計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
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自記温湿度計(じきおんしつどけい)

(thermo hygrorecorder) 温湿度計で、機器が自動で記録をするもの。温湿度の記録計の1種で、記録期間などの設定をした後は、測定器が自動でチャート(記録紙)に温湿度の変化を記録して残す。自記は「自動で記録」や「(機器が)自分で記録」の意味だが、英語ではthermo hygrorecorder(温湿度記録計)で、自記は日本語特有の言い方である(温度計:thermometer、湿度計:hygrometer、記録計:recorder)。自記記録計と呼称されることも多い。湿度は測定できず温度だけの製品は自記温度計と呼ばれている。以下のようなモデルがある。 【メーカ名、品名 形名など】 ・佐藤計量器製作所、温湿度記録計 シグマⅡ型。製品カテゴリーは「自記記録計(温湿度)」。 ・日本計量機工業株式会社、自記温度計 NWR-9901、自記温湿度計 NWR-9903。 ・いすゞ製作所、自記温湿度計 TH-27R-MN7(2022年生産中止、2023年11月現在は在庫あり)。 TH-27Rは7モデルあり、TH-27R-MN1は記録速度が12.1mm/時で記録日数は1日間、-MN365は0.80mm/日で365日。記録速度によって記録できる日数が1日、1週間、1か月、2か月、3か月、6か月、1年の7モデルが用意されている。単二乾電池2本でクオーツ円筒時計を駆動している。

自技会(じぎかい)

公益社団法人 自動車技術会の略称。英語名Society of Automotive Engineers of Japan, Inc.から、英略称はJSAE(ジェー・エスー・エー・イー)。 1947年設立。自動車に係わる研究者、技術者、学生の会員約47,000名、企業会員約700社から構成される。工学系ではわが国最大の学術団体。自動車車体メーカ(OEM)出身者が歴代の会長を務め、現在の第31代会長はトヨタ自動車出身である。 毎年5月頃に開催される、自動車の技術展である「人とくるまのテクノロジー展」を主宰。車載ネットワークのCXPIは自技会が策定し、国際標準規格になった、日本発の通信プロトコルである。 自技会が運営するAEG(自動車技術者のための情報サイトAutomotive Engineers’Guide)は、会員各社の製品や自動車業界のイベントなどの情報を満載している(実際の運営は株式会社大成社が行っている)。

自記記録計(じききろくけい)

円筒形(ロール状)の記録紙に温度(や湿度)を記録する温湿度計(記録計)のこと。別名、自記温湿度計。電気計測器を校正する標準室など、温湿度を一定範囲で管理している部屋に置かれ、何か月もの長期にわたり温湿度の変化を記録することに使われている。 原理は、温度についてはバイメタル(またはブルドン管)の変位(熱膨張)を、湿度については毛髪の伸縮を拡大して、記録計のペンを動かしてチャートに描く。白金抵抗温度計を使い、抵抗の変化を電流に変えて、電流計が温度を記録する方式もある。 「自動的に記録ができる記録計」を略した名称と思われる(「自分で記録する」ので自記、という解説もある)。一度設置して稼働させたら、チャート(記録紙)の交換以外には(原則)操作しない。自動で温度(や湿度)を記録するレコーダ(であり温湿度計)である。機種分類(カテゴリー)を温湿度計にするか、記録計にするかは判断が分かれる。メーカによっては「自記計」や「自動記録計」とも略称される。 温度全般の計測器をラインアップする佐藤計量器製作所 は、シグマⅡ型温湿度記録計などがあり、「自記記録計(温湿度)」のタイトルで4モデルを販売している(2023年11月)。いすゞ製作所は自記温湿度計の老舗だが、2022年に生産中止した(毛髪やドラム時計などの部品が入手できなくなったため)。日本計量機工業株式会社ホームページには、自記温度計・温湿度計としてNWR-9901(温度のみタイプ)、NWR-9903(温度・湿度タイプ)が掲載されている。記録日数を1~99日の間で変えることができる、食品・薬品倉庫、美術・博物館、標本庫、クリーンルーム、研究所などに販売実績がある、国家標準へのトレーサビリティ書類を発行可能、などの説明がされている。 JIS Z 8806(湿度測定方法)では、毛髪湿度計が定義されている。自記記録計(温湿度計)は、毛髪の湿度による伸縮から湿度を算出している。機構が機械的な毛髪式自記記録計は、湿度センサと、紙を使った記録計の組み合わせより安価なため、日本では標準室や美術館などで導入されている。紙で残すのは改ざんされにくいという理由もあるらしい。温度の測定と記録なら、小型のデータロガーで性能が良くて安価な製品が増えたが(たとえばおんどとり)、自記記録計はいまでも置き換わらずに多く稼動している。

色彩輝度計(しきさいきどけい)

(color luminance meter) 物体の表面から放射された光の量と色を測定する機器。人がディスプレイ(モニタ)や電光掲示板などの明るいものを見たときの、明るさを感じる量を輝度といい、発光面の単位面積あたりの明るさをcd/㎡(カンデラ毎平方メートル)の単位で示す。色彩輝度計は、発光面(または反射面)の測定ポイント面積内の平均輝度と色度(xy座標で色を表す)を測定できる。 コニカミノルタにはカラーアナライザCA-400シリーズなどがある。トプコンテクノハウスはBMシリーズやRDシリーズの色彩輝度計がある。高精度な色彩計として、従来とは違う分光方式の分光放射計や分光放射輝度計という製品群もある。

色彩計(しきさいけい)

色の違い(色差)を数値化して表す測定器。(=色差計)

色彩照度計(しきさいしょうどけい)

物体の表面に当たる光の量と色を測定する機器。

色差計(しきさけい)

色の違い(色差)を数値化して表す測定器。(=色彩計)

磁気誘導(じきゆうどう)

(magnetic induction)磁気が近接してくると、物体に反対の磁極が生じる現象。永久磁石が釘などを吸引することができることはよく見られる現象だが、これは釘には磁気誘導によって磁極が生じるために吸引される。(フィッシャー・インストルメンツの膜厚測定、素材分析、材料試験、表面特性解析に関する用語集より)

治具(じぐ)

(jig)計測器の用語としては「測定対象物を固定したり、測定器に接続するためのアクセサリ」のこと。LCRメータ、インピーダンスアナライザ、ネットワークアナライザ、半導体テスタなど、回路素子や半導体などの電気特性を計測する分野で使われる。具体的な品名はテストフィクスチャやテストリード、テストピンなど様々。jig(英語)が語源。元の意味は「木工で切削加工をするときに工作物を固定したり、位置決めをする器具」のこと。「治具」は当て字。「ジグ」や「冶具」という表記も見かける。冶金(やきん:鉱石を採取して、金属を精製する)という熟語が示すように「冶」は溶かすという意味なので、「冶具」は誤りと思われるが、使用されている例を多く見かける(理由は不明)。

シグナリングテスタ(しぐなりんぐてすた)

(signaling tester) 携帯電話の音声通話・コンテンツダウンロード・TV電話などの、端末のアプリケーション機能試験を行う測定器。疑似基地局や基地局シミュレータ(エミュレータ)ともいわれる。アンリツ製品の品名に多い。 アンリツのラインアップは形名MD84xxAシリーズ(xx:数字)。2018年2月19日に、検証課題解決により4Gから5Gへのスムーズな移行に貢献する、として5Gシステム開発用テスタの新製品MT8000Aをプレスリリースした。 今後の同社のシグナリングテスタはMDではなくMTが増えるのかもしれない。同社が電電ファミリーとして、基幹通信網の新しい伝送交換装置に対応した計測器を次々と発売していた時の形名はMPxxxxAだったが、現在の後継モデルはMTになっている(MT1040Aネットワークマスタ プロなど)。従来はMT8820A ラジオコミュニケーションアナライザなど、移動体通信向けの総合試験器(信号発生器やスペクトラムアナライザなどの単機能ではなく、複数の測定器の機能を持った複合測定器。1台ですべて測定できるのでワンボックステスタの通称もある)をテスタの意味で形名の2文字目をTとしていたが、最近の同社の新製品はMTが増えた。 アンリツの競合であるキーサイト・テクノロジーのシグナリングテスタは「基地局テストソリューション」などの名称で、シグナリングテスタという品名のモデルはない(以下の参考記事が詳しい)。 2004年9月発行の電子計測器&システム[ガイドブック]2005(電波新聞社発行)は、機種群(カテゴリー)ごとの各計測器メーカの製品を掲載している。RF測定器の章の技術解説の冒頭は、アンリツが無線機テスタについて書いている。同社の無線機テスタとして次のモデルが掲載されている。 MD1623B シグナリングテスタ(PDCに対応) MD8480B シグナリングテスタ(W-CDMAに対応) MS555B ラジオコミュニケーションアナライザ MS8608A ディジタル移動無線送信機テスタ(W-CDMA、PDC、PHSなどに対応) MT8820C ラジオコミュニケーションアナライザ(W-CDMA、PDC、PHSなどに対応) MT8860A ワイヤレスLANテスタ(無線LANに対応) 現在では、無線機テスタ(同社の品名は「ラジオコミュニケーションアナライザ」が多い)とシグナリングテスタは別カテゴリーの製品となっているが、この資料では送信機テスタも含めてすべて「無線機テスタ」として掲載されている。 MD1623B シグナリングテスタはアナログ方式の携帯電話(日本の規格名はPDC)に対応したモデルで、開発時の機能試験だけでなく、生産ラインの最終工程での接続試験にも使われた。端末を制御するシーケンス中の各種パラメータを任意に定義できる呼制御機能が優れていた。アンリツは電話機をNTTに納品する実績がある電話機メーカでもあり、コールシミュレータ(疑似呼)を開発した国内唯一の計測器メーカである。その要素技術がシグナリングテスタにつながっている。 1990年代には国内に多くの携帯電話メーカがあり、端末や基地局のソフトウェア開発で何十台ものMD1623Bを使用した。MD1623Bは数百万円する高額なモデルなので、メーカは計測器レンタル各社をフル活用して開発納期を厳守した。当時のシグナリングテスタはソフトウェア開発・デバッグに欠かせないICEのようなツールだった。計測器レンタル会社が保有するMD1623Bは稼ぎ頭だったが、プロトコルアナライザやロジックアナライザのような純粋なデジタル計測器ではなくアナログの測定項目があるので校正が必須で、ランニングコストは大きかった。

シグナルアナライザ(しぐなるあならいざ)

スペクトラムアナライザ(スペアナ)の1種。変調信号の解析を主眼にしたスペアナの名称。移動体通信向けのスペアナはキーサイト・テクノロジー、アンリツ、ローデ&シュワルツなどの通信計測器各社がシグナルアナライザと命名している。スペアナとシグナルアナライザは通常、区別なく使われているのでほぼ同義だが、厳密には機能に違いがある。スペアナは周波数ごとにパワーを測定・表示するため周波数ドメイン(横軸が周波数)といわれる。ところが今日主流のスペアナは変調ドメインでのより包括的な信号解析が可能なため、各社がシグナルアナライザという品名で呼んでいる。スペアナの主機能である周波数分析に信号解析の機能をもった機種が、現在の主力のスペアナ(シグナルアナライザ)である。機種群名はスペアナで、新しくシグナルアナライザというカテゴリ(区分)ができたわけではない。キーサイト・テクノロジーには30年以上前から時間軸と周波数軸の両方の表示・解析ができるVSA(ベクトルシグナルアナライザ)という製品群がある。そのため従来はシグナルアナライザというともっぱらVSAを指したが、オシロスコープにスペアナ機能が付く時代となり(MDO)、VSAは古い機種群になった。現在はシグナルアナライザといえば変調解析ができるスペアナのことである。

シグナル・インテグリティ(しぐなるいんてぐりてぃ)

(signal integrity) integrityは「忠実」なので、日本語にすると「信号忠実度」や「信号完全性」。デジタル伝送では、意図したとおりの波形に実際になっているかが重要になる。送信側、伝送路、受信側などの各装置はノイズや損失など様々な影響を受けて波形が変化する。短い距離や低い伝送レート(bps、baud)では波形が変化しない(十分な忠実度があった)が、USBやHDMIのような高速のシリアル通信が普及すると、広帯域オシロスコープ(高速オシロスコープ)でシグナル・インテグリティを確認するようになった。逆に言うと、2000年代に新情報家電(デジタルカメラ、DVD、液晶パネル、スマートフォンなど)が普及すると、それを評価すために従来よりも広帯域なオシロスコープが求められ、高周波の技術がある海外のオシロスコープメーカがこれに応えた。 テクトロニクス「オシロスコープのすべて」(2017年4月発行)では「シグナル・インテグリティ:デジタル信号の高速化によって生じるリンギングやクロストーク、グランド・バウンスなどのノイズがいかに抑えられているか、すなわちデジタル信号の波形品質のこと」とある。 2021年2月に表記の仕方を調べたら、計測器メーカ(キーサイト・テクノロジーやテレダイン・レクロイ)は「シグナル・インテグリティ」だが、マクニカやイノテックのようなITベンダー(電気・電子機器、部品の商社)は「シグナルインテグリティ」と表記している。どちらの表記も良く使われる。また、2023年3月20日配信のキーサイト・テクノロジーのニュースは「シグナルインテグリティー」という表記だった。同じメーカ内でも表記の仕方は統一されていないようである。

シグナルインテグリティアナライザ(しぐなるいんてぐりてぃあならいざ)

(signal integrity analyzer) Wavecrest(ウェーブクレスト)社の代表的なモデルの品名。SIR-3000シリーズやSIR-4000C/Dがある。オシロスコープ(オシロ)で、ジッタやタイムインターバルの測定を強化した製品。オシロとしては周波数帯域約15GHzと広帯域で、アイパターン測定もできる。モデルによってはBER測の機能もある。 Wavecrestは1986年に米国ミネソタ州で設立し、米国中西部を中心に多くの半導体デバイスメーカに納品して成長した。日本法人のウェーブクレスト株式会社は2001年2月に設立し、SIRは国内大手半導体メーカの開発・製造用の機材として使われた。2000年代は高速デジタル通信が普及した時代で、PCI Express(PCIe)、SATA(サタ)、FibreChanne(ファイバーチャンネル)などの通信規格が開発され、多くの電子機器に採用された。またver(バージョン)やGEN(ジェネレーション、世代)が改良されて通信速度が速くなっていった。そのたびに、より高速(広帯域)、高機能な測定器(評価ツール)が登場した。 SIA-3000シリーズの基本性能は、時間測定分解能200fs(フェムト秒)のタイムインターバル測定、オシロスコープ、アイパターン、BERT(ビット誤り率測定)を備え、ジッタ、スキュー、立ち上がり時間/立ち下り時間の測定が可能。エントリーモデル(SIA-3100)から上位モデル(SIA-3400、SIA-3600など)へのアップグレードはチャンネルカードの差し換えで可能。2005年8月に日本で発売された新製品SIA-3400Dは「PCI Express1.1(2.5Gbps)、SATA I(1.5Gbps)、SATA II(3.0Gbps)、XAUI(3.125Gbps)、3X FibreChannel(3.1875Gbps)などの評価ソフトウェアを装備し、コンプライアンステストに最適」とPRされている。 シグナルインテグリティは「信号の忠実度」、「信号完全性」という意味で、キーサイト・テクノロジーやテクトロニクスなどがデジタル信号の品質を示すことばとして、高速デジタル通信の普及と共に使い始めたが、Wavecrestの製品はその走りであった。レクロイ(現テレダイン・レクロイ)にネットワークアナライザの1種で、シグナル・インテグリティ・ネットワークアナライザSPARQというモデルがあったが、シグナルインテグリティを製品名にした製品は他にはあまり聞かない。アンリツの現役BERTであるMP1900Aの品名はシグナルクオリティアナライザである(BERTや誤り率測定器、ビットエラー測定器という名称ではない)。シグナルインテグリティやシグナルクオリティなどの表現は、従来の計測器とは違う、先進のイメージがあるためか、最近の計測器の名称(品名)に使われていると思われる。 広帯域オシロスコープでアイパターンだけでなくBER測定もする手法は、キーサイト・テクノロジーがPAM4信号の評価で提案している(以下のKeysight Worldの記事が詳しい)。反対にアンリツはBERTでアイパターンも測定できるBERTWave(バートウェーブ)というモデルが、MP1900Aと並ぶBERTの現役製品である。

シグナルコンディショナ(しぐなるこんでぃしょな)

広義にはある種の電気信号を別の種類の信号に変換する機器を指す。計測器ではセンサの微弱な信号を増幅して記録計などに入力する測定器のこと。株式会社共和電業や株式会社エー・アンド・デイのひずみ測定器の品名。ひずみ測定用の直流アンプ。センサである歪ゲージの信号を増幅して、レコーダやロガーなどの記録計に出力する測定器。共和電業HPには「ひずみ測定ではひずみゲージブリッジに加える電源の方式により、交流方式を動ひずみ測定器、直流方式をシグナルコンディショナと、当社では区別している」とある。旧三栄測器の販売会社である三栄インスツルメンツ株式会社HPでは「シグナルコンディショナー(アンプ、増幅器、指示計) :ひずみゲージやひずみゲージ式変換器(荷重、圧力、変位、加速度、トルク)の信号を増幅するためのアンプ」と説明している。エー・アンド・デイの工業計測機器(旧三栄測器、NECアビオニクスの製品群)はシグナルコンディショナとしてストレンアンプ(Strain Amp、歪増幅器)やアイソレーションアンプ(絶縁アンプ)を掲載している。ACブリッジ方式のモデルAS1000シリーズの品名は「ACストレンアンプ」で、ノイズ耐性に優れたAS1803シリーズは新幹線など鉄道車両の歪測定に活用されている。AS1803の共和電業の相当品はDPM-900シリーズだが、(前述のように)ブリッジ電源が交流のため、「シグナルコンデイショナ」ではなく「動ひずみ測定器」が品名である。エー・アンド・デイのシグナルコンデイショナには「アイソレーション直流アンプ」ALシリーズが掲載されている。これはひずみ測定用ではなく一般的な絶縁DCアンプで、以前は横河電機が同等品をつくっていた(横河電機としてはロガーなどの関連製品である)。このように、シグナルコンディショナ、ストレインアンプはひずみ~記録計(レコーダ、ロガー)と広範な用語であるが、当サイトでは動ひずみ測定の用語ととらえている。

シグナルジェネレータ(しぐなるじぇねれーた)

(signal generator) 信号発生器の別名。ファンクションジェネレータなどの汎用的な信号発生器をつくるテクトロニクスや、オシロスコープだけでなくスペクトラムアナライザや 信号発生器にラインアップを広げているGood Will Instrument (GW Instek)に、シグナルジェネレータやシグナル・ジェネレータという表記がでてくる。また、リーダー電子などのテレビ・オーディオ測定器にもシグナルジェネレータというモデルがある。 無線通信用の計測器メーカであるキーサイト・テクノロジー、アンリツ、ローデ・シュワルツには、「シグナルジェネレータ」という品名のモデルは無い(2023年10月)。無線通信ではRF信号発生器やベクトル信号発生器などの名称が品名になっている(キーサイト・テクノロジーは以前はシグナルジェネレータという品名のモデルがあった)。 なので、現在では無線通信以外のオーディオ、TV/ラジオ放送の信号発生器や(高周波ではない低周波の)信号発生器(FGなど)をシグナルジェネレータと呼称しているといえる。2000年代以前のアナログ無線通信が主流の時代は、オーディオ周波数(可聴周波数)やアナログのテレビ・ラジオ放送の周波数に対応した信号源は信号発生器ではなく発振器(低周波発振器やRC発振器)と呼ばれることが多かった。信号発生器と発振器の厳密な違いは難しい。

シグナルソースアナライザ(しぐなるそーすあならいざ)

(signal source analyzer) 水晶発振器やPLLなどの信号源の特性を評価する測定器で、主に位相雑音(側波帯雑音)を正確に測定できる。RFなどの無線通信分野や、高周波の計測器メーカがつくっている。キーサイト・テクノロジー(キーサイト)とローデ・シュワルツ(R&S)、Wavecrest(ウェーブクレスト)がラインアップしている。キーサイトはE505xシリーズが現役モデル。R&Sの品名は「位相雑音アナライザ/VCOテスタ」(FSWP26、FSWP8など)。英語表記を略記したSSAが計測器メーカ資料に使われている。メーカ価格は約1千万円のため高額測定器である。 「3つのドメイン(周波数、振幅、時間)を1台で解析」とPRしているメーカもある。従来はフェイズノイズアナライザ(位相雑音測定器)、スペクトラムアナライザ(スペアナ)、オシロスコープ(オシロ)、タイムインターバルアナライザなどの複数の測定器が必要だった信号源評価を1台に集約した複合計測器である。携帯電話を含む無線機の総合評価測定器である無線機テスタ(ワンボックステスタ)の信号源版といえる。振幅ノイズ以外に、ジッタスペクトラムやPLLの2次、3次伝達関数(transfer function)が測定できる。時間領域では発振波形の立ち上がり時間(オシロの機能)やタイムインターバルも確認できる。 位相雑音の測定はスペアナでもできる。キーサイトとR&Sはスペアナの要素技術を使いSSAをラインアップしている。2社のSSAはPLL法を使っている。もう1社のWavecrestはオシロスコープ法を採用している。同社はSignal Integrity Analyzer(シグナルインテグリティアナライザ)のSIAシリーズを1990年代からラインアップし、PCI Express(PCIe)などの高速通信規格のジッタ解析に使われた。つまり、高速デジタルが勃興する時代にジッタ解析ができるオシロをつくった(2000年代後半以降はリアルタイムオシロスコープの周波数帯域が数10GHzまで伸び、広帯域オシロスコープが普及したので、SIAの優位性は薄れた)。同社のSSAはSIAをベースにしている。2013年頃にTriple Domain(3軸、3つの領域)と銘打ってSSA-20、SSA-50、SSA-150などをPRしている。 アンリツはMS2840A(スペアナ/シグナルアナライザ)の位相雑音測定機能をPRしている。「無線機の基準発振部の位相雑音評価に高価なSSA(専用器)ではなくMS2840A(汎用器)を流用して使えば、SSAの1/3程度の価格で位相雑音評価が行える」、と主張している。 SSAは「信号源(signal source)の評価機器・解析器(analyzer)」という命名だが、品名から機能がイメージしにくい(最近のスペアナはシグナルアナライザを品名にしているモデルが多く、SSAと似た名称である)。その点、ローデ・シュワルツの品名は「発振回路の代表であるVCO(Voltage Controlled Oscillator)のテスタ」というわかりやすいネーミングである。SSAという名称には「位相雑音やVCOだけの測定ではなく、信号源の総合的な評価ができるアナライザ」、というメーカの主張が伺える。 テクトロニクスのリアルタイムスペクトラムアナライザであるRSA3000Aに信号源解析ソフトウェア(オプション)を搭載すると、対数目盛りの周波数(横軸)に単位周波数当たりの値に正規化した雑音レベル(dBc/Hz)を表示できる。高速フーリエ変換(FFT)の手法を使い、位相雑音の測定を実現している(RSA3000Aは生産中止。現在の同社はスタンドアロンではなくPC接続型の小型のリアルタイムスペアナにラインアップをシフトしている)。 SSAの機種群(カテゴリー)の分類は難しい。キーサイト・テクノロジーの製品ページには、機種分類としてオシロ&アナライザ、信号源&電源、ワイヤレスなどと並列に「測定器」なる表記があり、その下の分類にDMM、LCRメータ、位相雑音測定などがある(2023年11月同社ホームページ)。位相雑音測定をクリックするとSSAが現れる。ローデ・シュワルツはEMC測定機器、アナライザ、オシロなどの分類があり、アナライザの下にスペアナや位相雑音アナライザがあり、位相雑音アナライザをクリックすると「位相雑音アナライザ/VCOテスタ」(モデルはFSWPやFSPM)が掲載されている(2023年11月同社ホームページ)。キーサイト・テクノロジーは「SSAはワイヤレスなどの無線通信ではなく基本測定器の1種」という主張かもしれない。 当サイトではSSAをノイズフィギュアメータ(雑音指数測定器)とともにカテゴリー「ネットワークアナライザ」(ネットアナ)に分類している。その他という分類をつくらず、既存のどこかのカテゴリーに入れたいため、高周波の部品の総合評価という範疇でネットアナに登録している(これが最も適切な分類ということではない)。

シグナルレベルメータ(しぐなるれべるめーた)

電波の強さを測定する計測器。電界強度計、電測計などの名称もあり、計測器メーカによってさまざま。新しい無線通信方式が導入されるときには、それに対応した電界強度計が発売される。アンリツなどのRF測定器メーカやリーダー電子などの映像(TV放送)測定器メーカが計測器をつくっている。

ZigBee(じぐびー)

家電向けの短距離無線通信規格の一つ。Bluetoothと同種の技術で、Bluetoothよりも低速で伝送距離も短いが、代わりに省電力で低コストという利点がある。

試験成績書(しけんせいせきしょ)

(calibration data sheet) 計測器の校正(試験)を行った結果(測定値)を記録した書類。記載される項目はメーカ名、形名(計測器のモデル名、型名、型式)、品名(計測器の名称)、製造番号、試験年月日、温湿度、校正者、承認者、判定結果、使用した標準器など。別名、「成績書」や「校正データシート」、「データシート」とも呼ばれ、校正した証拠(エビデンスの資料)として標準室(校正室)に保管される。 通常は試験を行った際の測定値と合否判定(良否)が記載されるが、最近は不確かさという概念が普及して、良否ではなく「不確かさの数値」が記載される場合が増えている。校正(や場合によっては不確かさ)の知識がないと試験成績書を読む(内容を理解する)ことは難しい。そもそも、計測器の技術的な支柱となっている(品質管理の手法でもある)校正は、知識のある特定の技術者にしか運用できない専門分野である(その技術レベルによって校正事業者はメシを食っている)。 校正関連の書類には他に、校正証明書やトレーサビリティ証明書があり、日本ではこの3種類が「校正書類3点セット」といわれる(海外ではトレーサビリティ証明書はなくて、日本独自の書類である)。 ISO 9001(一般校正)では試験成績書に測定値や合否が記載されるが、不確かさによる校正(ISO/IEC 17025)では書類は校正証明書に集約されている。 メーカによって試験成績書ではなく、別の名称のこともある。計測器などの機器のユーザは、何が記載されている書類を入手したいかをメーカに伝えて、希望に合致する書類をそのメーカが作成できるのか、確認することが肝要である。

指向性(しこうせい)

(directivity) 電波などの物理現象には進行方向がある。たとえばアンテナの送受信する方向のことを「アンテナの指向性」という。アンテナは全方位の360°に均一な性能を持つ訳ではなく、電波を送受信する向きは限られている場合が多い。たとえばTV用のアンテナ(棒状のもの)は屋根の上に設置するときに方向を合わせないと受信できない。衛星放送(CS/BS)の丸いアンテナもベランダに設置するときに方向が決まっている。ものによって全方向に送受信できるアンテナもある。そのためそれと区分するために「指向性アンテナ」といういい方をする。ホーンアナテはラッパの形をしていて指向性の方向が一目瞭然。EMS (イミュニティ 試験)ではダブルリジットガイドアンテナなど大型の指向性アンテナが使用される。アンテナだけでなくスピーカも指向性がある。アンテナは一般には計測器でなく通信機器だが、計測器と併用される計測用アンテナもあり、計測器の範疇(アクセサリ)といえる。 スピーカに指向性があるのと同じく、音の計測で重要なセンサであるマイクロホンにも指向性がある。