計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
計測・測定に関連する用語全般が収録されており、初めて計測器を扱う方でも分かりやすく解説しています。
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DVD評価用測定器(でぃーぶいでぃーひょうかようそくていき)

DVD(Digital Versatile Disc)を翻訳すると「デジタル多用途(多目的)ディスク」。デジタルデータの記録媒体である第2世代光ディスクの1つだが、2000年代以降に映像記録の主要メディアになり、2020年現在も使われている。VHS(家庭でTV録画に普及したテープ)や1980年代に流行ったレーザーディスク(LD)を置き換える形で普及した。 形状や記録・読取方式はCD(コンパクトディスク)とほぼ同じだが記録容量がCDの約6倍になるため、CDでは不可能だった長時間映像の記録が可能になった。CDと同じく細かい溝の彫られた樹脂製の円盤をドライブ装置内で高速回転し、溝に沿ってレーザー光を照射してデータの読み取り/書き込みを行う。規格策定は業界団体のDVDフォーラムが行なっている。コンピュータなどのIT機器(情報機器)でもデータ記録メディアとして利用されている。 DVDが普及する時期には、ジッタを評価するジッタメータやタイムインターバルアナライザなどのオーディオ・ビデオ測定器が活躍した。菊水電子工業や横河電機(現横河計測)がつくっていた。2004年秋に電波新聞社が刊行した電子計測器&システム[ガイドブック]2005の「オーディオ・映像機器用測定器&システム」の冒頭では「DVDなどの光ディスクに関する規格とその評価測定器」について菊水電子工業が解説している(もちろん計測器としては同社のタイムインターバルジッタアナライザKJM6775が写真付きで紹介されている)。静岡県浜松市にあるパルステック工業には光ディスク評価装置があり、現在も現役である。 青色LEDの発明によって、2003年頃からBlu-ray Disc(ブルーレイディスク)の生産が始まり、DVD評価用の測定器は活況になった。アドバンテストからエーディーシーに移管された計測器群の中には光パワーメータがあるが、光通信で使う波長ではなくBlu-rayのようなより短波長の領域をカバーしたセンサをラインアップしている。同社HPの光測定器ページには「光ディスクの開発や生産ラインに最適」や「ブルーレイ対応まで選べる9品種のセンサ」などのうたい文句が書いてある(2022年12月)。つまり同社のOPMはアンリツや横河計測(旧安藤電気)のような光通信(光ファイバ通信)向けではなく、DVDなどの家電製品をターゲットにしていることが明白である(同社の光計測器はOPMだけで光源や光スペクトラムアナライザ、OTDRなどの光通信測定器はない)。

デジタルコミュニケーションアナライザ(でじたるこみゅにけーしょんあならいざ)

(digital communication analyzer) 光の波形を解析する測定器。キーサイト・テクノロジーのモデル86100シリーズや83480Aの名称(品名)。同社は略記のDCAを大変良く使っていた。86100Aの最新形名は86100Dだが販売終了・サポート中である(2021/2月現在)。実体はサンプリングオシロスコープだが、通信インフラである基幹通信網の有線部分が光通信で拡張されていた時代(1980〜2000年頃)には、アイパターン評価の用途で使われ、「光オシロ」などと呼称された。 同社は2000年代初期までは世界No1の光測定器メーカだったので、オシロスコープでなく光測定器の分類にDCAを掲載していた。そこで(冒頭に説明した)「光の波形解析器」だった。ただし、同社は現在、光測定器はOPM(光パワーメータ)などの一部の機種群だけでラインアップは少ない。現在はオシロスコープの中のサンプリングオシロスコープとして掲載している。特長も「電気/光/TDR測定用」と記載されている。そのため、現在では「キーサイト・テクノロジーのサンプリングオシロの名称」という説明が妥当である。同社ホームページには「86100A Infiniium DCA 広帯域オシロスコープ」、「83480A ディジタル・コミュニケーション・アナライザ」という表記もみかける。 余談だが「デジタルコミュニケーションアナライザ」という品名からはオシロスコープは想像しにくい。命名の理由は定かではないが、オシロスコープではなく「通信用の解析器」と主張したかったと推定する。同様にプロトコルアナライザで国内No1メーカであった安藤電気はプロトコルアナライザ(プロアナ)ではなく「データコミュニケーションアナライザ」が品名だった。これも同じくプロアナだとはわかりにくい命名だが「データ通信の解析器」という意味を込めたと思われる。このように計測器の名前(各社の品名)は、素人には大変わかりにくい。品名からカテゴリー(機種群)を特定したり、何を測定するのか(仕様)を想定することはむずかしいことが多い。計測器はニッチな(わかる人達の村社会の)商品なので、初心者にはわかりにくい。一般のサラリーマンは(仕事で関係しないなら)誰も好んで関わりたくはない分野である(事業者として計測器に愛着を持っている人達を除けば)。

電電ファミリー(でんでんふぁみりー)

NTTの前身である日本電信電話公社は製造部門を持っていなかった。研究開発を製品化するNTTの出入りメーカ(お抱え企業、下請けメーカ)をNTTのファミリー企業という意味でこう呼んだ。通信装置はNEC、富士通、沖電気、日立製作所がつくったのでNFOHと呼称された(一番はNとFで三番がOという、比率を表していると業界ではいわれた)。新しい規格に対応した通信装置(伝送交換)が導入されるときは、同じく電電ファミリーの大手通信計測器メーカ、アンリツと安藤電気が対応する計測器を開発した(たとえば1970年代から光ファイバによる光通信が導入されると、この2社が光通信測定器をつくり、R&Dから通信網の敷設・保守までほぼすべての測定器をラインアップした)。NTTは2社に仕様を示し製品を作らせる。性能が同じ2社の製品があることで、1社に依存しないというリスクヘッジになる。NTTが日本の基幹通信網を独占し、アメリカのベル研究所と肩を並べて研究開発をしていた時代のことである。 その後、通信の自由化によってNTTは分割され、ほかの通信事業者が参入して現在に至る。日本の通信料金は下がり安価になったが、研究開発や国際的な通信規格の策定の力は衰えたという指摘もある。NTTは2019年にIOWN (Innovative Optical and Wireless Network、アイオンと呼称)構想を公表した。光トランジスタの開発によって、従来の電子を使った半導体による通信網を完全なフォトニクスにすることで、世界的なゲームチェンジを狙う。NTTは2020年にNTTドコモの完全子会社化を終え、2021年にはNTTコミュニケーションズ(NTT com)とNTTコムウェアもグループ内へ編入する。過去の分社化から一転、強いNTTの復権がうかがえる。 JR東海は鉄道車両メーカの日本車輌製造(愛知県豊川市)を子会社にした。世界で競えるインフラを作り、輸出によって豊かな国になるためには、上流のR&Dから製造まで独占的な強い企業が必要という、冷徹な国際事情が存在する。たとえば原子力発電の世界有数メーカであるフランスのアレバ社はフランスの国有企業である。フランスは原子力発電を国策ととらえ、世界的なビジネスをしている。日本が世界に伍する技術分野に通信が復権するかはまだ不透明である。 参考用語:原子力発電所、重電メーカ、パワー半導体

電力計(でんりょくけい)

(watt meter) 広義には電力を測定する機器で、家庭の玄関に必ずあるスマートメータ(積算電力計)や電気使用量を監視しているデマンド機器などがある。計測器としては商用周波数(50Hz/60Hz)~低周波を対象にしたパワーメータ、デジタル電力計、デジタルパワーメータ、高周波を対象にした通信計測器の 高周波電力計 、RFパワーメータ、光パワーメータなどがある。指示計器である積算電力計(または積算電力量計、家の入口近くの屋外に設置され、使用電力を測定しているメータ、今でいうとスマートメータ)を指していることもある。 計測器としては狭義には、指針型(針が振れるアナログ式のメータ)の電力測定器を指す。外観は黒い箱型で、バインディングポストの入力端子がある、横河電機が作っていたモデルが有名。理工系の学校の電気実験では、同じように指針型の電圧計、電流計とともに現在も使用されている(用語のYEWを参照)。英語watt meterをカタカナにした「ワットメータ」というと、このアナログ式の指針型のメータで、単位[W](や[AV]アンペアボルト)を測定する計測器がイメージされる。「機械式電力計」という名称で説明している文献もある。 一般的に計測器で「パワーメータ」というと低周波の電力測定器を指し、高周波の場合は高周波電力計や光パワーメータ、というように品名で区別している。計測器としての低周波の電力計は「デジタルパワーメータ」という品名が多い(一部、パワーアナライザもある)。機種群の分類では「計測用電力計」という説明もされる(以下の記事を参照)。 低周波の電力計としては測定対象に非接触であるクランプ電力計も大変よく使われる。現在の(計測器としての)低周波の電力計はデジタルパワーメータとクランプ電力計である。前者は横河計測が国内でシェアが高く、海外にも輸出している。後者は、昔からクランプのラインナップが多い日置電機がシェアが高い。ただし日置電機は横河計測の牙城だった高確度のデジタルパワーメータを最近は多く発売し競合製品のシリーズ化に注力している。横河計測もクランプを他社から仕入れるなどしてクランプ入力のデジタルパワーメータも発売してきている。トルク計測で実績のあるHBK(旧HBM)のパワーアナライザは自動車市場に強く、3社は国内市場で競っている。

トランシーバ(とらんしーば)

1. 有線・無線通信で送信機や送信部品のこと。 2. 無線で通信する携帯機器のこと。以前は片側通信の機器が多く、自分が話すときはボタンを押し、相手が話すときはボタンを離す、という操作をして会話した。携帯電話が普及する以前は離れた2つの場所で会話できる無線通信機器として活躍した。たとえば、工事現場や、遠足の引率で先頭と最後尾など。1980年頃はまだ携帯電話は無く、2台に分乗して高速道路を走るとき、どこのサービスエリアで待ち合わせるかを相談するなど、トランシーバがあると便利だった。現在も工事現場などで使われるが、携帯電話の小型化、普及により、工事現場での使用例は減っている。

トランスミッタ(とらんすみった)

(transmitter)日本語では「送信機」。信号を送信する機器のこと。電波などの無線信号の送信機や、光通信の光信号を発信する光トランスミッタなどがある。対になる言葉として「レシーバ(受信機)」がある。回路図などではトランスミッタをTx、レシーバをRxと略記している。

波形モニタ(はけいもにた)

映像信号を観測する測定器。コンポジット、コンポーネント、HDTVなど世界中の各種映像信号の方式に合わせた多くの機種が発売されている。新しい映像の規格ができるとそれに対応した波形モニタが発売される。たとえば2018~2019年には2020年東京オリンピックに向けて、4K/8K用波形モニタがリーダー電子から発売されている。TVなどの映像信号用のオシロスコープ(波形測定器)といえる。「波形をモニタする」というネーミング。表示画面がなく外部のモニタにつなぐタイプの波形モニタをラスタライザと呼ぶ。テクトロニクスにはWFMが形名の波形モニタがあった。ウエーブフォームモニタやベクトルスコープが品名の機種もあった。広義にはビデオアナライザ(テクトロニクスではVM700シリーズ、キーサイト・テクノロジーはたとえば8992A、少し違うがアンリツにはMS8901Aデジタル放送信号アナライザ)も含まれる。映像関連測定器の2大基本モデルは映像信号発生器(信号源)と波形モニタ(波形観察・表示用のスコープ)である。以前は数社が発売していたが、計測器メーカはほぼ2社に収斂し、波形モニタはリーダー電子、映像信号発生器はアストロデザインが、最新の規格に対応した計測器を発売してラインアップが豊富である(というか、ほとんどこの2社しか国産計測器メーカはいなくなった)。シバソクはリーダー電子とほぼ同じラインアップのコンペチタであったが、2015年にグループ会社のアサカに計測器事業を統合し、機種数はリーダー電子ほど多くはなくなった。世界的な計測器メーカのテクトロニクスは、オシロスコープと映像関連測定器が2枚看板だったが、映像関連測定器を売却し、撤退してしまった(テクトロニクスのビデオ事業部はTelestream社に統合、2019年4~5月ニュースリリース)。「波形モニタ」といえばカテゴリー「映像・ビデオ・TV・オーディオ」関連測定器であるが、光通信測定器の雄、安藤電気(現横河計測)には、光信号をオシロスコープで直接観測するためのO/E変換器(光ファイバのFCコネクタなどを入力とし、BNCコネクタで電気信号を出力)で「波形モニタ」という品名の製品があった(現在は生産中止)。周波数帯域があまり高くないので高速な信号は観測できないが、オシロスコープに光信号を入力できるオシロ用のプローブといえる。

波長可変光源(はちょうかへんこうげん)

(wavelength tunable light source) 波長を任意に可変できる(チューナブル:調整可能な)光源。光通信用の測定器。種類はLDとLEDがあるが、LDを使ったレーザー光源が多い。可変できない製品は安定化光源と呼ばれる。別名、チューナブルレーザー光源。 周波数を可変できる高周波の信号発生器であるスイーパを、スペクトラムアナライザと組み合わせて、高周波のDUTのf特(周波数特性)を評価するように、光部品の評価には可変波長光源と光スペクトラムアナライザによる波長特性の測定が行われる。つまり、可変波長光源は電気(無線)の掃引信号発生器に相当する。

発光ダイオード(はっこうだいおーど)

(Light Emitting Diode)LEDの日本語名だが、すでにLEDが日本語となっている。ダイオードの1種で、順方向に電圧を加えると発光する半導体(電子部品)。原理はエレクトロルミネセンス(EL)効果を利用している。最近はやりのディスプレイである有機ELやOLEDは、分類上は実はLEDである。

反射(はんしゃ)

(Reflection)電磁波が伝送路を伝わるとき、媒体が違う面や、特性インピーダンスが異なる箇所では少し反射されて、信号源側に戻る現象が起こる。高周波の基本理論の1つ。反射という現象を応用した測定手法がTDR(Time Domain Reflectometry、時間領域反射法)である。サンプリングオシロスコープによる伝送線路のインピーダンス測定や、光ファイバの破断点検出(OTDR)に応用されている。

PC研磨(ぴーしーけんま)

(polishing of optical fiber end face) 2本の光ファイバケーブルをコネクタを使って接続する際は、光ファイバ同士が隙間なく接続(接触)するように、先端(フェルール端面)を研磨している。これは隙間による反射(空気という屈折率が違う媒体があることで、境界面で起こるフレネル反射)を防止する目的で、(融着ではなく)光コネクタで行われる。 研磨の種類は、端面形状が凸球面のPC(Physical Contact)、SPC(Super PC、スーパーPC)、UPC(Ultra PC)と、斜め凸球面のAPC(Angled PC)の4つがある。4つの違いは反射減衰量で、PC(25dB以上)、SPC(40dB以上)、UPC(50dB以上)、APC(60dB以上)と規定されている。求められる仕様(反射減衰量)によってPC~APCのどれかの記述がされる。 代表的な光コネクタのFCコネクタやSCコネクタなどは、「FC-PC」(PC研磨のFCコネクタ)や「SC-APC」(APC研磨のSCコネクタ)のような表記で、「コネクタの種類及び研磨の種類(による反射減衰量の仕様)」を表現する。ただしメーカによって記述が不統一で、FC(PC)やFC・PC、FC/PCのような表記も多い。PCがコネクタの名称ではなく研磨の種類であるという基礎知識がないと、前述の3種類の表現は「FCまたはPC」、もしくは「FCとPC」というコネクタであると誤解される。計測器を含む機器の仕様覧では「光コネクタ」の項目にFC-PCやSC-APCという記述がなされる。 光ファイバのフェルールの研磨のことを総称してPC研磨と呼称するので、本稿のタイトルをPC研磨としている(英語は「光ファイバ端面の研磨」を英訳している)。 光コネクタのPC研磨表記は1980年代にはほとんどなく、1990年代から現れた。アンリツ のプログラマブル光減衰器MN9610A/MN9611A(製造中止品)の1991年発行カタログでは、入出力コネクタ覧に「FC・スーパーPC形」と記載されている。これは「SPC研磨のFCコネクタ」を意味するが、1990年代には各社の例としてこのような表記があった。現在は前述のようにFC(SPC)やFC・SPC、FC/SPCなどの表記があるが、FC-SPCがベストな表記と筆者は思っている。

PD(ぴーでぃー)

フォトダイオード(photodiode)の略記。受けた光(入力)に比例した電流を出力する、光センサ。光ファイバ通信は送信装置にあるLD(レーザーダイオード)などで電気を光に変換し(Electrical signal / Optical signal conversion、E/O変換)、光信号を長距離伝送し、受信装置ではPDで光を電気に変換する。つまりPDはO/E変換器(O/Eコンバータ)である。 参考記事:「光スペクトラムアナライザの基礎と概要 (第1回)」・・光ファイバ通信システムの構成図がある。

PDLメータ(ぴーでぃーえるめーた)

PDL(Polarization Dependent Loss)は偏波依存性損失。光や電波などの電磁波は偏波といって、進行方向に垂直な面で電界と磁界が大きさを変えている。光の偏波状態によって光デバイスの損失も変わるのでPDLの測定が重要になる。つまりPDLメータは光デバイスの評価に使用される。 1990年代にはキーサイト・テクノロジーがラインアップしていたが2000年代の光海底ケーブルバブル以降の光製品の縮小で生産終了した。偏波関連測定器としては偏波消光比メータを(波長可変光源が世界トップの中部地区のメーカ)santec(サンテック)がつくっている。海外のOZ Optics社製品はオプトサイエンスが輸入販売している。 キーサイト・テクノロジーは光製品の内、光スペクトラムアナライザやOTDRなどは中止したが、光パワーメータと光源の2つの基本製品は継続した。従来、光コンポーネント評価に光測定器の力点を置いていたが、それを継続し816xシリーズ(OPM、可変波長光源、偏波コントローラなど)の後継機種としてN77xxシリーズを発売した。現在はN77xxCというCモデルが現役である(N7749C:OPMのメインフレーム、N7776C:波長可変レーザー光源など、2023年現在)。光コンポーネントテスト製品群として、N778xCシリーズのPolarization Test Productsがある。N7786C 偏波シンセサイザやN7788C 偏波コンポーネントアナライザなどがあり、従来のPDLメータや偏波コントローラを上回る、偏波関連の光製品をラインアップしている(2023年現在)。 PDLと文字が似ているが、PLD(Programmable Logic Device)だと、デジタル半導体のことである。 計測器情報:キーサイト・テクノロジーの偏波関連の光測定器の例

光アッテネータ(ひかりあってねーた)

光信号を減衰させる機器。ダイヤル式の可変モデルの測定器と固定型(見た目は部品)がある。 (=光減衰器)

光海底ケーブル(ひかりかいていけーぶる)

(optical submarine cable) 海底に敷設された光ファイバケーブルで海外と通信するインフラのこと。海岸沿いの送受信装置や、海底ケーブルに一定間隔で挿入される中継器(アンプ)などで構成される。1988年に実用化されると、北米とEUや日本など、世界の主要先進地域が複数本のケーブル網でむすばれ、1990年代以降のインターネットの基幹インフラとなった。当時は国内の電話はNTT、海外との通話はKDD(国際電信電話、現在はauを運営するKDDI)が行っていた。KDDは光海底ケーブルを使い米国と電話をつないだ。 ケーブルの新設には莫大な費用がかかるため出資者を募り配当する。通信容量の増加をはるかに超える規模の敷設計画が投機として加熱し、2000年に光通信バブルが起こった。バブル崩壊によって光通信測定器の世界No1だったキーサイト・テクノロジーは3つあった工場が1つになり、光測定器のラインアップを大幅に減らした(多くの光測定器のモデルを生産終了)。No2だった安藤電気は会社自体が存続困難になり、横河電機に身売りした(同社の光スペクトラムアナライザは横河計測の1製品群として残り、世界No.1を堅持している)。2000年以降のデータセンタの通信量の増大(IoT、ビッグデータ)などにより、太平洋に新しいケーブル敷設の入札があったが、安全保障上の懸念から中国企業の入札無効が2021年3月に報じられた。 最盛期(1990年代)には日本の通信メーカ各社(NEC、富士通、三菱電機、日立製作所など)は陸揚げ局などの各種通信装置(光伝送装置)の受注にしのぎを削り、光ファイバを手掛ける電線大手メーカ(フジクラ、古河電工、住友電工)は海底用の増幅器(アンプ)の開発・増産に追われ、KDDは敷設船を保有して、ケーブル敷設事業が活況だった。限られた一定期間に大量の高額な専用測定器が必要なため、上記の計測器メーカと計測器レンタル各社は新しい敷設案件(海底ケーブルプロジェクト)の情報収集に奔走した。2000年のバブル崩壊で計測器メーカだけでなくレンタル会社も傷を負った(レンタル受注を見込んで購入してしまった大量の計測器は特殊用途向けなので、不良資産となった)。 現在では敷設事業は日本のNECと、サブコム(米国)、アルカテル・サブマリン・ネットワークス(フランス)の3社で寡占しているが、世界の通信網の覇権をめざして中国企業が台頭している。 光海底ケーブル新設用の通信計測器と、国内の携帯電話メーカ用の製造ライン向けの移動体通信用測定器は、1990年代から2000年代にかけて活況にレンタルされたので、計測器を取り扱うレンタル会社は8社あったが、2020年代には3社に減っている。光海底ケーブルバブルのように突然ではなかったが、国産の携帯電話メーカも2000年には10社以上あったが、2020年にはほぼゼロになった(iPhoneの普及によって国内の家電メーカはほとんど携帯電話端末の設計・製造から撤退した)。このように、光伝送や移動体通信用の計測器は、時代と共に需要が激変するビジネスである。

光減衰器(ひかりげんすいき)

光信号を減衰させる機器。ダイヤル式の可変モデルの測定器と固定型(見た目は部品)がある。 (=光アッテネータ)

光コネクタ(ひかりこねくた)

光ファイバを使い通信するためのコネクタ。単心ではSC、FCなど、多心ではMT、MPOなどが代表例だが、大変種類が多い。光通信用のコネクタは電気と同様にケーブル(光ファイバ)側のコネクタの先端に突起があり(オス)、機器側の嵌合するコネクタに穴がある(メス)。ただし通常はオスやメスの表現はしていない。製品カタログでは、光ファイバ側を「コネクタ」、機器側でコネクタに嵌合する側を「アダプタ」と表現しているケースをみかける。オーディオ機器業界の「プラグ」と「ジャック」のように、光通信では「コネクタ」、「アダプタ」と使い分けている例だが、光ファイバ側を「プラグ」と記載しているメーカもある。 光コネクタはその性格上、光ファイバ端面の研磨状態や、angledなどの嵌合方向、キー幅(narrow key/wide key)などの条件によりモデルがたくさんある。コネクタメーカからも新しいコネクタが発売されるなど、まだ(電気コネクタに比べて)発展途上といえる。光通信は初めに導入された基幹通信網での長距離伝送だけでなく、映像機器や家電製品、家庭内通信などの短距離にも用途が広がり、それに伴ってより安価、簡便なコネクタがいくつも生まれ、これからも用途によって生まれる。 光通信の機能がある新製品のカタログの適応コネクタ欄には、新しい形名のコネクタが記載され続けている。その表現(記載の仕方)も1通りに統一されていないので素人にはわかりにくい。たとえば、APC-FC、FC-APC、FC(APC)、これらは同じものだが、まるで「APC-FC」という新しいコネクタが誕生したように誤解されるかもしれない。形名も「HMS-10/A」や「DIN47256」など様々である。反対にすたれて使われなくなったコネクタもある。古い製品カタログにコネクタ名の記載があっても、現在は事実上、対応していない、というケースもある。光コネクタの種類は日進月歩である。

光サンプリングオシロスコープ(ひかりさんぷりんぐおしろすこーぷ)

(opto sampling oscilloscope) サンプリングオシロスコープ(サンプリングオシロ)はリアルタイムオシロスコープよりも周波数帯域が高いので、2000年代に広帯域オシロスコープ(高速オシロスコープ)が登場する以前は、アイパターン測定に重宝された。通常のオシロスコープ(オシロ)の周波数帯域が最高4GHzまでだった2000年頃には、高速なデジタル通信の品質評価はキーサイト・テクノロジーのDCA(83480Aや86100シリーズ)、テクトロニクスのDSA8000シリーズなどのサンプリングオシロでアイパターンの波形を確認していた。当時の高速デジタル信号は電気ではなく光が多く、サンプリングオシロは光コネクタを備えて、光信号で入力できた。キーサイトのDCAはオシロであり、かつ光信号解析装置(光測定器)でもあった(当時の同社ショートフォーム・カタログではオシロと光測定器の両方に掲載されていた)。 一般のオシロは電気入力が標準(当たり前)だが、光信号が入力できるのだから「光オシロスコープ」と呼称しても良いではないか、と筆者は1990年当時から思っていたが、サンプリングオシロを光サンプリングオシロと呼称する計測器メーカはほとんどいなかった。アンリツは2017年に、BERT(バート)の新製品でアイパターン解析機能があるBERTWave MP2110Aを発売した。サンプリングオシを内蔵しているが、その説明資料の中に「光サンプリングオシロスコープ」という表現がある。 光通信測定器メーカのアンリツや安藤電気は2000年頃に、すでに光サンプリングオシロスコープをつくっている。アンリツは1999年9月の技術報(アンリツテクニカル No78)で「分解能1THz(テラヘルツ)でアイダイアグラム測定を実現した光サンプリングオシロスコープSJE9203A」を解説している。安藤電気は横河技報Vol.47(2003年)の新製品紹介で「AQ7750光サンプリングオシロスコープは測定帯域500GHz以上を実現し、伝送速度160Gbpsの光波形をクリアかつ正確に測定。アイ波形の開口度を評価するアイ波形解析が可能」と述べている。光信号を入力でき、アイパターン測定ができるオシロスコープを上記2社は「光サンプリングオシロスコープ」と呼んでいる。 光電子増倍管などの光デバイスや光機器で有名な浜松ホトニクスは、応用物理学科の会誌に「O/E変換器で光を電気に変えて広帯域なオシロで観測するのではなく、サンプリングストリーク管により光信号を直接測定できる自社製品(オシロ)」について寄稿している(「光学」第22巻14号、1993年4月)。そのタイトルは「光オシロスコープ」である。つまり、光信号を直接受けられるオシロは通常のオシロではなく、特別な光入力可能なオシロなので、「光オシロ」と呼称するのが適切(当たり前)という認識である。 通常のオシロスコープ(リアルタイムサンプリング、実時間サンプリング)ではない、等価時間サンプリング方式のモデルは「サンプリングオシロスコープ」と呼ばれ、光入力が可能なモジュールがある(サンプリングオシロはモジュール式が多い)。オシロスコープメーカ(テクトロニクスやキーサイト・テクノロジー)は、方式が違うのでサンプリングオシロと呼称している。広帯域なので高速な信号(光)が受けられるが、電気入力もあるため、特別に「光オシロ」などとは呼ばない。 ただし前述のように、2000年代からリアルタイムオシロが広帯域化し、サンプリングオシロだけが広帯域ではなくなった。現在のサンプリングオシロはほとんど光入力が主で、限定された特定の顧客に使われている。そのため、実態は「光サンプリングオシロスコープ」や「光オシロ」である。オシロスコープメーカと光通信測定器メーカで、認識の差異(測定器の名称についての温度差)が感じられる事例である。

光スペクトラムアナライザ(ひかりすぺくとらむあならいざ)

(Optical Spectrum Analyzer) 光通信やDVDなどに使う光信号の、波長ごとのパワースペクトルを測定して表示する測定器。光通信測定器の代表的な基本測定器。オシロスコープ(時間-電圧グラフを表示)、スペクトラムアナライザ(周波数-パワーのグラフを表示)と同じように、光通信では光スペクトラムアナライザが波長-パワーのグラフを表示する。無線通信では周波数特性(f特)が重要な指標なように、光通信では波長特性が重要になる。単に波長のパワーを測定するだけなら光波長計があるが、光スペクトラムアナライザの方が大変良く使われる。 原理(構造)は回折格子(グレーティング)を使ったモデルが多いが、他の方式もある(アドバンテストは以前、ファブリペロー共振器を使ったモデルをつくっていた)。用途やアプリケーションによって複数の種類がある。通信で使う1300~1500nmの波長にフォーカスしたモデルや、Blu-ray Discなどの300~500nm向けなどがある。計測器メーカは横河計測 (旧安藤電気 )のAQ6300シリーズが有名。海外ではEXFO(エクスフォ)などがラインアップしている。以下の入門記事が詳しい。 参考用語:光通信測定器に関する用語

光センサ(ひかりせんさ)

光パワーメータと一緒に使用するセンサー。