ウィンドウ
(window)
小野測器の「FFT解析に関する基礎用語集」にはウィンドウについて以下の説明がある。別名:Time Window(時間窓)のことを解説している。FFTアナライザの基本的な機能である。
FFT処理は、サンプリングされた数値データ系列のうち、ある区間(例えば1024点とか2048点)のデータについて行われるが、このように波形の一部を切取ることをウィンドウ(時間窓)で波形を切取る、またはウィンドウをかけるという。
フーリエ変換は無限長のデータを処理することで定義されている。離散的フーリエ変換(DFT)においてもこれは変わらず、FFTアナライザでは、ウィンドウで波形を切取ると、その区間の波形が無限に繰返されるという仮定で信号解析を行う。このとき解析データ長(ウィンドウの長さ)がそれぞれの周波数の周期の整数倍になっていれば、FFTアナライザで仮定された波形は実際の入力波形と一致し、単一のラインスペクトルが得られる。ところが解析データ長が周期の整数倍と一致していない場合(周波数分析にあてはまらない場合で、始端と終端がつながらない)は、ひずんだ波形を処理することになり、そのスペクトルはパワーが集中しないで、左右に広がり(サイドロープ)が生じてしまう。
このパワーの漏れをリーケージ誤差と呼んでいる。そこでこのリーケージ誤差を防ぐのが、ウィンドウ処理になる。フレームの両端がゼロとなるような山型の関数をフレームに掛合せれば、始端と終端がつながり誤差が少なくなる。このような関数をウィンドウ関数と呼び、ウィンドウ関数により解析信号を同期させる処理のことをウィンドウ処理という。その結果、スペクトルの形はラインスペクトルに近づいている。ウィンドウとして代表的なものがハニングウィンドウだが、その他解析信号に応じてそれぞれ適したウィンドウを使用する。
小野測器は国産FFTアナライザの草分けメーカである。そのためFFTアナライザの機能や名称などは小野測器がつくったといっても過言ではない。ただし、環境計測分野のトップメーカのリオンは振動解析用途でFFTアナライザと同機能の多機能計測システム(データ集録+FFTアナライザ)をつくっている(つまり小野測器だけがFFTアナライザのオンリーワンではない)。上記の解説がすべてのFFTアナライザに共通のものかは不明。
ウィンドウは広範な意味がある。計測器に限っても多くの意味がある。本解説は、あくまで小野測器がFFTアナライザの機能としてのウィンドウを解説したもので、計測器一般の説明ではない(以下のウィンドウトリガやウインドウ・コンパレータ方式など)。
windowのカタカナ表記はウインドウとウィンドウが混在している(2文字目が大文字と小文字)。本稿はウィンドウ。