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- MIPI(みぴー)
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(Mobile Industry Processor Interface) モバイルデバイス(やモバイル機器)向けのインタフェース規格。カメラやディスプレイに採用されている。日本語に訳すと「モバイル業界のプロセッサのインタフェース」。つまり、「モバイル機器に内蔵されるプロセッサのインタフェースを規定した規格」である。ただし2020年にA-PHY(後述)を発表したことで当初の家電・コンピュータ製品の範疇を越える規格にMIPIはなった。 Intel(インテル)、Motorola(モトローラ)、Nokia(ノキア)、Samsung(サムスン)、TI(テキサス・インスツルメンツ)、ST(STマイクロエレクトロニクス)などのモバイル業界のリーディングカンパニーによって2003年にMIPI Allianceが設立され、2008年に規格が策定された。規格化によって設計を簡素化し、普及を促進することを目的にしている。USBやLVDS(エルブィディーエス)、SATA(サタ)などの、他の高速なシリアル通信の規格に比べて知名度は低い(機器内部のデータ転送規格のためと思われる)。 通信方式は平衡(差動)。物理層(レイヤ1)に複数の規格があり、PHY(ファイ)シリーズと呼ばれている。たとえばD-PHY(ディーファイ、最大1.0Gbps/1レーン)、M-PHY(エムファイ、最大6Gbps/1レーン)。PHYはphysical layer(物理層)の略記で、頭のアルファベット1文字で種類を区分。当初はアルファベットの後の方が高性能な規格になっていたようである。シリアルI/Fの1種だが、HDMIやDisplayPortと同類の映像規格ともいえる。読み方は「ミッピー」と表記している例をみかけるが、会話では「ミピー」と発音されている(聞こえる)。 MIPI用の計測器としてはバスアナライザなどのプロトコルアナライザがあるが、オシロスコープのオプションで解析ソフトウエアがあるモデルもある。キーサイト・テクノロジーは2010年頃にはロジックアナライザでMIPI信号の解析をしていたので、広義にはロジックアナライザの用語でもある。 2024年現在は以下の4つの物理層の規格がある。 ・M-PHY:高性能カメラやメモリ、チップ間アプリケーションの、性能重視の双方向パケット通信やネットワークで使われる。 ・D-PHY:カメラやディスプレイ側に適用され、低速の単方向ストリーミングに使われる(2008年当初はそうだったが、後にアップグレードしている、後述のC-PHYを参照)。 ・C-PHY:D-PHYと同様にカメラやディスプレイ側に適用されるが、クロック方式や送信振幅がD-PHYと異なる。D-PHYは当初の1Gbpsから4.5Gbpsにアップグレードされ(Ver2.0)、C-PHYと似た仕様になっていて、用途の使い分けがはっきりしない。2024年現在、イメージセンサ(CMOS)のトップベンダであるSONYが両方を採用しているため、C-PHYとD-PHYが併存している。 ・A-PHY(エーファイ):ADAS(エーダス、先進運転支援システム)やADS(自動運転システム)、カーナビ、カメラなど、幅広い自動車アプリケーションへの適用が期待される規格(範囲は車載には限らない)。高速単方向データや埋め込み双方向制御データなど、電力供給を1本のケーブルで提供できる。他のMIPI規格に比べて最近(2020年9月)、規格ができた。MIPIはA-PHYによって、モバイルではなく自動車に用途が広がった。スマートフォン搭載カメラの高解像度要求に応えてきたMIPIは、高解像度対応センサの種類が豊富である。近年、モバイル用途以外の組み込みカメラシステムでも高解像度化要求が高まってきたことで、MIPIは車載を主要な用途としてA-PHYを策定した。ただし車載の映像I/FにはGMSLやGVIFなど先行する規格があり、A-PHYがどれだけ普及するかはこれから(未知数)である。 MIPIは2008年にM-PHY(最高伝送速度6Gbps)とD-PHY(1Gbps)を発表したが、デバイスの進歩にD-PHYの性能が劣るようになり、後にC-PHY(6Gbps)を発表する。しかし、D-PHYもアップグレードされD-PHY ver3.0(9Gbps)になった。当初の発番法則はD、Mとアルファベットが後になるほど高性能だった。規格の名称は後ろのアルファベットから発番していて、A-PHYが2020年に作成され、モバイルから自動車まで対応する規格になった。Aを使ってしまったので、今後の新規格の名称が何になるかわからない。 小さな数字ほど性能が高く、大きな数字の製品から発売開始したのがNECのコンピュータである。PC9800シリーズは1980年代から国内トップシェアだったパソコン(Windows以前のMS-DOS時代まで)だが、1990年頃にはEWS4800シリーズ(エンジニアリング・ワークステーション)が発売される。また1990年代にExpressサーバ5800シリ―ズ(PCサーバ)が発売される。PC、サーバ、ワークステーションの順番に高性能で、名称の番号は9800、5800、4800と小さな数字になっている。性能(コンピュータ製品の中での位置づけ、ポートフォリオ)と通称の数字の順番(大きさ)に法則性があり、統一感のある美しい発番である。PC9800とEWS4800の後にExpress5800が発売されたときに、メーカ側から何の説明を受けなくても「Expressサーバ5800はPCよりも高性能だがワークステーションほどの性能は無い」、というポートフォリオがその番号から瞬時に理解できる。筆者はこのような発番体系を美しいと感じる。MIPI A-PHYの次の規格が大変気になるところである。
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