計測関連用語集

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光チャンネルセレクタ(ひかりちゃんねるせれくた)

多数の光信号を1つに切り替える機器。略称:チャンセレ。

光通信測定器(ひかりつうしんそくていき)

現在、世界の先進国では基幹通信網の有線通信は、電線に電気を流すのではなく、光ファイバにレーザー光を通すことで行われている。日本ではNTT(旧日本電信電話公社:略称、電電公社)が1970年代から実用化を始めた。現在ではインターネットを光回線で契約しているユーザも多い。世界の状況では、1990年代にはEU、北米、日本などは海底に敷設した光ファイバでつながり(光海底ケーブル)、インターネットの普及を支え、また最近でも新しい海底ケーブルの敷設によって世界中の通信需要をカバーしようとしている(2000年頃の光海底ケーブルバブルで敷設が中止になったが、データ通信量の増大で2020年代には新設がはじまった)。 携帯電話などのワイヤレス(無線)通信では周波数が基本だが、光通信は電磁波の波長が基本になる。光ファイバ通信は(ファイバの伝送損失が最も少ない波長を選び)1300nmと1500nm付近の2つの波長で実用化されている。もっと波長が短い400nm~600nm付近は、DVDなどの光記憶媒体に使われている。近年青色LEDという発光素子が開発され、Blu-ray Disc(ブルーレイディスク)が普及した。そのため、従来の光通信用測定器も波長帯域を1200~1600nmではなく、より短波長の300nm付近からカバーするような機種も増えた。 光源、光パワーメータ(略記:OPM)、光スペクトラムアナライザ(俗称:光スペアナ)、波長計などは、当初、一番の需要は光ファイバとそれを使った通信のために開発されたので、「光通信測定器」であるが、主要な計測器メーカ(アンリツ、安藤電気、キーサイト・テクノロジーなど)は当初から「光測定器」と呼称してきた。光測定器というと、輝度計、照度計、色彩計などの色・光の測定器(いわゆる照明機器や表示装置などの可視光の測定器)もあり、それらの計測器メーカも光測定器と呼称している。そのため、光測定器というとどちらを指すのか紛らわしいが、光通信用測定器のメーカは「光測定器」といって譲らないし、通信だけでなく短波長(DVDなどの家電製品)もカバーするので、いっそう光通信ではなく、光測定器という妥当性が増したといえる。当サイトの機種群(カテゴリー)も光通信測定器ではなく「光測定器」である(メーカの表現に倣っている)。 本稿では誤解が無いように光通信測定器と表記する。まずそのおおまかな種類を述べる。 基本測定器は 1.光源:波長が固定の安定化光源はLD(レーザーダイオード)光源とLED光源があり、可変波長光源はチューナブル光源とも呼ばれる。 2. 光パワーメータ (OPM:Optical Power Meterと略記される):ユニット式で光源モジュールが装着可能な「光マルチメータ」と呼称するものもある。 3.波長測定器:光スペアナ、光波長計。 4.その他:変換器(O/E、E/O)、光減衰器、光チャンネルセレクタなど。 専用測定器は 1. 光ロステスタ(光源とOPMの組み合わせ): IDテスタや光ファイバ心線対象器など。 2. OTDR(光ファイバの障害位置試験器、別名:光パルス試験器)。 3.光ファイバの特性測定器:波長分散や偏波などの測定器。 4.融着接続器。計測器メーカではく、光ファイバをつくる大手電線メーカが光ファイバ融着器をつくっている。光ファイバの工事には必須の機材。 5. DCA(デジタルコミュニケーションアナライザ)や光コンポーネントアナライザなど。 1の光ロステスタ、2のOTDR、4の融着器は主にフィールド用途(敷設や保守)である。5のDCAはキーサイト・テクノロジーの通称で、構造はサンプリングオシロスコープなので、純粋な光通信測定器ではない。 上記のほとんどすべての測定器を日本ではNTTをスポンサーとしてアンリツと安藤電気(2000年頃に横河電機に吸収されて現在は横河計測)がラインアップした。現在はアンリツも横河計測も光源、OPM、OTDRに注力し、ラインアップを広げていない(横河計測の光スクトラムアナライザは世界No.1である)。1980年代には横河電機やアドバンテストも光通信測定器に参入したが、ほとんど生産終了している(アドバンテストのRF以外のモデルを継承したエーデイーシーは、短波長帯のOPMをラインナップしているが、これはDVD評価用で、光通信用途ではない)。キーサイト・テクノロジーもアンリツや安藤電気を上回るほどラインアップがあったが、2000年の光海底ケーブルバブル以降に製品群を縮小し、現在は光部品測定用途に注力してOPM、光源、波長計、偏波アナライザをつくっている(2022年5月現在の同社ホームページの製品・サービスのページにはオシロスコープや信号発生器、ソフトウェアなどの項目が並ぶが、光測定器は「その他」にまとめられていてすぐには探せない)。 ベンチトップの高精度のOPMでなく、ハンドヘルドの現場・工事用OPMは、三和電気計器や日置電機をはじめとして数えきれないくらい多くのメーカがある。海外の光通信測定器メーカはM&AによってEXFO(エクスフォ)とViavi Solutions(ヴィアビ)に収斂されたが、光通信測定器よりもビット誤り率試験器(BERT)などの「有線通信の伝送品質評価測定器」に注力していて、それ等も含めて光通信と呼称している。 計測器情報:レーザーなどを扱う光通信測定器の例

光波長計(ひかりはちょうけい)

(optical wavelength meter)光の波長を測定する機器。光通信網がインフラとしてさかんに建設された時期に活躍した。光スペクトラムアナライザでも波長計測はできるが、もっと安価で、精度良く波長測定ができる。参考記事:光スペクトラムアナライザの基礎と概要 (第2回)3ページ目日本国内で販売されている光波長計の一覧が掲載されている。

光パルス試験器(ひかりぱるすしけんき)

光通信測定器の1種であるOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)で、アンリツ製品の品名。OTDRの測定原理を表現しているのでOTDRの別名として大変適切な名称である。光ファイバの伝送損失や断線箇所の特定ができるため、光ファイバの敷設や保守で電気工事会社が使う必須の測定器の1つ。NTT系の計測機器レンタル会社であるエヌ・ティ・ティ・レンタル・エンジニアリング株式会社(略称:NTTREC、呼称:エヌティティレック)は光の電気工事会社向けに多くのOTDRを保有している。計測器メーカは横河計測(旧安藤電気)とアンリツが2強だが、ベンチャーや海外の製品もある(EXFOなど)。安藤電気のOTDRの品名は長らく「光ファイバアナライザ」だった。光パルス試験器と光ファイバアナライザとOTDRは名称がまったく違うのに、全て同じ計測器であることは、光通信の素人にはわかりにくい。光ファイバの敷設や保守では光パルス試験器以外には、「光ロステスタ(またはOLTS)」や「光ファイバ心線対照器(IDテスタ)」が使われる。 計測器情報:光パルス試験器の製品例

光パワーメータ(ひかりぱわーめーた)

(Optical Power Meter) 光のパワーを測定する機器。OPMと略記されることもある。本体と光センサで構成される。チャンネル数を増やせるように本体が大きな筐体を用意している機種もある。ユニット式のものは光源ユニットも揃えて、光源&パワーメータの光通信計測システムとなっている。光通信の基本測定器である光パワーメータは電気のテスタに相当し、工事会社が必ず持っているが、光部品の価格などの諸般の事情により電気のテスタほど安価ではない。横河計測(旧安藤電気)、アンリツなどという大手通信計測器メーカだけでなく、電気のテスタメーカ(たとえば三和電気計器)や名の知れないメーカからたくさんのOPMが発売されている。光通信で使用される波長は0.85~1.5μmで、安藤電気(現横河計測)、アンリツのOPMはほとんどがこの波長帯域のセンサである。青色LEDの開発などでブルーレイディスクが登場した。このLEDの波長は0.4μmと、家電製品は通信より波長が短い。0.4~0.7μmの帯域にフォーカスしてOPMをラインアップしているのがエーディーシー(旧アドバンテスト)や日置電機、三和電気計器などである

光半導体(ひかりはんどうたい)

(opto semidonductor) 2つの意味がある。従来は以下の1.だったが、最近2.の意味でも使われている。 1. 半導体の中で、電気信号を光信号に変換する発光素子、光信号を電気信号に変換する受光素子、発光素子と受光素子を組み合わせた複合素子を、「光半導体」と総称する。その種類と用途は以下。 (1)電流を光に変換する光半導体(発光素子) ①LED:照明、信号灯、ディスプレイ、電子機器のバックライトなどに使用。 ➁レーザーダイオード:DVDの書き込み、光ファイバ通信、3Dセンサなど。 ➂赤外線LED:テレビのリモコン、防犯カメラ、車両カメラなど。 (2)光を電流に変換する光半導体(受光素子)・・光の検出をするので、光センサとも呼ばれる。 ①フォトダイオード:カメラの露出計、光通信システム、分光器、暗視装置など。 ➁フォトトランジスタ:自動ドア、カメラ、スマートフォン、光電センサなど。 光デバイスをopto device(オプトデバイス)と呼んでいる。opticalは日本語では「光学」になるので、optical semiconductorは「光学 半導体」である。ここでいう光半導体は英語では、opto semidonductor。 光半導体に関する国内メーカの対応は様々。総合半導体メーカのルネサス エレクトロニクスは、2020年5月に光半導体事業(半導体レーザーとフォトダイオード)から撤退し、製造拠点である滋賀工場の生産ラインを停止すると発表した。光デバイス専業メーカの浜松ホトニクス(通称:浜ホト)は、2019年6月に光半導体事業の生産能力向上のため、浜松市の新貝工場に新棟を建設すると発表した。 2. NTTは次世代の基幹通信網として、オールフォトニクス・ネットワークのIWON(アイオン)構想を2019年に発表した。光を電気に変換しないで光のままで処理することで、電気よりも高速・大容量を実現する。そのためのキーは「チップ内で(電気を使わず)光で処理をする」光半導体である。ここでいう光半導体は前述の受光素子、発光素子ではなく、光電融合デバイスを指す。NTTは、「従来の半導体上で電子回路が担ってきた情報のやり取りを光回路に置き換える」、電子が通る銅配線の代わりに「シリコンに光を閉じ込めて通す道、光導波路を形成する」研究を進めている(プリント基板に安価に光導波路が形成される未来を想定している)。 IOWNグローバルフォーラムには世界中の先端企業が参画している。インテルは光半導体(シリコンフォトニクス)の研究に注力している大手企業の1社である。電子ではなく、従来よりももっと高速の光を使って情報を伝えて処理することで、「これまでにない超低消費電力、超高速処理で動く半導体」の開発が進んでいる。 2000年代から、半導体のシリコン基板上に、光導波路、光スイッチ、光変調器、受光器などの素子を形成する技術が研究されてきた。シリコン基板上に受光器などを集積するので、シリコンフォトニクスと呼ばれる。NTTは光送受信モジュールを開発できたことを成果としてIOWNを発表した。インテルは2020年12月開催のIntel Labs Day 2020で、シリコンフォトニクスの研究テーマとして、従来のサイズから1000分の1に小型化した変調器を紹介した。シリコンのCMOS集積回路の製造技術は確立しているので、シリコンフォトニクスによる超高速・小型・低消費電力の光半導体は、比較的に安価な製造コストで実現できると考えられている。

光ファイバ(ひかりふぁいば)

(optical fiber) 現在の有線通信網の主力のケーブル。線材が細いこと、電気でなく光なので電磁ノイズの影響を受けないことから、細い管の中を検査する内視鏡や、強磁場で使う温度計にも使われている。表記は「ファイバ」と「ファイバー」の2つがある。光は屈折率の異なる媒体を通過するとき、境界面で進路がわずかに曲がる性質がある。透明なコップに水と箸を入れ横から見ると、水面の上下で箸はわずかに曲がって見える。これは空気(水面の上)と水(水面の下)の屈折率が違うので光が曲がったためである。曲がり具合は2つの物質の組合せによって決まる固有値になる。光は境界面を通過するとき全て透過せずわずかに反射する。曲がり具合の大きな2つの物質を選ぶと、曲がる角度がだんだん大きくなってついには透過せず、ほとんどが反射するようになる。そのような組合せの2つ物質(ガラス)を筒状にして、一方の筒の外側にもう一方を筒状に被せた2重円筒形構造を作り、内側の筒(物質)に光を入射したら、光は外側の物質に閉じ込められて全反射し続け、遠方まで伝わり光通信を実現できる。この理論を日本人の西澤潤一氏が考案したが、あまりにも先進的な理論であったため、日本では特許は却下されてしまった。光ファイバの実用化はアメリカの大手ガラス会社のコーニング社が行い、現在も光ファイバの世界的なトップメーカである。国産の電線メーカ、住友電気工業、古河電気工業、フジクラがコーニングに続く光ファイバメーカである。内側の筒(物質)をコア、外側をクラッドと呼ぶ。材料がガラス製ではコア径は50(または62.5) μm、クラッド外径は125 μmの細さで、外側を被覆して強度を保つ。光ファイバの接続は融着によって行う。先述の電線メーカは光ファイバ融着器のメーカでもある。光ファイバを曲げるなどの外圧を加えると、通信パワーが減衰する。わずかな外圧による微量のパワー変化を検知できるので、ひずみセンサとしても使われる。山の斜面やトンネルなどに敷設して、地面のずれを検知して防災に役立てている。計測器メーカは横河計測(旧安藤電気、光通信測定器)、 共和電業(ひずみ測定器)、安立計器(温度測定器)などがある。 参考用語:光ファイバ通信、光ファイバ温度計、OTDR、ファイバースコープ、ファイバーレーザー 参考記事(会員専用): 【展示会レポート】JASIS(Japan Analytical & Scientific Instruments Show)2019の3ページ目 ・・安立計器の光ファイバ温度計を取材。 【展示会レポート】OPIE’19(レーザーEXPO)Part2 装置・・フジクラのシングルモードファイバレーザ 【展示会レポート】第18回光・レーザー技術展(Photonix - フォトニクス) ・・古川電工のマルチモードファイバレーザ 計測器情報:光ファイバ関連の製品例、横河計測の光測定器、光ファイバアンプ、安立計器の光ファイバ温度計

光ファイバアナライザ(ひかりふぁいばあならいざ)

光通信測定器の1種であるOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)の代表的なメーカ、安藤電気(現横河計測)の品名は1980年代から「光ファイバアナライザ」だった。OTDRは別名、光パルス試験器とも呼ばれる。光パルスという表現はOTDRの測定原理からくるため妥当な名称である。OTDRは光ファイバの伝送損失を測定でき、敷設時には断線の箇所を見つけることもできる。そのため光ファイバのアナライザという命名は間違ってはいないが、光ファイバの波長分散や偏波を測定する測定器も光ファイバアナライザである(それらは波長分散測定器や偏波測定器といわれる)。「光ファイバ敷設・保守用可搬型・現場アナライザ」ならいざしらず、光ファイバアナライザより光パルス試験器に軍配があがりそうである。現在の横河計測の現役モデルは「OTDR(光パルス試験器)」、「マルチフィールドテスタ」などの名称で、光ファイバアナライザという品名のモデルは無くなった。光ファイバの敷設や保守では、「光ロステスタ(またはOLTS)」や「光ファイバ心線対照器(IDテスタ)」も使われる。 計測器情報:光ファイバアナライザの製品例

光ファイバ心線対照器(ひかりふぁいばしんせんたいしょうき)

(optical fiber identifier)通信用の光ファイバの敷設工事や保守作業では、心線対照器というハンドヘルドタイプの光計測器によって、心線対照(複数本の光ファイバから該当する1本を識別すること)や光損失測定が行われる。心線対照器は送信部(光源)と受信部(識別器)で構成される。中継所での接続作業時には特定の心線を間違いなく接続することは最も重要な作業である。光ファイバのメーカである大手電線メーカ3社(住友電工、古川電工、フジクラ)がラインアップしている。光通信の黎明期~普及期にかけては日本電信電話公社(現NTT)の依頼によってアンリツと安藤電気(現横河計測)もラインアップしていたが、現在は生産終了。光IDテスタやIDテスタとも呼ばれる。英語のidentifier(識別するもの)より命名。ケーブルテスタなどのレイヤ1試験器を数多くラインアップするフルークネットワークスや、現場用可搬型モデルの機器に注力しているメーカがIDテスタをつくっている。TDRなどの現場測定器をラインアップする株式会社グッドマンにもIDテスタという品名のモデルがある。従来、光損失測定を目的とした測定器は光ロステスタ(OLTS)だったが、心線対照器も光源と検出部があるため光損失測定の機能があるものが多い(光ロステスタと心線対照器の明確な使い分けはユーザによって様々)。心線対照器は送信部と受信部が独立し、ファイバを切断することなく導通試験ができることが特長。アンリツには、心線対照用光源から変調光を光ファイバに入力し、マイクロベンド法を用いて漏れ光を検出するFI720光ファイバ心線対照器があった(2022年5月現在、製造中止)。

光ファイバ通信(ひかりふぁいばつうしん)

(fiber optic communication) 光ファイバは屈折率の高い物質(コア)を屈折率の低い物質(クラッド)で覆った同心円状の細長い構造で、光(レーザー光)をコアに入射するとコア内に閉じ込められ、低損失(振幅が減衰しない)で長距離に伝送できる。波長によって光信号の減衰率は変わるので、もっとも低損失な波長帯域を使って、基幹通信網に光ファイバ通信システムを構築している。 コアやクラッドの材料は石英ガラスやプラスチックなど多数あり、グラスファイバやプラスチックファイバと呼ばれる。光通信以外の用途にも使われる。光ファイバ通信の理論は日本人の西澤潤一氏が特許出願したが却下されている(あまりにも先進的であったため判断ができなかったといわれる)。光ファイバ通信は電気信号をE/O変換器で光に変えて送信し、途中で光ファイバ増幅器などによって減衰を補う(1981年に商用運用を開始時は、O/Eで電気にして増幅し、E/Oで光にしていた)。受信側ではO/E変換器で電気信号に変換する。長距離伝送する区間だけを光ファイバを使っている。全区間を光で通信するAPN(オール・フォトニクス・ネットワーク)はまだ実現されていない。送信側ではLD(レーザーダイオード)、受信側ではPD(フォトダイオード)などのデバイス(光半導体)が使われる。公衆回線での長距離伝送には伝送損失の少ない石英ファイバで、波長1.31μmや1.55μmが使われる。短距離では安価なプラスチックファイバや波長0.85μmが使われる。 光ファイバ通信は携帯電話で使われている無線通信のような高度の変調はできず、信号を複数の波長に割り当てて、1本のファイバで多重化することで、大容量・高速化を実現した(WDM、波長分割多重)。電気信号は振幅や周波数を変調して高速化しているのに、光通信は強度を変える方式が主流だったが、2010年代に光デジタルコヒーレント通信技術が進み、位相変調や偏波多重でより高速化された。電気に比べて光の部材(素子や光コネクタなどの部品)が高額なため、電気がすべて光に置き換わってはいない。それでもコアネットワークやデータセンタに光ファイバ通信が使われるのは低損失、広帯域、小型・軽量、無誘導などの利点による。 光ファイバ通信のための計測器を、NTT(旧電電公社)は1970年代からアンリツと安藤電気(現横河計測)につくらせた(電電ファミリー)。2社は現在も光計測器をラインアップしている。OPMや光源などの光の基本測定器以外はOTDRなどの光ファイバ用のモデルが多い。横河計測の光スペクトラムアナライザは世界No.1である。アンリツは無線通信などの電気の高周波が得意なので、ネットワークアナライザなどで光デバイスを評価する用途でO/EやE/Oなどの光測定器をつくっている。

光ファイバ融着器(ひかりふぁいばゆうちゃくき)

光ファイバを融着する機器。電線は金属の金具に接触させてネジなどで絞めれば電気が通じるが、光ファイバ同士を接続して光信号を通すには融着しないといけない。主に電線メーカがラインアップしている。フジクラ、住友電工、古河電工などが有名。光ファイバの電気工事では必須の機器。別名:融着接続器。

光モデム(ひかりもでむ)

(optical modem)モデムはデジタル信号を変調してアナログ回線で送り、受信側で復調して元のデジタル信号にする装置だが、回線(伝送路)をレーザーなどの光通信で行う機器を光モデムと呼称している例がある。たとえば、S製作所の海洋機器である水中光無線通信装置は、レーザーや可視光によって水中で通信をする。この製品は「水中で無線通信できる“光モデム”」と紹介されている。光モデムの定義ははっきりしない。光ファイバ通信で使われるO/E変換器やE/O変換器は電気も光もデジタルなので、「デジタルデータの電気信号をアナログの光信号に変換する」ということで、光モデムと呼称しているのかもしれない。 インターネットで光モデムを検索するとNTTなどのキャリアの「“フレッツ光”のサービスで使う、光回線の終端装置(ONU)はモデム、ルーターと何が違うか」や「“auひかり”のモデムとは」などの記事がたくさんヒットする。つまり「光回線のモデム」の説明が出てきて、「光モデム」の説明はない。著名なエレクトロニクス雑誌が何の脚注もなく「光モデムの新製品」などの記述をしているので、「光モデム」はエレキの技術者にとってすでに常識(基本用語)なのだと推測されるが、その正確な定義を筆者は見たことがない。ECサイトに「NTT光モデムの中古品」と題してONUが掲載されている例もある。ただし、「光モデムとはONUのことである」という解説ではなく、「ONUはモデムではない」と両者の違いを説明する例がネットに溢れている。 グレイテクノスの光測定器で、「RS-232C光モデム」RS2000/RS2001という製品がある。外観はコネクタの付いたケーブルで、RS-232Cの25ピンD-SubコネクタとF07光コネクタがついている。RS-232C(電気信号)を光信号に変換する機能があり、「ノイズに影響されない光ファイバを使用するコンバータ」と説明されているので、ケーブルは光ファイバと思われる。この製品はRS-232C(デジタル信号)を光信号に変換するが、光信号がアナログかデジタルかは仕様に記載がない。モデムというからには変調されてアナログ信号で光通信すると思われるが、単にノイズの影響を受けないために光に変換するならデジタルのままの方が簡単かつ安価ではないか?という疑問がある。その場合、品名は「RS-232C光変換器」や「RS-232C E/Oコンバータ」である。この製品の用途(アプリケーション)について、メーカHPには説明はないので、概要がよくわからない。

光リフレクトメータ(ひかりりふれくとめーた)

株式会社オプトゲートの光部品のは断点検出をする測定器の名称。HP(現キーサイト・テクノロジー)も(光通信用の計測器に注力していた)2000年頃までは光部品用の計測器をラインアップしていて、8504A光プレシジョン・リフレクトメータというモデルがあった(すでに生産中止)。参考用語:OCCR

光ロステスタ(ひかりろすてすた)

(Optical Loss Tester)光源と光パワーメータ(OPM)が一体となり1筐体で光ファイバなどの損失測定が可能な、光通信用の測定器の1種。翻訳すると「光損失測定器」。光ファイバの片端に光源から入射し、もう片端で光パワーメータでパワーを測定する。光ファイバが敷設されている離れた2か所で2台を使い測定することが多い。光ファイバの敷設や保守の時に使用する。「ロステスタ」と略記する場合もある。ほとんど可搬型で、光源とOPMが別筐体のものは「光ロステストセット」と呼ばれた。心線対象器やOTDRなどと共に電気工事会社の作業員が使う。光ロステストセット(Optical Loss Test Sets)を略した「OLTS」を名前にする例が最近見うけられる。横河計測の形名:AQ1100、品名:マルチフィールドテスタOLTS、アンリツの形名:CMA5 OLTS、品名:光ロステスタ。レイヤ1テスタのラインアップが豊富なFLUKEnetworks(フルーク・ネットワークス)HPには「OTDRとOLTSの違い」などの記述がある。

ピグテール(ぴぐてーる)

(pigtail)光ファイバケーブルの1種。ケーブルメーカでは「接続箱等への収納に優れた、融着接続用の光コネクタ付きファイバケーブル。光ファイバ心線の片側は光コネクタが取り付けてあり、片側は融着接続用として裸になっている。」と説明している。 計測器の入出力にもピグテールがある。通常、光測定器の光源や光パワーメータ(OPM)の入出力はFCコネクタやSCコネクタだが、ピグテールの光ファイバの場合がある。ピグテールの裸の片端は測定器内部に繋がっていて、測定機本体から伸びたファイバの先にコネクタが付いている。そのコネクタに外からの入出力を繋ぐ。コネクタ接続の精度などの問題からピグテール入出力にしている。計測器本体からケーブルが伸びて、まるで豚(pig)のしっぽ(tail)のようである。「ピッグテール」と表記されることもある。

ファイバーレーザー(ふぁいばーれーざー)

光ファイバーを増幅器とした固体レーザ。加工用レーザの主流となりつつある。表記は「ファイバ」と「ファイバー」の2つがあり、各企業によってどちらかを使っている。

フェルール(ふぇるーる)

(ferrule) 固定、接合する物のこと。通信用のケーブルでは、補強に使用される部材をさす。電線では金属、光ファイバではプラスチック、で作られた狭い円形のリング。特に光ファイバでは光コネクタの端面処理(フェルールの研磨)についてコネクタの仕様に記述するのが一般的である。 圧着端子(電線の終端処理をする部品の1種)をフェルールと呼んでいる場合がある。圧着端子は電線とほぼ同径の円筒状で、電線の被覆を剝いて、端を中に通し外部から圧力をかけて端子をつぶして電線の端を固定する、接続具(線材を接続するコネクタ)の1種である。圧着後は円筒状から角筒になる。ハンドヘルドのデータロガーは小さな面積に多くの線材を取り付けるため、入力コネクタは圧着端子をネジ止めしている場合が多い。

フォーティブ(ふぉーてぃぶ)

(Fortive) 大手計測器メーカのTektronix(テクトロニクス)とFluke(フルーク、グループ会社含む)の持ち株会社。経緯を書くと、両社は別々に米国の投資会社ダナハー・コーポレーションに売却され、その傘下となった。その後、ダナハー・コーポレーションは2つに分かれ(2016年に、ダナハーの25%を占めていた工業機械関連会社がフォーテイブとして独立し、ダナハーには化学・健康機器関連の企業が残った、という説明もできる)、その一方のフォーティブ・コーポレーションの傘下に株式会社フルークと株式会社テクトロニクスは入った。発足当初の日本の社名は「株式会社TFF」で、その下に両社があった。後にフルーク社とテクトロニクス社を内包した社内カンパニー制度をとる「株式会社テクトロニクス&フルーク」となった(2021年)。それ以前は「テクトロニクス社/ケースレー社」と名乗っていた時期もある(Tektronixは2012年に、同じくダナハー傘下のKEITHLEYを吸収している)。 TFFはあくまで日本での会社名で、日本以外ではTFFなる組織は存在しない。日本以外ではテクトロニクス、フルーク、フルーク・キャリブレーション、フルーク・ネットワークスはすべて別会社だが、日本だけTFFがあり、フルーク・キャリブレーションは「TFF社の校正器営業部」、フルーク・ネットワークスは「TFF社のフルーク・ネットワークス営業部」という組織となっている。現在はTFFとは言わないが、フルークグループの各社が、日本では営業部という組織であることは変わらない。全世界にフルークの現地法人があり、フルークジャパンのトップは「株式会社テクトロニクス&フルークの特約店営業部(あのオレンジ色のハンドヘルドの機種群を日本で販売する組織の名前は“特約店営業部”である。日本では直販をほぼしないで商社経由で売っている。)」の営業部長になる。フルークジャパンの社長ではなく、特約店営業部の部長である。 海外ではM&Aが盛んで、大手計測器メーカといえども、キーサイト・テクノロジーやローデ・シュワルツ以外はほとんどが買収・合併されている。テクトロニクとフルーク以外の主要な海外通信計測器メーカはEXFO(エクスフォ)とViavi Solutions(ヴィアヴィ)に集約されている。計測器に限らず、市場原理によって企業は整理統合される。それが当たりまえだが、日本では海外ほど淘汰が進まず、中規模以下の計測器メーカが健在である。これを日本的な風土と評価するか、産業の新陳代謝が進まず水が澱んでいるとするかは意見が分かれる。メーカは技術者が一攫千金を夢見て操業する(ソニーやホンダなど)が、計測器は市場規模が大きくないため、各計測器メーカは独自路線の中小企業になりがちで、同業他社との合弁がなかなか進まない(自社で独立する気概が高い、逆に言えば創業者の名前を大事にしていて、似た技術分野の競合と合弁する気はなくて、頑固に独立を維持する傾向が伺える)。そのため、海外のキーサイト・テクノロジーのような国産の総合計測器メーカが育っていない。 1960年頃までの横河電機はその有望株だったが、その後HP(現キーサイト・テクノロジー)とYHP(横河ヒューレットパッカード)をつくり、高周波の測定器は(YHPと競合するので)つくらない方針となった。ただし、3G(携帯電話のデジタル化)など無線測定器の市場拡大の中で、RF の測定器群に参入し、2000年頃には方針転換して計測の事業を拡大し、安藤電気を吸収した。ところが時すでに遅かったのか、10年やらずにほぼすべての計測関連事業から撤退してしまった。計測器の現在の後継会社である横河計測株式会社は、国内シェアは10%に届かず、光測定器以外は通信計測器がないので、総合計測器メーカではない。 過去に存在した国内外の計測器メーカの例: Wandel&Goltermann(ワンデル・ゴルターマン)、JDSファイテル、Acterna(アクテルナ)、安藤電気、三栄測器

フォトカプラ(ふぉとかぷら)

(photocoupler)電気-光変換によって、回路を電気的に絶縁したいときに使う電子部品。フォトカプラ内部では入力電気信号を発光素子で光信号に変え、その光信号を受光素子で再度電気信号に戻して出力する。FA、OA、家電など多くの電気機器では、動作上の安全を担保する目的でフォトカプラを使用している。optocoupler、opto-isolator、optical isolatorなどの表記もされる。「光で(photo/opto)、つなぐもの(coupler)」という意味。アイソレータは「アイソレーション(絶縁)する物」という意味。

フォトダイオード(ふぉとだいおーど)

(photodiode) 光検出器(光センサ)として使用される半導体。光を受けると電流を発生する受光素子。略記:PD。 光ファイバ通信は送信部にレーザー(LASER)やレーザーダイオード(LD)が、受信部にフォトダイオード(PD)が使われる。入力(照射された)光の強さと出力(電流)にリニアリティー(直線性)があるため、O/Eコンバータ(光-電気変換器)に使われる。 参考記事:「光スペクトラムアナライザの基礎と概要 (第1回)」 ・・光ファイバ通信システムの構成図がある。 計測器情報:品名に「フォトダイオード」が付く製品の例