計測関連用語集

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偏光計(へんこうけい)

(polarimeter) 光通信などで使われる光信号は電磁波の1種なので偏波である。偏光計は光信号の偏波(偏光)状態の計測器。英語をカタカナにした「ポラリメータ」という表記も多く見かける。 直線偏光や楕円偏光などの偏光の状態(SOP:State Of Polarization)や、偏光している光と偏光していない光の割合である偏光度(DOP:Degree Of Polarization)を算出し、結果をポアンカレ球やストークスパラメータで表示する。偏光状態が未知の光を偏光フィルタ(偏光子、ポラライザ)によって任意の偏光成分に分離し、測定部で受けて、校正式を使って偏光状態や偏光度を計算している。 光コンポーネントの偏波依存性損失(PDL)などの評価に使われる偏波アナライザや偏波シンセサイザ、偏波スクランブラは偏光計を内蔵しているものが多い。 ここまで読んで、偏光と偏波の使い分けがあることに気がつかれただろうか。技術書籍では「電磁波の特性である偏波は、電波は偏波、光は偏光と呼ばれる」と解説されている。ところが光測定器では偏光と偏波の両方が製品名に使われる。偏光計は光測定器であることが初心者にもイメージしやすいが、偏波シンセサイザは光測定器で、偏波アンテナは無線(映像信号や高周波)の機器であることは、知識がないとわからない。

偏波(へんぱ)

(polarization) 電磁波や光は進行方向に垂直な面内で、電界と磁界が時間的・空間的に規則的な振動をする。振動の軌跡には偏りがあり、この状態を電波は偏波、光は偏光と呼ぶ(※)。偏波とは電波の空間に対する向きを表し、直線偏波と円偏波の2つがある。電界が常に1つの平面内に存在するのが直線偏波、電界が進行方向に向かって回転する場合を円偏波と呼ぶ。 テレビの電波を良好に受信するには受信したい中継局の電界の振動方向(つまり偏波状態)に合わせてアンテナを設置しないといけない。地上波デジタル放送(地デジ)などは一般には水平偏波が多いが、地域によって違う場合がある。地デジやFM放送は直線偏波だが、衛星放送は円偏波。TVやFMラジオなどのVHF、UHFの電波の受信は八木・宇田アンテナが使われることが多い。このアンテナはエレメントの向きが偏波面からずれると感度が低下するので、エレメントの向きを放送波の偏波面に合わせることが重要。電気工事の作業者の常識である。 シングルモードファイバは、その名の通り1つのモードだけを伝搬しているが、実際には直交する2つの偏光モードが伝搬する。光ファイバのコアは理想的には真円だが、側面からの外圧などにより真円ではなくなり、僅かな複屈折が発生する。この影響で直交する2つの偏光モードの伝搬速度に差が生まれ、信号波形が劣化する。この現象を偏波モード分散(PMD:Polarization Mode Dispersion)と呼び、高速光通信(10Gb/s以上)では問題となる。電磁波の1種である光が偏波なので起きる現象である。 PMD以外に光ファイバの重要なもう1つの特性に「波長分散」がある。光は波長が違うと、光ファイバの中を伝搬する速度が違うため、伝搬時間の差(遅延)が発生する。光通信用の光源の波長にはわずかな幅があるため、単一の光パルスが光ファイバを伝搬していくと、波長分散によって、時間と共にパルス幅が広がっていく。この現象を波長分散と呼ぶ。偏波モード分散と波長分散は光ファイバ通信の重要な評価項目である。 電気を使わずに光で処理を行う光半導体が、インテルなどの大手デバイスメーカで研究されている。NTTが2019年に発表したオール・フォトニクス・ネットワーク構想であるIOWN(アイオン)でも光半導体はキーデバイスである。ただし、光半導体からの光を受ける側の光導波路をプリント基板などに生成しないと、オール・フォトニクス・ネットワークは普及しないと考えられている。光導波路の特性は偏波に大きく依存する。そのため偏波依存性損失(PDL)を波長可変光源や偏波コントローラ、光パワーメータなどによって評価することが重要である。 (※)実際は光も偏波という表現を使うことが多い。たとえば上記の偏波依存性損失や偏波コントローラなど。ただし光の偏波の度合い(偏光度)の測定器は偏波計ではなく「偏光計」と呼ばれている。また偏波コントローラを偏光コントローラと呼称する場合もある。英語のpolarizationを翻訳時に、光の場合は偏波と偏光が、統一されずに日本語になっている(明確な定義を筆者は見たことがない)。解説者によって不統一なので、偏波コントローラが電波ではなく光の測定器であることは初心者にはわかりにくい。偏光コントローラならば、光測定器をイメージしやすい。計測器はまったく、知っている人達だけのニッチな村世界である。

偏波依存性損失(へんぱいぞんせいそんしつ)

(polarization dependent loss) 光通信で使われる用語。光デバイス(DUT)は偏波に影響される(依存性がある)ため、光コンポーネントの重要な性能指標の1つ。入射光をすべての偏光状態にわたり変化させたときの、DUTの挿入損失の最大値と最小値の差(単位:dB)。 光導波路などの光デバイス(光コンポーネント)は偏波状態が変わると損失が変化して、出力(光パワー)が変動する。そのため、偏波を考慮した損失を定義して、デバイスの性能を規定する。英語の略記「PDL」も表記としてよく使われる。 技術書籍では「電磁波の特性である偏波は、電波は偏波、光は偏光と呼ばれる」と解説されている。ところが光分野の話である偏波依存性損失は偏光依存性損失とは呼ばれない。PDL測定に使う光測定器の名称も偏波コントローラや偏波スクランブラで、「偏光」とはいわないことが多いので、初心者は電波の測定器と区別がつきにくい(偏波アンテナなど、無線のカテゴリーの偏波関連機器もある)。光の偏波の具合(偏光度)の測定器は偏波計ではなく「偏光計(ポラリメータ、polarimeter)という。光通信測定器の偏波と偏光の使い分けは難しい。

偏波コントローラ(へんぱこんとろーら)

(polarization controller) 光測定器の1種。偏波を制御できる素子を使い、光信号を任意の偏波状態に設定できる。光源とDUT(光コンポーネント)の間に入れて、偏波依存性損失(PDL)などの測定に使用する。メーカによっては偏光コントローラという呼称もある(※)。 General Photonics (ジェネラル・フォトニクス、2019年3月よりLuna Innovations Incorporated)社は偏波依存性損失や偏波モード分散(PMD)などの、偏光を制御する製品を開発・製造している。日本で販売している商社は、これらの製品群のページタイトルを「偏波の制御:シンセサイザ/アナライザ/スタビライザ/スクランブラ/コントローラ」と表記している。偏波シンセサイザ、偏波アナライザ、偏波スクランブラ、偏波コントローラなどの各種の製品が各メーカにあるが、それぞれの定義は統一されていないので、各モデルの仕様を良く確認することが肝要である。 (※)技術書籍では「電磁波の特性である偏波は、電波は偏波、光は偏光と呼ばれる」と解説されている。ところが光通信測定器で偏波関連製品は偏波と偏光の2つの名称が使われる。一般にPDL測定に使われる偏波コントローラや偏波スクランブラなどは「偏波」、偏光の度合いを測定するのは偏波計ではなく「偏光計」(polarimeter、ポラリメータ)と呼称される。英語のpolarizationを翻訳時に、解説者によって偏波と偏光が統一されずに使われている。偏光からは光測定器がイメージしやすいが、偏波だと電波(ミリ波などの高周波無線)の製品もあり、偏波コントローラが光測定器であることは初心者にはわかりにくい。

偏波シンセサイザ(へんぱしんせさいざ)

(polarization synthesizer) キーサイト・テクノロジーの光測定器、N7786の品名。同社は光コンポーネント評価用途の光測定器に以前から注力している。N778x偏波解析/制御シリーズは、2020年頃にN778xC 偏波試験製品群(偏波アナライザ/偏波コントローラなど)というCシリーズになっている。N7786C偏波シンセサイザは、偏波コントローラと偏波アナライザの機能を持った製品である。偏波コントローラは任意の偏波状態をつくるが、その出力の偏波状態をモニタしてフィードバックし、より精度の高い安定した偏波状態にするアナライザ機能がついている。今後、光半導体の実用化で開発される光導波路などの光電融合デバイスの評価には単に偏波コントローラだけではなく、偏波シンセサイザが有効である、とPRしている。 Luna Innovations(旧General Photonics)製のPolarization Synthesizer/Analyzer(偏波シンセサイザ/アナライザ)PSY-201は、「偏波を発生させたり、あらゆる状態で偏波を維持させたりできる。偏波コントローラと偏光計で構成され、アルゴリズムを使って制御している」と解説されている。基幹通信網に光通信の技術(たとえばWDMなど)が導入されていった1990年代には偏波スクランブラや偏波コントローラという製品群があったが、2023年現在は、偏波アナライザや偏波シンセサイザという名称(品名)のモデルを多く見かける。PSY-201は偏波を発生させる、という機能から偏波発生器 → 偏波シンセサイザ、というネーミングと思われる。 偏波シンセサイザに限らず、偏波アナライザ、偏波スクランブラ、偏波コントローラ、偏波スタビライザなどの各種の製品が各メーカにあるが、それぞれの定義は統一されていないので、各モデルの機能を良く確認することが肝要である。たとえば偏波シンセサイザという品名でも、光源を内蔵していたり、いなかったりするので、名称から仕様を判断することがむずかしい。 N778xCのラインアップと概要(メーカのホームページから抜粋、2023年11月) N7781C偏波アナライザ:光信号の偏波特性を解析する包括的な機能を備える。ポアンカレ球上(ストークスパラメータ)に偏波状態(SOP)を表示する。最大1MS/sの高速動作。 N7785C偏波スクランブラ:入力と出力の両方のトリガ機能を使用して、一連の偏波状態(SOP)を繰り返し切り替えることができる高速同期スクランブラ。 N7786C偏波シンセサイザ:選択された出力偏光状態のシーケンスを設定および安定化するためのモニタリングおよびフィードバック用の偏光計を内蔵した高速の偏光コントローラ。 N7788C光コンポーネントアナライザ:偏光計と偏波コントローラを内蔵。同社の波長可変光源のシングル掃引を併用し、光コンポーネントや光ファイバの偏波モード分散(PMD)/群遅延時間差(DGD)や偏波依存性損失(PDL)の測定が可能。

偏波スクランブラ(へんぱすくらんぶら)

(polarization scrambler) 光通信に使われる光コンポーネントを評価するには偏波を制御する必要がある。偏波コントローラと呼ばれる製品(光測定器の1種)は、あらゆる偏光状態を任意の偏光状態に変換する。一方、偏波スクランブラは、偏光をランダム化する。偏波状態を高速(MHz)に変化させて、その影響を平均化する。光源とDUT(光コンポーネント)の間に入れて、偏った偏波状態にしないようにするのが偏波スクランブラ。 アドバンテストが通信計測器に注力していた1990年~2000年代には、光通信だけでなく光デバイス試験システムもラインアップしていた。偏波依存性損失(PDL)の測定用にQ8163偏波スクランブラ(1995年発売)などがあった。Q8163は同社独自の偏波可変方式を使い、偏波制御を行っていた(同社は2003年頃に光通信測定器から撤退したので、現在は生産中止)。アンリツや安藤電気ではなくアドバンテストやHP(現キーサイト・テクノロジー)の偏波関連の中古計測器がWeb上(ECサイト)に掲載されている。アドバンテストやHPは光部品評価に注力したが、アンリツや安藤電気(現横河計測)はOTDRなどの光通信用途のラインアップを継続してつくり続けている。アンリツと安藤電気は光ファイバ以外の光コンポーネントの評価測定器をほとんどつくっていない(光ファイバ用では波長分散の測定器などをつくった)。 PDL測定には偏波コントローラを使う場合もあり、メーカによって製品や名称が異なる。キーサイト・テクノロジーの偏波スクランブラN7785Cは「入力と出力の両方のトリガ機能を使用して、一連の偏波状態(SOP)を繰り返し切り替えることができる高速同期スクランブラ」と説明されていて、PDL測定には別モデル(N7786C 偏波シンセサイザやN7788C 光コンポーネントアナライザ)を使用する旨が解説されている。 偏波スクランブラだけでなく、偏波シンセサイザ、偏波アナライザ、偏波コントローラ、偏波スタビライザなどの各種の製品が各メーカにあるが、それぞれの定義は統一されていないので、各モデルの仕様を良く確認することが肝要である。

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