計測関連用語集

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IEC 61850(あいいーしーろくいちはちごーまる)

IEC(国際電気標準会議)が規定した、変電所の高機能電子デバイスの通信プロトコルの規格。変電所の自動化システム、保護継電器システム、監視制御システム、給電・制御システムなどに適用される。保護制御や自動化システムでの通信を標準化しているため、電力システムのスマートグリッド化を促進し、変電所だけでなく発電所や配電系の自動化などにも導入される。 IEC 61850の規定によって、従来はアナログだった伝送方式がデジタル化される。日本では電力中央研究所が研究を行い、従来のアナログ機器を設計・製造してきた東北電力グループの通研電気工業(株)がデジタルの伝送装置(IEC 61850アダプタ)を製品化した。 IEC 61850は一般社団法人 電気学会(IEEJ)の第133回テーマとして論じられている(2022年4月)。2025年3月の電気学会 全国大会では3/20のシンポジウム講演で富士電機がIEC 61850について発表している。同社と(株)第一エレクトロニクス、不二電機工業(株)などは共同で通信インタフェースユニットやトランスデューサを製品化し、2025年の「電気学会 全国大会 附設展示会」に出展している。前述の通研電気工業も製品を展示している。これから全国の各電力会社に通研電気工業製品の導入が開始されることを見込んでいる。

ISDN(あいえすでぃーえぬ)

(Integrated Services Digital Network) 電話、FAX、データ通信を統合して扱うデジタル通信網で、NTTが1988年からサービスを開始した。日本語では「統合デジタル通信網」と呼ばれる。直訳すると「Integrated Services(統合サービス) Digital Network(デジタル通信網)」。音声(アナログ)とデータ(デジタル)をデジタル方式で伝送する通信技術。それまでのアナログ回線では、1本の電話線で1つの通話しかできなかったが、ISDNでは1本の電話線で複数の通話や高速なデータ通信を同時に行える。2つの形式(BRI:Basic Rate Interface、PRI:Primary Rate Interface)がある。ISDNはアナログ方式の固定電話網からデジタル方式への移行を促進するために開発されたといえる。 人の声を送る電話網から始まった通信回線は、データや画像なども扱うようになっていた。1980年代までは、音声は電話網、データ通信はデータ通信網で行われ、通信方式もアナログだった(コンピュータなどのデジタルデータはモデムによって変復調され、アナログで送られた)。デジタル技術の進歩で、デジタル化した音声・データ・画像を同一伝送路(アナログの電話回線である加入者線)で通信するISDNが実用化した。 1972年にISDNの基本概念がCCITT(国際電信電話諮問委員会。現ITU-T、電気通信標準化部門総会)で発表され、1977年からITU(国際電気通信連合)で検討され、1988年に本勧告が承認される。日本では日本電信電話公社(現NTT)が1970年代から独自の研究を行い、高度情報通信システム(INS:Information Network System)と呼んだ。1984年に東京都の三鷹市と武蔵野市で実用化試験を行い(Yインタフェース)、1988年4月に「INSネット64」(通信速度64kbpsで、当時の56kbpsモデムより高速)、「INSネット1500」(最大通信速度1.5Mbps)と呼ばれるISDNサービスが商用開始する(Iインタフェース)。商用開始に合わせIインタフェースを装備する擬似交換機やプロトコルアナライザなどの、ISDN端末を評価する計測器が登場する。 従来のアナログの電話機などをISDNで利用するための変換器(ターミナルアダプタ)が1996年には低価格になり、個人や中小企業のISDN加入が進み、2000年の年末に契約数は1,000万回線を超えた。ただし2021年度末には160万回線まで減少し、1999年のNTT再編で「INSネット」サービスを継承したNTT東日本・西日本は、2024年にはISDNを終了する予定(光回線やIP網への変更が提案されている)。

ISDN擬似交換機(あいえすでぃーえぬぎじこうかんき)

(ISDN network emulator、ISDN exchange simulator) 1988年に日本電信電話公社(現NTT)がサービスを開始したISDN(Integrated Services Digital Network、統合デジタル通信網)に対応した、有線通信計測器の1種である擬似交換機。 敷設済みのアナログの電話線を使用した、デジタル回線のインターネット通信技術であるISDNは、TA(ターミナルアダプタ)やDSU(Digital Service Unit)という機器を経由して従来のアナログ電話機がつながった。そのためISDNの運用が開始される際にはTA、DSUなどの機器の開発・試験用途でISDN擬似交換機が開発された。 ISDNはデータ用の「Bチャネル」(通信速度64kbps)と制御用の「Dチャネル」、アナログ電話用の銅線を利用するBRI(Basic Rate Interface、基本インタフェース、NTTのサービス名「ネット64」)と、光ファイバ回線を利用するPRI(Primary Rate Interface、1次群インタフェース、NTTのサービス名「ネット1500」、約1.5Mbps)がある。ISDN擬似交換機はBch、Dch、BRI、PRIなどに何チャンネル対応するかが一番の仕様。 ISDN擬似交換機の主なメーカはNTTアドンバンステクノロジ(NTT系のネットワーク構築、セキュリティなどを事業とする会社)、アドシステムズ(岩崎通信機の技術者がスピンアウトしたベンチャー計測器メーカ)、安藤電気(YHPよりもプロトコルアナライザの国内シェアが高いトップベンダ、有線通信測定器の雄)だった。現在ではISDNは過去のものとなりつつあり(固定電話網のIP網移行によりNTTはISDNサービスを2024年に終了する)、上記3社はすべて製造中止している。現在、擬似交換機をつくっているメーカは株式会社ニシヤマや甲賀電子株式会社、株式会社ハウなど(いわゆる大手計測器メーカではない)。 甲賀電子は有線通信機器メーカ。アナログ電話回線やISDN回線(BRI/PRI)、局内交換回線(ATM、SS No.7、STM-0、STM-1)などの装置を開発している。特にISDN関連製品が多く、ISDN擬似交換機ではBRI Network Simulatorがある。回線数などの仕様によって製品名(型番)はBNS-02P(KG-3006)からBNSⅡ-40P(KG-3022)の5モデルがある。ニシヤマには擬似交換機EXCEL-N000シリーズ(TEST EXCHANGER)があるが、これは電話回線(アナログ)用でISDN(デジタル)ではない。(2024年5月現在) 各社の計測器を時代順に概説する。 一番最初(1988年以前)のISDN擬似交換機はNTTアドバンステクノロジのINS-64モデル、2番目はアドシステムズ、と筆者は記憶している。NTTアドバンステクノロジのHPにはすでに未掲載なので計測器の詳細は不明。アドシステムズの品名はISDN回線シミュレーター、型番はi6492などのi64xx。i6442は疑似ISDN回線を2回線使ってパケット交換のシミュレーションが可能で、回線1側と回線2側にはそれぞれ4つのチャネルがあり、送信側のISDN端末は2つのチャネルを使用できる。同社はISDNではないアナログ回線のモデル、X4000シリーズ(X-4108、X-4008など)もラインアップしていた(同社はすでに会社が存在しない)。 続いて3番目に、ボタン電話機などの業務用電話機メーカの株式会社大興電機製作所(1938年創業、本社:東京都品川区、たいこうでんき)がiNet(アイネット)の愛称で1989年頃に発売。「Taiko iNet i64-4LINES」と表示されたモデルが、中古販売サイトに掲載されている(2024年5月)。1993年にフレームリレー対応ISDN通信シミュレータ(iNET-1000)をリリースしたが、擬似交換機はすべて生産終了(※)。 1990年代になると、大手計測器メーカの安藤電気と岩崎通信機も発売した。安藤電気はAE7300シリーズなど、形名が明確だが、岩通は形名不明(ホームページの中止品モデル一覧に未掲載)。キーサイト・テクノロジー(当時はhp、YHP)はE4210Bシリーズという、メインフレーム型のATMアナライザがあり、モジュールやソフトウェアの構成によって「B-ISDNテスタ」などになったが、擬似交換機の機能はなかった。往年のプロトコルアナライザ(プロアナ)4954Aで、ISDNに対応した4954Iを「ISDNシミュレータ」と称したが、安藤電気のAE-5105がIインタフェースオプションを使いモニタができた(AE-5105iなど)のと同じで、擬似交換機ではない。 擬似交換機の次はISDNプロトコルアナライザが登場する。アドバンテストとアンリツのリリースが早く、1988年~1989年に発売している(2社が競い、多くのユーザに採用された)。プロアナの老舗 安藤電気は2000年代にAE5131B(256kbps)、AE5135(2Mbps)を発表してISDNに対応したが、リリースが遅すぎた(同社の形名は1990年代後半にAX-YYYYからAXYYYYに、英字と数字の間のハイフン「-」がなくなった)。インターネットの登場・普及によってISDNは廃れ、ADSLや光、LANの時代になり、RS-232C以来のシリアル通信のプロアナの出番は減る(ハンディ型のラインモニタが普及)。1990年代にLANプロトコルアナライザで名を馳せるのは海外のsniffer(スニファー)で、hp(現キーサイト・テクノロジー)や安藤電気はプロアナのメインプレーヤではなくなっていく(プロアナは計測器メーカの主力製品ではなく、国内ベンチャーや海外IT関連メーカがつくるようになる)。 (※) 大興電機製作所は、同じく中堅の電話機メーカ 株式会社田村電機製作所(1946年設立、本社:東京都目黒区)と2004年に統合し、現在はサクサグループ(サクサホールディングス株式会社)として、ボタン電話装置や防犯設備機器をつくっている。2000年以前に企業内に数多くあった内線電話(有線の電話機)は、IP電話を経て現在ではほとんどが無線端末(携帯電話やPC)になった。2000年頃までは企業の設備として多くの台数があった電話機がインターネット普及によって減り、電話機メーカが淘汰されたことをサクサは象徴している。 1980年代にNTTの固定電話機がNTTからの黒電話の借用ではなく、電気メーカの電話機が使用できるようになり(レンタルだけでなく買い取り制がスタート)、多くの電機・通信機器メーカが電話機に参入した。従来のダイヤル式(番号の穴に指を入れてダイヤルを回転させる)ではなくボタン式で、留守電機能などが付いたデザインも多様な商品が、大手家電メーカ(シャープ、ソニーなど)や電話機メーカ(田村電機製作所など)から販売され、秋葉原の電気街に陳列した。1980時代後半に安藤電気はテレホンユニットテスタ AE-9302/9303やレベルテストセット AE-9310などの、電話機用測定器を発売している。つまり電話機は1980年代~1990年代には大きなビジネスだった(特定の通信ではなく、広く家電ビジネスになっていた)。安藤電気は2000年頃に横河電機の傘下になり、現在の会社名は横河計測である。

ISDN測定器(あいえすでぃーえぬそくていき)

(ISDN measuring instrument) 1988年にNTTがサービスを開始したISDN(Integrated Services Digital Network、統合デジタル通信網)に対応した、有線通信計測器には以下の種類がある。 1. 擬似交換機、2. ハンディテスタ(回線の開通工事など、屋外で使用する可搬型モデル)、3. レイヤ1テスタ(Iインタフェース試験器)、4. プロトコルアナライザ、5. コールシミュレータ(擬似呼)。 番号順に主なメーカとモデル名称(品名)、モデル番号(形名)を述べる。 1. ISDN擬似交換機 アドシステムズ:ISDN疑似交換機(PRI / BRI) J-9144A、J-9124Aなど。 安藤電気:AE-7300シリーズ(ISDNネットワークシミュレータ AE7311、ISDNシミュレーションBOX AE7303、各種モジュール AE79xx) NTTエレクトロニクス株式会社(1997年頃の会社名、現NTTイノベーティブデバイス株式会社):ネットワークエミュレータ NE3000AE 2. ハンドヘルドのテスタ(ISDN端末の接続試験など、ISDN回線の開通時に使用する現場測定器) 安藤電気:ISDNテスタ AE5301 アドバンテスト:ISDNバス配線チェッカー D5612 大井電気:ISDN回線試験器 DNT-302B アンリツ:ISDN擬似端末 EQ612A(端末ではなく交換機、の発着信試験を行う。障害発生時には障害解析に使用。) 3. レイヤ1テスタ(Iインタフェース試験器) 安藤電気:Iインタフェーステスタ AP-9503 アンリツ:ISDNベーシックインタフェース試験器 MP5201B アドバンテスト:ISDNテスタ D5312B 4. ISDNプロトコルアナライザ アンリツ:ISDNプロトコルアナライザ EF201/211 アドバンテスト:ISDNプロトコル・アナライザ D5110シリーズ 安藤電気:データコニュニケーションアナライザ AE-5105i(モニタのみ ※1) キーサイト・テクノロジー(当時はhpやYHP):Advisor(※2)用T1プライマリレートISDNモジュール J4649A、ISDN BRI S/TおよびUインターフェイスモジュール J2905B、プロトコルアナライザ 4954i(モニタのみ) 大井電気:ISDN多回線アナライザ TMP-9701(モニタのみ) 5. コールシミュレータ(疑似呼) アンリツ:ISDNコールシミュレータ EF202/203/204 ISDNに限らずコールシミュレータは国産ではアンリツ1社しかつくっていない(※3)。 (※1) 安藤電気には「ISDNプロアナ」と銘打ったモデルがない。2000年代にAE5131(256kbps)、AE5135(2Mbps)という、前身のAE-5105(72kbps)より高速のモデルを発売しISDNも対応したが、他社より発売がかなり遅く、ISDNの旬の時期を逃している。反対に独立系で通信系の資本(NTTや日本電気など)が入っていないアドバンテストが時代の要請にマッチするタイミングでISDNプロアナを開発したことは、同社のマーケテイングと要素技術の力を示している。2010年頃に同社はそれまでの計測器からすべて撤退したが、その後、持っている要素技術を使いテラヘルツ波などの新規計測器に参入している。アンリツのISDNプロアナは形名の頭がMでないことでわかる通り、電話機やコールシミュレータを開発した情報機器の事業部門の製品で、計測器事業部門はつくっていない。同社が、無線機や電話機をつくれる要素技術を持つ計測器メーカであることがわかる。アンリツは、高速通信の品質評価をするBERT(ビット誤り率測定器、バート)や移動体通信の呼制御を行う擬似基地局(基地局シミュレータ、シグナリングテスタ)では、キーサイト・テクノロジーと競っている世界トップベンダである。 (※2) Advisor(アドバイザー)とは、1990年代後半にJ2300などの形名でラップトップ型計測器が登場し、ATMやLAN、ISDNなどの各種インタフェースに対応した、2000年頃のキーサイト・テクノロジーのデータ通信計測器の通称(愛称)。本体とモジュールの構成によって名称が変わり、形名などの実態が良くわからない(現在はすべて生産終了し、断片的な資料しか残っていない)。形名が似ていてLAN AdvisorやInternet Advisorと称するモデルもあった。往年のプロアナ495xシリーズまでは従来の数字形名だが、4953A以降の1990年代の同社のデータ通信計測器はM&Aでラインアップが増え、シリーズや形名に継続性(一貫性やシリーズの明確さ)がなくなる。Jシリーズは4953A以降のプロアナの形名として登場し、2000年頃の同社のプロアナはネットワークアドバイザと称していた。2003年頃には Network Analyzer J6800シリーズというプロアナもあった(プロアナなのにネットワークアナライザ(NA)とは、NAの世界的なトップベンダの同社がこのような品名の製品を発売するとは、「にわかには信じられない、目と耳を疑う、驚きの命名」である。2000年頃の同社の「プロアナのラインアップの複雑さ」を象徴している)。 (※3) アンリツと並ぶ電電ファミリーで、多くの電話機用測定器をつくった安藤電気は擬似呼の製品化ができなかった、という話を筆者は1980年代に同社の古参営業マンから聞いた。安藤電気に擬似呼がないために伝送ネットワークの評価試験器の案件(引合い)が自社だけでクローズできず、どうしてもアンリツに知られてしまう。優秀な営業マンの彼は、海外のコールシミュレータで品質の良いモデルが取り扱えないか調べていたが、なかなか眼鏡にかなう物がなかった。国産でオンリーワン製品を開発したアンリツの技術力を物語るエピソードである。

IOWN(あいおん)

「Innovative Optical and Wireless Network」の略で、NTTが2019年に発表した次世代ネットワーク構想。光信号のままで(半導体レベルでも電気に変換しないで)伝送・交換処理を行うオールフォトニクス・ネットワークを実現しする。そのためのキーとなる新しい光半導体の試作にNTTは成功したといわれる。従来の電子技術(エレクトロニクス)が光技術(フォトニクス)に変わり、電子技術では解決できなかった低遅延、低消費電力、大容量・高品質のネットワークを構築できる(現在のインターネットの課題が改善できる)と期待される。 GAFA(ガーファ、米国の巨大IT企業Google、Apple、Facebook、Amazon)のような異業種が通信事業者(キャリア)になろうとしている。NTTは老舗の通信事業者として安泰ではない。IOWNの実現でゲームチェンジをはかり、NTTが世界をリードする通信事業者になるというビジョンを発表したのである。2019年にNTT、インテル、ソニーが発起人となって立ち上げた「IOWNグローバルフォーラム」には世界中の名だたる企業が参画した。2030年のIOWN実現に向け、2022年には第一弾としてオープン仕様に基づくAPN(All Photonics Network)(Open APNと呼ばれる)に対応した光伝送装置がNECや富士通から発売される。 参考用語:WDM、電電ファミリー

Interop(いんたーろっぷ)

インターネットテクノロジーの国内最大のイベント。ネットワークにつながるモノのInteroperability(相互接続性)を検証する場として、日本では1994年から毎年開催されている。Interoperability(インターオペラビリティ)の略が展示会名 Interopと思われるが(推測)、読み方は「インターオプ/オンターオペ」ではなく「インターロップ」である。幕張メッセで2024年6月5日~7日に開催されたInterop 2024には光伝送の関連メーカ(通信キャリア、光部品、伝送装置、計測器メーカなど)が出展した(会場の約20~30%はデジタルサイネージ)。2025年もほぼ同等の内容だった。 計測器メーカとしては ・Viaviソリューションズ(OTN関連の光伝送の通信計測器、光パワーメータなど) ・メインテクノロジー(VeEXの現場測定器の光測定器、OPMや数値表示の簡易OTDRなど) ・原田産業(EXFOの販売店)。ただしEXFO製品は展示していない。PTP時刻同期の機器をPRしている。平河ユーテックのL2スイッチなどの放送業界がIP化によって必要になった機器をPR。時刻同期の発生器では国産のSEIKO(セイコーソリューションズ株式会社)が有名だが、原田産業は海外の相当品を輸入している。つまり通信ではなく放送の機器展示である。 ・光関連の部品や計測器の商社である(株)ハイテックはEXFOの販売店である。光総合技術室という組織があり、2025年のInteropではEXFOのBER測定器(ビット誤り率測定器)を展示している。BA-4000-L2 Traffic and Bit Analyzerで、DSPを使わない省エネのLPOに対応し、競合であるキーサイトとCoherent社(Wave Analyzer 200A OSA、販売店:マクニカのクラビスカンパニー)にはないオンリーワンをPRしている。 ・東陽テクニカ(Spirentの負荷試験機など) ・キーサイト・テクノロジー(IXIAの負荷試験機など) ・データコントロルズ(製造ライン向けの負荷試験機など)。データコントロルズはメディアコンバータなどの通信機器のメーカだが、生産向けの負荷試験機(30万円~100万円代)もラインアップし、SpirentやIXIAのようなR&D向けの高額・高性能モデルとは違う市場で実績を出している。 ・クオリティネット・ソリューションズ(株)(QualityNet Solutions)は米国のApposite(アポジット)社の負荷試験機を取り扱っている。東陽テクニカやキーサイト・テクノロジーのような高機能・高額ではなく、安価で使い勝手が良いのが特長(データコントロルズとの違いは不明)。 独立行政法人 情報処理通信機構(IPA)のブースでは、通信機器を使ったデモをしているが、2024年の負荷試験機はTestCenter(Spirent)ではなくIXIAが使われていた。2025年は東陽テクニカ取り扱いのSpirentとVeEXのやOTN測定器やプロアナ。 ・Teledyne Lecroyが、大きなブースではないが有線プロアナを並べている。日本法人のテレダイン・ジャパン株のプロトコル・ソリューション・グループが出展。PCI Express、HDMIなどのプロアナで、2025年は新製品として、主にストレージエリアネットワーク(SAN)で使用される高速データ転送方式であるFibre Channel(ファイバチャネル)に対応したモデルを展示している(※)。最先端の高速インタフェースに対応した各種プロアナをラインアップしているので、いまやテレダイン・レクロイはオシロスコープとプロトコルアナライザの2枚看板になったといえる。 ・丸文(株)のアントレプレナー事業本部にはIRIS CANPANY(イーリス カンパニー)という組織があり、通信機器や通信計測器を取り扱っている(EXFOの販売店として「データセンターソリューション」にEXFO製品を展示)。測位タイミング課ではPendium(ペンディアム)社の周波数カウンタを数年前から取り扱っていて。「電力/放送ソリューション」として展示。同社のカタログのタイトルは「丸文ICT」である。ICTはInformation and Communication Technologyの略で、日本語では「情報通信技術」。 ・放送・映像用測定器のトップベンダ、リーダー電子も2025年から出展している。放送インフラのIP化によって、Interop見学者が自社ユーザに増えたことを物語っている。前述のSEIKOもTPT対応グランドマスタークロック(放送IPの基準信号発生器)をメインにブースを構え、Shownetで実演をしている。つまり、放送IPもInteropのキーワードの1つである。 このようにInteropは計測器としては主に光測定器/光伝送測定器、負荷試験機が出展される展示会である。海外の通信計測器がメインでアンリツやラインアイなどの国産計測器メーカは出展していない(2024年/2025年の実績)。EXFOの出展ブースはないが、Shownetで原田産業の関連会社として計測器を提供している。つまり、ViaviとVeEX、EXPOのOTN測定器/光測定器と、Spirent(東陽テクニカ)、IXIA(キーサイト・テクノロジー)の負荷試験機が競う展示会である。アンリツのOTN測定器/光測定器やラインアイのRS-232C系の低速プロアナ(オンラインモニタ)は、少なくとも2024年/2025年には出展していない。 Interopではメディア(プレス)に対してプレゼンテーションや会場ツアーを行っている。プレスルームのテーブル席は(2024年には)20席程度で、部屋は広くはないが、冷蔵庫には各種飲料が並び、ホットコーヒーやお菓子の無料提供がされ、プレスに対するサービスが充実している。最近は大規模な展示会でもプレスルームに無料の飲食物の提供がない場合が多いが、Interopは報道機関を巻き込んだ華やかな大型イベントである。 旧電設工業展のJECA FAIRは毎年5月頃に東京ビッグサイトで開催される大きなイベントで、来場者も多く賑わっているが、プレスルームはなく、会場は撮影禁止である。つまり報道機関に取材してもらうことを拒絶している。そのためほとんどメディアでは取り上げられないが、それでも来場者は多い。2024年は5/29~31に東ホールで開催されたが、同時期に西ホール(4F)で開催のワイヤレス展よりも出展社が多い。 InteropとJECA FAIRはプレス(報道機関)に対するスタンスが180度違っている。 (※) 余談だが、Teledyne LecroyはBlutoothプロアナのFlontline(フロントライン)社を傘下に収め、無線のプロアナはEllisys(エリシス、販売店:ガイロジック)かテレダイン・レクロイの2択だが、Flontlineは日本の販売店は長らくコーンズテクノロジーで、現在も変わっていない。つまりテレダイン・レクロイはプロアナを有線から無線までラインアップしているが、日本法人であるテレダイン・ジャパンが販売するのはInteropに出展しているような有線モデルだけで、無線モデル(Flontline)は販売権が無い。海外メーカはM&Aが盛んだが、日本の販売店は従来通りで変わらないことも多く、このような例は稀ではない。

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