計測関連用語集

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PC研磨(ぴーしーけんま)

(polishing of optical fiber end face) 2本の光ファイバケーブルをコネクタを使って接続する際は、光ファイバ同士が隙間なく接続(接触)するように、先端(フェルール端面)を研磨している。これは隙間による反射(空気という屈折率が違う媒体があることで、境界面で起こるフレネル反射)を防止する目的で、(融着ではなく)光コネクタで行われる。 研磨の種類は、端面形状が凸球面のPC(Physical Contact)、SPC(Super PC、スーパーPC)、UPC(Ultra PC)と、斜め凸球面のAPC(Angled PC)の4つがある。4つの違いは反射減衰量で、PC(25dB以上)、SPC(40dB以上)、UPC(50dB以上)、APC(60dB以上)と規定されている。求められる仕様(反射減衰量)によってPC~APCのどれかの記述がされる。 代表的な光コネクタのFCコネクタやSCコネクタなどは、「FC-PC」(PC研磨のFCコネクタ)や「SC-APC」(APC研磨のSCコネクタ)のような表記で、「コネクタの種類及び研磨の種類(による反射減衰量の仕様)」を表現する。ただしメーカによって記述が不統一で、FC(PC)やFC・PC、FC/PCのような表記も多い。PCがコネクタの名称ではなく研磨の種類であるという基礎知識がないと、前述の3種類の表現は「FCまたはPC」、もしくは「FCとPC」というコネクタであると誤解される。計測器を含む機器の仕様覧では「光コネクタ」の項目にFC-PCやSC-APCという記述がなされる。 光ファイバのフェルールの研磨のことを総称してPC研磨と呼称するので、本稿のタイトルをPC研磨としている(英語は「光ファイバ端面の研磨」を英訳している)。 光コネクタのPC研磨表記は1980年代にはほとんどなく、1990年代から現れた。アンリツ のプログラマブル光減衰器MN9610A/MN9611A(製造中止品)の1991年発行カタログでは、入出力コネクタ覧に「FC・スーパーPC形」と記載されている。これは「SPC研磨のFCコネクタ」を意味するが、1990年代には各社の例としてこのような表記があった。現在は前述のようにFC(SPC)やFC・SPC、FC/SPCなどの表記があるが、FC-SPCがベストな表記と筆者は思っている。

PD(ぴーでぃー)

フォトダイオード(photodiode)の略記。受けた光(入力)に比例した電流を出力する、光センサ。光ファイバ通信は送信装置にあるLD(レーザーダイオード)などで電気を光に変換し(Electrical signal / Optical signal conversion、E/O変換)、光信号を長距離伝送し、受信装置ではPDで光を電気に変換する。つまりPDはO/E変換器(O/Eコンバータ)である。 参考記事:「光スペクトラムアナライザの基礎と概要 (第1回)」・・光ファイバ通信システムの構成図がある。

PDLメータ(ぴーでぃーえるめーた)

PDL(Polarization Dependent Loss)は偏波依存性損失。光や電波などの電磁波は偏波といって、進行方向に垂直な面で電界と磁界が大きさを変えている。光の偏波状態によって光デバイスの損失も変わるのでPDLの測定が重要になる。つまりPDLメータは光デバイスの評価に使用される。 1990年代にはキーサイト・テクノロジーがラインアップしていたが2000年代の光海底ケーブルバブル以降の光製品の縮小で生産終了した。偏波関連測定器としては偏波消光比メータを(波長可変光源が世界トップの中部地区のメーカ)santec(サンテック)がつくっている。海外のOZ Optics社製品はオプトサイエンスが輸入販売している。 キーサイト・テクノロジーは光製品の内、光スペクトラムアナライザやOTDRなどは中止したが、光パワーメータと光源の2つの基本製品は継続した。従来、光コンポーネント評価に光測定器の力点を置いていたが、それを継続し816xシリーズ(OPM、可変波長光源、偏波コントローラなど)の後継機種としてN77xxシリーズを発売した。現在はN77xxCというCモデルが現役である(N7749C:OPMのメインフレーム、N7776C:波長可変レーザー光源など、2023年現在)。光コンポーネントテスト製品群として、N778xCシリーズのPolarization Test Productsがある。N7786C 偏波シンセサイザやN7788C 偏波コンポーネントアナライザなどがあり、従来のPDLメータや偏波コントローラを上回る、偏波関連の光製品をラインアップしている(2023年現在)。 PDLと文字が似ているが、PLD(Programmable Logic Device)だと、デジタル半導体のことである。 計測器情報:キーサイト・テクノロジーの偏波関連の光測定器の例

光アッテネータ(ひかりあってねーた)

光信号を減衰させる機器。ダイヤル式の可変モデルの測定器と固定型(見た目は部品)がある。 (=光減衰器)

光海底ケーブル(ひかりかいていけーぶる)

(optical submarine cable) 海底に敷設された光ファイバケーブルで海外と通信するインフラのこと。海岸沿いの送受信装置や、海底ケーブルに一定間隔で挿入される中継器(アンプ)などで構成される。1988年に実用化されると、北米とEUや日本など、世界の主要先進地域が複数本のケーブル網でむすばれ、1990年代以降のインターネットの基幹インフラとなった。当時は国内の電話はNTT、海外との通話はKDD(国際電信電話、現在はauを運営するKDDI)が行っていた。KDDは光海底ケーブルを使い米国と電話をつないだ。 ケーブルの新設には莫大な費用がかかるため出資者を募り配当する。通信容量の増加をはるかに超える規模の敷設計画が投機として加熱し、2000年に光通信バブルが起こった。バブル崩壊によって光通信測定器の世界No1だったキーサイト・テクノロジーは3つあった工場が1つになり、光測定器のラインアップを大幅に減らした(多くの光測定器のモデルを生産終了)。No2だった安藤電気は会社自体が存続困難になり、横河電機に身売りした(同社の光スペクトラムアナライザは横河計測の1製品群として残り、世界No.1を堅持している)。2000年以降のデータセンタの通信量の増大(IoT、ビッグデータ)などにより、太平洋に新しいケーブル敷設の入札があったが、安全保障上の懸念から中国企業の入札無効が2021年3月に報じられた。 最盛期(1990年代)には日本の通信メーカ各社(NEC、富士通、三菱電機、日立製作所など)は陸揚げ局などの各種通信装置(光伝送装置)の受注にしのぎを削り、光ファイバを手掛ける電線大手メーカ(フジクラ、古河電工、住友電工)は海底用の増幅器(アンプ)の開発・増産に追われ、KDDは敷設船を保有して、ケーブル敷設事業が活況だった。限られた一定期間に大量の高額な専用測定器が必要なため、上記の計測器メーカと計測器レンタル各社は新しい敷設案件(海底ケーブルプロジェクト)の情報収集に奔走した。2000年のバブル崩壊で計測器メーカだけでなくレンタル会社も傷を負った(レンタル受注を見込んで購入してしまった大量の計測器は特殊用途向けなので、不良資産となった)。 現在では敷設事業は日本のNECと、サブコム(米国)、アルカテル・サブマリン・ネットワークス(フランス)の3社で寡占しているが、世界の通信網の覇権をめざして中国企業が台頭している。 光海底ケーブル新設用の通信計測器と、国内の携帯電話メーカ用の製造ライン向けの移動体通信用測定器は、1990年代から2000年代にかけて活況にレンタルされたので、計測器を取り扱うレンタル会社は8社あったが、2020年代には3社に減っている。光海底ケーブルバブルのように突然ではなかったが、国産の携帯電話メーカも2000年には10社以上あったが、2020年にはほぼゼロになった(iPhoneの普及によって国内の家電メーカはほとんど携帯電話端末の設計・製造から撤退した)。このように、光伝送や移動体通信用の計測器は、時代と共に需要が激変するビジネスである。

光減衰器(ひかりげんすいき)

光信号を減衰させる機器。ダイヤル式の可変モデルの測定器と固定型(見た目は部品)がある。 (=光アッテネータ)

光コネクタ(ひかりこねくた)

光ファイバを使い通信するためのコネクタ。単心ではSC、FCなど、多心ではMT、MPOなどが代表例だが、大変種類が多い。光通信用のコネクタは電気と同様にケーブル(光ファイバ)側のコネクタの先端に突起があり(オス)、機器側の嵌合するコネクタに穴がある(メス)。ただし通常はオスやメスの表現はしていない。製品カタログでは、光ファイバ側を「コネクタ」、機器側でコネクタに嵌合する側を「アダプタ」と表現しているケースをみかける。オーディオ機器業界の「プラグ」と「ジャック」のように、光通信では「コネクタ」、「アダプタ」と使い分けている例だが、光ファイバ側を「プラグ」と記載しているメーカもある。 光コネクタはその性格上、光ファイバ端面の研磨状態や、angledなどの嵌合方向、キー幅(narrow key/wide key)などの条件によりモデルがたくさんある。コネクタメーカからも新しいコネクタが発売されるなど、まだ(電気コネクタに比べて)発展途上といえる。光通信は初めに導入された基幹通信網での長距離伝送だけでなく、映像機器や家電製品、家庭内通信などの短距離にも用途が広がり、それに伴ってより安価、簡便なコネクタがいくつも生まれ、これからも用途によって生まれる。 光通信の機能がある新製品のカタログの適応コネクタ欄には、新しい形名のコネクタが記載され続けている。その表現(記載の仕方)も1通りに統一されていないので素人にはわかりにくい。たとえば、APC-FC、FC-APC、FC(APC)、これらは同じものだが、まるで「APC-FC」という新しいコネクタが誕生したように誤解されるかもしれない。形名も「HMS-10/A」や「DIN47256」など様々である。反対にすたれて使われなくなったコネクタもある。古い製品カタログにコネクタ名の記載があっても、現在は事実上、対応していない、というケースもある。光コネクタの種類は日進月歩である。

光サンプリングオシロスコープ(ひかりさんぷりんぐおしろすこーぷ)

(opto sampling oscilloscope) サンプリングオシロスコープ(サンプリングオシロ)はリアルタイムオシロスコープよりも周波数帯域が高いので、2000年代に広帯域オシロスコープ(高速オシロスコープ)が登場する以前は、アイパターン測定に重宝された。通常のオシロスコープ(オシロ)の周波数帯域が最高4GHzまでだった2000年頃には、高速なデジタル通信の品質評価はキーサイト・テクノロジーのDCA(83480Aや86100シリーズ)、テクトロニクスのDSA8000シリーズなどのサンプリングオシロでアイパターンの波形を確認していた。当時の高速デジタル信号は電気ではなく光が多く、サンプリングオシロは光コネクタを備えて、光信号で入力できた。キーサイトのDCAはオシロであり、かつ光信号解析装置(光測定器)でもあった(当時の同社ショートフォーム・カタログではオシロと光測定器の両方に掲載されていた)。 一般のオシロは電気入力が標準(当たり前)だが、光信号が入力できるのだから「光オシロスコープ」と呼称しても良いではないか、と筆者は1990年当時から思っていたが、サンプリングオシロを光サンプリングオシロと呼称する計測器メーカはほとんどいなかった。アンリツは2017年に、BERT(バート)の新製品でアイパターン解析機能があるBERTWave MP2110Aを発売した。サンプリングオシを内蔵しているが、その説明資料の中に「光サンプリングオシロスコープ」という表現がある。 光通信測定器メーカのアンリツや安藤電気は2000年頃に、すでに光サンプリングオシロスコープをつくっている。アンリツは1999年9月の技術報(アンリツテクニカル No78)で「分解能1THz(テラヘルツ)でアイダイアグラム測定を実現した光サンプリングオシロスコープSJE9203A」を解説している。安藤電気は横河技報Vol.47(2003年)の新製品紹介で「AQ7750光サンプリングオシロスコープは測定帯域500GHz以上を実現し、伝送速度160Gbpsの光波形をクリアかつ正確に測定。アイ波形の開口度を評価するアイ波形解析が可能」と述べている。光信号を入力でき、アイパターン測定ができるオシロスコープを上記2社は「光サンプリングオシロスコープ」と呼んでいる。 光電子増倍管などの光デバイスや光機器で有名な浜松ホトニクスは、応用物理学科の会誌に「O/E変換器で光を電気に変えて広帯域なオシロで観測するのではなく、サンプリングストリーク管により光信号を直接測定できる自社製品(オシロ)」について寄稿している(「光学」第22巻14号、1993年4月)。そのタイトルは「光オシロスコープ」である。つまり、光信号を直接受けられるオシロは通常のオシロではなく、特別な光入力可能なオシロなので、「光オシロ」と呼称するのが適切(当たり前)という認識である。 通常のオシロスコープ(リアルタイムサンプリング、実時間サンプリング)ではない、等価時間サンプリング方式のモデルは「サンプリングオシロスコープ」と呼ばれ、光入力が可能なモジュールがある(サンプリングオシロはモジュール式が多い)。オシロスコープメーカ(テクトロニクスやキーサイト・テクノロジー)は、方式が違うのでサンプリングオシロと呼称している。広帯域なので高速な信号(光)が受けられるが、電気入力もあるため、特別に「光オシロ」などとは呼ばない。 ただし前述のように、2000年代からリアルタイムオシロが広帯域化し、サンプリングオシロだけが広帯域ではなくなった。現在のサンプリングオシロはほとんど光入力が主で、限定された特定の顧客に使われている。そのため、実態は「光サンプリングオシロスコープ」や「光オシロ」である。オシロスコープメーカと光通信測定器メーカで、認識の差異(測定器の名称についての温度差)が感じられる事例である。

光スペクトラムアナライザ(ひかりすぺくとらむあならいざ)

(Optical Spectrum Analyzer) 光通信やDVDなどに使う光信号の、波長ごとのパワースペクトルを測定して表示する測定器。光通信測定器の代表的な基本測定器。オシロスコープ(時間-電圧グラフを表示)、スペクトラムアナライザ(周波数-パワーのグラフを表示)と同じように、光通信では光スペクトラムアナライザが波長-パワーのグラフを表示する。無線通信では周波数特性(f特)が重要な指標なように、光通信では波長特性が重要になる。単に波長のパワーを測定するだけなら光波長計があるが、光スペクトラムアナライザの方が大変良く使われる。 原理(構造)は回折格子(グレーティング)を使ったモデルが多いが、他の方式もある(アドバンテストは以前、ファブリペロー共振器を使ったモデルをつくっていた)。用途やアプリケーションによって複数の種類がある。通信で使う1300~1500nmの波長にフォーカスしたモデルや、Blu-ray Discなどの300~500nm向けなどがある。計測器メーカは横河計測 (旧安藤電気 )のAQ6300シリーズが有名。海外ではEXFO(エクスフォ)などがラインアップしている。以下の入門記事が詳しい。 参考用語:光通信測定器に関する用語

光センサ(ひかりせんさ)

光パワーメータと一緒に使用するセンサー。

光測定器(ひかりそくていき)

2つのカテゴリー(機種群)がある。1.照明などの可視光の測定器。照度計、輝度計、色彩計など(心理物理量の測定器)。2.レーザーの光などの測定器。光パワーメータ、光源、光スペクトラムアナライザ、OTDRなど(物理量の測定器)。 1つめのカテゴリーは画像を表示する機器(PCのモニタやTV)向けの測定器が活況。メーカとしてはコニカミノルタ、トプコンテクノハウスが有名。次々と開発される新しい方式のディスプレイに対応した、新しい輝度計が発売されている(たとえばカラーアナライザ)。色差計などの色の測定器も(「光・色の測定器」として)光測定器に包含している場合もある。堀場製作所のような科学分析機器メーカもつくっている。カテゴリーは当サイトでは物理量測定器ではなく科学分析機器に分類している。単位はlx(ルクス)やcd(カンデラ)。 2つめのカテゴリーは光通信やDVDなど(光ディスク)に使われる測定器。無線通信の周波数に相当するのは、光通信では波長になる。光通信測定器の主な仕様は波長とパワー(dB)。NTTが基幹通信網に光ファイバを導入するのに伴い各種の光通信測定器が開発された。通信用途の波長は850nm〜1.55μmで、その波長帯の測定器が多い。青色レーザー(400nm〜500nm)が開発され、Blu-ray Disc(ブルーレイディスク)などのDVD機器のために、通信用途より短い波長の測定器も増えた(DVD評価用測定器)。 一般に「光測定器」というと上記の1が思い浮かぶが、計測器としては2もある。2の実体は「光通信測定器」なのに各メーカは「光測定器」と称して「光通信」とはいわない。「光測定器といえば光通信の測定器」という暗黙の了解が伺える。1の分野の測定器メーカは「測光する装置として照度計、輝度計、積分球などの光計測器がある」と主張している。サブミリ波より高い周波数の電磁波は光と呼ばれる。可視光は周波数405~790THz、波長830nm〜360nmで、周波数が下は赤外線、上は紫外線。通信用途の波長は近赤外線の領域といえる。1と2の違いは以下の参考記事、光スペクトラムアナライザの基礎と概要 (第1回)に詳しい記述がある。 通常「光測定器」というと「人が感じる可視光の測定器」、つまり「照明の明るさを測定する照度計」などを想像する。光通信の計測器メーカはあたりまえのように「光測定器」というが、この分野を知らないと技術者でも光通信とは思わないことも多い。ここが計測器の難しいところである。

光チャンネルセレクタ(ひかりちゃんねるせれくた)

多数の光信号を1つに切り替える機器。略称:チャンセレ。

光通信測定器(ひかりつうしんそくていき)

現在、世界の先進国では基幹通信網の有線通信は、電線に電気を流すのではなく、光ファイバにレーザー光を通すことで行われている。日本ではNTT(旧日本電信電話公社:略称、電電公社)が1970年代から実用化を始めた。現在ではインターネットを光回線で契約しているユーザも多い。世界の状況では、1990年代にはEU、北米、日本などは海底に敷設した光ファイバでつながり(光海底ケーブル)、インターネットの普及を支え、また最近でも新しい海底ケーブルの敷設によって世界中の通信需要をカバーしようとしている(2000年頃の光海底ケーブルバブルで敷設が中止になったが、データ通信量の増大で2020年代には新設がはじまった)。 携帯電話などのワイヤレス(無線)通信では周波数が基本だが、光通信は電磁波の波長が基本になる。光ファイバ通信は(ファイバの伝送損失が最も少ない波長を選び)1300nmと1500nm付近の2つの波長で実用化されている。もっと波長が短い400nm~600nm付近は、DVDなどの光記憶媒体に使われている。近年青色LEDという発光素子が開発され、Blu-ray Disc(ブルーレイディスク)が普及した。そのため、従来の光通信用測定器も波長帯域を1200~1600nmではなく、より短波長の300nm付近からカバーするような機種も増えた。 光源、光パワーメータ(略記:OPM)、光スペクトラムアナライザ(俗称:光スペアナ)、波長計などは、当初、一番の需要は光ファイバとそれを使った通信のために開発されたので、「光通信測定器」であるが、主要な計測器メーカ(アンリツ、安藤電気、キーサイト・テクノロジーなど)は当初から「光測定器」と呼称してきた。光測定器というと、輝度計、照度計、色彩計などの色・光の測定器(いわゆる照明機器や表示装置などの可視光の測定器)もあり、それらの計測器メーカも光測定器と呼称している。そのため、光測定器というとどちらを指すのか紛らわしいが、光通信用測定器のメーカは「光測定器」といって譲らないし、通信だけでなく短波長(DVDなどの家電製品)もカバーするので、いっそう光通信ではなく、光測定器という妥当性が増したといえる。当サイトの機種群(カテゴリー)も光通信測定器ではなく「光測定器」である(メーカの表現に倣っている)。 本稿では誤解が無いように光通信測定器と表記する。まずそのおおまかな種類を述べる。 基本測定器は 1.光源:波長が固定の安定化光源はLD(レーザーダイオード)光源とLED光源があり、可変波長光源はチューナブル光源とも呼ばれる。 2. 光パワーメータ (OPM:Optical Power Meterと略記される):ユニット式で光源モジュールが装着可能な「光マルチメータ」と呼称するものもある。 3.波長測定器:光スペアナ、光波長計。 4.その他:変換器(O/E、E/O)、光減衰器、光チャンネルセレクタなど。 専用測定器は 1. 光ロステスタ(光源とOPMの組み合わせ): IDテスタや光ファイバ心線対象器など。 2. OTDR(光ファイバの障害位置試験器、別名:光パルス試験器)。 3.光ファイバの特性測定器:波長分散や偏波などの測定器。 4.融着接続器。計測器メーカではく、光ファイバをつくる大手電線メーカが光ファイバ融着器をつくっている。光ファイバの工事には必須の機材。 5. DCA(デジタルコミュニケーションアナライザ)や光コンポーネントアナライザなど。 1の光ロステスタ、2のOTDR、4の融着器は主にフィールド用途(敷設や保守)である。5のDCAはキーサイト・テクノロジーの通称で、構造はサンプリングオシロスコープなので、純粋な光通信測定器ではない。 上記のほとんどすべての測定器を日本ではNTTをスポンサーとしてアンリツと安藤電気(2000年頃に横河電機に吸収されて現在は横河計測)がラインアップした。現在はアンリツも横河計測も光源、OPM、OTDRに注力し、ラインアップを広げていない(横河計測の光スクトラムアナライザは世界No.1である)。1980年代には横河電機やアドバンテストも光通信測定器に参入したが、ほとんど生産終了している(アドバンテストのRF以外のモデルを継承したエーデイーシーは、短波長帯のOPMをラインナップしているが、これはDVD評価用で、光通信用途ではない)。キーサイト・テクノロジーもアンリツや安藤電気を上回るほどラインアップがあったが、2000年の光海底ケーブルバブル以降に製品群を縮小し、現在は光部品測定用途に注力してOPM、光源、波長計、偏波アナライザをつくっている(2022年5月現在の同社ホームページの製品・サービスのページにはオシロスコープや信号発生器、ソフトウェアなどの項目が並ぶが、光測定器は「その他」にまとめられていてすぐには探せない)。 ベンチトップの高精度のOPMでなく、ハンドヘルドの現場・工事用OPMは、三和電気計器や日置電機をはじめとして数えきれないくらい多くのメーカがある。海外の光通信測定器メーカはM&AによってEXFO(エクスフォ)とViavi Solutions(ヴィアビ)に収斂されたが、光通信測定器よりもビット誤り率試験器(BERT)などの「有線通信の伝送品質評価測定器」に注力していて、それ等も含めて光通信と呼称している。 計測器情報:レーザーなどを扱う光通信測定器の例

光波長計(ひかりはちょうけい)

(optical wavelength meter)光の波長を測定する機器。光通信網がインフラとしてさかんに建設された時期に活躍した。光スペクトラムアナライザでも波長計測はできるが、もっと安価で、精度良く波長測定ができる。参考記事:光スペクトラムアナライザの基礎と概要 (第2回)3ページ目日本国内で販売されている光波長計の一覧が掲載されている。

光パルス試験器(ひかりぱるすしけんき)

光通信測定器の1種であるOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)で、アンリツ製品の品名。OTDRの測定原理を表現しているのでOTDRの別名として大変適切な名称である。光ファイバの伝送損失や断線箇所の特定ができるため、光ファイバの敷設や保守で電気工事会社が使う必須の測定器の1つ。NTT系の計測機器レンタル会社であるエヌ・ティ・ティ・レンタル・エンジニアリング株式会社(略称:NTTREC、呼称:エヌティティレック)は光の電気工事会社向けに多くのOTDRを保有している。計測器メーカは横河計測(旧安藤電気)とアンリツが2強だが、ベンチャーや海外の製品もある(EXFOなど)。安藤電気のOTDRの品名は長らく「光ファイバアナライザ」だった。光パルス試験器と光ファイバアナライザとOTDRは名称がまったく違うのに、全て同じ計測器であることは、光通信の素人にはわかりにくい。光ファイバの敷設や保守では光パルス試験器以外には、「光ロステスタ(またはOLTS)」や「光ファイバ心線対照器(IDテスタ)」が使われる。 計測器情報:光パルス試験器の製品例

光パワーメータ(ひかりぱわーめーた)

(Optical Power Meter) 光のパワーを測定する機器。OPMと略記されることもある。本体と光センサで構成される。チャンネル数を増やせるように本体が大きな筐体を用意している機種もある。ユニット式のものは光源ユニットも揃えて、光源&パワーメータの光通信計測システムとなっている。光通信の基本測定器である光パワーメータは電気のテスタに相当し、工事会社が必ず持っているが、光部品の価格などの諸般の事情により電気のテスタほど安価ではない。横河計測(旧安藤電気)、アンリツなどという大手通信計測器メーカだけでなく、電気のテスタメーカ(たとえば三和電気計器)や名の知れないメーカからたくさんのOPMが発売されている。光通信で使用される波長は0.85~1.5μmで、安藤電気(現横河計測)、アンリツのOPMはほとんどがこの波長帯域のセンサである。青色LEDの開発などでブルーレイディスクが登場した。このLEDの波長は0.4μmと、家電製品は通信より波長が短い。0.4~0.7μmの帯域にフォーカスしてOPMをラインアップしているのがエーディーシー(旧アドバンテスト)や日置電機、三和電気計器などである

光半導体(ひかりはんどうたい)

(opto semidonductor) 2つの意味がある。従来は以下の1.だったが、最近2.の意味でも使われている。 1. 半導体の中で、電気信号を光信号に変換する発光素子、光信号を電気信号に変換する受光素子、発光素子と受光素子を組み合わせた複合素子を、「光半導体」と総称する。その種類と用途は以下。 (1)電流を光に変換する光半導体(発光素子) ①LED:照明、信号灯、ディスプレイ、電子機器のバックライトなどに使用。 ➁レーザーダイオード:DVDの書き込み、光ファイバ通信、3Dセンサなど。 ➂赤外線LED:テレビのリモコン、防犯カメラ、車両カメラなど。 (2)光を電流に変換する光半導体(受光素子)・・光の検出をするので、光センサとも呼ばれる。 ①フォトダイオード:カメラの露出計、光通信システム、分光器、暗視装置など。 ➁フォトトランジスタ:自動ドア、カメラ、スマートフォン、光電センサなど。 光デバイスをopto device(オプトデバイス)と呼んでいる。opticalは日本語では「光学」になるので、optical semiconductorは「光学 半導体」である。ここでいう光半導体は英語では、opto semidonductor。 光半導体に関する国内メーカの対応は様々。総合半導体メーカのルネサス エレクトロニクスは、2020年5月に光半導体事業(半導体レーザーとフォトダイオード)から撤退し、製造拠点である滋賀工場の生産ラインを停止すると発表した。光デバイス専業メーカの浜松ホトニクス(通称:浜ホト)は、2019年6月に光半導体事業の生産能力向上のため、浜松市の新貝工場に新棟を建設すると発表した。 2. NTTは次世代の基幹通信網として、オールフォトニクス・ネットワークのIOWN(アイオン)構想を2019年に発表した。光を電気に変換しないで光のままで処理することで、電気よりも高速・大容量を実現する。そのためのキーは「チップ内で(電気を使わず)光で処理をする」光半導体である。ここでいう光半導体は前述の受光素子、発光素子ではなく、光電融合デバイスを指す。NTTは、「従来の半導体上で電子回路が担ってきた情報のやり取りを光回路に置き換える」、電子が通る銅配線の代わりに「シリコンに光を閉じ込めて通す道、光導波路を形成する」研究を進めている(プリント基板に安価に光導波路が形成される未来を想定している)。 IOWNグローバルフォーラムには世界中の先端企業が参画している。インテルは光半導体(光集積回路)の研究に世界で最も注力している企業である。電子ではなく、従来よりももっと高速の光を使って情報を伝えて処理することで、「これまでにない超低消費電力、超高速処理で動く半導体」の開発が進んでいる。 2022年1月21日の日本経済新聞には以下の内容の記事がある。 NTTは「光の半導体」で限界突破し、電気から技術転換。半導体チップに「光」の通る回路を作り情報を処理する。 2024年1月30日には「経済産業省はNTTが主導する次世代の「光半導体」の研究開発に最大452億円を支援する」ことが報じられた。 2000年以降に、半導体のシリコン基板上に、光導波路、光スイッチ、光変調器、受光器などの素子を形成する技術が研究されてきた。シリコン基板上に受光器などを集積するので、シリコンフォトニクスと呼ばれる。NTTは光送受信モジュールを開発できたことを成果としてIOWNを発表した。インテルは2020年12月開催のIntel Labs Day 2020で、シリコンフォトニクスの研究テーマとして、従来のサイズから1000分の1に小型化した変調器を紹介した。シリコンのCMOS集積回路の製造技術は確立しているので、シリコンフォトニクスによる超高速・小型・低消費電力の光半導体は、比較的に安価な製造コストで実現できると考えられている。

光ファイバ(ひかりふぁいば)

(optical fiber) 現在の有線通信網の主力のケーブル。線材が細いこと、電気でなく光なので電磁ノイズの影響を受けないことから、細い管の中を検査する内視鏡や、強磁場で使う温度計にも使われている。表記は「ファイバ」と「ファイバー」の2つがある。光は屈折率の異なる媒体を通過するとき、境界面で進路がわずかに曲がる性質がある。透明なコップに水と箸を入れ横から見ると、水面の上下で箸はわずかに曲がって見える。これは空気(水面の上)と水(水面の下)の屈折率が違うので光が曲がったためである。曲がり具合は2つの物質の組合せによって決まる固有値になる。光は境界面を通過するとき全て透過せずわずかに反射する。曲がり具合の大きな2つの物質を選ぶと、曲がる角度がだんだん大きくなってついには透過せず、ほとんどが反射するようになる。そのような組合せの2つ物質(ガラス)を筒状にして、一方の筒の外側にもう一方を筒状に被せた2重円筒形構造を作り、内側の筒(物質)に光を入射したら、光は外側の物質に閉じ込められて全反射し続け、遠方まで伝わり光通信を実現できる。この理論を日本人の西澤潤一氏が考案したが、あまりにも先進的な理論であったため、日本では特許は却下されてしまった。光ファイバの実用化はアメリカの大手ガラス会社のコーニング社が行い、現在も光ファイバの世界的なトップメーカである。国産の電線メーカ、住友電気工業、古河電気工業、フジクラがコーニングに続く光ファイバメーカである。内側の筒(物質)をコア、外側をクラッドと呼ぶ。材料がガラス製ではコア径は50(または62.5) μm、クラッド外径は125 μmの細さで、外側を被覆して強度を保つ。光ファイバの接続は融着によって行う。先述の電線メーカは光ファイバ融着器のメーカでもある。光ファイバを曲げるなどの外圧を加えると、通信パワーが減衰する。わずかな外圧による微量のパワー変化を検知できるので、ひずみセンサとしても使われる。山の斜面やトンネルなどに敷設して、地面のずれを検知して防災に役立てている。計測器メーカは横河計測(旧安藤電気、光通信測定器)、 共和電業(ひずみ測定器)、安立計器(温度測定器)などがある。 光ファイバ関連の計測器や機器の解説: OTDR、光パルス試験器、光ファイバアナライザOLTS、光ロステスタ、IDテスタ、光ファイバ心線対照器、光ファイバ温度計、ファイバースコープ、ファイバーレーザー 計測器情報: 横河計測の光測定器、光ファイバアンプ、安立計器の光ファイバ温度計

光ファイバアナライザ(ひかりふぁいばあならいざ)

光通信測定器の1種であるOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)の代表的なメーカ、安藤電気(現横河計測)の品名は1980年代から「光ファイバアナライザ」だった。OTDRは別名、光パルス試験器とも呼ばれる。光パルスという表現はOTDRの測定原理からくるため妥当な名称である。OTDRは光ファイバの伝送損失を測定でき、敷設時には断線の箇所を見つけることもできる。そのため光ファイバのアナライザという命名は間違ってはいないが、光ファイバの波長分散や偏波を測定する測定器も光ファイバアナライザである(それらは波長分散測定器や偏波測定器といわれる)。「光ファイバ敷設・保守用可搬型・現場アナライザ」ならいざしらず、光ファイバアナライザより光パルス試験器に軍配があがりそうである。現在の横河計測の現役モデルは「OTDR(光パルス試験器)」、「マルチフィールドテスタ」などの名称で、光ファイバアナライザという品名のモデルは無くなった。光ファイバの敷設や保守では、「光ロステスタ(またはOLTS)」や「光ファイバ心線対照器(IDテスタ)」も使われる。 計測器情報:光ファイバアナライザの製品例

光ファイバ心線対照器(ひかりふぁいばしんせんたいしょうき)

(optical fiber identifier)通信用の光ファイバの敷設工事や保守作業では、心線対照器というハンドヘルドタイプの光計測器によって、心線対照(複数本の光ファイバから該当する1本を識別すること)や光損失測定が行われる。心線対照器は送信部(光源)と受信部(識別器)で構成される。中継所での接続作業時には特定の心線を間違いなく接続することは最も重要な作業である。光ファイバのメーカである大手電線メーカ3社(住友電工、古川電工、フジクラ)がラインアップしている。光通信の黎明期~普及期にかけては日本電信電話公社(現NTT)の依頼によってアンリツと安藤電気(現横河計測)もラインアップしていたが、現在は生産終了。光IDテスタやIDテスタとも呼ばれる。英語のidentifier(識別するもの)より命名。ケーブルテスタなどのレイヤ1試験器を数多くラインアップするフルークネットワークスや、現場用可搬型モデルの機器に注力しているメーカがIDテスタをつくっている。TDRなどの現場測定器をラインアップする株式会社グッドマンにもIDテスタという品名のモデルがある。従来、光損失測定を目的とした測定器は光ロステスタ(OLTS)だったが、心線対照器も光源と検出部があるため光損失測定の機能があるものが多い(光ロステスタと心線対照器の明確な使い分けはユーザによって様々)。心線対照器は送信部と受信部が独立し、ファイバを切断することなく導通試験ができることが特長。アンリツには、心線対照用光源から変調光を光ファイバに入力し、マイクロベンド法を用いて漏れ光を検出するFI720光ファイバ心線対照器があった(2022年5月現在、製造中止)。