計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
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最大入力電圧(さいだいにゅうりょくでんあつ)

オシロスコープの入力端子に入力できる電圧の最大値を最大入力電圧と言う。この電圧値以上の電圧を入力すると誤動作するだけでなく入力回路を破損する場合がある。最大入力電圧には、周波数特性があり、高い周波数成分では、最大入力電圧値が低くなる。最大入力電圧は、下図のようにDC+ACpeakで規定する。

サイン補間(さいんほかん)

デジタルオシロスコープはサンプリングされた値だけを表示するのではなく、補間表示の機能がある。サイン補間とは sinX/X 関数で補間データを作成し、2点間を補間するもの。信号を正確に再現するためには、最高周波数成分の少なくとも2.5倍のサンプルレートが必要といわれている。

差動(さどう)

(differential) 電気信号の伝送方式には大きくシングルエンドと差動(ディファレンシャル)がある。信号線が1本で、グランドとの電位差によって信号を伝送しているのがシングルエンド(single-ended signalling、最後まで1本で伝送する方式)。2本の信号線を使い、1本にはプラスの信号を、もう1本にはマイナスの信号を送り、差分で1か0を表現するのが「差動」。2本の信号線はどちらも接地されない(信号がグランドレベルに左右されない)ため、シングルエンドに比べてノイズに強く、長距離、高速通信に向いている。具体的にはシリアル通信のRS-422、RS-485などの規格がある。技術の進歩によって従来より低い電圧で伝送が可能になり、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)のような省エネの低電圧差動伝送が普及した。 オシロスコープのプローブも大変良く「差動」という用語を使っているが、有線通信の分野では平衡とも呼ばれる(1本には伝送したい信号を、もう1本にはその信号の逆位相信号を送ると、信号が平衡関係にあるため)。1本の信号線は平衡していないので不平衡(unbalance)と呼ばれる(つまりシングルエンド=不平衡)。差動(differential)=平衡(balance)で、両方は全く同じことを違う表現をしている。「(2本の)差動(差分で送る)」と「シングル(1本で)エンド(最後まで伝送)」という表現が差動とシングルエンドの語源である。見方を変えると「(2本の線が)平衡(している)」、「(1本なので平衡していない、つまり)不平衡」という表現になる。 平衡、不平衡はまだわかりやすいが、差動、シングルエンドはもっと違う表現が無かったのだろうか(元の英語に原因があり、日本語への翻訳が問題ではない)。原理を正確に理解していないとこの2語が対になっていることは全く想像できない。オシロスコープメーカの資料には(何の前置きや注釈も無く)「シングルエンド」や「差動」という単語が出てくる(そんな単語は知っていて当然というか、知っていることを前提に説明が進む)。たとえば「1本伝送」、「2本伝送」という言い方で、有線通信もオシロスコープも統一してくれたら、計測入門者(初心者)にはどれだけわかりやすいことか。計測は知識のある人でないと理解が難しい、同じ知識を共有している人たちのニッチな村社会である(逆に言うと、限られた人たちのツウな世界)。

差動プローブ(さどうぷろーぶ)

差動入力型の電圧プローブ。オシロスコープ本体によっては電源が必要となる。

サンプリングオシロスコープ(さんぷりんぐおしろすこーぷ)

(sampling oscilloscope) 高い周波数帯域の繰り返し信号を測定することを目的にしたデジタルオシロスコープ。略称:サンプリングオシロ。単発信号の測定はできない。ほとんどの機種が本体とモジュールを組合せる構成になっている。基幹通信網として高速の光通信が整備・拡張されていた1980年代から2000年代には、キーサイト・テクノロジーとテクトロニクスの製品が市場を2分していた。本体はメインフレームで、用途別の測定ユニット(計測モジュール)を装着するモジュール型である。 基幹通信網で使われる特定の通信方式に準拠した高速信号波形を観測するために、大手通信装置メーカ(NEC、富士通、日立、沖電気など)は設計・開発・製品検査などに特定の計測モジュール(高額な専用器)を使っていた。測定ユニットに光入力が多いことから「光サンプリングオシロ」と呼ばれたり、計測器メーカの総合カタログではオシロと光測定器の両方に掲載されたりしていた。高額であること、必要になる特定の短期間に使用することから、ユーザは自社設備を最低限にしてレンタルを活発に利用した。ただし大変ニッチな高額製品のためレンタル会社の保有台数も潤沢ではなく、ユーザから事前の利用期間をレンタル会社に打診して、レンタル会社は在庫調整をして、場合によっては(今後の見込みがあり、顧客の希望に納期が間に合えば)補充購入(発注)をする、という利用形態が多くみられた。 オシロという名前がついているが、有線通信用の専用器であり、低周波の基本・汎用測定器ではない。構造はオシロだが、アプリケーションの大半は特定の通信規格の波形測定用途である。アイパターンの評価にも使われるので、その用途では有線通信の基本測定器といえるが、2000年代中旬以降の高速オシロスコープ(リアルタイムの広帯域オシロスコープ)の出現・普及によって、アイパターン測定はサンプリングオシロからリアルタイムオシロスコープ(マスクパターンのオプションを使用)に移った。従来のモデル(86100やDSA8300など)は生産中止になったが、長らくサンプリングオシロで評価をしてきた光デバイスメーカ(たとえばNECの大月工場など)は、データの継続性から現在もサンプリングオシロでアイパターン評価を継続している。そのため計測器メーカ2社も、表示部が無く小型にしたサンプリングオシロをラインアップしている(参考記事の2社の製品例を掲載)。 サンプリングオシロとロジックアナライザは、ユーザによってキーサイト・テクノロジーとテクトロニクスにファンが分かれる。両社ともに、自社がトップブランドだと自負してラインアップしている。エヌエフ回路設計ブロックが「交流電源では菊水電子工業に負けたくない」と思っているように、2社はサンプリングオシロのライバルである。 テクトロニクスの冊子「オシロスコープのすべて」(2017年4月発行)では以下の解説がある。「デジタル・サンプリング・オシロスコープ:等価時間サンプル手法により信号のサンプルを取込み、表示するデジタル・オシロスコープ。信号の周波数がオシロスコープのサンプルレートよりも高い場合でも、正確に信号を取込むことができる」。つまり、オシロスコープの周波数帯域やサンプリングレートが今ほど高くない時代(2000年以前のデジタルオシロは4GHzが最高の高級品だった)に、もっと速いデジタル光通信の波形の品質を確認する手法として、繰り返し信号を補足するサンプリングオシロはアイパターン測定器として重宝された。 計測器情報:サンプリングオシロの製品例

サンプリング定理(さんぷりんぐていり)

(sampling theorem) サンプリングはアナログ情報をデジタル化する手法である。サンプリング定理は「アナログ信号をデジタル信号に正確に変換するには、元の信号の最大周波数の2倍のサンプリング周波数が必要」という理論。別名:標本化定理(物理・数学の世界ではサンプリングのことを「標本化」といっているが、計測器の世界ではもっぱら「サンプリング」という表現が使われる)。サンプリング周波数が高いほうが、精度良く元のアナログ波形を記録できるが、サンプリング後のデータ量は増える。どの程度のサンプリング周波数が適切かをサンプリング定理は示している。 サンプリング周波数の半分の値をナイキスト周波数(nyquist frequency)という。サンプリングでデジタル化された情報から元のアナログ情報を復元しようとするとサンプリング周波数の半分の周波数までしか正確に復元できない。つまり、再現可能な最大周波数がナイキスト周波数である(サンプリング定理は再現の限界を示している)。 小野測器の「FFT解析に関する基礎用語集」には以下の解説がある。 サンプリング間隔を⊿t秒(⊿t秒に一回サンプリング)とすると、サンプリング周波数は1/⊿t(1秒間に1/⊿t点サンプリング)になる。サンプリング定理は時間的に連続な信号とそれをサンプリングする速さの関係について情報が保たれる限界を示すもので、「信号に含まれる最高周波数成分の2倍以上の周波数でサンプルしなければならない」と定められている。サンプリング周波数が信号の周波数の2倍より低くなると、エリアシング(折返しひずみ)が生じる。

サンプリングレート(さんぷりんぐれーと)

(sampling rate) デジタルオシロスコープ(デジタルオシロ)の最も基本の仕様は周波数帯域とサンプリングレートである。サンプリングとは、電気信号の波形を一定間隔でデジタルデータにすること。サンプリングするスピードをサンプリングレートと呼び、1秒間に何個のデータを取るかを示しているので、この数字が大きいほど高性能。単位は[S/s]と表記し、読み方は「サンプル・パー・セック」。製品カタログなどには「Sa/s」と表記している場合もある。表記(表現)はサンプリング・レート、サンプルレート、サンプル・レート、サンプリング、など様々。物理量としてはサンプリングレートは周波数(S:サンプルは数なので無単位。パー・セックは時間の逆数なので周波数)。そのため「サンプリング周波数」と呼称されることも多い。 サンプリング周波数、サンプリングレート、サンプルレートは同義なので、どれか1つに統一してほしいと初心者(または、仕事で使うツールなので仕方なく知識を得ているが、計測器に全く愛着は無い人)は思うだろう。話している前提がオシロの場合は略して「サンプリング」や「サンプル」と呼ばれることもしばしばある。計測器メーカはサンプルレートを好んで使う傾向があると筆者は感じている。「サンプリング」という表現は計測器全体で大変一般的なのだが、特にオシロは「サンプル」という表現を使っている。筆者には思いも及ばない深慮遠謀が計測器メーカの技術陣に何かきっとあるのだろうと推測するが、明確な説明を聞いたことがないので、理由は不明である。sampleは名詞で標本、見本、samplingは形容詞で「サンプルする」、「見本を抽出する」なので、サンプル・レートよりサンプリング・レートのほうが正確な表現に思える。 普通、オシロのサンプリングレートは周波数帯域の数値より1桁上の周波数であることが多い。例外として横河電機(現横河計測)のDL1640シリーズがある。同モデルは周波数帯域200MHzの汎用オシロとしてテクトロニクスのTDSシリーズと日本市場を2分して普及したモデルだが(2002年7月販売開始、2010年3月販売終了)、S/sは200Mである(後継現役モデルのDLM2024は2.5G)。 参考記事:オシロスコープの基礎と概要(第2回) ・・オシロの主要な仕様に中でサンプリングレートの解説がある。記事の中では「サンプル・レート」という表記になっている。

サンプルポイント(さんぷるぽいんと)

テクトロニクスの冊子「オシロスコープのすべて」(2017年4月発行)では次のように説明されている。「サンプル・ポイント:波形ポイントを計算するために使われるA/Dコンバータからの生データ」

サンプルレート(さんぷるれーと)

(sample rate) 測定値をA/D変換回路が1秒間に感知する回数。「サンプリングレート」とも呼ばれる。サンプリングとは、電気信号の波形を一定間隔でデジタルデータにすること。最近の測定器はほとんどデジタル化されていて、測定した連続値(アナログ)をサンプリング周波数ごとに読んでA/D変換器でデジタル値にし、表示したり、メモリに記録している。測定器のカテゴリーやモデルによってサンプルレートの値は大きく異なる。 デジタルオシロスコープ(オシロ)ではサンプルレートは周波数帯域と並ぶ2大仕様で、測定器前面の形名の横に「周波数帯域」と「サンプルレート」が並んで表記されている製品もある。オシロではサンプルレートを「S/s」(サンプル・パー・セック、つまり1秒あたりのサンプリング数)の表記をするので、単位は秒(時間)の逆数である周波数となる。そのためオシロでは「サンプルレート」のことを「サンプリング周波数」ともいう。サンプリングの値は速い・遅いと表現するので、「サンプリング・スピード」という記載例もある。オシロのサンプルレートは周波数帯域の1桁以上、上である(例えば周波数帯域:100MHz、サンプルレート:2GS/sなど)。 デジタルマルチメータ(DMM)のサンプルレートは数〜10回/秒程度。現場用の可搬型測定器を多くラインアップしている共立電気計器の用語集には「サンプルレートは一般的には2~3回/秒程度」と記載されている。つまり同社のDMMは2~3回/s(つまり0.3秒~0.5秒間隔)でサンプリングを行い、表示部に測定値を表示している。別の言い方をすれば、0.3~0.5秒間隔で測定している(測定値を更新している)といえる。 単位の表記は一般には「S/s」が多いが、「Sa/s」のときもある。抵抗の単位Ωの逆数(電気の流れやすさ)や導電率をコンダクタンスというが、その単位はsiemens(ジーメンス)で、「S」と表記する。Sだとジーメンスと同じなので「Sa」と書いて「サンプル」であることを示す、という配慮かもしれない。 参考記事:オシロスコープの基礎と概要(第2回)・・オシロの主要な仕様に中でサンプルレートの解説がある。

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