計測関連用語集

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詳細説明

シグナリングテスタ

読み方:

しぐなりんぐてすた

カテゴリー:

#無線/移動体測定器

(signaling tester)
携帯電話の音声通話・コンテンツダウンロード・TV電話などの、端末のアプリケーション機能試験を行う測定器。疑似基地局や基地局シミュレータ(エミュレータ)ともいわれる。アンリツ製品の品名に多い。
アンリツのラインアップは形名MD84xxAシリーズ(xx:数字)。2018年2月19日に、検証課題解決により4Gから5Gへのスムーズな移行に貢献する、として5Gシステム開発用テスタの新製品MT8000Aをプレスリリースした。
今後の同社のシグナリングテスタはMDではなくMTが増えるのかもしれない。同社が電電ファミリーとして、基幹通信網の新しい伝送交換装置に対応した計測器を次々と発売していた時の形名はMPxxxxAだったが、現在の後継モデルはMTになっている(MT1040Aネットワークマスタ プロなど)。従来はMT8820A ラジオコミュニケーションアナライザなど、移動体通信向けの総合試験器(信号発生器スペクトラムアナライザなどの単機能ではなく、複数の測定器の機能を持った複合測定器。1台ですべて測定できるのでワンボックステスタの通称もある)をテスタの意味で形名の2文字目をTとしていたが、最近の同社の新製品はMTが増えた。
アンリツの競合であるキーサイト・テクノロジーのシグナリングテスタは「基地局テストソリューション」などの名称で、シグナリングテスタという品名のモデルはない(以下の参考記事が詳しい)。

2004年9月発行の電子計測器&システム[ガイドブック]2005(電波新聞社発行)は、機種群(カテゴリー)ごとの各計測器メーカの製品を掲載している。RF測定器の章の技術解説の冒頭は、アンリツが無線機テスタについて書いている。同社の無線機テスタとして次のモデルが掲載されている。
MD1623B シグナリングテスタ(PDCに対応)
MD8480B シグナリングテスタ(W-CDMAに対応)
MS555B ラジオコミュニケーションアナライザ
MS8608A ディジタル移動無線送信機テスタ(W-CDMA、PDC、PHSなどに対応)
MT8820C ラジオコミュニケーションアナライザ(W-CDMA、PDC、PHSなどに対応)
MT8860A ワイヤレスLANテスタ(無線LANに対応)
現在では、無線機テスタ(同社の品名は「ラジオコミュニケーションアナライザ」が多い)とシグナリングテスタは別カテゴリーの製品となっているが、この資料では送信機テスタも含めてすべて「無線機テスタ」として掲載されている。

MD1623B シグナリングテスタはアナログ方式の携帯電話(日本の規格名はPDC)に対応したモデルで、開発時の機能試験だけでなく、生産ラインの最終工程での接続試験にも使われた。端末を制御するシーケンス中の各種パラメータを任意に定義できる呼制御機能が優れていた。アンリツは電話機をNTTに納品する実績がある電話機メーカでもあり、コールシミュレータ(疑似呼)を開発した国内唯一の計測器メーカである。その要素技術がシグナリングテスタにつながっている。
1990年代には国内に多くの携帯電話メーカがあり、端末や基地局のソフトウェア開発で何十台ものMD1623Bを使用した。MD1623Bは数百万円する高額なモデルなので、メーカは計測器レンタル各社をフル活用して開発納期を厳守した。当時のシグナリングテスタはソフトウェア開発・デバッグに欠かせないICEのようなツールだった。計測器レンタル会社が保有するMD1623Bは稼ぎ頭だったが、プロトコルアナライザロジックアナライザのような純粋なデジタル計測器ではなくアナログの測定項目があるので校正が必須で、ランニングコストは大きかった。

参考記事
計測器情報
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