計測関連用語集

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LCRメータ(えるしーあーるめーた)

(LCR meter) 回路部品のインダクタ(L)、キャパシタ・静電容量(C)、抵抗(R)を測定する測定器。交流を印加し、部品の複素インピーダンスを等価回路で表示する、交流インピーダンス測定器の最も基本的なモデル。おおよそ数百kHzまでをLCRメータといい、MHz以上の周波数になるとインピーダンスアナライザと呼ばれる(メーカによって決まりはない)。LCRメータは測定周波数が固定(モデルによっては複数から選択)、インピーダンスアナライザは周波数を掃引してf特(周波数特性)を表示する、という違いがある。 通常、集中定数回路では周波数に無関係なR(抵抗)と、周波数に影響されるリアクタンス(キャパシタンスCとインダクタンスL)の3つが定義されている。順番はRが最初でCかLと続き、説明される。なのでRCL(またはRLC)が略称だが、逆の順番でLCとRとしたのがLCRの由来と思われる。低周波の発振器であるRC発振器などとは違い、RよりもLを最初にしている。hp(現キーサイト・テクノロジー )やWayne Kerr (ウエインカー)、GenRad(ジェンラッド、現IET Labs)などの海外メーカがLCRメータの走りだが、命名の由来は不明(知っている方には教えを乞います)。 LCRメータの世界No.1メーカはキーサイト・テクノロジー。インピーダンス計測のラインアップが多く、低周波から高周波まである(インピーダンスアナライザやネットワークアナライザでは業界標準)。国産メーカでは國洋電機工業や桑野電機、安藤電気がラインアップしてきたが撤退した。エヌエフ回路設計ブロックも古くからつくっていて、最近ラインアップを増やした(同社にはFRAがありその分野からのアプローチも大きい)。日置電機はLCR部品メーカの生産ライン向けのモデルでシェアを高め、MHz帯域の汎用モデルも開発し、現在の国内シェアではトップクラス。国内のLCRメータ、インピーダンスアナライザ市場は日置電機とキーサイト・テクノロジーにほぼ収斂されたといえる(つくっているメーカは多いがシェアは日置電機とキーサイト・テクノロジーが寡占している)。 LCRメータの外観はベンチトップが主流だが、現場測定器の三和電気計器、マルチ計測器はハンドヘルドのモデルをつくっている(キーサイト・テクノロジーも形名の頭がUで始まるハンドヘルドモデルを最近、リリースしている)。台湾のGW Instek(GOOD WILL INSTRUMENT)の日本法人(販売会社)であるテクシオ・テクノロジー や、無線通信測定器のローデ・シュワルツ も最近、ベンチトップ型のLCRメータを発売している。スイスのチューリッヒが本社のテストおよび測定の会社、Zurich Instruments AG(チューリッヒ・インスツルメンツ)は2020年頃から国内の展示会にインピーダンス測定器を出品している(ローデ・シュワルツ本社内に日本の事務所があることが2023年3月現在、ホームぺージに記載されている)。 LCRメータに限らず、インピーダンス測定器はDUT(測定対象)とのセンシング(接続)にノウハウがある。標準の測定治具としてはテストリードやテストフィクスチャを各社ともアクセサリとして用意している。

LC共振(えるしーきょうしん)

(LC resonance) L(コイル、インダクタンス)とC(コンデンサ、キャパシタンス)で構成された電気回路は特定の共振周波数をもつ。そのため、特定の周波数の信号の生成や、特定の周波数の抽出ができる。チューナーや周波数混合器、発振やフィルタ回路などの電気回路、電気機器に使われる。 共振は物理の重要な現象で、地震で建物が揺れる振動数は、「建物に固有の値(固有振動数)」であるために、その建物に特有の揺れ方をすることは知られている。電気回路の共振とは、LとCを直列(や並列)にした回路がLとCの値で規定される特定の周波数で特異な現象になる(電流や電圧やインピーダンスが特長的な値になる)ことをいう。LとCの単位はL[H(ヘンリー)]、C[F(ファラッド)]。

LCR(えるしーあーる)

電子部品の中で、コイル(インダクタンス)をL、コンデンサ(キャパシタンス、静電容量)をC、抵抗器(レジスタンス、抵抗)をRと略記し、それらの受動素子(受動部品)をLCRと呼称する。CはCapacitance(またはCapacitor)、RはResistanceからとった記号。Inductance(またはInductor)がLなのは、英文字のI(やi)は電流を表す記号で使用されているため、混乱を避けて使っていない。なぜLなのかは不明(インダクタンスを示す電磁誘導に関する「レンツの法則」のLenzという説もある)。 LCRは電子部品の受動素子(コイル、コンデンサ、抵抗器などの電子部品)を表している場合と、インピーダンス(複素数)の構成要素(虚数部分)のリアクタンス(インダクタンスとキャパシタンス)や実数部分のレジスタンスを表している場合がある。 電子部品に交流電圧を印加してLCRの値を等価回路(R、C、Lが直列、並列につながった回路)で示すのがLCRメータやインピーダンスアナライザである。LCRは集中定数回路で表される物理量で、周波数が高く(およそGHz以上)なるとLCR成分を分離できなくなり、ネットワークアナライザによってSパラメータで測定を行う。マイクロ波やミリ波は波長が1m以下に短くなり、LCR成分が伝送路の全体に分布している、分布定数回路になる。 通常、受動素子を複数並べて示すときはRC発振器やRLC負荷のように、まずRが1番目でC(またはL)が続く。複素インピーダンスの実数部のRと虚数部のCやL、という順番に倣った記述である。ところがLCRはそれに従っていないのは、計測器の名称である「LCRメータ」が影響していると思われる。なぜRCLメータやRLCメータではなく、LCRメータと計測器メーカが命名したのか不思議である。Rよりも、周波数によって値が変化するLとCを交流信号によって測定することが主眼なので、LとCがRよりも先に示されているのかもしれない(それならばCLRメータでない理由も知りたいところである)。 金融・証券用語としては、LCR:Liquidity Coverage Ratio(流動性カバレッジ比率)があり、銀行や市場で危機が1カ月続いた場合の「流出資金と保有する流動資産の比率」を指す。一般には、前述の電気のLCRや計測器のLCRメータより、こちらの方がメジャーである。 また、LCRはLeast Cost Routingの略で、最低料金回線自動選択機能を意味する。1985年の通信自由化を受けて新電電などのキャリア(通信事業者)が設立され、固定電話にもNTT以外の選択肢ができた。新しい通信キャリアはNTTよりも通信料金が安価になる場合があり、「自動的に最も通話料金の安い電話会社を選択する機能(サービス)」をLCRと呼んだ。現在は通信の主力が携帯電話になったため、この機能はあまり使われていない。 なので、回路素子測定器をRLCメータ(またはRCLメータ)と命名しておけば、金融用語や通信用語のLCRと重複しなかったのに、残念である。

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