計測関連用語集

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クランプ電力計(くらんぷでんりょくけい)

(clamp power meter) クランプ型センサーを使用した電力計。電気設備の保守点検で主に使われる電池および商用交流電源で駆動する小型の電力計である。配電線からクランプ電流計で電流を検出して、電圧は配電盤の端子から測定コードを介して検出する。クランプ電力計には電圧、電流、電力のみを測定する単機能な製品から、電源品質を解析できる機能や測定データを長時間記録できる高機能な製品まである。 計測器メーカは、マルチ計測器、共立電気計器、日置電機、三和電気計器など大手から零細まで多くがつくっている。一般にクランプといえば日置電機が有名で、電力会社などでの採用が多いが、個人事業者などはマルチ計測器などのより安価なモデルを使っている傾向がある。毎年6月頃に開催される電気設備工事業界の展示会、JECA FAIR (ジェカフェア)にはクランプ電力計の主要メーカが出展している。 現在の計測器としての電力計はベンチトップ型の電力計(デジタルパワーメータと呼称されることが多い)とクランプ電力計である。デジタルパワーメータで解析機能に特化したモデルをパワーアナライザと呼び、最近のはやりである。ベンチトップ型電力計は国産の横河電機が高精度モデルを含んでトップシェアだった。クランプ電力計は日置電機がトップで、2社はある意味、すみ分けていたが、2010年頃から日置電機は横河電機と競合するモデルのラインアップを増やしている。横河電機もクランプを外部調達してクランプ式の電力計にも注力している。両社は1980~2000年代に光通信測定器で競ったアンリツと安藤電気のようである。

クランププローブ(くらんぷぷろーぶ)

電線を挟み込んで電流を測定するセンサであるクランプセンサのこと。 クランプセンサはメモリレコーダや電力計などの入力に使われるが、オシロスコープに直性、入力できるようにBNCコネクタになっている製品がある。そのためクランプ製品の計測器メーカは、電流プローブをクランププローブやカレントプローブと呼ぶ。日置電機はクランプオンプローブという品名が多い。岩崎通信機や横河計測のように、オシロスコープとデジタルマルチメータ(DMM)を両方つくっているメーカは、DMMにつなぐ電流プローブをクランププローブと呼んでいる(DMMにつなぐので端子はバインディングポストやバナナプラグである)。

クランプメータ(くらんぷめーた)

クランプ型センサを使用した電流計であるクランプ電流計の別称。クランプテスタとも呼ばれる。

繰り返し性(くりかえしせい)

(repeatability) 同一の負荷条件ならびに同一の環境条件において同じ負荷を繰り返した時の出力の最大差。定格負荷において測定し、その値を定格出力に対するパーセンテージで表す(%RO)。(株式会社東京測器研究所の「びずみ測定用の変換器の用語」より)

グリッチ(ぐりっち)

(glitch) 日本語にすると「機械の欠陥」や「突然の異常」の意味。電子回路の設計にマージンがないときなどに、鋭いパルス状の髭のような波形がときどき発生することがあり、電子機器の誤動作の原因になる。バグ(bug)は決定的な欠陥で必ず不具合を起こすが、グリッチは一過性の短期間の障害で、不定期に発生することが多く対処(発見や対策)が難しい。計測器(特にオシロスコープ)の用語として、この異常波形をグリッチと呼んでいる。「グリッチとは、回路内で発生する間欠的で高速な不良信号」(2017年発行 テクトロニクスの冊子「オシロスコープのすべて」より)。 オシロスコープで電子回路のデバッグをする際には「グリッチ」を見つけ出して改善を行い、機器の動作を安定化させ、機器の品質を向上して、販売可能な製品(商品)として作り上げることが重要である。そのためオシロスコープ各社の製品には、トリガのかけ方などの多くの手法を駆使してグリッチを発見できることが、カタログや技術資料でPRされている。「方形波でパルス幅が規定以下の短いものがグリッチ」と考えて、パルス幅トリガを使ってグリッチを検出をするのが一般的である。高速デジタル回路の解析を主眼にした高速オシロスコープでは、パルス幅トリガを高機能にしてグリッチトリガと命名していることもある。 DSO4000 Xシリーズなど、波形更新レートが速いことを売りにしているキーサイト・テクノロジーは「オシロスコープには波形を捕捉しないデッドタイムがあり、波形の更新速度が上がると、発生頻度のまれなグリッチを捕捉できる」、と解説している(2018年3月発行 WHITE PAPER「そのオシロスコープは、発生頻度 の低いイベントを捕捉できますか? オシロスコープの波形更新速度」)。 グリッチを発見して、原因を究明し、設計変更によって撲滅することはオシロスコープによるデバッグの真骨頂である。オシロスコープの重要な機能の1つであるトリガを使いこなせるようになると、オシロスコープについて習熟したといえるのは、グリッチ発見にトリガが有効なためともいえる。ゲームでは、ゲーム中に起きた不具合を意図的に利用する手法(不正行為)を「グリッチ」と呼んでいるが、計測器の用語としては、設計不良を発見し、電子機器の品質を高めるための指標の1つがグリッチである。 使い方動画(会員専用) [計測入門講座 Isee!]第11回 複雑な信号にトリガをかける ・・・パルス幅トリガでグリッチを発見する例。

クリモマスター風速計(くりもますたーふうそくけい)

カノマックスの風速計の品名。略称:クリモマスター。

クレストファクタ(くれすとふぁくた)

(Crest Factor) 日本語では「波高率」だが、クレストファクタの方が良く使われる。表記は「クレスト・ファクター」、略記は「C.F.」などがある。ピーク値/実効値のこと。入力波形のピーク値Vpeakと実効値Vrmsの比。 ファンクションジェネレータやパルスジェネレータなどの方形波やパルスを出力する信号発生器では必ず明記されている。電圧や波形の状態を示す用語の1つのため、マルチメータや電源、FFTナライザなどでも説明される用語。たとえばデジタルマルチメータ(DMM)ではADコンバータのダイナミック・レンジをあらわす。下図のように実効値に比べてピーク値が大きいパルス波形がDMMに入力されると、DMM内部の増幅器が波形のピーク時に飽和してしまうことがある。DMMのクレストファクタは、内部の増幅器の定格入力レンジに対して飽和領域がどれだけ高いかによって決まる。 正弦波のクレストファクタは1.41。たとえば下図のパルス信号と同じ実効値Vrmsの正弦波があった場合、そのピーク値はパルス波形のピーク値より低い。パルスは変化のスピードが速く、クレストファクタは1.41よりも大きな値になる。緩やかに変化する正弦波と同じ実効値であっても波形は全く違う。実効値だけではわからない波形の形状をクレストファクタから読み取ることができる。実際の交流信号は高調波などの複数の周波数を含んでいて、正弦波のようにきれいな波形をしていない。交流信号の評価(測定)をするのにクレストファクタが重要になる所以である。 小野測器ホームページのFFTに関する用語解説では、次のアプリケーションが紹介されている。ベアリングは大きさによって振動値が相対的に変化する。大きなベアリングは振動の実効値が大きく、異常状態の場合のピーク値はさらに大きくなる。クレストファクタはピーク値と実効値の比を求めているためベアリングのサイズ(大小)に振動値が左右されず、傷などの異常度合いを正確に判断することが可能になる。計測されたクレストファクタの値が大きいと異常度合いが大きいと判断する。このようにピーク値や実効値ではなくフレストファクタによって検査・判定ができる。

クレバースコープ(くればーすこーぷ)

(clever scope) ニュージーランドのメーカが作る、USB接続型のオシロスコープ(オシロ)の名称。FRA機能があるモデルもある。2013年には技術雑誌に「高性能・高解像度・多機能PCオシロ」として紹介されている。最近は大手計測器メーカもラインアップを増やしているUSB計測器である。 PC接続型の計測器では、英国のPico Technology(ピコテクノロジー)が老舗だが、クレバースコープもキーサイト・テクノロジーなどの大手海外メーカがラインアップを揃える以前に発売されている。2024年には大手のエレクトロニクス雑誌に、CS328Aシリーズの広告がある。「FRA分析可能、高解像度・多機能、ミックスド・ドメイン、クレバースコープ」と記載されている。ミックスド・ドメインとはスペクトラムアナライザの機能があるということ(MDO)で、FRAだけでなく多機能であることをPRしている(当然、ロジアナ機能があるMSOでもある)。賢い(clever)オシロスコープ(scope)というネーミング。 オシロスコープの電源解析オプションを充実させているテクトロニクスは、オシロで電源のFRA分析をする手法を提案している(以下の参考記事が詳しい)。その意味では、クレバースコープは、ピコテクノロジーほどの豊富なラインアップはないが、オシロの雄、テクトロニクス同様に特長ある提案をしているといえる。 日本ではTUI Solutions(トゥイ・ソリューションズ)株式会社が輸入販売をしている。

グローブ温度計(ぐろーぶおんどけい)

直径15cm程度の黒いグローブ球の内部に温度センサーを設置した温度計。

クロスケーブル(くろすけーぶる)

(crossing cable)通信用ケーブルで、送信データの端子と受信データの端子を入れ替えて(ケーブルの中でクロスさせて)いるケーブル。端末同士をつないでデータ伝送を行う(たとえばPCとPCを直接つないでデータを転送する)ときに使う。30年前はRS-232C、今だとLANのクロスケーブルを使う。たとえば複数のPC(端末)がネットワークにつながっているとき、LANならHUB(ハブ)を介して各PCはつながる。この時のケーブルは通常のケーブルで、ケーブル片端の送信ピンは他端の送信ピンに、同様に送信ピンも同じくストレートにつながっている(なので、クロスケーブルに対して通常のケーブルをストレートケーブルとも呼ぶ)。ネットワークの接続では、端末は上位の機器とつながり、端末同士は直接つながらない。それを端末同士で通信するためにクロスケーブルがある。ICEとPCの接続も通常はクロスケーブルを使う。そのためICEのアクセサリには必ずクロスケーブルがあった(2000年代までのRS-232Cが主流の時代)。最近のLAN機器(PC、HUB、ルータなど)は自動判別機能があり、PC同士をストレートケーブルでつないでも動作するようになった。そのためクロスケーブルはあまり聞かなくなった。クロスケーブルは別名、リバースケーブルやクロスオーバーケーブルともいった。

クロススペクトル(くろすすぺくとる)

(cross spectrum) クロススペクトルは2つの信号のスペクトルの、ある周波数成分どうしを掛合わせたうえで平均したもの。クロススペクトルが、ある周波数で大きな値を示しているということは、その周波数においては2信号の周波数成分どうしの相関が大きい上に、両者の成分の大きさも大きいということを意味している。クロススペクトルは、相互相関関数、伝達関数、コヒーレンス関数の計算に用いられる。(小野測器の「FFT解析に関する基礎用語集」より。数式は小野測器HPを参照。) 参考記事:FFTアナライザの基礎と概要 (第1回)

CRONOS compact(くろのすこんぱくと)

CRONOSはドイツimc社のひずみデータロガーの名称。2002年発売で日本の鉄道車両(特に新幹線)の試験で使われたモデルCRONOS PLの、後継機種として2010年代に発売されたモデルがCRONOS compact。CRONOS PLは中止品で、CRONOS compactは現役(2022年12月現在)のため、鉄道車両の試験ではPLかcompactが使われる。ユーザはJR東海や鉄道車両メーカで、設備としての購入とレンタルが活用されている。 製品はメインフレームと測定モジュール(アンプ)で構成される。新幹線などの車両の試験には、32ch程度の入力ができる構成にしたCRONOSを1車両に1台乗せ、場合によっては数台をつないで同期させて試験を行う。32ch構成では概算価格は約1千万円になる、大変高額なデータロガーである。ユーザがレンタルを活用するのは、製品が高額でかつ、短期間に複数台が必要で、使用期間が事前にわかるので調達しやすいからである。携帯電話のメーカが日本に数多くあったガラケー時代に、無線機テスタやシグナリングテスタなどの数百万円~1千万円/台する高額な通信測定器が複数台、定期的に携帯電話メーカにレンタルされた。通信の専用器にはこのような事例があるが、データロガーは(一般的には)安価な低周波の基本測定器である。ところが運輸機器(特に飛行機、鉄道)向けの多チャンネルのひずみ測定には、高額な専用器であるひずみデータロガーが使われる(一般のデータロガーとは違うので筆者は特別に「ひずみデータロガー」と呼称している)。専用器というのは、ここで示した特別なアプリケーション以外には使わない、という意味である。たとえば1千万円のデータロガーで温度測定をすることはない。 CRONOSとよく似たひずみデータロガーにDEWETRON(デュートロン)やDEWEsoft(デューソフト)がある。JR東海がCRONOS PLを採用する以前に、新幹線車両を製造する日立製作所や日本車両などのメーカはCRONOSやDEWETRONを評価している。CRONOSよりDEWETRONが優れているという認識だった車両メーカもあったようだが、JRがCRONOSを設備導入後は、各車両メーカの試験機材はCRONOSに統一された。2000年代の早い時期に(JRより早く)CRONOS PLを使って実際の車両で試験をしたのは日立製作所といわれている。

CRONOS PL(くろのすぴーえる)

CRONOSはドイツimc社のひずみデータロガーの名称。CRONOS-PLは日本の鉄道車両の試験で使われているモデル。JRが新幹線の走行試験で多チャンネル(16~32ch)モデルを設備導入していて、民間の車両製造会社(川崎重工、日本車輌、日立製作所などの新幹線車両のメーカ)も同じ機材を試験で使用している(imc社の日本での販売は東陽テクニカ)。同様のひずみデータロガーとして自動車車体の試験にはDEWETRON(デユートロン)やDEWEsoft(デューソフト)が良く使われている。 CRONOS PLは2002年にリリースされ、2010年代に後継モデルCRONOS compact(コンパクト)が発売されている。メインフレームはPL-4、PL-8、PL-16がある(数字が大きいほどモジュール用のスロット数が多いので、測定できる入力chを多くできるが、寸法は大きくなる)。測定モジュール(アンプ)はSC2-32やBR-4などがある。たとえばバンドル形名CRONOS-PL-8(/BR-4x8/OFA/GPS/ONKL)は、アンプモジュールBR-4を8枚、メインフレームのPL-8に挿入し、OFAやGPS、ONKLというオプションが付いている(BR-4は入力2chなので、この構成は32ch入力になる)。SC2-32は32ch入力できるが、サイズが大きく4スロットを占有する。測定モジュールは仕様によって数種類あり、選択できる。 鉄道車両の試験ではPL-8にBR-4かSC2-32を装着して16~32chにする構成で使われた(概算価格で約1千万円程度になる、高額な多チャンネルデータロガーである)。ユーザは自社資産とレンタルを組合わせて上手に利用した。JR東海やJR東日本が新型の新幹線車両を継続して開発し、北陸新幹線などの整備新幹線が新設された2000年~2010年代に、JR及び各車両メーカはCRONOS PLで盛んに試験を行った。 imc(正式にはimc Test & Measurement GmbH)社はドイツのベルリンに本社がある、ひずみ計測を主体にしたメーカ。センサから計測器まで幅広いソリューションがあり、自動車の通信規格であるCANバスに対応したCANSAS(カンサス)などの製品もある。自動車は2~8ch程度のチャンネル数が少ないモデルも使われる(鉄道は16~32点/1車両で、数車両を測定するので、32chタイプのCRONOSを複数台同期させることもある)。 またimc社のデータ解析ソフトウェアFAMOSはバックエンドとしての波形解析に優れているので、ハードウェアとしてのデータロガーはCRONOS(つまりimc)を使わないが、解析用途ではFAMOS(つまりimc)を使っている技術者もいる。ひずみだけでなく振動などの物理量測定では、データ収集後の解析が重要で、DEWEsoftは元々、DEWETRONの解析ソフトウェアの名称である。ソフトウェアの世界では日本は弱く、欧米企業が世界標準になることはMicrosoftに限らず計測器業界も同じである。

群遅延(ぐんちえん)

(Group delay) 基本波と高調波からなる波形が回路素子を通過するときの遅延特性。群遅延というのは、「電気長L [m]の被測定物を周波数f [Hz]の信号が通過するのに、どれだけ時間がかかるか」を意味しており、位相θ[rad]を周波数f[Hz]で微分することにより求めることができる。