計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
計測・測定に関連する用語全般が収録されており、初めて計測器を扱う方でも分かりやすく解説しています。
フリーワード検索をはじめ、カテゴリー、索引から簡単にお調べいただけます。

フリーワード検索

検索用語一覧

106

各用語の詳細ページでは関連用語などを確認することができます。
このアイコンが表示されている用語には、詳細ページに図解や数式での説明があります。

伝送交換(でんそうこうかん)

(transmission/exchange) 基幹通信網の設備には、情報を遠隔地に伝達する伝送装置(変調や多重によって信号の形式を変えて高速・大容量化する)と、端末同士をつないで通信線路(呼)を確立する交換装置がある。伝送と交換は2つの大きな仕組みのため、伝送交換と呼称される。インターネットなどのネットワークサービスを提供する電気通信事業者の設備を、工事/維持/運用を監督する国家資格である電気通信主任技術者には、「伝送交換」と「線路」の2種類がある(伝送交換設備には、伝送、交換、無線、データ通信、通信電力がある)。日本の基幹通信網を担っているNTTに通信装置を納入している通信機器メーカも、伝送と交換は別組織になっている会社が多い。たとえば日本電気の玉川事業場は伝送、我孫子事業場は交換を担当している。 伝送/交換装置用測定器は、通信計測器の大きな1カテゴリーで、世界の伝送(通信)方式が大きく変わった1990年代には新同期網の敷設のために、SDH/SONETアナライザなどの(1千万円/台、以上する)高額なモデルが発売されて活躍したが、最近はこの分野のインフラ投資が少ないため、伝送/交換装置用測定器の新製品は少なくなった。1990年頃のメインプレーヤーだったHP(後のアジレント・テクノロジー、現キーサイト・テクノロジー)は2000年代初頭の光海底ケーブルバブル以降に光通信測定器を縮小し、伝送/交換装置用測定器(OmniBERなど)から撤退した。アンリツは「OTN/SDH/SONET関連測定器」というタイトルでラインアップしている(2023年現在)。アンリツの競合だった安藤電気は2000年代初頭に横河電機に吸収され、現在は伝送/交換装置用測定器から撤退したが、光通信測定器の光スペクトラムアナライザは世界No.1である。 海外ではM&Aが盛んで、通信計測器メーカであるViavi(ヴィアヴィ) Solutionsは、伝送/交換用測定器メーカのWandel&Goltermann(ワンデル・ゴルターマン)や光測定器のJDSファイテルを吸収した会社である(無線通信の計測器もラインアップしている)。高速の有線通信は電気でなく光になるため、キーサイト・テクノロジーが伝送/交換測定機器や光測定器からほぼ撤退した(※)現在、ViaviやEXFO (エクスフォ)は次世代の有線通信用の計測器を提供する代表的なメーカとなっている。現在は「伝送交換」という表現より「コアネットワークの評価測定器」という表現が適切かもしれない。 2000年以降のインターネットの普及によって、ネットワークはIP化され、ルータなどが交換機に取って代わった。通信の主体は電話機(音声)ではなくデータ端末になった(携帯電話もネット検索やLINEなどのネットワーク端末で、もはや実態は電話機ではない)。NTTに交換機を納入していた電電ファミリーのNFOH(日本電気、富士通、沖電気、日立製作所)は、すでに交換機をつくっていない。日立製作所とNECは2004年に基幹系ルータ・スイッチ事業で合弁しアラクサネットワークスを設立(日立60%、NEC40%)した(NECの我孫子事業場から交換機の技術者が日立の横浜事業所に異動)。沖電気(OKI)はルータの事業から撤退して、交換機の技術を活かしてATMなどの店舗機器を主力事業に、業態を転換している。ROADM(ろーだむ)など伝送ということばは残るが、交換機の消滅とともに「伝送/交換」という表現は過去のものとなった。 当サイトでは「伝送・交換装置用測定器」というカテゴリー名を使用しているが、より適切な名称が確立されれば変更することが望ましい。日本電気計測器工業会(JEMIMA)の電気計測器の機種分類では「有線通信測定器・光測定器」という名称で統計データを示している(2022年12月発行、電気計測器の中見通し)。ここでいう有線通信測定器とはプロトコルアナライザ、IP関連測定器(ネットワーク負荷試験機など)、伝送/交換装置用測定器(誤り率測定器やSDH/SONETアナライザなど)を含んだ名称である。この3カテゴリーの売上は2000年以前よりも減少して、光測定器と合わせた額でも、2023年~2026年の売上予想は、オシロスコープ(1カテゴリー)の約60%程度の見込みになっている。 キーサイト・テクノロジーが伝送/交換装置用測定器や光測定器のラインアップをいち早く激減したことは、先見の明があったかもしれない。アンリツは有線より無線の測定器が強いので(携帯電話などの無線通信システムの進歩・発展に伴い)大手の通信計測器メーカとして存続しているが、無線でなく有線に偏重していた安藤電気は会社がなくなってしまった(安藤電気の電気計測器No.1カテゴリーはプロトコルアナライザと光測定器だった)。 (※) キーサイト・テクノロジーはOTDRや光スペクトラムアナライザなどは生産中止したが、光の基本測定器である光パワーメータと光源は継続してラインアップしている。同社は光通信に使われる光計測器を幅広くラインアップするのではなく、光部品評価に特化している。そのため、偏波シンセサイザなどの光の偏波に関するモデルのシリーズ化を進めている。

電電ファミリー(でんでんふぁみりー)

NTTの前身である日本電信電話公社は製造部門を持っていなかった。研究開発を製品化するNTTの出入りメーカ(お抱え企業、下請けメーカ)をNTTのファミリー企業という意味でこう呼んだ。通信装置はNEC、富士通、沖電気、日立製作所がつくったのでNFOHと呼称された(一番はNとFで三番がOという、比率を表していると業界ではいわれた)。新しい規格に対応した通信装置(伝送交換)が導入されるときは、同じく電電ファミリーの大手通信計測器メーカ、アンリツと安藤電気が対応する計測器を開発した(たとえば1970年代から光ファイバによる光通信が導入されると、この2社が光通信測定器をつくり、R&Dから通信網の敷設・保守までほぼすべての測定器をラインアップした)。NTTは2社に仕様を示し製品を作らせる。性能が同じ2社の製品があることで、1社に依存しないというリスクヘッジになる。NTTが日本の基幹通信網を独占し、アメリカのベル研究所と肩を並べて研究開発をしていた時代のことである。 その後、通信の自由化によってNTTは分割され、ほかの通信事業者が参入して現在に至る。日本の通信料金は下がり安価になったが、研究開発や国際的な通信規格の策定の力は衰えたという指摘もある。NTTは2019年にIOWN (Innovative Optical and Wireless Network、アイオンと呼称)構想を公表した。光トランジスタの開発によって、従来の電子を使った半導体による通信網を完全なフォトニクスにすることで、世界的なゲームチェンジを狙う。NTTは2020年にNTTドコモの完全子会社化を終え、2021年にはNTTコミュニケーションズ(NTT com)とNTTコムウェアもグループ内へ編入する。過去の分社化から一転、強いNTTの復権がうかがえる。 JR東海は鉄道車両メーカの日本車輌製造(愛知県豊川市)を子会社にした。世界で競えるインフラを作り、輸出によって豊かな国になるためには、上流のR&Dから製造まで独占的な強い企業が必要という、冷徹な国際事情が存在する。たとえば原子力発電の世界有数メーカであるフランスのアレバ社はフランスの国有企業である。フランスは原子力発電を国策ととらえ、世界的なビジネスをしている。日本が世界に伍する技術分野に通信が復権するかはまだ不透明である。 参考用語:原子力発電所、重電メーカ、パワー半導体

トーンプローブセット(とーんぷろーぶせっと)

心線対照器の1種。通信線がLANや電話線などの電気のとき、音(トーン)によって心線を知らせる、トーン発生器(送信部)とプローブ(検出器・受信部)を組み合わせた製品が「トーンプローブセット」と呼ばれる。メーカはフルーク・ネットワークスやグッドマンが有名。高度経済成長期に通信インフラが拡充されていた時代はTDR(ケーブルロケーター)同様に、大手計測器メーカが電気の心線対照器を製造していたが、現在はほとんど生産終了している。少なくとも国産メーカではつくっていない。

トラフィック(とらふぃっく)

(traffic) 直訳すると「交通」だが、ネットワーク・通信の用語としては「ネットワークを流れる情報、または情報量」を指す。「トラフックが増大し、スループット(処理能力)が悪化する」などの表現がされる。東陽テクニカが販売しているネットワーク負荷試験機、SPIRENT(スパイレント)社のTestCenter(テストセンター)は「トラフィックジェネレータ」と呼ばれている。負荷をかけることを「大きな情報量を発生させる」という意味で、トラフィックということばを使っている。

トランシーバ(とらんしーば)

1. 有線・無線通信で送信機や送信部品のこと。 2. 無線で通信する携帯機器のこと。以前は片側通信の機器が多く、自分が話すときはボタンを押し、相手が話すときはボタンを離す、という操作をして会話した。携帯電話が普及する以前は離れた2つの場所で会話できる無線通信機器として活躍した。たとえば、工事現場や、遠足の引率で先頭と最後尾など。1980年頃はまだ携帯電話は無く、2台に分乗して高速道路を走るとき、どこのサービスエリアで待ち合わせるかを相談するなど、トランシーバがあると便利だった。現在も工事現場などで使われるが、携帯電話の小型化、普及により、工事現場での使用例は減っている。

トランスミッタ(とらんすみった)

(transmitter)日本語では「送信機」。信号を送信する機器のこと。電波などの無線信号の送信機や、光通信の光信号を発信する光トランスミッタなどがある。対になる言葉として「レシーバ(受信機)」がある。回路図などではトランスミッタをTx、レシーバをRxと略記している。

ネットワークマスタ プロ(ねっとわーくますたぷろ)

(network master pro) アンリツのOTN/SDH/SONET関連測定器(OTN、SDH/SONET、PDH/DSnインタフェースを持つネットワーク装置やデバイスの評価測定器、古くは1990年代の SDH/SONETアナライザなど)の現役モデルMT1000A、MT1040Aの名称(品名)。 MT1000Aは通信速度1.5M~100Gbps(bit/s)に対応し、名称のサブタイトルに「イーサネット/CPRI/OTDRテスタ」とある。MT1040Aは10M~400Gbpsに対応し「400Gテスタ」と表記されている(2023年同社ホームページより)。本体はメインフレームで、測定モジュールを実装して各種の通信方式に対応するモジュール式計測器である。10GマルチレートモジュールMU100010Aを使うと、1.5M~10Gbpsの通信ネットワークの開通・保守に必要な機能・性能になる。つまりフィールドでの使用を想定していて、OTDRモジュールもある。ネットワークマスタ プロは、さまざまなネットワークの開通保守に対応するアンリツのプラットフォームの名称といえる。MT1040Aは400Gイーサネット(400GbE)の物理レイヤを測定する小型(B5サイズ)の測定器で、同社は「業界最小サイズ」とPRしている。400Gイーサネットはデータセンタ内の通信で導入が進んでいる。 NTT(旧電電公社)は日本の基幹通信網を整備してきたが、時代と共に新しい伝送交換の装置が開発・導入されてきた。NTTは研究・開発を行い、実際の機器の設計・製造は電電ファミリー各社が行って、NTTに納品した。伝送交換の通信機器は日本電気、富士通、沖電気、日立製作所(いわゆる「NFOH」と呼称される交換4社)がつくり、装置を試験する計測器はアンリツや安藤電気などが設計・製造した。たとえばITU-Tが規定した世界的な共通規格「SDH/SONET」に対応する伝送装置(1990年から導入開始された新同期網)を試験するのがSDH/SONETアナライザである。インターネットが普及しネットワークのキー装置としてルータが登場し、交換機が主要な通信装置でなくなるまで、アンリツと安藤電気は伝送/交換装置用測定器をつくり続けた(形名はアンリツがMPxxxxA、安藤電気はAP-xxxxが多い。x:数字4文字)。 アンリツの1990年代のSONET/SDH/PDH/ATMアナライザMP1570Aは、小型・可搬型、モジュール式で、当時の多くの通信規格に対応したヒット製品だった。後継品はネットワークパフォーマンステスタMP1590A/Bで、その後継がMT1000A、MT1040Aになる。1990年頃の「SDH/SONETアナライザ」が、IPの普及によって、規格名称を品名にすることがなくなり「ネットワークパフォーマンステスタ」、「ネットワークマスタ プロ」と変遷したことがわかる。また、従来この分野の測定器(伝送/交換装置用測定器)は形名の頭がMPだったが、アンリツの現役モデルはBERTしかなくなった(MP1900AとMP2110A。2033年11月現在)。 形名MTは同社のtester(テスタ)を意味し、ワンボックステスのような総合試験器である。その意味では通信計測器の主力(大きな売上を占めた)伝送/交換装置用測定器はほとんど縮小し、ギガビットAN(GbE)などの高速通信規格に対応する総合評価ツールが有線通信の主力測定器になったといえる。ただし、SDH/SONETは装置としては現役なので、同社のネットワークマスタ プロの機種群(カテゴリー)のタイトルは「OTN/SDH/SONET関連測定器」である。通信網や通信規格の変遷(歴史)を知らないと、通信計測器の品名から何の測定器(どのカテゴリー)か、正しく理解することはできない。通信計測器は知識のある人達だけのニッチな村社会である。

BER(ばー)

(Bit Error Rate) 日本語では「ビット誤り率」、「符号誤り率」、「ビットエラーレート」などの表記がされる。デジタルデータを送るときに、送信装置から伝送路、受信装置を含めた、データ伝送の品質評価で、最も使われる指標。受信側が受け取った全データに対する誤ったデータの比率(誤ったビット数を受信した総ビット数で割った%)。送信時は1だったのに受信時は0になった(またはその反対)という現象が、何らかの原因(外来ノイズの影響や、装置の誤動作など)で起こる。具体的な数値としては10-9乗(10億ビットあたり1ビット)のように、非常に小さな値。デジタルデータは1ビットでも違うと正確に送受信ができないので、このBERを指標にして、誤り修正の対策を行い、間違いのない正確なデータを伝送するようにしている。ビット誤りはゼロにできないので、BERの評価は重要である。 BERはデジタル伝送の指標だが、ジッタは、デジタルに限らずアナログも含めた信号の品質評価に使われる。発音が似た用語のMER(マー)はテレビ・オーディオ測定器の測定項目だが、BERは多くの通信計測器に使われていて、頻繁に現れることばである。通信計測器の基礎用語といえる。

BER測(ばーそく)

「BER(Bit Error Rate、バー)の測定器」(または「BER測定」)の略称。BERはデジタル伝送の重要な評価項目のため、このような呼称をする技術者がいた。別称:「ビット誤り率測定器」、「誤り率測定器」、「ビットエラーレート測定器」、「エラーレート測定器」。BERTS(バーツ)は最もよく使われたBER側である。

BERTS(ばーつ)

(Bit Error Rate Test Set) BERT(BER測定)を、PPG(パルス・パターンジェネレータ)とED(Error Detector、エラー検出器)の組み合わせで行う測定器。ビット誤り率測定器の1種だが、1980年代には送信部と受信部がセットになったベンチトップのモデルがアンリツ、安藤電気、キーサイト・テクノロジーなどの伝送・交換装置用測定器のメーカから発売され、通信速度(bps)が高速の製品は1千万円の高額製品だった。通信計測器の中で、1製品で1カテゴリー(機種群)になっていた。アンリツのMP1761(PPG)とMP1762(ED)などがあった。 技術革新によって小型化され、現在では1筐体、ポータブルになっているので、あまりBERTSという表現はされなくなった。 計測器情報:アンリツMP17xxの製品例

BERT(ばーと)

(Bit Error Rate Test) BERの測定。誤り率試験のこと。日本語では「誤り率測定」、「ビット誤り率測定」、「エラーレート測定」などだが、BERT(バート)という表現も大変よく使われる。BERT(BER測定)に使われる代表的な測定器がBERTS(Bit Error Rate Test Set、バーツ)、誤り率測定器(ビットエラー測定器)である。ただし、最近はBERTSとはいわなくなった。2000年頃までNのBER測定は信号発生器(PPG:Pulse Pattern Generator)と検出器(デテクタ)の2台構成だったのでBERTS(BERTのSet)だったが、現在は1筐体にPPGとデテクタが収まっている。そのため「BERTはBit Error Rate Testerの略で、BER測定器のこと」、という説明になった。BER測定を略したBER測も2000年以前には見かけたが、最近は聞かなくなった。計測器の呼称(略称)は日進月歩である。 BERやBERTは通信計測器では大変よく使われることばで、たとえばキーサイト・テクノロジーの81250A/ParBERT(パラバート)、N4962A/シリアルBERT、テクトロニクスのBSX320/BERTScope(バートスコープ)、(形名/品名)などがある。 BERTの世界的なトップベンダーは日本のアンリツである。高周波の老舗キーサイト・テクノロジーも最先端モデルを発売し続けていて、この2社が世界的なブランドとなっている。

バートウェーブ(ばーとうぇーぶ)

(BERTWave) アンリツのMP2100シリーズ、MP2110シリーズの品名。BERT(バート)にオシロスコープ機能を盛り込んだ製品で、アイパターンとBERの両方の測定が1台でできる。 デジタル伝送の品質評価は、オシロスコープで時間波形を表示してアイパターンを確認することと、BERT(パルス・パターン・ジェネレータと検出器の組み合わせによるビット誤り率測定)の2つで行われる。PCI Express (PCIe)のような高速データ通信ではオシロスコープ(アイパターン測定)とBERT(BER測)が規格試験(コンプライアンステスト)で規定されている(以下のテクトロニクス記事に例がある)。アンリツはBERTの世界No.1ベンダである。 BERTのトップメーカである同社が、「BERTでアイパターン測定もできたら1台で済む」、と開発したのが「オシロ機能のあるBERT」のBERTWave(バートウェーブ)である。初号器のMP2100Aは大画面にアイパターンを表示して、製品の外観は最近主流の大画面オシロスコープのよう(オシロスコープのように操作部はなく、コネクタと表示部しかない)。MP2100シリーズは、MP2100B、MP2101AバートウェーブPE、MP2102AバートウェーブSSなどがあったが、2017年に後継のMP2110Aが発売された。MP2100よりも小型で、外部のモニタに表示させるため、本体に表示部はない(外観はコネクタが並ぶ箱)。2019年3月には「4チャンネルのサンプリングオシロスコープを搭載できるオプション」を発売、2021年7月にはサンプリングオシロスコープの機能を強化し、PAM4の評価に必要な機能を追加するシグナルプロセッシングソフトウェア(オプション098)を開発した。業界ニュースとして「MP2110AサンプリングオシロスコープのPAM4評価機能を強化」と報じたメディアもあった(MP2110AをBERTではなくオシロ、と表現している!)。 BERTは1990年代まではPPGとED(Error Detector、エラー検出器)の2筐体で、サイズも大きなベンチトップで、もっぱらBERTS(バーツ、Bit Error Rate Test Sets)と呼ばれたが、技術革新によってPPGとEDは小型になり、モジュール化され1筐体で可搬型になった。当時のアイパターン測定はリアルタイムオシロスコープよりも帯域が広いサンプリングオシロスコープで行われた(キーサイト・テクノロジーのDCAなど)。ところが2000年代後半からリアルタイムオシロスコープの周波数帯域が広くなり、2010年代には数10GHzモデルが登場する(広帯域オシロスコープと呼称)。アイパターン測定はGHz帯域のリアルタイムオシロスコープで行われるようになり、サンプリングオシロの需要は減少した。 キーサイト・テクノロジーは2018年に周波数帯域110GHzの世界最速のオシロスコープを発表する(以下のキーサイト・ワールド 2018が詳しい)。同社はアンリツに次ぐBERTメーカである。2023年の自社イベントでは「64Gbaud(ボー)を超えるPAM4信号のBER測定は、同社の広帯域オシロスコープを使い、取得した波形から誤り率を算出する方法で120Gbaudまで対応できる」と提案した。送受信で64Gbaud超のPAM4をリアルタイムに評価できるBERTはまだ存在しない(アンリツも実現できていない)ので、オシロスコープがBERTの代わりになる(以下のKeysight World 2023年の記事が詳しい)。アンリツのBERTWaveと全く逆のアプローチである。 2000年代以降に広帯域なリアルタイムオシロスコープが登場し、BERTもラインアップするキーサイト・テクノロジーはオシロスコープでBER測定するソリューションを提案した。BERTメーカのアンリツはBERTにサンプリングオシロスコープ機能を搭載して、BERTでアイパターン測定ができるモデルBERTWaveを開発した。いまやBERTとオシロスコープが競合する時代となった。 広帯域オシロスコープでキーサイトと競っているテクトロニクスはBERTをラインアップしていない。2023年のテクトロニクス・イノベーション・フォーラムでは、BERTやオシロスコープとは全く違う手法によるPCIeの評価手法を提案している。リンク・トレーニングによるマージン・テスタTMT4である(以下の記事が詳しい)。高速デジタル通信の品質評価のアプローチは、3社ともに特長がでている。

パターンジェネレータ(ぱたーんじぇねれーた)

(pattern generator) パルス波形とパルスパターン波形を作成して出力できる信号発生器。一般にパルスジェネレータは単純なパルス列(方形波)を1~2ch出力するが、より複雑なロジック・パターン(パルスパターン)を出力する特殊なパルス発生器をパターンジェネレータと呼ぶ。代表例はBERT(ビットエラーレート試験)に使う信号発生器であるPPG(パルスパターンジェネレータ)がある。テクトロニクスの冊子「信号発生器のすべて」の用語解説では「パターンジェネレータ:ロジック信号発生器の一種で、多数のチャンネルのデジタル・パターンを生成する」とある。ロジックアナライザ(ロジアナ)の機能(オプション)にはパターンジェネレータ(任意のロジック・パターンを多chで出力する)があり、ロジック回路の論理機能試験に使われる。 このようにロジアナ(テクトロニクスやキーサイト・テクノロジー)や、伝送路の品質評価に使うPPGなどの通信の測定器(アンリツやキーサイト・テクノロジーなど)にパターンジェネレータは使われている。パターンジェネレータをデータジェネレータと呼ぶメーカもある。また前述のテクトロニクスの用語解説でわかるように、同社はロジック信号発生器という呼称を好んで使っているが、キーサイト・テクノロジーやアンリツはパターンジェネレータやパルスパターン発生器のような表現が多い(「ロジック信号発生器」なる表現はしていない)。 また上記のテクトロニクスの説明では「パターンジェネレータは多ch」といっているが、通常、パターンジェネレータは1ch(または2ch)で、多チャンネルの場合はparBERT(パラバート、キーサイト・テクノロジーの多chのBERT、パラレルバート)などの製品になる。テクトロニクスの解説はロジアナについての解説で、一般的なパターンジェネレータは、アンリツやキーサイト・テクノロジーなど、BERTをラインアップするメーカのモデルを指していることが多い。メーカによって解説が異なる好例といえる。 TV信号には国別に違う方式があり(NTSCやPAL、ISDB-Tなどの規格)、それらのパターンの発生器をパターンジェネレータと呼称している。このようにロジアナや通信計測器、テレビ・映像測定器で使われる用語だが、それ以外の測定器にも使われているケースもある。

PAM4(ぱむふぉー)

(Pulse Amplitude Modulation 4-level) 翻訳すると「4値パルス振幅変調」。代表的なデジタル通信のNRZ信号などは、0と1の2値で伝送している(PAM2)。400 Gbpsのような高速通信では00~11の4値で伝送する手法が主流となる。超高速伝送が研究され、PAM4という信号方式が規定されるようになった。近年規格化された車載Ethernetの100BASE-T1は、EMC対策としてPAM3を採用している。このように従来の0/1だった信号方式は、ギガビットクラスの高速伝送では3値、4値の方式になっている。

パラレル(ぱられる)

(parallel) 並列、平行、並行、同時進行、などの意味がある。 信号線が複数本(並列している)通信方式をparallel communication(パラレル通信)と呼ぶ。複数の信号線はバスといい、パラレル通信の信号線はデータバスなどの呼称がある。信号線が1本(送受信が別の場合は2本)の通信方式はシリアル通信という。seriarlは「順次」という意味で、1ビットずつ順次伝送する。 横につなぐparallel connectionは「並列接続」で、抵抗を並列接続すると抵抗値は加算されて大きくなる。計測用電源を並列接続すると出力電流が加算されて大きくなる(並列接続できるモデルであることと、接続可能な台数はモデルによるので確認が必要、できないものも多い)。接続方法でパラレルと対になるのはシリーズ(series)で、直列(または系列)という意味。電源を直列接続(series connection)すると出力電圧が加算されて大きくなる(直列接続可能なモデルに限る)。 通信方式ではパラレルとシリアル、接続方式ではパラレルとシリーズが対になることばである。

パラレル通信(ぱられるつうしん)

(parallel communication) 複数本の信号線で伝送する方式。「パラレル伝送」や「パラレルインタフェース」などとも呼ばれる。コンピュータ関連のバスによく使われる。規格の例は、ISA、ATAPI(アタピー)、SCSI(スカジー)、PCIなど。セントニクスに代表されるように、1980年代にはパラレル伝送が多かったが、2000年頃からの情報家電製品への高速シリアル通信の普及によって、現在はパラレルよりシリアルの通信方式が流行りである。 技術の進歩によって伝送速度が速くなり、複数本のデータバスでなく1本の通信線でも十分に高速な伝送が可能になったことが背景にある。パラレル通信方式は複数本の通信線が必要なので高価だが、昔はそうしないとデータをたくさん送ることができなかった。伝送速度を速くするより、通信線を複数本にすることで、全体としての伝送速度を速くしていた。ただしクロックを送る制御線は、すべての通信線と同期させる必要があり技術的に高額になる。 CPUなどのデータバスはパラレル通信だが、2つのバスをつなぐとき(たとえばあるCPUが稼働しているプリント基板から、違うCPUのプリント基板にデータを送るなど)、パラレルからシリアルに変換して高速シリアル通信し、受信側では反対にシリアルからパラレルに戻すやり方が主流になっている。これをSerDes(サーデス)やシリアライザと呼ぶ。このようなインタフェース変換の手法が使えるのも、シリアル通信が高速にできるようになったためである。 parallelは並列、平行、並行などの意味。

パルスパターン(ぱるすぱたーん)

(pulse pattern) デジタル信号はhigh/low(1/0)の組み合わせの特殊な方形波で、意味のあるデータを2進数にして伝送する。1と0がランダムに続く信号をパルス列やパルスパターンと呼ぶ。デジタル伝送の送信機器~伝送路~受信機器までのシステム全体の品質評価をする指標にBER(ビット誤り率)がある。この測定は任意のパルス列(パルスパターン)を出力できる特殊なパルス発生器であるPPG(パルスパターンジェネレータ)と、ED(エラーでテクタ)の組み合わせで行う(現在はPPGとEDが1筐体に収まった製品が多い)。

パルス・パターン・ジェネレータ(ぱるすぱたーんじぇねれーた)

(Pulse Pattern Generator)通常はPPGと略記される、パルスパターン発生器。エラー検出器(ED:Error Detector)との組み合わせでビット誤り率試験(BERT:Bit Error Rate Test、バート)を行う。光通信などのデジタル通信の伝送品質の評価に使われるため、パルス列のパターンを作成し、高速に正確に出力できるパルスジェネレータ(PG)の1種。テクトロニクスの冊子「信号発生器のすべて」の用語解説では「ロジック信号発生器の一種で、少数の出力チャンネルから方形波またはパルスの列を、通常は非常に高周波で生成できる。パルス・ジェネレータとも呼ばれる。」とある。PPGはPGの1種だが、両者の区別は、BERTの時はPPGと呼ぶなど特別なアプリケーション時にPPGという表現が使われている。

反射(はんしゃ)

(Reflection)電磁波が伝送路を伝わるとき、媒体が違う面や、特性インピーダンスが異なる箇所では少し反射されて、信号源側に戻る現象が起こる。高周波の基本理論の1つ。反射という現象を応用した測定手法がTDR(Time Domain Reflectometry、時間領域反射法)である。サンプリングオシロスコープによる伝送線路のインピーダンス測定や、光ファイバの破断点検出(OTDR)に応用されている。

PRBS(ぴーあーるびーえす)

有限長のビットパターンを周期的に発生させ、(なるべくパターン長を長くして)ランダム信号に近づけたもの。伝送用のテストパターンとして使われる。日本語では「擬似ランダム信号」だが、他の言い方もされている。Pseudo Random Bit Sequence(擬似ランダム・ビット・シーケンス)。Pseudo-Random Binary Sequence(疑似ランダム2値信号列)。