計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
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ネットワーク・タップ(ねっとわーくたっぷ)

ネットワークの通信の状態のタッピング(通信を邪魔しないモニタ)をする機器。車載Eherenetで製品化されている。通信しているリンクからデータを引っ張ってきて、データロガーやPCで解析するなどの用途で使われる。車載Ethernet製品で先進のラインアップがあるTechnica Engineering社はCANやLINのラインからデータを取るモジュールも用意している。参考記事(会員専用):【展示会レポート】人とくるまのテクノロジー展 2022 横浜 ・・ガイロジック株式会社が取り扱っている車載Ethernet製品を取材。

ネットワーク負荷試験機(ねっとわーくふかしけんき)

(network performance tester/IP network traffic generator) 通信回線(ネットワーク)の機器(交換機やルータ、サーバなど)に大量の情報を送る(大量のトラフィックを流す)ことを負荷試験という。一般に計測器で負荷試験というと、高い電圧を印加して耐久性を試験する耐電圧試験(耐圧試験、高電圧試験)もあるので、通信の負荷試験の場合はIP負荷試験装置やネットワーク負荷試験機など、頭に通信であることを追記する(通信の負荷試験でも、単に負荷試験機と呼称している場合もある)。 インターネットが普及した2000年頃にネットワーク負荷試験機の代名詞であるSmartBits(スマートビット、略称:スマビ)をつくった米国スパイレント(SPIRENT Communications Inc、販売は東陽テクニカ)は、現在はホワイトハッカーを率いるセキュリティ会社だが、計測器ではSpirent TestCenter(テストセンター)が現役である。名称は「ネットワーク・パフォーマンステスタ―」や「トラフックジェネレータ」などで、製品カタログのサブタイトルは「次世代IP負荷/擬似エミュレータ」である。つまり、トラフック(情報、情報量)の発生器(ジェネレータ)で、ネットワーク装置やネットワーク全体のスループット/遅延/ジッタなどを測定して性能・処理能力(パフォーマンス)を評価し、大量のネットワーク装置を擬似できて(エミュレータ)、次世代のIPなどの広い通信規格に対応している、といっている。東陽テクニカのホームページには「負荷試験」ということばは出てこないが、まさにネットワーク負荷試験機である。 負荷試験を英訳するとload testである。loadでは英語としては通じない。ここでいう負荷を掛ける、というのは日本語であって、英語では「traffic generator」や「performance tester」のように、トラフィックやパフォーマンスと表記しているので、東陽テクニカも負荷試験と表現していないと推測される。また、ネットワーク機器や回線の代わりをするエミュレータで、擬似ネットワーク機器(及びネットワーク)なので、「擬似エミュレータ」という表現もしているが、これは品名ではない。交換機に負荷を掛けて(多くの電話機からの発信・着信などの呼を与えて)性能を評価したり、回線にトラフィックを流す計測器をコールシミュレータ(呼をシミュレーションするもの)というが、電話機ではなくインターネット時代のシミュレータがネットワーク負荷試験機(ネットワーク・パフォーマンステスタ、トラフィック・ジェネレータ)といえる。 通信計測器の雄、アンリツのIPネットワークアナライザ MD1231A1は、「IPネットワーク負荷試験機能とモニタリング機能を一体化したポータブルIP測定器。小型・軽量で、ネットワーク敷設/保守での性能試験やモニタリングに最適」とうたっていた(すでに製造中止)。後継のデータ クオリティ アナライザ MD1230Bの特長は「・10Mbit/s~10Gbit/sまでのイーサネットインタフェースに対応、・1台あたり最大60ポートまでのポート拡張性(10/100/1000 M)、・フルワイヤレートのトラフィック発生と、ネットワークのリアルタイムモニタリング」である。これらの特長はSpirentのTestCenterの競合品であることが明白である。TestCenterと同様に品名には「負荷試験」はない(ネットワークアナライザ、データ・クオリティ・アナライザ、つまりネットワーク解析器、データ品質アナライザである)。 余談だが、計測器(測定器)は機ではなく器なので、負荷試験機ではなく負荷試験器が適切だが、ほとんどの計測器メーカの品名は負荷試験器でなく負荷試験機である(理由は不明)。試験器の場合もあるので、負荷試験装置と表現すると無難だが、多くのメーカに倣い「負荷試験機」という表記を採用した。

ネットワークマスタ プロ(ねっとわーくますたぷろ)

(network master pro) アンリツのOTN/SDH/SONET関連測定器(OTN、SDH/SONET、PDH/DSnインタフェースを持つネットワーク装置やデバイスの評価測定器、古くは1990年代の SDH/SONETアナライザなど)の現役モデルMT1000A、MT1040Aの名称(品名)。 MT1000Aは通信速度1.5M~100Gbps(bit/s)に対応し、名称のサブタイトルに「イーサネット/CPRI/OTDRテスタ」とある。MT1040Aは10M~400Gbpsに対応し「400Gテスタ」と表記されている(2023年同社ホームページより)。本体はメインフレームで、測定モジュールを実装して各種の通信方式に対応するモジュール式計測器である。10GマルチレートモジュールMU100010Aを使うと、1.5M~10Gbpsの通信ネットワークの開通・保守に必要な機能・性能になる。つまりフィールドでの使用を想定していて、OTDRモジュールもある。ネットワークマスタ プロは、さまざまなネットワークの開通保守に対応するアンリツのプラットフォームの名称といえる。MT1040Aは400Gイーサネット(400GbE)の物理レイヤを測定する小型(B5サイズ)の測定器で、同社は「業界最小サイズ」とPRしている。400Gイーサネットはデータセンタ内の通信で導入が進んでいる。 NTT(旧電電公社)は日本の基幹通信網を整備してきたが、時代と共に新しい伝送交換の装置が開発・導入されてきた。NTTは研究・開発を行い、実際の機器の設計・製造は電電ファミリー各社が行って、NTTに納品した。伝送交換の通信機器は日本電気、富士通、沖電気、日立製作所(いわゆる「NFOH」と呼称される交換4社)がつくり、装置を試験する計測器はアンリツや安藤電気などが設計・製造した。たとえばITU-Tが規定した世界的な共通規格「SDH/SONET」に対応する伝送装置(1990年から導入開始された新同期網)を試験するのがSDH/SONETアナライザである。インターネットが普及しネットワークのキー装置としてルータが登場し、交換機が主要な通信装置でなくなるまで、アンリツと安藤電気は伝送/交換装置用測定器をつくり続けた(形名はアンリツがMPxxxxA、安藤電気はAP-xxxxが多い。x:数字4文字)。 アンリツの1990年代のSONET/SDH/PDH/ATMアナライザMP1570Aは、小型・可搬型、モジュール式で、当時の多くの通信規格に対応したヒット製品だった。後継品はネットワークパフォーマンステスタMP1590A/Bで、その後継がMT1000A、MT1040Aになる。1990年頃の「SDH/SONETアナライザ」が、IPの普及によって、規格名称を品名にすることがなくなり「ネットワークパフォーマンステスタ」、「ネットワークマスタ プロ」と変遷したことがわかる。また、従来この分野の測定器(伝送/交換装置用測定器)は形名の頭がMPだったが、アンリツの現役モデルはBERTしかなくなった(MP1900AとMP2110A。2033年11月現在)。 形名MTは同社のtester(テスタ)を意味し、ワンボックステスのような総合試験器である。その意味では通信計測器の主力(大きな売上を占めた)伝送/交換装置用測定器はほとんど縮小し、ギガビットAN(GbE)などの高速通信規格に対応する総合評価ツールが有線通信の主力測定器になったといえる。ただし、SDH/SONETは装置としては現役なので、同社のネットワークマスタ プロの機種群(カテゴリー)のタイトルは「OTN/SDH/SONET関連測定器」である。通信網や通信規格の変遷(歴史)を知らないと、通信計測器の品名から何の測定器(どのカテゴリー)か、正しく理解することはできない。通信計測器は知識のある人達だけのニッチな村社会である。

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