サンプリング
(sampling)
入力信号を一定の周期で測定すること。連続信号(時間的に連続)をサンプリングすると、離散信号(時間的に”とびとび”の値)になる。下図はオシロスコープ(オシロ)の例。
自然界の現象も含めて、電気信号もアナログ値(連続した値)が多い。音や振動、温度の変化などは連続したアナログ値である。コンピュータは0と1の2種類のデジタル値(離散した値)しか扱えない。そこで計測器はサンプリングの手法によって測定データ(アナログ)をデジタルデータにしてメモリに格納している。別の言い方をすると、サンプリングはアナログーデジタル変換の手法である。連続したアナログ値をサンプリングレート(サンプリングする時間間隔)で間引いて、とびとびの値をデジタル値として取り出している。
テクトロニクスの冊子「オシロスコープのすべて」(2017年4月発行)には次の解説がある。「サンプリング:入力信号の一部を多数の不連続の電気的な値に変換し、オシロスコープでストレージ、処理、また表示できるようにすること。リアルタイム・サンプリングと等価時間サンプリングの2つの方式がある。」
サンプリングされたデジタルデータから元のアナログデータを再生するには、元データの信号に含まれる周波数とサンプリング間隔の関係を示したサンプリング定理がある。速い信号を遅いサンプリング間隔でサンプリングしても正しいデータにはならないで、エリアシング(折返しひずみ)が発生する。オシロで測定する場合に、観測したい信号の周波数によって、オシロのサンプリング時間の設定を決めることは、使用者の初歩である。
sample(サンプル)は標本なので、サンプリングは標本化である。サンプリング定理は別名、標本化定理といわれる。物理や数学の世界では「標本化」だが、計測器の世界では「サンプリング」である。計測器のサンプリングはAD変換の手法で、「アナログ(連続)情報をある時間間隔で間引いてデジタルデータをつくること」と解釈され、標本をつくっているという感覚は無い。そのため標本化という表現はほとんどされず、サンプリングが、あたりなえの日本語のように使われる。
参考用語:サンプルレート、S/s、サンプリングオシロスコープ、積分型A/D変換器
参考記事:デジタルオシロスコープの基礎と概要 (第2回)・・オシロの基本仕様としてサンプル・レートを説明。