キャリブレーション
(calibration)
英語のcalibrationを和訳すると校正(または較正)だが、日本語のキャリブレーションは校正とは少しニュアンスが異なる。キャリブレーションには、校正と調整の意味がある。英語のcalibrate(動詞)は比べる、較べる、という意味なので較正する(校正する)ことだが、「目盛りを調整する」という意味もある。印刷業界でカラーキャリブレーションというと、色のズレを矯正する、正しい状態に戻す(補正する)ことを意味する(※1)。そのため、計測器でキャリブレーションとは標準器と計測器の値を比較して計測器の偏りを明らかにする(これを校正という)だけでなく、正しい値を計測できるように調整する作業である、と解説されている。つまり校正+調整がキャリブレーションになる(※2)。
ただし多くの場合、キャリブレーションと校正は同義である。たとえばネットワークアナライザの重要なアクセサリであるキャリブレーションキットは校正キットとも呼ばれている。工業計器の校正に使う校正器のことをキャリブレータ(校正する物、つまり校正器)と呼ぶし、校正用標準器の世界的ブランド、FLUKE(フルーク※3)のキャリブレータは校正器と呼称される。横河計測のプロセスキャリブレータやFLUKEのマルチキャリブレータなどの製品がある。
日本語のキャリブレーションは使われる機器や業界によって意味が異なる、広範な解釈があるやっかいなことばである。
(※1) 画像表示装置(モニタ、ディスプレイ)では表示される色のバラツキ(個体差)なくして同じ色に調整することをキャリブレーションという。これも校正とは全く異なる。
(※2) 法令では、「較正」は電波法に基づき、「校正」は計量法に基づく。「較正」は測定器の調整を含むが、「校正」は調整を含まない。校正は「測定器が示した値と、正しい値(標準器)との差分を明確にすること」とJIS Z 8103 : 2000に規定されている。多くの電気計測器は計量法による校正を実施するが、スペクトラムアナライザやRFパワーメータなどの高周波(無線)の測定器は、「無線局の登録点検事業者制度」では較正を規定しているので、場合によっては校正ではなく較正をする必要がある。校正は調整を含まず、較正は含むという決まりは日本の法律の規定であり、全世界共通ではない。英語のcalibrationと日本語の校正、較正、キャリブレーションの違いや定義は難しく、説明は簡単ではない。
(※3) 厳密にはFluke Calibration(フルーク・キャリブレーション)社。