計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
計測・測定に関連する用語全般が収録されており、初めて計測器を扱う方でも分かりやすく解説しています。
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GPU(じーぴーゆー)

(Graphics Processing Unit) 画像処理を主に担うプロセッサのこと。3Dグラフィックスなどの画像描写を行うための計算処理を行う。「画像処理半導体」とも表現される。CPUとGPUを両方手掛ける米国の半導体デバイスメーカのAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイス)は、同じく米国の大手FPGAメーカ、Xilinx(ザイリンクス)を買収することを発表した(2020年10月)。2015年にはIntel(インテル)がAltera(アルテラ)を買収しているので、FPGAの大手2社がCPUメーカに吸収されることになった。米国NVIDIA(エヌビディア)も、2020年12月にイスラエルMellanox Technologies(ネットワーク分野で強いFPGAメーカ)を傘下に収めた。NVIDIAはGPUのNo.1半導体メーカである。 つまり、CPU、GPU、FPGAは現在の半導体デバイスの主力3製品群で、GPUに強いNVIDIAはFPGAやCPU(2020年にソフトバンクからARM社を買収することを表明したが、欧州での規制をクリアできず2022年に断念)を強化しようとしている。CPUに強いIntelやAMDはFPGAに参入して半導体市場でNo.1になろうとしている。

CVD(しーぶいでぃー)

(Chemical Vapor Deposition )化学気相蒸着。半導体などをガスにして、加熱した基板上に堆積させて薄膜を形成する技術。 現在のICなどの半導体の製造にはほとんどこの手法が使われている。CVDとホトレジストによって各種の材料を何階層も重ねて複雑な回路を形成する。

System-on-a-Chip(しすてむおんちっぷ)

1つの半導体チップ上に、CPU、メモリ、I/Oその他が実装され、コンピュータシステムの動作に必要な機能がすべて組み込まれたLSI。マイクロコントローラ(MPU/CPU)に周辺のICの機能も集積したチップ、またはそのような設計手法を指している。 略記SoCの読み方は「えすおーしー」(または「しすてむおんちっぷ」)だが、「そっく」と解説している文献もある。今では「そっく」だとセキュリティー用語のSOC(Security Operation Center )を指していることが多い。

シリコンサイクル(しりこんさいくる)

半導体業界の市況が、活況と不況を数年ごとに繰り返してきたことからこう呼ばれる。BBレシオ(出荷額Billingに対する受注額Bookingの割合で、市況の需給関係を表す指標)がまるで正弦波のように変動した。在庫の品不足と過多が繰り返したが、各デバイスメーカもユーザである装置メーカも、このサイクルを正確に読むことが半導体市場では大変難しい。コロナ禍で巣ごもり需要が増加し、ルネサスの工場の火災事故なども重なり、2020年から2021年には半導体の世界的な不足が起こっている。スマートフォンだけでなく自動車(EVなどの電動化)需要も半導体不足を招いている。半導体は計測と大変関係深い業界の為、シリコンサイクルと計測器の販売額も無関係ではない。

SPICEシミュレータ(すぱいすしみゅれーた)

SPICEは1970年頃に米国カリフォルニア大学バークレー校で、ICの設計検証を目的として開発された回路シミュレーション・プログラム(電子回路シミュレータ)。Simulation Program with Integrated Circuit Emphasisの略で、「集積回路に重点をおいたシミュレーション・プログラム」という意味。SPICEはソースコードが公開されているため、1980年代後半には各種の改良が加えられた商用SPICEが複数のベンダから発売され始めた(Spiceシミュレータと呼ばれる)。パソコン用に商用化されたのがPSpice(ピースパイス)で、米国の半導体開発用ソフトウェア(EDA)企業であるケイデンス社などがつくっている。LTspice(エルティースパイス)はAnalog Devices(アナログ・デバイセズ)社が開発したSpiceシミュレータで、スイッチング・レギュレータのシミュレーションでは通常のSpiceシミュレータより高速といわれている。リニアテクノロジー社にはLTspiceⅣ(エルティースパイス4)というモデルがある。アナログ・デバイセズやリニアテクノロジーというアナログ半導体メーカがつくっているということは、「SPICE(Spice)は、電子回路のアナログ動作をシミュレーションするソフトウェア」といえる。 趣味の電子工作の月刊誌「トランジスタ技術」の2021年10月号の見出しは「無償PSpice・LTspice回路動作フル解析ツール」である。

SOP(そっぷ)

(Small Outline Package )多ピン半導体の形状の1つ。平たい長方形の2つの長辺に外部入出力用のL字型のピンを並べている。表面実装用のパッケージの1つ。

ソニー・テクトロニクス(そにーてくとろにくす)

(Sony/Tektronix Corporation) テクトロニクス(Tektronix, Inc.)は米国オレゴン州に本社がある、1946年設立の老舗計測器メーカ。オシロスコープ(オシロ)では長らく世界No.1である。1965年にソニーと出資比率50対50の合弁で設立した日本法人がソニー・テクトロニクス株式会社(2002年に合弁解消したので、37年間の会社名)。hp(ヒューレット・パッカード、現キーサイト・テクノロジー)は1963年に横河電機と合弁でYHP(横河ヒューレットパッカード)をつくっている(1998年合弁解消)。高度経済成長の時代(1955年頃~1973年頃)、電子計測器は産業のマザーツールとして最先端のハイテク機器だった。そのため、松下電器は松下通信工業、日立製作所は日立電子、日本電気は安藤電気、など国内の大手電機・通信機器メーカは系列に計測器メーカがあった。電機メーカと計測器メーカは深い関係だった。Tektronixとソニーは同様に戦後すぐの 1946年に設立し、技術優先の思想や商品の独自性という共通する風土があったといわれる。 Tektronixは1946年に世界初のトリガ式オシロスコープ(オシロ)を発明したといわれる(※)。オシロとビデオ関連測定器(TVなどの映像用の信号発生器や波形モニタなど)を多くラインアップした。ソニー・テクトロニクスは1975年に御殿場工場を竣工し、国内で開発・製造を行った。つまり単なる販売店ではなく、AFGなどの信号発生器の事業部(開発部門)が日本にあった時期もある。 2002年に(ソニーとの合弁を解消し)日本テクトロニクスに社名変更。2007年にTektronixが米国の投資会社ダナハー(danaher)の傘下になり、2011年に日本テクトロニクスは(同じくダナハー傘下の)株式会社フルークと合併し、株式会社TFFのテクトロニクス社になる(2016年にダナハーからフォーティブが独立し、現在のTektronixはフォーティブ傘下)。 2012年にはケースレーインスツルメンツ株式会社(データロガーや半導体パラメータアナライザで有名なKEITHLEYの日本法人)と合弁し、会社名は「テクトロニクス社/ケースレーインスツルメンツ社」になる。2019年にTektronixはビデオ事業部をTelestream社に売却して、テレビ・オーディオ測定器から撤退。 2021年には会社名を「株式会社テクトロニクス&フルーク」に変更。Flukeはハンドヘルドのオシロをつくっているが、Tektronixはハンドヘルドの絶縁型オシロのモデルチェンジ(新製品の発売)をしていない。このことは、重複するモデルの調整を2社は行っていることを意味するか否かは不明。日本のケースレーはすでにテクトロニクスと組織が一体になっているが(以下の展示会レポートを参照)、フルークとの融合も今後進むと思われる(2023年4月現在)。 1980年代後半に、オシロをつくっていない大手計測器メーカ(hp、レクロイ、横河電機など)が、“高機能なデジタル化”を切り口にオシロ市場に新規参入しTektronixと競合しているが、いまでもTektronixは世界的なNo.1オシロメーカとして、時代にマッチする新製品を発売し続けている。当サイトが2023年1月に行った読者アンケートでは「使ったことがあるオシロのメーカ」、「好きなオシロメーカ」ともにTektronixがトップである。みんなの投票 第2弾 結果発表 (※)1931年に米国のGeneral Radio社が強制同期式オシロスコープを開発した、など諸説あるので、Tektronix以外に歴史に埋もれた世界初のメーカがあるかもしれない。詳しくは以下記事の「オシロスコープの歴史」を参照されたい。 デジタルオシロスコープの基礎と概要 (第1回)

ソリッドステート(そりっどすてーと)

(solid state)トランジスタに代表される、現在の半導体素子のこと。トランジスタ以前の代表的な電子部品である真空管に対して使われることば。真空管は管の中の空間で電気信号を制御するが、現在の半導体はトランジスタを筆頭に固体の中で電子を制御する。solid stateとは「固体の状態」ということで、元々はこの後に色々な単語が続いたが、略されて「ソリッドステート」と呼称される。半導体を象徴することばである。

ダイオード(だいおーど)

(diode)電流を一方向にしか流さない電子部品。トランジスタなどと同じソリッドステートの能動素子。整流に使われる。ダイオードを4個使い、ブリッジにるすと、プラスとマイナスの方向がある交流をプラスだけの波形にできる。全波整流した波形は、コンデンサを使うと波形の変動が滑らかになり、より直流に近づく。このようにダイオードを使った整流器はAC-DCコンバータになる。

ダイヤモンド半導体(だいやもんどはんどうたい)

(diamond semiconductor) 人工ダイヤモンド(合成ダイヤモンド)を使った半導体。パワー半導体として普及し始めたSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)、UWBG(酸化ガリウム)に比べて、放熱性、耐電圧性が優れているため、次の世代のパワーデバイスとして実用化が進められている。ダイヤモンドは炭素原子が強固に結合しているため、放射線を浴びても現在主流の半導体(シリコン)のように損傷することがないので、人口衛星などへの採用も期待されている。宇宙空間では石(ソリッドステート)ではなくいまだに球(真空管)を使っているので、ダイヤモンド半導体によって小型化、省エネ化が実現する。小型で大電力を扱えることだけでなく、発熱量が少ないので処理速度を高速化できる。Beyond 5Gや6Gでのダイヤモンド半導体の導入も視野に入っている。 シリコンに代わる材料(元素)として人工ダイヤモンド(炭素)を使った半導体は米国と日本で研究されてきた。特に日本は1990年代からメーカや大学などで研究されてきた。ダイヤモンドはそのままでは絶縁体で、他の物質を混ぜないと半導体にはならないが、どんな分子を吸着させると良いかわからなかった。ダイヤモンドを空気中に晒しておくと電気が流れることが知られていた(特に朝と夕方に顕著だった)。その理由は自動車などの排気ガス(二酸化窒素)であることが近年、佐賀大学の研究で明らかになった。また、ダイヤモンドの基板は大変小さいサイズだったが、4mm角の基板作成に成功し、二酸化窒素を吸着させて半導体を作り、従来より大きな電流を流すことに成功した。成果は論文として世界中に知られ、ダイヤモンド半導体の実用化が前進した。まだ課題はあるが、数年後には実用化できる見込みも示されている。 ダイヤモンド半導体は従来のシリコンのものより、理論的には約20倍の電流が流せるといわれているため、SiCなどより性能が良い。(現在は)中国ではなく日本がリードしている半導体の分野である。別名:ダイヤ半導体とも呼称される。

タケダ理研工業(たけだりけんこうぎょう)

1954~1985年に存在した老舗計測器メーカ。1954年に武田郁夫(当時30歳)が「タケダ理研工業株式会社」を創業。通信省電気試験所に勤務していた武田氏は、大手電機メーカが出がけない計測の分野に着目し、研究開発型ベンチャー企業を設立した。1960年代までに周波数カウンタやデジタルマルチメータ(DMM)など、現在では基本測定器と呼ばれる製品を開発した。同社の企業ロゴはタケダのTと理研のRをデザインした「TR」で、計測器の形名の頭もTRだった。TR5211、TR5151などのカウンタの中古品はいまだにネットに出展されている(つまり市場に多く出回った売れたモデルである)。同社のDC~低周波のラインアップはブリッジなどを早くから手掛けたYEW(現横河計測)と競合している。汎用計測器(基本測定器)ではタケダ理研と横河電機はコンペチタだった。 1970年代にはRF分野のスペクトラムアナライザ(スペアナ)や、半導体製造装置のメモリ・テスト・システム、光通信測定器を開発した。日本のデバイスメーカがメモリ(DRAM)で世界シェアを独占するのに伴い、同社のメモリテスタは世界一になっていった。1976年に富士通の資本参加があり、1985年に社名をアドバンテストに変更。創業からのタケダの名前は消えた。 1990年代の携帯電話の普及期にはローデ&シュワルツの代理店としてCMUシリーズ無線機テスタなどを販売した。アンリツや安藤電気のような電電ファミリー(NTTに光通信計測器を納めるメーカ)ではないが、光ファイバの評価測定器を開発してOPMなどの光通信計測器に参入し、「光の3A(スリーエー、アンリツ、安藤電気、アドバンテストの頭文字がいずれもAのため)」と呼ばれた。2003年にはRF(高周波)以外の機種群を株式会社エーディーシーに移管し、後に高周波のモデル(スペアナやネットワークアナライザ)もやめて計測器から撤退した。 1970年頃から埼玉県行田に主力工場があり、東京都大田区蒲田に本社があるNEC系列の半導体テスタメーカの安藤電気とは、1980年頃には競合だった。1982年に安藤電気に入社した営業マンで、タケダ理研に入社希望で訪問したが、「文系の学生は応募していない(つまり営業職も全員、理工系で採用する)」と断られ、競合を聞いて安藤電気に入社した人がいる。アドバンテストはタケダ理研創業の計測器から撤退したが、2015年に無線式の温度ロガー(AirLogger)を発売するなど、新規事業としてあらたに計測関連製品を模索している。 タケダ理研は、戦後の1950年代に創業したベンチャー計測器メーカが、計測器を別会社に移管して成長した例である。横河電機もコアビジネスではなくなった計測器を別会社(横河計測株式会社)に分離している。アドバンテストは半導体テスタの、横河電機は計装(プロセス)の世界的なメーカである。 タケダ理研で使われる用語の例:デジボル、DVM、VIG

チャンバ(ちゃんば)

(chamber) 小さな部屋、空間のこと。たとえば環境試験器では試験槽をチャンバということがある。「環境試験チャンバ」という呼称もされている。チャンバは広い業界で使われる。たとえば半導体製造装置でも使われている。CVD装置などでは「化学反応、物理反応を起こさせるための密封された容器」をチャンバと呼称している。 thermostatic chamberを日本語にすると「温度が静的なチャンバ」で、恒温槽のことである。この場合、チャンバは「大きな容器」、「おけ」という意味で使われている。 文化庁による「外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第3版(「平成3年6月28日 内閣告示第二号『外来語の表記』」)では、「英語の語尾の-er、-or、-arなどは、原則として長音とし長音符号「ー」を用いる」とある。それに従えば「チャンバー」だが、技術用語を規定しているJISでは、2文字までは末尾を伸ばすが(たとえば自動車の「カー」)、3文字からは伸ばさない(モータ、センサ、など)とある。巷では「チャンバー」が多いが、本稿ではJISに従い「チャンバ」にしている。 計測器の名称も「マルチメータ―」ではなく「マルチメータ」が、技術用語としては適切な表記といえるが、メーカー、エネルギーなど統一されてはいない。レーザーは、業界団体(社団法人や学会など)が「レーザー」と「レーザ」の両方を使っていてまったく統一されていない。光ファイバも「ファイバー」という表記が大変多い。

TSMC(てぃーえすえむしー)

Taiwan Semiconductor Manufacturing Company, Ltd.の略称。世界最大の半導体受託製造企業(ファウンドリ)。1987年に設立された世界初の半導体専業ファウンドリ。単なる半導体メーカの下請けではなく、最先端の製造技術を持ち、半導体メーカが設計した最先端のデバイスを製造できる世界No.1企業。インテルなどの世界の名だたるデバイスメーカが製造を委託している。アメリカのバイデン政権は半導体サプライチェーン構築のため、米国アリゾナ州フェニックスにTSMCの工場(12インチウェーハ)を建設することを2020年に発表した。日本でも九州(熊本県)への誘致に成功し、2024年には工場が稼働予定。

DMA(でぃーえむえー)

(Direct Memory Access)CPUの周辺デバイス間でデータを転送する際、CPUを介さずに、周辺デバイス間で直接アクセスするやり方のこと。「ダイレクトメモリアクセス」と呼ばれたり、DMAと表記される。キャッシュメモリやパイプライン処理と同じく、CPUの動作を高速化させる手法の1つ。参考記事:「車載マイクロコンピュータの基礎~車載システムを支える頭脳」マイクロコンピュータの高速化技術の章に、DMAの図解がある。

DDR(でぃーでぃーあーる)

(Double Data Rate) 半導体メモリの代表であるDRAM(Dynamic Random Access Memory)の規格。PCに使われるSDRAM(Synchronous DRAM)にはDDR3やDDR4などの規格があり、両者に互換性は無い(DDR3は240ピン、DDR4は288ピン)。半導体やバス通信の規格試験ができるGHz(ギガヘルツ)帯の広帯域オシロスコープ(高速オシロと呼称)には、DDR評価用のソフトウェアオプションがある。

DRAM(でぃーらむ)

(Dynamic Random Access Memory) 半導体メモリの代表的な1つ。比較されるもう1つの代表が「NAND型フラッシュメモリ」。DRAMのメーカは世界に数社しかなく、特に次の3社で寡占状態と言われる。韓国のSamsung(サムスン)とSK Hynix(ハイニックス)、米国のMicron(マイクロン)。 半導体メモリには「揮発性」と「不揮発性」の2種類がありる。揮発性とは電気が通っている(PCで電源をONにしているとき)だけ、データを記録できる。不揮発性とは電気が通っていないときでも(電源をOFFにしても)データを保管している。前者の代表がRAM(ラム)で、後者はROM(Read Only Memory、ロム)やフラッシュメモリ。RAMはPC内でOSが作業をするワークスペースや、データの一時保存に使われる。ROMはRAMのように書いたり読んだりできず、一度記録したデータを読むだけで、フラッシュメモリは記憶装置(ストレージ)に使われる。DRAMは通電中でも定期的にデータの書き直し(リフレッシュ)が必要だが、トランジスタとコンデンサ1組で1ビットを記憶するというシンプルな構造のため、コンピュータの主記憶装置に採用されている。リフレッシュの不要なSRAM(Static RAM)もある。 DRAMの規格はDDR(Double Data Rate)と呼ばれ、読み書きの速度などが規定されている。最新規格は第4世代のDDR4で、最速のDDR規格として2014年頃から使われている。通信規格などのコンプライアンス試験ができるアナライザであるGHz帯域の広帯域オシロスコープ(高速オシロ)には、DDR評価用のソフトウェアオプションがテクトロニクスやキーサイト・テクノロジーなど各社から販売されている。 半導体メモリは半導体デバイスの代表で、その売上規模は市況を左右している。世界的な半導体テスタメーカであるアドバンテストは1970年代にメモリテスタやLSIテスタを開発し、1980年代、1990年代の半導体の進歩(大容量、高速化)に伴い、半導体テスタも追従して高速化させた。メモリテスタが優れていた同社は、半導体メモリの規模拡大(普及)と共に世界No.1の半導体テスタメーカになった。 半導体は需要と供給の関係から数年おきに売上額が大きく変動してきた(シリコンサイクル)。半導体メモリも2008年から2009年のリーマンショック時期に売上が激減(前年比約40%減)し、2022年からは5回目の波の底にある。DRAMの3メーカは寡占によって波の底を乗り越えてきたが、エルピーダメモリ(※)が経営破綻したように、赤字から会社消滅になることもある。半導体メモリは脚光を浴びてはいるが決して安定した事業ではない。 (※)エルピーダメモリ(Elpida Memory,Inc.)は1999年に日立製作所と日本電気のDRAM事業を統合して設立。2000年にElpis(ギリシャ語で希望)から「エルピーダ」に社名変更。当時は国産で唯一のDRAM専業として、世界シェアは韓国のサムスン電子、ハイニックスに次ぐ3位だった。2003年には三菱電機のDRAM事業を吸収するなど注目されたが、設備投資が負担となり上位2社に追いつけず2012年に経営破綻した。4位のMicron Technology(マイクロン・テクノロジー)に売却され、マイクロンは世界3位となった。 半導体の歴史を書いた「CHIP WAR(チップ・ウォー)」が2022年秋に米国で出版された(著者は1987年米国生まれの経済史家)。半導体は戦略物資として国家間で攻防が繰り広げられた様が描かれている。2023年春には翻訳されて「半導体戦争」が出版され、日本のデバイスメーカが世界市場から転落した顛末が(米国視点ではあるが)よくわかる。1980年代、日本の半導体デバイスは世界を席巻していた。DRAMで世界No.1だった米国メーカは1986年には日立、東芝、日本電気などに追い抜かれ、日本メーカがDRAM市場を独占した。日米半導体摩擦が起き、米国は韓国のサムスン電子を支援して育成し、日本企業の独占を阻止した。それ以降も同様に、オランダのASMLを支援して露光装置に強い日本企業を排除している(EUV)。 ただし、2010年代後半頃から米国は中国を排除する方向に方針転換した。米国の構築する半導体サプライチェーンでは、日本も重要な位置づけになったことが、2022年のRapidus(ラピダス)設立につながっている。Rapidusは国産半導体デバイスの復権をかけて、2027年に2nm半導体の量産開始を目指すが、前途は容易ではない。

DIP(でぃっぷ)

(Dual In-line Package) 多ピン半導体の形状の1つ。平たい長方形の両長辺に外部入出力用のピンを下向きに並べた形状をしている。現在もっとも普及している半導体パッケージの形状。 この形(外観)を真似た電子部品のDIP(ディップ)スイッチは多チェンネルの小型スイッチとして、電子機器に良く使われている。電子部品を使う回路設計の技術者の間では違和感なく「DIPスイッチ」は受け入れられているので、DIPという表現は半導体専門の用語ではなく幅広いといえる。

データバス(でーたばす)

(data bus)CPUが命令語をフェッチする際や、データをアクセスする際に使う一塊の信号線を示す。データバスのビット数は、一度に転送できるデータの量を表すものである。CPUのデータバスのビット数が多いほど性能が高いCPUだと言える。近年、マルチメディア系のデータ処理用CPUは128ビットか、それ以上のデータバス幅を持ち、高性能化を図っている。(株式会社Sohwa&Sophia Technologiesの用語集より)参考用語:バス

テキサス・インスツルメンツ(てきさすいんすつるめんつ)

(Texas Instruments Inc.) 1950年に世界初のシリコン型トランジスタを製品化した老舗半導体デバイスメーカ。インテル、フェアチャイルドなどと半導体黎明期に名を馳せた。本社は米国 テキサス州ダラス。業界ではTIの略称で呼ばれる。1958年にTIの研究者ジャック・キルビーが発明したICは基本特許になっている。1980年代に日本の半導体デバイスメーカはキルビー特許で訴訟になった(日米半導体摩擦の時代の話)。 同社ホームページには「TIの事業:アナログチップと組込みプロセッシングチップの設計、製造、テスト、販売」とある。つまり、いまは創業時のような業態ではない。アナログ半導体ではアナログ・デバイセズが競合で、組込みマイコンの関連製品としてICEをつくっていた(現在はICEではなく回路設計ツール)。DSPもラインアップしている。(以下の計測器情報には、TIのDPSのICEの製品例がある。) TSMCの創設者、モリス・チャン(Morris Chang、張忠謀)は1960年頃に当時急成長していたTIに就職し、エンジニアリング部門のマネージャをしている。2023年に米国で発行され話題となり、日本でも翻訳されたChip War(半導体戦争)にはTIの元会長パトリック・ハガティや、露光の工程を開発したTIの技術者ジェイ・ラスロップなどが登場する。 TIは2000年9月にバーブラウン社(米国)を買収、2011年9月にナショナル セミコンダクター社(米国、略称:ナショセミ)を合併(※)。両社ともにアナログ半導体メーカで、アナログ・デバイセズ同様にTIもM&Aでこの分野を強化した。現在のアナログ半導体は、アナログ・デバイセズとTIが大手2社である。 米国の市場調査会社Gartnerは2024年1月に「2023年の世界半導体メーカ別売上ランキング」を発表した。TIは10位で、トップ10に入るデバイスメーカである(アナログ・デバイセズはトップ10外)。 (※)技術者のRobert Page Burr(ロバート・ページ・バー)とThomas R. Brown Jr.(トーマス・R・ブラウンJr.)は1956年にBurr-Brown社を設立。オーディオがアナログからデジタルになると性能の良いADコンバータを開発し、デジタルオーディオの先駆者といわれる。National Semiconductor社も技術者(8人)が1959年に創業。両社ともにアナログ半導体をラインアップし、1980~1990年代に筆者の回りにいた電子回路設計者は2社の半導体データブックを見て電子部品を選んでいた。余談だが、筆者の友人(電気工学専攻)はNational Semiconductorを「松下電器の半導体」と思っていた。確かに「ナショナルの半導体」は松下電器の半導体部門に思える。nationalは「国家の」、「国民の」という意味である。

Teradyne(てらだいん)

Teradyne,Inc.は1960年に米国、ボストンで設立した半導体テスタやインサーキットテスタのメーカ。それまで手作業だった電子部品の検査を自動化した。1966年にコンピュータを搭載した自動検査装置(ATE)を世界初で製品化した、半導体テスタの草分け。半導体テスタは当時の最先端の電気計測器(試験装置)で、1980年代には国産の計測器メーカ(ミナトエレクトロニクス、タケダ理研工業、安藤電気など)もラインアップした(1990年代には日立電子や横河電機も参入している)。日本の電気計測器メーカは1970年代にテラダインの半導体テスタを研究(模倣)して、自社の半導体テスタ製品をつくったといわれるほどである。社名の由来は、大変大きな力を意味する、テラ(10の12乗)ダイン(=10メガニュートン)といわれる。 日本にはテラダイン株式会社・熊本事業所があり、イメージセンサやマイコン用ATEの開発から販売までを行っている。熊本県は日本のシリコンバレーといわれるくらい半導体の工場が多い(ソニーセミコン、TSMCなど)。 Teledyne Technologies(テレダイン・テクノロジーズ)は、ミドルクラスからハイエンドまで豊富なオシロスコープのラインアップで世界3位のオシロメーカといわれるレクロイ(現Teledyne Lecroy、テレダイン・レクロイ)を傘下にもつ、米国のコングロマリットである。テラダイン(teradyne)は半導体テスタ、テレダイン(teledyne)はオシロスコープ。1字違いで良く似た会社名である。