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- AC/DC電流プローブ(えーしーでぃーしーでんりゅうぷろーぶ)
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(AC/DC current probe) 電流プローブの中でDCからACまで測定できる(DC/AC両用の)プローブ。トランスを変流器として使って交流電流を検出するAC電流プローブに、ホール素子などの能動部品を追加してDCも測定できるようにしている。AC電流プローブほど構造が単純ではなく、能動素子への電源供給が必要になるが、低い周波数を含むDCから測定できるので、正確な電流波形を測定できる。メーカによって品名は「DC/AC電流プローブ」もある。 オシロスコープの一般的な電流プローブとして使われ、各オシロスコープメーカがラインアップしている。AC/DC電流プローブ用の専用の電源を別筐体で用意したり、オシロスコープ本体から電流プローブに電源を供給したりするなど、各メーカが工夫をしている。電流プローブの構造は、トランス部分がスライドして測定対象の導線を挟み込む、クランプの1種なので、クランプ製品(、クランプセンサや、クランプ電流計)をつくる多くの現場測定器メーカもラインアップしている。日置電機やマルチ計測器、ユーディーアールなどはモデルが多い。各社とも測定器側をBNCコネクタにしてオシロスコープに直結できる電流プローブのモデルがある。 オシロスコープは電圧を測定するので、電流プローブをつないでも表示は電圧である。電流プローブには電圧と電流の換算表があり、測定者は表示波形から電流値を計算する。現在のオシロスコープは各社独自のプローブ・インタフェースを持ち、ミドルクラス以上では入力は単純なBNCコネクタではなくなっている。プローブをオシロスコープにつなぐと、オシロスコープはプローブのモデルを自動的に認識する。電源供給や電圧/電流の換算を自動で行い、電流プローブを使っているチャンネルは電流表示になる。アクティブプローブやAC/DC電流プローブには電源が別途必要なこともあり、この2種類のプローブはオシロスコープとプローブを同一メーカで揃えるほうが使い勝手が良いので、同一メーカでの使用例が圧倒的に多い。 AC/DC電流プローブはオシロスコープ以外に、電流計、メモリレコーダ、マルチメータ(DMMなど)ににも使用され、幅広く「電圧・電流の測定器のアクセサリ」になっている。 能動素子を使用しているのでアクティブプローブに分類されるが、アクティブプローブというと通常は電圧プローブを指していることが多いので、「アクティブ(能動)型の電流プローブ」とも説明されている。
- AC電流プローブ(えーしーでんりゅうぷろーぶ)
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(AC current probe) 電流プローブの中でAC専用の(DCが測定できない)プローブ。スライド式のトランスに測定対象の導線を挟み、電流検出用に2次巻線に流れる電流から測定対象の電流を算出する。トランスを使った電流変換器(変流器)なので、CT(Current Transformer)やカレントトランスを形名や品名にしているメーカもある。主要な部位がトランスなので、構造が簡単で安価だが、DCは測定できない。ホール素子などを追加してDCから測定できるようにしたのがAC/DC電流プローブになる。 受動素子だけで構成されるのでパッシブプローブに分類されるが、パッシブプローブという表現は電圧プローブを指すことが多く、「パッシブ(受動)型の電流プローブ」とも説明もされる。 オシロスコープ用のAC電流プローブはテクトロニクスのラインアップが多い。岩崎通信機はドイツのPMK社(※)などの代理店をしていて、電流プローブ全般を幅広く取り扱っている。 (※) 岩崎通信機の電子計測部門はPMK社と1990年代から取引をしてきたが、PMKの持ち株会社のハイマンインダストリー(Heimann Industries AG)社に2023年11月に資本参加した。すでに欧州での販売で2005年からハイマングループと取引があり、2020年には合弁で岩通計測ヨーロッパ有限会社を設立している。
- A-PHY(えーふぁい)
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ADAS(エーダス)、ADS(Autonomous driving system、自動運転システム)、IVI(in-vehicle infotainment、IVIインフォテインメント、自動車内の情報と娯楽の提供)などの車載アプリケーション向けの長距離SerDes(サーデス)の物理層(レイヤ1)インタフェースとして、MIPI Alliance(ミピー アライアンス)はMIPI A-PHYを2020年9月に策定した。MIPIのC-PHYやD-PHY、M-PHYはスマートフォンなどのモバイル機器を想定しているが、A-PHYは車載を一番の用途にしている。 株式会社ネットビジョンはMIPI A-PHY対応のデシリアライザボードなど、A-PHYデバイス(VA7000シリーズ)を開発した。また日本ケミコンはVA7000にA-PHYで映像信号を送れるカメラモジュールを発表した。2023年の人とくるまのテクノロジー展(5月)や国際画像機器展(11月)で2社はデモを行っている。A-PHYをベースに伝送距離を15mから40mに伸ばし、大型の自動車に対応した規格をネットビジョンは開発中だが(2024年8月現在)、規格名称はMIPIの冠は使わず、「A-PHY○○」になると予想される。
- SWP(えすだぶりゅぴー)
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掃引時間(掃引速度)の略記。オシロスコープやスペクトラムアナライザなどの表示にSWPと表記されることがある。「SWeeP time」か「SWeep Speed」の略記と思われる。
- STamigo(えすたみーご)
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米国の大手計測器メーカTektronixの日本法人であるソニー・テクトロニクスが、1990年代に行ったイベント(販売施策)の名称。「STamigo™ エスタミーゴ」と表示(印刷)されたデジタルオシロスコープTDS300/Pシリーズのカタログ(1998年8月発行)が残っている。鳥のキャラクターデザインを使っている。1990年代初頭まで同社は直販が主で、営業マンを「フィールド・エンジニア」(顧客に製品の説明を行う技術者)と位置づけていたが、間接販売に大きく転換し、1993年頃から始めた「販売チャネルの開拓」がSTamigoと思われる(30年前のため実態は不明)。 呼称はSTamigo(スタミーゴ)ではなく、「S(エス)Tamigo(タミーゴ)」。amigoはスペイン語で「友達」だがTamigoの意味は不明。「ST(ソニー・テクトロニクス)amigo(友達)」の略記かもしれない(あくまで推測)。STamigoは1994年に商標出願され、1996年に登録されている。 ハンドヘルドのデジタルマルチメータ、WaveMeter STA55(STA55G型、STA55H型)の製品カタログ(1994年発行)のトップページには、メーカ名の「ソニー・テクトロニクス」とSTamigoの表記があり、最後のページの一番下に小さな字で、次の但し書きがある。「STamigo(エスタミーゴ)は、記載されているソニー・テクトロニクス(株)製品の販売店の総称です。」 中古販売サイトに出品されたWaveMeter STA55Gの写真には、型名(※)の近くにSTamigoと印刷されている。製品には当時のソニー・テクトロニクスの企業ロゴである「SONY tektronix」の表示があり、表示部の下には「計測器ランド」とある。計測器ランドは秋葉原にある大手計測器販売会社の「東洋計測器」の店頭販売(ショップ)の名称である。 (※) ソニー・テクトロニクスは製品のモデル番号を形名ではなく型名と表記している。「MSO4104型」というような表現がホームページや資料にされていることがある。つまり、モデル番号を「○○型」(○○は形名)と表現する。この表記方法がソニー由来かは不明。たとえば横河電機はモデル番号を形名というので、横河関連会社は自然とそれに倣っている。たとえば横河電機が計測器を分社化した横河計測は、モデル番号を形名と表記している。形名と型名は、どちらが正しいということはない(以下の参考記事「計測器の形名」が詳しい)。 1990年代にテクトロニクスが発売したハンディDMMのSTA55シリーズを中心に、販売会社の名前を印刷したモデルをつくり、販売店が売るという、ソニー・テクトロニクスの「新規販売店募集キャンペーン」がSTamigoだったと推測される。STA55シリーズは販売店専用のモデルだったかは不明(型名がSTamigoと類似している)。2019年10月に当サイトに「STA55GとSTA55Hのカタログを探している」という問い合わせがあった。つまり、STA55シリーズはそれなりに販売実績があったと思われる。STamigoの対象モデルや、計測器ランド以外の販売実績などは不明。 上記の中古販売サイトとは別のECサイトには「製造元:SONY Tektronix、商品名:STA55G STamigo WaveMeter」と表記された商品がある。製品に印刷された表記を忠実に(余すところなく)転記して、メーカ名と形名を表記している。この商品には販売店の会社名が印刷されていない(つまり販売店経由でなく販売された物もあることを意味する)。計測器を収納するソフトケースには「STamigo」と書かれて、まるでSTA55Gの通称のようである。 また「TDS380P STamigo TWO CHANNEL DIGITAL REAL-TIME OSCILLOSCOPE 400MHz 2ch 2GS/s」と表記された商品もある。これも現品の表記を忠実に再現して、「メーカ名・形名・品名・仕様」の順番に並べたことが写真からわかる。つまり、TDS380PにはSTamigoの表記があるが、販売店名が印刷されていないモデルが流通している。TDS340APやTDS360PもSTamigoと表記された商品が中古計測器販売サイトにあるので、TDS300/PシリーズのSTamigoはそれなりに売れたモデルと思われる。中古サイトの製品写真を見る限りは、TDS300/Pシリーズには販売店名の表示はない。 「希少 STamigo STA36 DMM」という商品の情報がネットにある(オークション開始日2021年12月、落札価格2100円)。製品の写真から推測すると、STA55の下位モデルと思われる。製品にはSTamigoとSTA36はあるが、販売店の表記はない。 オークションサイトに「工具セット(ツールセット 電工)ソニーテクトロニクス レア 珍品」なる商品の公開履歴がある。アタッシュケース状の黒いソフトケースを開くと工具セットになっていて、ドライバーなどに「STamigo by SONY/TEKTRONIX」と印刷されている。STamigoの粗品(キャンペーンの賞品?)であろうか。 断片的ではあるがSTamigo商品(施策? イベント? キャンペーン?)の実態が、当時の製品カタログやネット商品の製品写真(2024年1月現在)から推測される。
- XYモード(えっくすわいもーど)
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ほとんどのアナログオシロスコープに備わっていた機能の1つ。デジタルオシロスコープでもマニュアルに「時間軸 Y-T モードをX-Y モードに変えると,リサジュー図形が表示される」などの記述がうかがえる。オシロスコープは通常は時間変化を観測するが、2つの信号の位相差を測定したい(波形表示させたい)ときに使われる。通常、水平軸にはオシロスコープ内部の信号を時間軸信号として使っているが、XYモードでは位相差を観測したい2つ目の信号を水平軸に入力できる。時間観測以外のオシロスコープの測定手法の1つである。 テクトロニクスの冊子「オシロスコープのすべて」(2017年4月発行)には「XYモード:1つの入力信号を垂直軸システムに、もう1つの入力信号を水平軸システムに入力し、2つの電圧をX軸、Y軸の両方に表示させる測定方法」とある。 参考用語:リサジュー、オービット 参考記事:デジタルオシロスコープの基礎と概要 (第1回)・・冒頭の歴史の箇所で、アナログオシロスコープがCRT(ブラウン管)に垂直偏向電圧と水平偏向電圧をかけることで描画する構造であることが示されている。
- エッジ(えっじ)
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(edge) エッジには多くの意味がある。端(はじ)。きわ。ふち。へり。図形の辺(線分)。先端的。表記は「エッヂ」もあるが、筆者は「エッジ」が多いと感じる。 1. 計測器では、デジタル信号が立ち上がる(または立ち下がる)、波形のスロープのこと。オシロスコープの基本機能であるトリガで、一番使用頻度が高いのはエッジトリガである。フルーク(フルーク・キャリブレーション)はマルチプロダクト校正器の「オシロスコープ校正用の出力信号」のことをエッジと呼称している。デジタル信号の電圧がlow(0、ゼロ)からhigh(1)レベルへ遷移することを立ち上がりエッジというが、オシロスコープの周波数帯域の確認(校正)のためには、校正用の信号の立ち上がり時間が短い(立ち上がりが速い)ことが重要であるため、同社は校正用の信号をエッジと呼んでいると思われる。 論理回路の設計用言語(プログラム)では、立ち上がりエッジをposedge(ポスエッジ)、立ち下がりエッジをnegedge(ネグエッジ)と呼んでいる。pos negは「正負」を意味する接頭辞として使われている。Rhの血液型が「陽性」、「+」だとpositiveを略記してPOS、「陰性」、「-」はnegativeでNEGとなる。 デジタル無線通信の計測器で使われる規格(方式)名称にEDGE(読み方:エッジ)がある。カタカナのエッジではなくEDGEだと、2G(携帯電話の第2世代移動通信システム)で使われるデータ通信規を指す(Enhanced Data Rates for GSM Evolution)。GSMは世界で最も利用されているデジタル携帯電話の通信方式。欧米や、日本/韓国以外のアジアで100以上の国と地域で利用されているため、事実上の世界標準といえる。EDGEは「GSMの後継方式で、GSM384、UWC-136とも呼称される」ので、3Gである。日本ではNTTが2001年に世界初の3G(W-CDMA)を運用開始したが、EDGEはそれと同じ位置づけの欧米(や中国など)の規格である。欧米と日本では3Gまでの携帯電話の規格が異なり、3Gへの移行も同じではないので、素人が正確に理解することは難しい。 2. ITや通信業界では、クラウドとの対比でエッジが使われる。クラウドはネットワークの基幹部分(コアネットワーク)に相当し、ネットワークにつながる多くの端末に近い箇所をエッジ(ネットワークの端、ふち、という意味)と呼ぶ。IoT(モノのインターネット)は多くの端末(エッジデバイス)がネットワークにつながることである。計測器メーカもエッジデバイスをつくっている(以下の渡辺電機工業の記事が詳しい)。最近ではエッジAIやエッジコンピューティングということばもある。Microsoft Edge(マイクロソフト エッジ)といえば、インターネットで検索するときに使うウェブブラウザ(PCや携帯電話をWebサーバに接続するためのソフトウェア)で、Google Chrome(クローム)やInternet Explorer(IE)と共に有名である(「エッジ」をブラウザで検索すると上位にMicrosoft Edgeが表示される)。 DCSなどの工業計器のトップベンダである横河電機には多くの製品群があり、レコーダ(メモリレコーダなどの計測器のレコーダではなく、計装用の温度などのセンサの役目をするデータ集録機器)やプログラマブルコントローラ(PLC)、小規模計装機器(温調計、信号変換器、電力モニタなど)などの製品群をエッジソリューション統括部にまとめて、「エッジプロダクトニュース」と題したDMを2021年5月から配信している。初回配信では、“エッジ製品に特化したお役立ち情報を届けるため、従来の「ITプロダクトニュース」を「エッジプロダクトニュース」にリニューアルした”、と冒頭に述べている。前述の渡辺電機工業は横河電機と同じ計装の機器をつくっているが、信号変換器は(エッジデバイスではなく)センサーデバイスと表現している。エッジが示す製品の範疇(エッジデバイス、エッジプロダクトなど)はメーカによって異なるので、あくまでエッジとは概念であり、具体的な製品は各メーカの解釈に任されている。とにかく、ネットワークの進歩に伴って、ITだけでなく計装の世界でもエッジが流行りである。 一般には、エッジは「先端的、尖っている」という意味で使われている。「エッジが効いている」とは「切り口が鋭い」、「際立っている」、「気が利いている」という、秀でていることの褒めことばである。ファッション業界で使われ、一般に広がったといわれる。TechEyesOnlineも、ここでしか知ることができないオンリーワンのコンテンツを満載した、「エッジの効いた、尖がった(とんがった)専門サイト」を目指している。
- エッジトリガ(えっじとりが)
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(edge trigger) オシロスコープ(オシロ)のトリガの種類(トリガタイプ)で最も基本的な(1番目の)トリガ。対象とする測定信号(トリガソース)の波形の傾き(信号が増減するスロープ)に着目して、電圧が何V(ボルト)になったら(トリガレベル)、トリガをかけるのか(画面に波形を表示するのか)、を条件にする。信号の値(電圧値)が増加しているときと、減少しているときの2通りの状態(波形が傾いているスロープ)で設定ができる。このスロープは信号がH(ハイ)やL(ロー)の一定な電圧値で安定している状態ではなく、HとLが遷移する信号波形(パルス)の端(はじ)の短時間の箇所なので、エッジ(edge)と呼ばれる。「エッジの電圧値(トリガレベル)を指定してトリガ点(トリガのタイミング)とする」ため、エッジトリガと呼ばれる。 1950年頃にオシロにトリガ機能が開発され、連続した信号以外の単発現象などを安定して表示して、波形観測ができるようになった。そのときからエッジトリガは使われている。つまりトリガといえばエッジトリガである(当時はエッジトリガ以外のトリガタイプがなかったのでこのことばは後に生まれたと推測される)。当時はアナログオシロスコープしかなかったので、電圧の値というアナログ的な特長を捉えて、水平掃引を同期して波形表示を開始した。現在のデジタルオシロスコープはトリガに無関係にメモリにデジタルデータを蓄積しているので、トリガはメモリのデータを画面に表示するきっかけで、トリガ以前の波形(プリトリガ)の表示も容易である。またロジックデータを比較してトリガをかけるなど多彩な種類のトリガを装備している。 電子機器の試作品が完成したときに、設計した仕様通りに電子回路が動作しているか確認する(デバッグ)さい、エッジトリガを使って検証することは、オシロの基本的な使い方の初歩である。
- HDO(えっちでぃーおー)
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(High Definition Oscilloscope) レクロイ(現テレダイン・レクロイ)の高分解能オシロスコープの形名。同社は2011年に、それまでデジタルオシロスコープが踏襲してきた8ビットのADコンバータを12ビットにしたHRO(周波数帯域600GHz)を発売。翌2012年10月にはHDO4000(400GHz)とHDO6000(600GHz)の2シリーズを発表し、高分解能オシロスコープという新しい機種群を提案した。HDOはHigh Definition Oscilloscopeに由来すると推測される(メーカが命名する形名の意味は、通常は公表されることはないので、推測)。同社HPでは「テレダイン・レクロイの高分解能オシロスコープ (HDO ®)」という表記がされている。®(Rマーク)はRegistered Trademark(登録商標)を意味する記号。 同社の現在の12ビットモデルを下から周波数帯域順に並べると以下(2025年1月、同社HPより)。 WaveSurfer 4000HD(200MHz ~ 1GHz) 2019年11月発売 HDO6000B(350MHz ~ 1 GHz) 2021年4月発売(2012年発売品をBモデルへリニューアル) WaveRunner 8000HD(350MHz ~ 2GHz) 2019年10月発売の8chモデル WavePro HD(2.5GHz ~ 8GHz) 2018年5月発売(発売時価格475万~1115万円、MSOモデルあり) WaveMaster 8000HD(6GHz ~ 65GHz) 2023年9月発売(高速オシロスコープの高分解能化) 同社は200MHzから65GHzまで、ミドルクラスの汎用オシロスコープから高速な広帯域オシロスコープまで高分解能モデルをラインアップしていることがわかる。テクトロニクスも4シリーズB MSO(200MHz~1.5GHz)から6シリーズB MSO(1GHz~10GHz)の3モデルが12ビット対応している。横河計測の汎用オシロスコープDLM3000も2024年9月に12ビットのDLM3000HD(350MHz/500MHz)にリニューアルした。リゴルが2024年11月にリリースした同社初の8chオシロスコープ、MHO/DHO5000(500MHz/1GHz)も12ビットである。200MHzから数GHzのオシロスコープは高分解能がほぼ標準になってきたといえる。 High Definitionは「高解像度」、「高精細」だが、ADコンバータのビット数はオシロスコープでは分解能(resolution)と呼ばれるため、日本語では「高分解能オロスコープ」と呼ばれている(「高解像オシロスコープ」や「高精細オシロスコープ」ではない)。テレダイン・レクロイはHDO4000/6000発売以降に、従来の8ビットモデルを順次12ビット化し、形名の最後をHDとしてリリースしている。オシロスコープでHDは高分解能を示す、という暗黙の了解がオシロスコープメーカにはあるようで、横河計測が2023年に多チャンネルオシロスコープのDLM5000シリーズを12ビットに改良したモデルはDLM5000HDである。また、キーサイト・テクノロジーは2024年9月に、汎用オシロスコープのInfiniiVision 3000G Xシリーズ(8ビット)を10年ぶりに更新した14ビットモデル、InfiniiVision HD3シリーズ(200MHz~1GHz)をリリースした。レクロイ、横河計測、キーサイトが「高分解能はHDにする」という法則に従って形名を命名している。テクトロニクスは特別に区別してHDとは呼称していない(5シリーズMSOなどにはHDモードがあり、高分解能になる)。 HDOはDSOやMSOのように複数メーカの形名として採用されていないが、「HD」はオシロスコープの共通形名となった。2024年は横河計測のDLM3000HDとキーサイト・テクノロジーのHD3という、ミドルクラスの代表機種にHD形名が登場したので、汎用オシロスコープの高分解能モデルの形名、HD元年となった、と筆者は思っている。 2000年代初頭に輸入開始された中華系オシロスコープの先達であるリゴルは、2010年代に発売したDS1000Zシリーズ(50~100MHZ/4ch、200mMHz/2ch、MSOモデルあり、51,800~153,000円 2025年1月現在)がヒットし、より小型化したエントリーからミドルクラスの後継モデル、DHO800/900シリーズを2023年秋に発売した(DHO802:70MHz/2ch/49,500円 ~ DHO924S:250MHz/4ch/25MHz信号発生器内蔵/145,000円 2025年1月現在)。このモデルは12ビット、つまり高分解能で、同社は高分解能モデルの形名をDHOとしている(デジタル入力があるMSOタイプの形名はMHO。つまりDSO、MSOの高分解能モデルがDHO、MHOである)。この形名にはいわくがある。 同社は2022年に初の12ビットモデル、HDO4000シリーズ(200MHz~800MHz)を発売した。12ビット高分解能で100万円以下という衝撃的なモデルだった。HDOが高分解能モデルの正式形名となるかと思いきや、同社は2022年11月08日に形名をDHO4000に変更した。「先にHDO形名を使ったメーカがあり、商標などの関係があった」とされるが定かではない。本当だとすればレクロイ以外にHDO形名は使えない。DSOやMSOのようにメーカ共通の形名とはならない、ということになる。アルファベット3文字は商標登録ができるので他社が使えない可能性は十分にある(そのため計測器メーカなどの形名はアルファベット2文字が多い)。 HDOはアルファベット3文字なので、本稿以外の意味でも多く使用される。化学分野で遺伝に関連するヘテロ二本鎖核酸はHDO(heteroduplex oligonucleotide、ヘテロ・デュプレックス オリゴ・ヌクレオチド)。OAKLEY(オークリー)が特許を持つレンズ技術にHigh Definition Optics® (HDO®)があり、サングラスなどが商品化されている。株式会社H.D.O(エイチディーオー)は広島県の自動車関連の会社。 業務用厨房機器で有名なホシザキ株式会社には「HDO-1A デッキオーブン」がある。テレダイン・レクロイ同様に製品の形名にHDOが使われている!つまり他社でも容易にこのようなHDO形名が存在する。この場合はHDOの後に数字が続かないので本稿のHDOの商標を侵害しないのであろうか? 識者がいらしたらご教授を賜りたい。
- FETプローブ(えふいーてぃーぷろーぶ)
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(FET probe) 主にオシロスコープ(オシロ)と併用されるアクセサリ(プローブの1種)。入力容量が小さいため高い周波数を測定できる電圧プローブ。別名、アクティブプローブ。分類は能動プローブ。FETは電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor)のことで、FETを使用したプローブである。FETを使用していることが多いが、必ずしもFETを使っているとは限らない。パッシブプローブ(受動型)では実現できない性能を出すために、信号の入力段にFETを使った能動型のプローブをつくったのが語源である。 能動プローブ(アクティブプローブ)のうちシングルエンドのもの(差動でないもの)をFETプローブと呼称している場合が多い。メーカによっては「シングルエンドプローブ」と呼び、名称(品名)がFETプローブではないこともある。オシロメーカによって名称は不統一で、同等性能のプローブを他社で探すことが初心者には難しい。FETプローブの正確な定義も難しい(メーカはどのような意図でFETプローブと呼称しているかは非公開である)。 一般的な普段使いのオシロ(汎用オシロスコープ)にはチャンネル数分のパッシブプローブ(受動プローブ)が標準添付されていることが多い。FETプローブのようアクティブプローブはパッシブプローブでは対応できない場合に使用され、測定対象の性能(周波数やインピーダンスなどの条件)によって選ぶ必要がある。また、使用するオシロと性能が合っていないといけない(たとえば周波数特性が合っていないと正確な波形測定ができない)。 能動プローブは電源供給が必要になる。併用するオシロによっては、オシロ本体から電源供給するより、別途電源ユニットを準備する方が良い場合もある。プローブ・インタフェースなど、FETプローブは使用できるオシロが限られることもあり、メーカのカタログや説明書で確認する方が良い。 FFTアナライザのユーザで、スペクトラムアナライザにスタック電子のFETプローブを使用する事例があるので、ほとんどオシロで使用するが、厳密にはオシロ専用のアクセサリとはいえない。
- MSO(えむえすおー)
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( Mixed Signal Oscilloscope) 現在の汎用オシロスコープ(オシロ)の代表的な機種群。従来オシロはアナログ信号を観測するものだが、I2Cなどの低速デジタル信号も観測できるデジタル入力付きが、ミドルレンジクラス以上では主流になった。MSOとはアナログとデジタルの両方の信号を観測できるという意味。古くはキーサイト・テクノロジーが自社オシロの特徴の1つとしてデジタル入力がオプションなどでできることを「ミックスド・シグナル」という表現をしていたが、このコンセプトをMSOというオシロの1つのカテゴリーとして確立したのはテクトロニクス。現在はオシロのモデル番号(形名・型式)やモデル名(品名・名称)に普通に使われている。たとえばテクトロニクスの「MSO3034 ミックスド・シグナル・オシロスコープ」など。横河計測の最新オシロDLM3000シリーズの品名は「ミックスドシグナルオシロスコープ」である(2020年7月現在。従来の形名「DL」を「DLM」にして、MSOであることをアピールする形名にした。)。
- MDO(えむでぃーおー)
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(Mixed Domain Oscilloscope) スペクトラムアナライザのオプションを持つオシロスコープ(オシロ)のこと。MSO(ミックスド・シグナル・オシロ)に倣って周波数軸(ドメイン)もあるというネーミング。テクトロニクスがオシロの形名にはじめて使用し、MDO4000Cシリーズ、3シリーズMDOなど、ミドルクラスのモデル名にはMSOかMDOを形名に使っている(2023年7月現在)。中華系オシロスコープメーカのGood Will Instrument(グッドウィル)もオシロの形名に使っているが(MDO-2000Eシリーズ)、それ以外のメーカでは見かけない(2023/7月現在)。Mixed Domainというフレーズには筆者は多少、違和感を覚えるが、テクトロニクス、Good Will以外のメーカもそうなのかもしれない。 最近のオシロは高機能化している。信号発生器などオシロ以外の測定器のオプションを揃えるモデルもある。MDOは多機能化を象徴する形名といえる。2023年1月に当サイトが実施したアンケート調査で、「オシロで使っている他の計測器の機能は?」という質問に、スペアナという回答は14%だった。つまりMDO機能の使用率は低いといえる。 みんなの投票 第2弾 オシロスコープの使用状況&主要メーカ比較記事[投票結果] (Question 7 で「オシロ以外の機能」を質問) ADコンバータを従来の8ビットから12ビットにした高分解能オシロスコープが2010年代には増えたが、これは高機能化というより、従来から測定できていた電圧の値が、実は安価なDMMよりも精度が悪かったのを改善した、ということである。なので、DMMの機能を取り込んだ高機能化という解釈もあるようだが、筆者はそうは思わない。 1945年に創業し、翌年にはトリガ式オシロスコープを商品化したテクトロニクスは、長らく世界No.1のオシロメーカで、現在もトップである。同社はTDS、DPO、MSO、MDOなど、新しい機能のオシロのモデル名・品名を作ってきた。MSOという形名を使ったのはテクトロニクスが最初だが、ミッスド・シグナルというワードはキーサイト・テクノロジーが1990年頃から使っていたワードである。
- エリアシング(えりあしんぐ)
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(aliasing)サンプリング周波数の1/2の周波数(fs/2)よりも高い周波数成分は、周波数 fs/2 を中心にして、低周波側に折り返したように見える現象。 アナログ値(連続した信号)である物理現象を測定した後で、コンピュータ処理に適したデジタル値(離散データ)にする手法にサンプリング(標本化)があり、計測器を含む多くのデジタル電子機器で使われている。サンプリング周波数 fs (※)は測定する信号の周波数 fm の2倍以上である必要がある(サンプリング定理)。つまり fs > fm x 2 (fsはfmの2倍以上)。fs/2 (サンプリング周波数の1/2の周波数)よりも高い周波数成分は、サンプリング時に低周波側に現れるが、これは偽(正しくない)データで、ノイズといえる。エリアシングは「折り返し雑音(folding noise)」や「エリアシングノイズ」とも呼ばれる。つまりサンプリング周波数が低いと、ノイズによって正確な結果が得られない(サンプリングで得られたデータは正しくない)。 サンプリングとは連続して変化している値を一定間隔(時間)で間引いて、デジタルデータをつくること。間引く間隔が長い(ゆっくりした間隔でサンプリングする=サンプリング周波数が低い)と、急な変化には対応できないので、できたデジタルデータは不正確で、元のアナログデータ(測定信号)を正確に反映できない。元の信号が急な変化をしているのは高い周波数成分を含んでいるからで、その周波数の2倍の周波数でサンプリングする、という目安がサンプリング定理である。 エリアシングはFFTアナライザなどのFFT解析で使われる用語だが、オシロスコープ(もちろんデジタルオシロスコープ)の使い方として、測定したい信号の周波数成分からエリアシングを考慮してサンプリングレートを設定することがあげられる。エリアシングを防止するには、fs/2の周波数以上をカットするLPF(Low Pass Filter、低域通過フィルタ)を使用する。 そのため、このLPFをアンチエリアシング・フィルタという(LPFについては用語「フィルタ」に図解がある)。fs/2は「ナイキスト周波数」と呼ばれる。 実際の測定信号にはどれだけ高い周波数成分が含まれているかわからない。そこでLPFによって高い周波数をカットすれば、最大周波数からサンプリング周波数を決められるのでエリアシングを防止できる。 aliasingの語源は「別名」という意味のalias(エリアス、エイリアス)。デジタルデータを扱っていて「元の信号とは異なる、偽の信号(別の名前)に変わってしまう」現象をaliasing(aliasしている、別名になっている)と呼んだ。日本語のカタカナ表記は「エリアシング」、「エイリアシング」の2つがある。 (※)周波数は英語のfrequencyから「f」で略記される。何の周波数かを区別するためfの後に略記を続ける。サンプリング周波数は、英語samplingのsをとって「fs」と表記している(あくまで一例であり、必ずfsでないといけないというわけではない)。数学(物理)では、このような表記を良く使う。fsでなくてf(s)でも良さそうだが、f(s)と書いたら「sという物理量によって変化するfという物理量」という意味で、関数を表記する書き方、と数学での決まり事になっている。f(s)のsは関数fの引数(いんすう)と呼ばれる。
- LVDS(えるぶいでぃーえす)
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(Low Voltage Differential Signaling) 翻訳すると「低電圧差動伝送」。漢字の日本語よりLVDSという表現のほうがよく使われる。短距離のデジタル伝送技術。省エネ型のシリアル通信。低消費電力で比較的高速なインタフェースである。 1994年にANSI/TIA/EIA-644として標準規格となり、コンピュータ関連から採用が始まった。 LVDSは現在流行りのシリアル通信の基礎的な技術で、他の高速規格にも参考にされている。そのためシリアル通信の歴史を切り開いたといわれる。
- エンベロープ(えんべろーぷ)
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(Envelope) 電気の用語としては「包絡線」のこと。信号の最大値と最小値(つまりピーク、頂点同士)を結んだ曲線。エンベロープ は信号処理などに活用される。テクトロニクスの冊子「オシロスコープのすべて」(2017年4月発行)では「多数の表示波形から得られた、信号の最大値と最小値が描く波形」と解説されている。 参考用語:包絡線検波器・・「包絡線」の図解がある。
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