に使われる。たとえば半導体製造装置でも試験槽として使われている。OTA環境でRF(無線)機器の試験をするアンリツのMA8171Aの品名は「RFチャンバー」である。CVD装置などでは「化学反応、物理反応を起こさせるための密封された容器」をチャンバと呼んでいる。食品包装では、真空包装をする場所をチャンバという。自動車では圧縮空気を機械的な作動に変換しブレーキを効かせる装置がブレーキチャンバである。
文化庁による「外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第3版(「平成3年6月28日 内閣告示第二号『外来語の表記』」)では、「英語の語尾の-er、-or、-arなどは、原則として長音とし長音符号「ー」を用いる」とある。それに従えば「チャンバー」だが、技術用語を規定しているJISでは、2文字までは末尾を伸ばすが(たとえば自動車の「カー」)、3文字からは伸ばさない(モータ、センサ、など)とある。巷では「チャンバー」が多いが、本稿ではJISに従い「チャンバ」にしている。
計測器の名称も「マルチメータ―」ではなく「マルチメータ」が、技術用語としては適切な表記といえるが、メーカー、エネルギーなど統一されていない。レーザーは、業界団体(社団法人や学会など)が「レーザー」と「レーザ」の両方を使っていてまったく統一されていない。光ファイバも「ファイバー」という表記が大変多い。
余談だが、長さの基準になる測定器をJISでは「ブロックゲージ(block gage)」と呼んでいるが、長さ測定の老舗(精密測定器の総合メーカ) 株式会社ミツトヨの商品名は「ゲージブロック」である。 米国ではゲージブロック、英国はブロックゲージが正式名称で、国によって呼称が違う。日本ではJISで規定していても、各メーカはそれに倣うとは限らない。計測の世界に限らず、伸ばす・伸ばさない(「ー」の有無)どころか、名称すら不統一である。