計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
計測・測定に関連する用語全般が収録されており、初めて計測器を扱う方でも分かりやすく解説しています。
フリーワード検索をはじめ、カテゴリー、索引から簡単にお調べいただけます。

フリーワード検索

検索用語一覧

17

各用語の詳細ページでは関連用語などを確認することができます。
このアイコンが表示されている用語には、詳細ページに図解や数式での説明があります。

バースト信号(ばーすとしんごう)

(burst signal) ある間隔を置いて送出される信号のこと。信号が存在する領域と存在しない領域が時間領域で繰り返される信号を指す。時間領域のごく一部にのみに正弦波、方形波、三角波などの信号が存在し、それ以外の領域には信号が存在しない場合もバースト信号と呼ばれる。 テレビ放送で、映像信号からカラー信号を正しく復調し再現するための基準となる信号として使われている。カラーバースト信号(色同期信号)の周波数は、アナログ放送では3.58MHzである。 burstには「張り裂ける、切れる、沸き起こる、爆発する」などの意味がある。時間領域の一部にのみ信号のエネルギーが集中している → 爆発している、という表現である。バースト信号とは反対に連続している信号をCW(連続波)と呼ぶ。時間領域の波形観測が主眼であるオシロスコープの説明書には「バースト信号の測定は・・」や「パルスバースト(時間が空いて出現したパルス列)」というような表現(解説)がでてくる。 IEC61000-4-4のイミュニティ試験で使われるバーストノイズシミュレータ(障害試験器)は、バーストノイズを発生する。一番上の値が最も時間が短いインパルス状の波形を、短い時間(たとえば1msの間)に100回だしたら、何も波形がない時間を挟んで、繰り返し(たとえば300ms周期で)バースト波形の列を発生させる、これをバーストノイズと呼ぶ。信号がある時とない時があるのでバーストである。バースト信号をノイズとしてEMC(電磁感受性/電磁妨害耐量)の試験をしている例である。メーカは国産のノイズ研究所が有名。

バートウェーブ(ばーとうぇーぶ)

(BERTWave) アンリツのMP2100シリーズ、MP2110シリーズの品名。BERT(バート)にオシロスコープ機能を盛り込んだ製品で、アイパターンとBERの両方の測定が1台でできる。 デジタル伝送の品質評価は、オシロスコープで時間波形を表示してアイパターンを確認することと、BERT(パルス・パターン・ジェネレータと検出器の組み合わせによるビット誤り率測定)の2つで行われる。PCI Express (PCIe)のような高速データ通信ではオシロスコープ(アイパターン測定)とBERT(BER測)が規格試験(コンプライアンステスト)で規定されている(以下のテクトロニクス記事に例がある)。アンリツはBERTの世界No.1ベンダである。 BERTのトップメーカである同社が、「BERTでアイパターン測定もできたら1台で済む」、と開発したのが「オシロ機能のあるBERT」のBERTWave(バートウェーブ)である。初号器のMP2100Aは大画面にアイパターンを表示して、製品の外観は最近主流の大画面オシロスコープのよう(オシロスコープのように操作部はなく、コネクタと表示部しかない)。MP2100シリーズは、MP2100B、MP2101AバートウェーブPE、MP2102AバートウェーブSSなどがあったが、2017年に後継のMP2110Aが発売された。MP2100よりも小型で、外部のモニタに表示させるため、本体に表示部はない(外観はコネクタが並ぶ箱)。2019年3月には「4チャンネルのサンプリングオシロスコープを搭載できるオプション」を発売、2021年7月にはサンプリングオシロスコープの機能を強化し、PAM4の評価に必要な機能を追加するシグナルプロセッシングソフトウェア(オプション098)を開発した。業界ニュースとして「MP2110AサンプリングオシロスコープのPAM4評価機能を強化」と報じたメディアもあった(MP2110AをBERTではなくオシロ、と表現している!)。 BERTは1990年代まではPPGとED(Error Detector、エラー検出器)の2筐体で、サイズも大きなベンチトップで、もっぱらBERTS(バーツ、Bit Error Rate Test Sets)と呼ばれたが、技術革新によってPPGとEDは小型になり、モジュール化され1筐体で可搬型になった。当時のアイパターン測定はリアルタイムオシロスコープよりも帯域が広いサンプリングオシロスコープで行われた(キーサイト・テクノロジーのDCAなど)。ところが2000年代後半からリアルタイムオシロスコープの周波数帯域が広くなり、2010年代には数10GHzモデルが登場する(広帯域オシロスコープと呼称)。アイパターン測定はGHz帯域のリアルタイムオシロスコープで行われるようになり、サンプリングオシロの需要は減少した。 キーサイト・テクノロジーは2018年に周波数帯域110GHzの世界最速のオシロスコープを発表する(以下のキーサイト・ワールド 2018が詳しい)。同社はアンリツに次ぐBERTメーカである。2023年の自社イベントでは「64Gbaud(ボー)を超えるPAM4信号のBER測定は、同社の広帯域オシロスコープを使い、取得した波形から誤り率を算出する方法で120Gbaudまで対応できる」と提案した。送受信で64Gbaud超のPAM4をリアルタイムに評価できるBERTはまだ存在しない(アンリツも実現できていない)ので、オシロスコープがBERTの代わりになる(以下のKeysight World 2023年の記事が詳しい)。アンリツのBERTWaveと全く逆のアプローチである。 2000年代以降に広帯域なリアルタイムオシロスコープが登場し、BERTもラインアップするキーサイト・テクノロジーはオシロスコープでBER測定するソリューションを提案した。BERTメーカのアンリツはBERTにサンプリングオシロスコープ機能を搭載して、BERTでアイパターン測定ができるモデルBERTWaveを開発した。いまやBERTとオシロスコープが競合する時代となった。 広帯域オシロスコープでキーサイトと競っているテクトロニクスはBERTをラインアップしていない。2023年のテクトロニクス・イノベーション・フォーラムでは、BERTやオシロスコープとは全く違う手法によるPCIeの評価手法を提案している。リンク・トレーニングによるマージン・テスタTMT4である(以下の記事が詳しい)。高速デジタル通信の品質評価のアプローチは、3社ともに特長がでている。

ハイレゾ(はいれぞ)

オシロスコープのアクイジションモード(信号の捕捉モード)の1つ。High Resolutionの略でハイレゾと呼ばれる。信号のノイズを除去して波形を表示する有効なモードの1つ。

波形重ね書き(はけいかさねがき)

オシロスコープには「波形の重ね書き機能」がある。信号波形の1周期の長さ(波長)にはばらつきがある。1周期が10nsの信号の精度が0.01%だった場合、9.999ns~10.001nsの範囲になる。1周期の波形をオシロスコープの画面いっぱいに表示させて重ね書きすると、立ち上がりや立ち下がりのスロープが同じではないために、塗りつぶされた波形は太さを持った線になり、信号のばらつき具合が一目でわかる。周期のずれ(時間のゆらぎ)をジッタ、1周期の重ね書き波形をアイパターンと呼ぶ。 実際の電子機器の信号波形は時間だけでなく振幅も変動する。信号がL(Low、ロー)からH(High、ハイ)に遷移するときにオーバーシュートが起きることもある(逆がアンダーシュート)。この現象で大きな電圧値の鋭い波形が発生すると機器の誤動作の原因となり、品質が良いとはいえない。このように、波形重ね書きはオシロスコープの重要な機能である。

波形輝度(はけいきど)

テクトロニクスは波形輝度(intensity)の変化をZ軸と呼んでいる。輝度の濃淡の諧調は波形の発生頻度を表す。同社の冊子「オシロスコープのすべて(2017年4月発行)」には次のようにある。DPOで波形トレースを見ると明るく輝く部分があり、これは信号の最頻発部分を示している。この表示方法で、めったに発生しない間欠現象と基本的な信号波形を見分けることができる(基本信号は、明るく輝いて見えるため)。

波形更新レート(はけいこうしんれーと)

(waveform update rate) デジタルオシロスコープ(デジタルオシロ)の重要な仕様の1つ。デジタルオシロはADコンバータで取り込んだ大量のデータを処理して画像データに変換するので、デッドタイムがあり波形の取りこぼしが生じることがある。波形の取りこぼしがあると発生頻度の少ない異常波形を捕らえることができず、オシロの重要な役目である回路評価に影響する。高速にデータ処理できる画像処理DSP(digital signal processor)を搭載して、効率的なアルゴリズムで表示できるようにすることで、最近のオシロは波形更新レートを向上させている。製品カタログの仕様欄には周波数帯域やサンプリングレートと並んで波形更新レートはまだ必須で記載されてはいないが、オシロは使い方が多様で様々な用途に対応しているので、波形更新レートは最近のオシロの大きな特長の1つといえる。 オシロの性能として波形更新レートが速いことは良いことだが、オシロの使い方として、波形更新レート以外の仕様が重要な場合もあるので、ユーザ自身が自分に必要な仕様で機種選定することが肝要となる。ただし、メーカのキャッチフレーズとして「波形更新レートが(他社と比べて)最速」などはわかりやすい特徴として目を引くので見かけるようになった。メーカによっては波形取込レートという表記もある。

波形測定器(はけいそくていき)

波形測定器というとオシロスコープやレコーダ(記録計)を指していることが多い(正確な定義はない)。具体的にはデジタルオシロスコープやメモリレコーダなど。メモリを内蔵していて、測定値(通常は電圧信号が多い)をサンプリングしてデジタルデータにして、測定器の画面にグラフ(時間と共に変化する信号の波形)を表示する。定義が「波形を測定できる、(場合によっては表示する)測定器」とすれば、ハンドヘルドのデジタルマルチメータで画面に波形表示できるモデルや、データロガーなどのデータ集録機器も含まれる。 オシロスコープや記録計、DAQを広く波形測定器と呼称しているともいえる。デジタイザはオシロスコープと双子のような製品のため、「オシロスコープ/波形記録装置」というタイトルで、波形記録装置の項目にデジタイザを掲載している文献もある。波形測定器に記録装置(記録計)が含まれるケースである。 ただし、オシロスコープの国産代表である横河計測の製品ページでは、タイトル「オシロスコープ/波形測定器」にはオシロスコープを、タイトル「データロガー/データ集録(DAQ)」にはレコーダやスコープコーダを掲載している。同社の「波形測定器=オシロスコープで、レコーダ(メモリレコーダ)やデータロガーは波形測定器ではない」という認識が伺える。日本初の電磁オシログラフを製品化し、レコーダの歴史をつくった(我が社がレコーダの王道である)と自負する横河電機では、後発で参入してトップシェアを取ったデジタルオシロスコープが波形測定器であり、記録計/レコーダとは違う、という主張を(ホームページの何気ない表記から)感じるのは筆者だけであろうか。 通販サイトには「波形測定器」の項目にファンクションジェネレータや任意波形発生器を掲載している場合がある。テクトロニクスが2000年代にAFGシリーズで画面に(発生している信号の)波形表示を始めて以降、エヌエフ回路設計ブロックやキーサイト・テクノロジーなどの信号発生器各社がこれに倣い、現在のFGやAWGはほとんどが(出力している)波形を計測器前面のパネルに表示するようになった。ただしこれは波形を表示してはいるが測定はしていないので、「波形測定器」というには無理がある。「波形が表示されているから波形測定器、という安易な分類」で、横河計測のような(計測器についての)深い洞察がない。ECサイトは計測の素人でも検索しやすい作り方をしているが、計測器のプロが作ってはいないので、利用する側に知識が必要とされる。 スペクトラムアナライザ(スペアナ)やVSAなども、測定した信号波形を表示する測定器だが、波形測定器とは呼ばれない。スペアナが表示している波形はスペクトルという(周波数、波長、元素などを横軸にしてその大きさや分量を縦軸で示したグラフをスペクトルと呼称している)。信号の時間推移による大きさの変化を波形と呼び、時間軸の測定器(波形を表示できる測定器)を波形測定器と呼んでいるとも説明できる。 波形測定器は機種群(カテゴリー)の1名称といえるが、その範疇は不確か。また、各モデルの名称(品名)に使われることはない。なぜなら、「波形測定器」では「具体的に何(どんな物理量、波形)を測定するのか不明瞭である。「任意波形発生器」は、「任意の信号波形をつくって発生することができる」と、計測器ユーザはその名称から理解することができるので、品名になっている。

波形取込レート(はけいとりこみれーと)

(waveform capture rate) 「 オシロスコープが波形の取込をどれだけ高速に行えるかを示し、1秒あたりの波形数(waveforms/s)で表す。(テクトロニクス「オシロスコープのすべて」(2017年4月発行)より)」。波形取込レートは波形更新レートとも呼ばれ、高速に波形データを処理できるDSP(digital signal processor)の採用によって画像処理が速くなり、最近のモデルは波形更新レートが向上している。周波数帯域やサンプリングレートという基本性能に次ぐ、オシロの性能の1つとなっている。 デジタルオシロスコープのモデルチェンジサイクルは早く、最近はほぼ毎年のようにどこかのオシロメーカから新製品が発売され、モデルチェンジが2年~5年くらいで行われている。そのため新製品のキャッチフレーズとして「波形取込レートがこのクラスで最高」などの特徴表記がされている。波形取込レートが速いほど詳細に信号変化を観測できるが、オシロユーザの用途は様々なので、何の仕様が自分にとって重要かを見極めてモデルを選ぶことが肝要である。メーカやシリーズによって波形取込レートに力点を置いているもモデルとそうでないものがある。

波形なまり(はけいなまり)

オシロスコープで矩形波(方形波)を観測すると、立ち上がりの部分において、波形が定常値となる基線に届かない現象のこと。理想的な矩形波を入力した場合でも、入力容量の影響などで、オシロスコープの表示は下図のようになまった波形になる。

波形ポイント(はけいぽいんと)

オシロスコープの用語。信号のある時点における電圧を表すデジタル値。波形ポイントは、サンプル・ポイントから算出でき、メモリに記憶される。(テクトロニクス「オシロスコープのすべて」(2017年4月発行)より)

波形モニタ(はけいもにた)

映像信号を観測する測定器。コンポジット、コンポーネント、HDTVなど世界中の各種映像信号の方式に合わせた多くの機種が発売されている。新しい映像の規格ができるとそれに対応した波形モニタが発売される。たとえば2018~2019年には2020年東京オリンピックに向けて、4K/8K用波形モニタがリーダー電子から発売されている。TVなどの映像信号用のオシロスコープ(波形測定器)といえる。「波形をモニタする」というネーミング。表示画面がなく外部のモニタにつなぐタイプの波形モニタをラスタライザと呼ぶ。テクトロニクスにはWFMが形名の波形モニタがあった。ウエーブフォームモニタやベクトルスコープが品名の機種もあった。広義にはビデオアナライザ(テクトロニクスではVM700シリーズ、キーサイト・テクノロジーはたとえば8992A、少し違うがアンリツにはMS8901Aデジタル放送信号アナライザ)も含まれる。映像関連測定器の2大基本モデルは映像信号発生器(信号源)と波形モニタ(波形観察・表示用のスコープ)である。以前は数社が発売していたが、計測器メーカはほぼ2社に収斂し、波形モニタはリーダー電子、映像信号発生器はアストロデザインが、最新の規格に対応した計測器を発売してラインアップが豊富である(というか、ほとんどこの2社しか国産計測器メーカはいなくなった)。シバソクはリーダー電子とほぼ同じラインアップのコンペチタであったが、2015年にグループ会社のアサカに計測器事業を統合し、機種数はリーダー電子ほど多くはなくなった。世界的な計測器メーカのテクトロニクスは、オシロスコープと映像関連測定器が2枚看板だったが、映像関連測定器を売却し、撤退してしまった(テクトロニクスのビデオ事業部はTelestream社に統合、2019年4~5月ニュースリリース)。「波形モニタ」といえばカテゴリー「映像・ビデオ・TV・オーディオ」関連測定器であるが、光通信測定器の雄、安藤電気(現横河計測)には、光信号をオシロスコープで直接観測するためのO/E変換器(光ファイバのFCコネクタなどを入力とし、BNCコネクタで電気信号を出力)で「波形モニタ」という品名の製品があった(現在は生産中止)。周波数帯域があまり高くないので高速な信号は観測できないが、オシロスコープに光信号を入力できるオシロ用のプローブといえる。

バス解析(ばすかいさき)

プロトコルアナライザの1種であるバスアナライザの機能。ただし、最近はオシロスコープが高機能化して、プロトコルやバスの解析機能をオプションで持つようになったので、バスアナライザと並んでオシロスコープの機能ともいえる。350MHz帯域程度の一般的なオシロスコープにはI2Cなどの低速シリアルバスの解析機能がオプションで用意されていることが多い。より周波数帯域の高い高速オシロはDDRなどの高速伝送規格の解析に使われているので、今やバス解析といえばバスアナライザよりオシロスコープの機能というほうが適切かもしれない。

パッシブプローブ(ぱっしぶぷろーぶ)

最も一般的に使用されている電圧プローブ。(=受動プローブ)オシロスコープ本体に標準付属している場合が多い。

パルス幅トリガ(はるすはばとりが)

(plus width trigger) オシロスコープ(オシロ)のトリガで、パルス幅(時間)を設定できる機能。通常、オシロの設定画面ではPlus Widthと表示される。たとえば「パルス幅が○○ns(ナノ秒)以上のパルスの立ち上がりエッジ」や「パルス幅が○○以下の立ち下がりエッジ」でトリガを設定するなどの機能がある。エントリークラスの安価なオシロにもエッジトリガとともにパルス幅トリガは標準装備されている基本機能である。 デジタル回路を使った大規模な電子機器は、複数のシステムが各信号のHigh/Low状態を共有して動作している。パルス幅はデータの読み出しタイミングに重要なため、パルス幅が設計仕様に合わないと誤動作が起きる。特に、発生頻度は低いが不定期に発生するグリッチは試作の段階で検証して、発生しないように改修する必要がある。パルス幅トリガはグリッチ発見に有効なため、高速オシロスコープでは「グリッチトリガ」と呼称されることが多い。 オシロの使い方入門講座では、エッジトリガの次にパルス幅トリガでグリッチを検出する実習がある。そのくらいオシロの基本トリガ機能である。 使い方動画(会員専用) [計測入門講座 Isee!]第11回 複雑な信号にトリガをかける ・・・パルス幅トリガでグリッチを発見する例。

パワーレールプローブ(ぱわーれーるぷろーぶ)

(power rail probe)オシロスコープのプローブの1つ。プローブ部と同軸ケーブルから構成され、低いノイズフロアを実現し、スパイクノイズなどの高い周波数成分までも捉えることができる。電源由来のノイズの測定に有効とされている。キーサイト・テクノロジーは周波数帯域6GHzまでの製品がある。テクトロニクス、レクロイ、ローデ・シュワルツも4GHzまでの製品がある(2021年4月現在)。キーサイト・テクノロジーは「パワー・レール・プローブ」、テクトロニクスは「DCパワーレール・プローブ」や「アクティブ・パワーレール・プローブ」、レクロイは「電源レール・プローブ」という表現がされている。

反射(はんしゃ)

(Reflection)電磁波が伝送路を伝わるとき、媒体が違う面や、特性インピーダンスが異なる箇所では少し反射されて、信号源側に戻る現象が起こる。高周波の基本理論の1つ。反射という現象を応用した測定手法がTDR(Time Domain Reflectometry、時間領域反射法)である。サンプリングオシロスコープによる伝送線路のインピーダンス測定や、光ファイバの破断点検出(OTDR)に応用されている。

汎用オシロスコープ(はんようおしろすこーぷ)

従来のオシロスコープ(オシロ)と2000年中頃から発売された広帯域オシロを区別するために、電気技術者が普段使いする一般的なオシロ、1台/人で使っているモデルを汎用オシロ、高速なシリアル通信などの特定の規格を評価する通信アナライザである広帯域オシロを高速オシロ、という名称で当サイトは分類している。 A/D変換器の進歩・低価格化・普及によってデジタルオシロスコープが1990年代から普及し始め、それまでのオシロはアナログオシロスコープと呼称されるようになった(「アナログオシロ」という呼称、分類名が誕生し、公式な名称となった)。2000年代に周波数帯域が6GHz以上のオシロスコープが開発され、高速シリアル通信インタフェースを搭載した情報家電機器の普及を背景に、2010年代には最高周波数帯域は数10GHzに達した。これらのプロダクト(製品のカテゴリー)はオシロだが従来のオシロとは全く使い方が異なり、広帯域オシロ(または、高速デジタル回路の評価用途なので、高速オシロ)と呼称された。 ところが、広帯域オシロではない従来のモデルを呼称する名称は生まれず、単に「オシロスコープ」としかいわれない。「オシロの本流は(広帯域オシロではなく)従来のオシロなので、「○○オシロ」などという呼称はしない」というメーカの意思かどうかはわからないが、広帯域(または高速)オシロの対比名称はない。基本測定器である従来のオシロと、通信アナライザ(専用器)である広帯域オシロを一緒くたにすると、大変違和感があり、誤解を生む。そこで当サイトでは「汎用オシロ」、「高速オシロ」と呼称して分類している。「汎用オシロ」という表現はオシロメーカはほとんど使わないので、広帯域オシロに対比する用語(分類、カテゴリー)を創設したが、広く一般に認知されている用語ではない。 日本電気計測器工業会(JEMIMA、ジェミマ)は電気測定器のカテゴリーを大きく2つに分類している。オシロやスペクトラムアナライザなどの基本測定器を「汎用測定器」※、移動体通信用や光測定器など(特定の通信方式に対応する専用器)を「通信測定器」と呼称して、統計データを公開している。つまり汎用と通信は基本測定器と専用器を象徴することば(用語、名称)といえる。広帯域オシロ(専用器)でないオシロは汎用オシロと呼ぶのが妥当と思われる。「狭帯域オシロ」や「基本オシロ」よりもスマートな名称(命名である)と筆者は思う。 汎用オシロは、目安として周波数帯域2GHzまでで、それ以上を高速オシロとしている(メーカによって異なる)。主要各メーカの周波数帯域別のモデルを以下の参考記事「オシロスコープの動向と、最新1GHz帯域モデルの各社比較」に表にしている。技術者が普段使いする汎用オシロの主力(ボリュームゾーン)は周波数帯域200MHz~500MHzだったが、マイクロプロセッサ(CPU、マイコン)や低速シリアル伝送の普及などで、組込みシステムの開発を中心に2000年以降は1GHz帯が主流になっている。このクラス(ミドルクラス)はMSO(ミックスドシグナルオシロ)が標準である。 中国・台湾メーカが2000年代にローエンドモデルで日本市場に参入し、国産のオシロメーカは横河計測(旧横河電機株式会社・T&M事業部)と岩崎通信機を除いてほぼ駆逐された。現在のオシロはほとんどデジタルだが、アナログ全盛時代は岩崎通信機が国内No1メーカだった。菊水電子工業も1980年代まではオシロが主力製品だった。日立電子やケンウッド(現テクシオ・テクノロジー)のオシロは工学系の学生実験に多く使われた。横河電機は後発でデジタルオシロに参入し、DLシリーズは汎用オシロの代名詞としてテクトロニクスのTDSシリーズと日本市場を2分した。DL1600シリーズは周波数帯域150MHzで価格50万~100万円(オプション構成による)で、100MHz以下のローエンドからミドルクラス顧客にシェアを伸ばした。ところが100MHzで10万円以下という価格帯のリゴル(Rigol:中国)、Goodwill(グッドウイル:台湾、現テクシオ・テクノロジー、TEXIO)が秋葉原の計測器ショップに並び、ほとんどの日本メーカは撤退することとなった。最近はテクトロニクスだけでなくキーサイト・テクノロジーも10万円前後の低価格モデルをラインアップしている。国産2社はミドル以上(350MHz~500MHz/1GHz)を主戦場にしている。USBの普及によってスタンドアロンではないPC接続型の汎用オシロも増えた。パソコンとUSB接続して使用するUSB計測器の代表であるUSBオシロは、英国のPico Technology(ピコテクノロジー)が老舗だが、キーサイト・テクノロジーも2018年にラインアップに加えている(Streamline P924xAシリーズ)。 計測器メーカは汎用オシロや高速オシロという分類(名称)はしていない。たとえば下位モデルから、「ハンドヘルド(可搬型)」、ベンチトップを「ローエンド(エントリークラス、学校などの教育向け)」、「ミドルクラス(周波数帯域MHz~GHz帯のボリュームゾーンの機種群)」、「ハイエンド(GHz以上、通常はこれが高速オシロに相当)」などに分類している。以下のローデ・シュワルツの参考記事に分類(名称の例)がある。 ※ JEMIMAではオシロはすべて汎用測定器で、広帯域オシロを通信測定器には分類していない。これはプロダクトとしては適切だが、アプリケーションでは広帯域オシロは通信測定器である。大手オシロメーカの周波数帯域別の販売台数は、2021年に「1GHz以上」が「1GHz未満」を上回り、2023年はさらに差が開いている(以下の発表会の配布資料より)。この事実はJEMIMAの発表する統計データからは読み取ることはできない。 オシロスコープ校正 新製品発表会

  • 1