サチる
飽和して、上限に達している様子を表すことば。「飽和する」、「いっぱいになる」、「限界に達する」、「最大の状態になる」、「頭打ちでそれ以上伸びない」、などを意味する日本語のスラング。
「飽和」を表す英語のsaturation(サチュレーション)を略して、日本語の動作を示す「~る」と組み合わせた造語。「サチる」は理工系の技術者が使い始めたことば。電気のエンジニアは出力電圧が限界値になり、それ以上大きくならないときに「電圧がサチる」、「サチっている」といって、英語の「飽和」の発音から借用して、「値が頭打ちになっている様」を表現する。アンプ(増幅器)が「サチる」と出力信号はそれ以上大きくならない。
電気の技術者は、周波数特性をf特と呼称するが、これも英語のfrequencyと日本語の「特性」から一部を取って合体した俗語である。
電気エンジニアでなくとも、検索エンジン「Google(グーグル)」で検索することを「ググる」というのと同じように、「サチる」は電気エンジニアの基礎用語と筆者は思っていたが、ネットやXで「おじさんビジネス用語」として取り上げられていることに驚いた。筆者は還暦を過ぎた立派なおじさんだが、いまの若いエンジニアは「サチる」とはいわないらしい。それならば、いまどきの若いエンジニアの俗語は何なのか知りたいところである。エンジニアの俗語は教養や知性の一端を示すおしゃれであると思う。