計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
計測・測定に関連する用語全般が収録されており、初めて計測器を扱う方でも分かりやすく解説しています。
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時間軸(じかんじく)

オシロスコープの用語としては以下。掃引のタイミングをコントロールするオシロスコープの回路。時間軸はs/div(※)で設定。(テクトロニクス「オシロスコープのすべて」(2017年4月発行)より)(※)divはディビジョンの略で、オシロスコープ画面のマス目(縦横の線)。

シグナル・インテグリティ(しぐなるいんてぐりてぃ)

(signal integrity) integrityは「忠実」なので、日本語にすると「信号忠実度」や「信号完全性」。デジタル伝送では、意図したとおりの波形に実際になっているかが重要になる。送信側、伝送路、受信側などの各装置はノイズや損失など様々な影響を受けて波形が変化する。短い距離や低い伝送レート(bps、baud)では波形が変化しない(十分な忠実度があった)が、USBやHDMIのような高速のシリアル通信が普及すると、広帯域オシロスコープ(高速オシロスコープ)でシグナル・インテグリティを確認するようになった。逆に言うと、2000年代に新情報家電(デジタルカメラ、DVD、液晶パネル、スマートフォンなど)が普及すると、それを評価すために従来よりも広帯域なオシロスコープが求められ、高周波の技術がある海外のオシロスコープメーカがこれに応えた。 テクトロニクス「オシロスコープのすべて」(2017年4月発行)では「シグナル・インテグリティ:デジタル信号の高速化によって生じるリンギングやクロストーク、グランド・バウンスなどのノイズがいかに抑えられているか、すなわちデジタル信号の波形品質のこと」とある。 2021年2月に表記の仕方を調べたら、計測器メーカ(キーサイト・テクノロジーやテレダイン・レクロイ)は「シグナル・インテグリティ」だが、マクニカやイノテックのようなITベンダー(電気・電子機器、部品の商社)は「シグナルインテグリティ」と表記している。どちらの表記も良く使われる。また、2023年3月20日配信のキーサイト・テクノロジーのニュースは「シグナルインテグリティー」という表記だった。同じメーカ内でも表記の仕方は統一されていないようである。

シグナルインテグリティアナライザ(しぐなるいんてぐりてぃあならいざ)

(signal integrity analyzer) Wavecrest(ウェーブクレスト)社の代表的なモデルの品名。SIR-3000シリーズやSIR-4000C/Dがある。オシロスコープ(オシロ)で、ジッタやタイムインターバルの測定を強化した製品。オシロとしては周波数帯域約15GHzと広帯域で、アイパターン測定もできる。モデルによってはBER測の機能もある。 Wavecrestは1986年に米国ミネソタ州で設立し、米国中西部を中心に多くの半導体デバイスメーカに納品して成長した。日本法人のウェーブクレスト株式会社は2001年2月に設立し、SIRは国内大手半導体メーカの開発・製造用の機材として使われた。2000年代は高速デジタル通信が普及した時代で、PCI Express(PCIe)、SATA(サタ)、FibreChanne(ファイバーチャンネル)などの通信規格が開発され、多くの電子機器に採用された。またver(バージョン)やGEN(ジェネレーション、世代)が改良されて通信速度が速くなっていった。そのたびに、より高速(広帯域)、高機能な測定器(評価ツール)が登場した。 SIA-3000シリーズの基本性能は、時間測定分解能200fs(フェムト秒)のタイムインターバル測定、オシロスコープ、アイパターン、BERT(ビット誤り率測定)を備え、ジッタ、スキュー、立ち上がり時間/立ち下り時間の測定が可能。エントリーモデル(SIA-3100)から上位モデル(SIA-3400、SIA-3600など)へのアップグレードはチャンネルカードの差し換えで可能。2005年8月に日本で発売された新製品SIA-3400Dは「PCI Express1.1(2.5Gbps)、SATA I(1.5Gbps)、SATA II(3.0Gbps)、XAUI(3.125Gbps)、3X FibreChannel(3.1875Gbps)などの評価ソフトウェアを装備し、コンプライアンステストに最適」とPRされている。 シグナルインテグリティは「信号の忠実度」、「信号完全性」という意味で、キーサイト・テクノロジーやテクトロニクスなどがデジタル信号の品質を示すことばとして、高速デジタル通信の普及と共に使い始めたが、Wavecrestの製品はその走りであった。レクロイ(現テレダイン・レクロイ)にネットワークアナライザの1種で、シグナル・インテグリティ・ネットワークアナライザSPARQというモデルがあったが、シグナルインテグリティを製品名にした製品は他にはあまり聞かない。アンリツの現役BERTであるMP1900Aの品名はシグナルクオリティアナライザである(BERTや誤り率測定器、ビットエラー測定器という名称ではない)。シグナルインテグリティやシグナルクオリティなどの表現は、従来の計測器とは違う、先進のイメージがあるためか、最近の計測器の名称(品名)に使われていると思われる。 広帯域オシロスコープでアイパターンだけでなくBER測定もする手法は、キーサイト・テクノロジーがPAM4信号の評価で提案している(以下のKeysight Worldの記事が詳しい)。反対にアンリツはBERTでアイパターンも測定できるBERTWave(バートウェーブ)というモデルが、MP1900Aと並ぶBERTの現役製品である。

指数平均(しすうへいきん)

デジタルオシロスコープのアベレージング(平均化)機能で、平均値の計算方法の1つ。直近のデータに高い重み付けを与える移動平均。指数平均の場合、Nは回数の設定ではなく、最新データの重みづけの数値を設定する。この数はアナログのRCフィルタの時定数に相当し、小さいと早く変化し、大きいとゆっくり変化する。

ジッタ測定器(じったそくていき)

ジッタ(パルス信号の時間方向のゆらぎ)を測定する機器。CD・DVDなどオーディオ・映像機器の評価に使うジッタメータが代表例。アイパターン測定はジッタ測定ともいえる。伝送品質の評価をするエラーレート測定もジッタ測定の1種といえる。オシロスコープ(ジッタ解析ソフトが必要)やタイムインターバルアナライザは広義にはジッタ測定器である。ジッタメータとタイムインターバルアナライザは同じ要素技術を元にしている(菊水電子工業にはタイムインターバルジッタメータ、という品名のモデルがあった)。このようにジッタ測定器の意味は広い。

周波数測定器(しゅうはすうそくていき)

周波数を測定する機器の総称。オシロスコープやカウンタなどがある。

周波数帯域(しゅうはすうたいいき)

(frequency band) 周波数の範囲のことを帯域という。測定器で周波数に依存する項目の仕様には、周波数帯域が明記される。たとえば「利得:○○dB(ただし周波数帯域:1GHz)」なら、○○dBの値は1GHzまでの周波数で保証される(帯域は上限しか明記されないことも多い)。 オシロスコープ(オシロ)の仕様に記されている周波数帯域とは、正弦波入力を与えた場合に、表示される振幅が3 dB低下した(約70%)ところの周波数fで規定している。たとえば、周波数帯域1GHzのオシロは1GHzまでの信号を正確に表示できるが、その電圧値は入力信号よりも3dB落ちた値で表示される。 オシロの周波数特性で、減衰しないフラットな周波数が(そのオシロが想定できる周波数を示す仕様である)周波数帯域の値ではない。オシロで測定できる最大の周波数については、このように周波数帯域を規定していることを知っておくことは、オシロを使って測定するための事前の基礎知識といえる。 参考記事:デジタルオシロスコープの基礎と概要 (第2回)・・オシロの仕様の1番目に周波数帯域の解説をしている。

受動プローブ(じゅどうぷろーぶ)

最も一般的に使用されている電圧プローブ。(=パッシブプローブ)オシロスコープ本体に標準付属している場合が多い。

首都圏パナソニックFA(しゅとけんぱなそにっくえふえー)

1980年代にあった、松下通信工業株式会社の計測器の販売会社。松下(パナソニック)は計測器から撤退してしまったので(日立電子と同じように)計測器のラインアップや組織(開発部門や販売会社)の概要は不明。松下通信工業(略称:松下通工、後のパナソニックモバイルコミュニケーションズ株式会社、2022年に解散)は松下電器(現パナソニック)の関連会社で、通信機器(携帯電話や無線基地局など)を主力事業にしていたが、計測器もつくっていた。オーディオ関連測定器、ラジオやTVなどの無線通信用測定器、低周波の測定器(RC発生器、カウンタ、デジタルマルチメータ、電圧計など)をラインアップしていた。松下電器は第二次世界大戦前に(現在のトリガ掃引式以前の)強制同期式オシロスコープを販売していた計測器の老舗である。アナログオシロスコープ(VP-5260A、VP-5610A、VP-5562A 20MHzなど)や指示計器タイプのモデルもつくっていた。老舗ではあるが、2000年頃にはすでに古い時代の機種群が多く、時代にマッチした新しい計測器ではなくなっていた。松下グループの事業再編の中で、計測器は生産中止になった。 オシロスコープと映像関連測定器のラインアップが豊富なTektronixs(テクトロニクス)は、ソニーと出資比率50対50の合弁で、ソニー・テクトロニクス株式会社を設立した(1965~2002年)。1990年代まではソニー、松下という日本を代表する家電メーカが電子計測器に関わっていたが、高度経済成長を支えた計測器も1990年代以降には成長が鈍化した。2000年代には、光海底ケーブルのバブルによる光通信測定器の売上激減や、国産携帯電話メーカの衰退、ICE(マイコン開発支援装置)のフルICEからJTAGへの推移による市場規模の激減など、計測器市場に大きな変化があった。 首都圏パナソニックFAはエリア別にあった販売会社の1社だが、詳細は不明。現在の松下の計測器(形名VP-〇〇〇〇)の保守会社は「パナソニックFSエンジニアリング株式会社」になる。同社はJCSS事業者で、計測器の校正事業を行っている(2020年1月現在)。 「RC発振器VP-7201A」の取扱説明書に、連絡先として「パナソニックモバイルコニュニケーションズ株式会社の横浜市都筑区佐江戸町」が記載された冊子がある(発行年月は不明だが2003年~2022年)。表紙には「電子計測販売会社」として「パナソニックFAシステム株式会社」の全国の営業拠点が記載されている。同社の本社(品川区西五反田)には首都圏支店があり、首都圏パナソニックFAは(2003年以降に)同社の首都圏支店として統合されたと推測される。 松下通工や日立電子の計測器は、それなりに歴史がある。松下、日立ともに老舗の計測器メーカといえる。だたし、撤退してしまったので、今ではどんな機種群がラインアップされていたのか全容がわからない。両社ともアナログオシロスコープのメーカとして、岩崎通信機と競争していた(今では直流電源の豊富なラインアップで有名な菊水電子工業も、1970年頃にはアナログオシロスコープが主力製品だった)。1980年頃の理工系の学校の実験機材として、panasonic(松下通工)やhitachi(日立電子)のロゴが付いたアナログオシロスコープはめずらしくなかった。iwatsu(岩崎通信機)よりもパナソニックや日立のほが圧倒的に知名度があるに決まっている。アナログ式のリレー試験器といえば京浜電測(現デンソクテクノ)だったが、デジタル式になってからはエヌエフ回路設計ブロックがトップメーカである。計測器がアナログからデジタルに変わったとき、計測器メーカも様変わりしている。 松下通工と同じようにテレビ・オーディオ測定器(映像の計測器)が得意だった目黒電波測器は、オーナーが2度変わり、自己破産もしたが、現在は株式会社計測技術研究所の目黒電波事業部として健在である。

焦点(しょうてん)

オシロスコープの用語としては以下。ディスプレイ表示のシャープさを調整するためにCRTの電子ビームを調整するオシロスコープの機能。(テクトロニクス「オシロスコープのすべて」(2017年4月発行)より)

シングルエンド(しんぐるえんど)

電気信号の伝送方式には大きくシングルエンドと差動がある。信号線が1本で、グランドとの電位差によって信号を伝送しているのがシングルエンド。single-ended signalling(最後まで1本で伝送する方式)が語源と推測される。2本の信号線を使い、1本にはプラスの信号を、もう1本にはマイナスの信号を送り、差分で1か0を表現するのが「差動(ディファレンシャル、differential)」である。シングルエンド方式は電線が1本で簡易だがノイズの影響を受けやすく、長距離、高速通信には向かない。差動はオシロスコープ(オシロ)のプローブの品名に大変よくでてくる。 オシロなどではシングルエンドと呼ばれるが、有線通信の分野では(たとえばプロトコルアナライザの解説などでは)不平衡と呼ばれる。2本での伝送は平衡と呼んでいる(1本には伝送したい信号を、もう1本にはその信号の逆位相信号を送ると、信号が平衡関係にあるため)。たとえばシリアル通信の代表的な規格であるRS-232Cは不平衡。 シングルエンド(single end)=不平衡(unbalance)で、両方は全く同じことを違う表現をしている。シングルエンドは、「ある電圧を基準として、それより電圧が高いか低いかで1と0を表現する」伝送方式とも説明されている。「(2本の)差動」と「シングル(1本で)エンド(最後まで伝送)」という表現がシングルエンドと差動の語源である。見方を変えると「(2本の線が)平衡(している)」、「(1本なので平衡していない、つまり)不平衡」という表現になる。 計測器は機種群(カテゴリー)ごとにその測定原理があり、それに沿った解釈や用語がある。そのため、全く同じ現象を別のことばで表現していることがある。オシロやプローブは差動やシングルエンド、有線通信では平衡、不平衡、と説明される。計測の初心者からは「どちらか1つに統一してくれ」という声が聞こえてきそうである。それ以前に、差動とシングルエンドが対になる用語であることを、その名称から推測することはほぼ無理である。

シンクロスコープ(しんくろすこーぷ)

(syncroscope) 電気信号の波形を映し出し、時間(周波数)や電圧を観測する測定器であるオシロスコープ(オシロ)のこと。アナログオシロスコープとほぼ同義。略称:シンクロ。 岩崎通信機(略称:岩通)が「同期(sync、シンク)がとりやすいオシロスコープ」の意味で製品名にしたとされる。同社の測定器の歴史は1954年に発売した国産初のトリガ式オシロスコープSS-751から始まったことが、以下の参考記事、「ユニバーサルカウンタの基礎と概要 (第3回)」に語られている(SS-751の写真を掲載)。以前は同社の「トリガ機能付きオシロスコープ」の品名だったが、現在のオシロはトリガが標準になったので、この呼び方はほとんど使われない。1980年頃の同社オシロには「SS-5712 SYNCROSCOPE」のような表記がされていた(SS-xxxxは同社のアナログオシロの形名)が、1990年代には呼称は「アナログオシロスコープ」になり、シンクロという表記は無くなった。 現在ではオシロといえばほぼデジタルオシロだが、1980年頃はアナログオシロが主流で、オシロのことを「シンクロ」と呼称している電気技術者が多くいた。岩崎通信機がアナログオシロ時代の国産トップブランドだったことを伺わせる。月刊トランジスタ技術(略称:トラ技)は多くの計測器の記事や広告を掲載しているが、1964年の創刊号にはトランジスタを採用した、当時の「最新のシンクロスコープ」の解説記事を岩崎通信機が書いている。 オシロがシンクロと呼ばれたのは、三菱電機のPLCの名称である「シーケンサ」がPLCの代名詞のように呼称されていたり、Canalyzer(キャナライザ)やsniffer(スニファー)ということば(メーカが命名した通称)がCANバスアナライザやLANプロトコルアナライザとして呼称されるのと似ている。 計測器情報: 岩崎通信機のアナログオシロスコープ製品例・・同社の形名/品名はSS-6000シリーズやSS-7000シリーズのアナログオシロスコープと、TS-8000シリーズ、TS-80000シリーズのアナログストレージオシロスコープがあったが、現在はアナログオシロはすべて生産終了している。ラインアップはDS-5000シリーズ、DS-8000シリーズ(2023年1月現在の同社HPより)。 「シンクロスコープ」は下の計測器情報を参照。

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