計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
計測・測定に関連する用語全般が収録されており、初めて計測器を扱う方でも分かりやすく解説しています。
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コンプライアンステスト(こんぷらいあんすてすと)

(compliance test) 規格に適合しているかチェックするための認証試験のこと。規格の要件に適合しているか確認するための試験なので、規格認証試験や規格適合試験、認証試験、規格試験などの呼称があるが、コンプライアンステストという表現が良く使われる。近年、デジタル通信は伝送速度の高速化、信号の低電圧化(省エネ)が進み、日々、多くの規格が誕生している。高速な電気信号は品質が悪いと誤動作の原因となるため、規格で定められた複数の試験項目により、適合性を判断する必要がある。各規格によって規格作成機関があるように、規格の認証試験をする機関がある。 たとえばアリオン株式会社はコンプライアンステストの会社として有名。30年以上の歴史があり(日本法人は2002年設立)、電子機器の包括的なテスト、設計品質の検証、技術コンサルティングなどを行っている(同社ブランドの計測器もあり、以下の計測器情報を参照)。 PCI Express(PCIe)やHDMI、100BASE-T1など、高速デジタルに注力している計測器メーカがコンプライアンステストの評価機材(具体的な計測器)を提案している。キーサイト・テクノロジーやテクトロニクスが毎年開催する自社イベント(Keysight Worldやテクトロニクス・イノベーション・フォーラム)には、これらメーカの機材を使い事業をするコンプライアンステストの会社としてアリオンも出展していることが多い。アンリツも2023年のテクトロニクスのイベントには機材提供と説明員派遣をしている。 コンプライアンスは法令順守など、企業の倫理規定、行動規範として使用される用語だが、complianceを翻訳すると、「追従」、「応諾」である。「認証」の英語はcertification(サーティフィケーション)なので、コンプライアンステストは単に認証だけではない範疇の用語といえる。「コンプライアンス・テスト」という表記もある。

SATA(さた)

Serial Advanced Technology Attachment の略 (=シリアルATA)。パソコンとハードディスクなどの記憶装置を接続するIDE(ATA)規格の拡張仕様の一つ。パラレルからシリアルになり高速転送(1.5Gbps)が可能になった。2005年から普及が始まり、パソコン以外での家電への応用が実用化されている。

差動(さどう)

(differential) 電気信号の伝送方式には大きくシングルエンドと差動(ディファレンシャル)がある。信号線が1本で、グランドとの電位差によって信号を伝送しているのがシングルエンド(single-ended signalling、最後まで1本で伝送する方式)。2本の信号線を使い、1本にはプラスの信号を、もう1本にはマイナスの信号を送り、差分で1か0を表現するのが「差動」。2本の信号線はどちらも接地されない(信号がグランドレベルに左右されない)ため、シングルエンドに比べてノイズに強く、長距離、高速通信に向いている。具体的にはシリアル通信のRS-422、RS-485などの規格がある。技術の進歩によって従来より低い電圧で伝送が可能になり、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)のような省エネの低電圧差動伝送が普及した。 オシロスコープのプローブも大変良く「差動」という用語を使っているが、有線通信の分野では平衡とも呼ばれる(1本には伝送したい信号を、もう1本にはその信号の逆位相信号を送ると、信号が平衡関係にあるため)。1本の信号線は平衡していないので不平衡(unbalance)と呼ばれる(つまりシングルエンド=不平衡)。差動(differential)=平衡(balance)で、両方は全く同じことを違う表現をしている。「(2本の)差動(差分で送る)」と「シングル(1本で)エンド(最後まで伝送)」という表現が差動とシングルエンドの語源である。見方を変えると「(2本の線が)平衡(している)」、「(1本なので平衡していない、つまり)不平衡」という表現になる。 平衡/不平衡はまだわかりやすいが、差動/シングルエンドはもっと違う表現が無かったのだろうか(元の英語に原因があり、日本語への翻訳が問題ではない)。原理を正確に理解していないとこの2語が対になっていることは全く想像できない。オシロスコープメーカの資料には(何の前置きや注釈も無く)「シングルエンド」や「差動」という単語が出てくる(そんな単語は知っていて当然というか、知っていることを前提に説明が進む)。たとえば「1本伝送」、「2本伝送」(または1本通信、2本信号など)という言い方で、有線通信もオシロスコープも統一してくれたら、計測入門者(初心者)にはどれだけわかりやすいことか。計測は知識のある人でないと理解が難しい、同じ知識を共有している人たちのニッチな村社会である(逆に言うと、限られた人たちのツウな世界)。

車載Ethernet(しゃさいいーさねっと)

(automotive ethernet) 今後の車載ネットワークのプロトコルとして期待される高速通信の規格。最大1Mビット/秒のCANに対して、車載Ethernetの規格100Base-T1では100Mビット/秒でのデータ伝送が行われる。PCなどで普及している100Base-TXとは各種仕様が異なる。日産自動車が2019年9月に発売した新型セダン「スカイライン」では、車載Ethernetを採用したことが明らかになっている。 車載Ethernetの機器に特化して開発しているのはドイツのTechnica Engineering(T社)である。競合はCANアナライザで有名なVECTOR(V社、ベクター、本社:ドイツ)とIntrepid Control Systems(I社、イントリピッド・コントロール・システムズ、本社:米国)。V社、I社はCANやFLEXRAY(フレックスレイ)などもやっていて車載Ethernet専業ではない。V社は早くから車載Ethernet製品を始めたが、T社はもっと早くてパイオニアである。I社製品は何でもできるというコンセプトでT社のメディア・コンバータ、ネットワーク・タップ、スイッチが合わさったような製品。2社とも最終的にできることは同じだが、T社の方が老舗なので技術的に1歩先行している。 車載Ethernet製品のシェアはV社がNo.1と推定(2022年現在)。Canalyzerのブランド力は強い。CANユーザはV社ユーザで、原則V社を購入する。CANと車載Ethernetは違う規格だが用途が似ている。CANは1Mbpsで、これが足りないから高速にするために100Mの車載Ethernetが導入されようとしている。ユーザはECUを担当している部署でCANユーザである。 イーサネットの世界では負荷試験が必須で、自動車Tier1(ティアワン)は必ずテスト装置を設備している。車載Ethernetも同じ。いまではSpirent(スパイレント)社のTestCenter TestCenter(テストセンタ)が高シェア。IP負荷試験装置で一世を風靡したスパイレントは健在で、同社のネットワークパフォーマンステスターは今でも健在である。 参考用語:BroadR-Reach、負荷試験機 参考記事: 車載ネットワークの歴史と規格概要~CANからLIN、FlexRay、CAN FDまで 自動車ECUのインタフェース~スイッチ信号から無線通信まで多岐にわたる技術を適用 参考記事(会員専用): 【展示会レポート】人とくるまのテクノロジー展 2022 横浜 ・・ガイロジック株式会社が取り扱っているTechnica Engineering社の車載Ethernet製品を取材。

受信機(じゅしんき)

(receiver)信号を受信する機器のこと。部品から装置まで多様。アンテナは受信機と送信機の両方に使われる。別名:レシーバ

ShowNet(しょーねっと)

通信ネットワークの展示会、Interop(インターロップ)で構築される大きなインターネット環境。出展者の製品2600台以上が接続され、出展者はShowNet上で実際的なデモなどを行う、実稼働ネットワーク。

シリアル(しりある)

(serial)seriarlは「連続」、「一続き」、「順次」という意味。シリアル伝送(serial transmission)、シリアル通信(serial communication)、シリアルインタフェースなどは、通信方式の規格として良く使われる用語。計測器の名称には「シリアルバス」や「シリアルデータ」、「シリアルトリガ」などが使われている。 似た言葉でシリーズ(series)は直列、系列の意味。series connectionは直列接続。○○シリーズというと同じ○○系列ということ。計測器にも多くのシリーズ名がある。 技術用語ではなく一般にシリアルというと、麦、とうもろこし、米などを焼いて加工した食品のこと。コーンフレークやオートミールなどが健康食品としてはやりである。

シリアルATA(しりあるえーてぃーえー)

Serial Advanced Technology Attachment の略 (読み方:しりあるえーてぃーえー、しりあるあーた)。パソコンとハードディスクなどの記憶装置を接続するIDE(ATA)規格の拡張仕様の一つ。パラレルからシリアルになり高速転送(1.5Gbps)が可能になった。2005年から普及が始まり、パソコン以外での家電への応用が実用化されている。

シリアル通信(しりあるつうしん)

(serial communication) データを送受信するための伝送路(信号線)を1本(または2本。TxとRx)使用して、データを1ビットずつ送受信する通信方式。少ない信号線で接続するため、構造がパラレル通信より簡易で、線材や装置のコストが抑えられる点がメリット。規格の代表例はRS-232C、RS-422A、RS-485などのEIA(Electronic Industries Association:米国電子工業会)が策定した通信規格がある。 現在のシリアル通信には低速のI2C(アイスクウェアシー)から、LVDS、PCI Express、USB、Ethernet(イーサネット)、HDMIなどの高速シリアル通信まで多くの規格がある。技術の進歩によって伝送速度が速くなり、複数本の信号線(パラレル通信)でなく1本の通信線でも十分に高速な伝送が可能になったことが背景にある。パラレル通信方式は複数本の通信線が必要なので高価だが、昔はそうしないとデータをたくさん送ることができなかった。伝送速度を速くするより、通信線を複数本にすることで、全体としての伝送速度を速くしていた。 CPUなどのデータバスはパラレル通信だが、2つのバスをつなぐとき、パラレルからシリアルに変換して高速シリアル通信して、受信側でシリアルからパラレルに戻す、SerDes(サーデス)やシリアライザと呼ぶ手法がある。このようなインタフェース変換の手法が使えるのも、シリアル通信が高速にできるようになったためである。 serialは「連続」、「一続き」、「順次」という意味。

シングルエンド(しんぐるえんど)

電気信号の伝送方式には大きくシングルエンドと差動がある。信号線が1本で、グランドとの電位差によって信号を伝送しているのがシングルエンド。single-ended signalling(最後まで1本で伝送する方式)が語源と推測される。2本の信号線を使い、1本にはプラスの信号を、もう1本にはマイナスの信号を送り、差分で1か0を表現するのが「差動(ディファレンシャル、differential)」である。シングルエンド方式は電線が1本で簡易だがノイズの影響を受けやすく、長距離、高速通信には向かない。差動はオシロスコープ(オシロ)のプローブの品名に大変よくでてくる。 オシロなどではシングルエンドと呼ばれるが、有線通信の分野では(たとえばプロトコルアナライザの解説などでは)不平衡と呼ばれる。2本での伝送は平衡と呼んでいる(1本には伝送したい信号を、もう1本にはその信号の逆位相信号を送ると、信号が平衡関係にあるため)。たとえばシリアル通信の代表的な規格であるRS-232Cは不平衡。 シングルエンド(single end)=不平衡(unbalance)で、両方は全く同じことを違う表現をしている。シングルエンドは、「ある電圧を基準として、それより電圧が高いか低いかで1と0を表現する」伝送方式とも説明されている。「(2本の)差動」と「シングル(1本で)エンド(最後まで伝送)」という表現がシングルエンドと差動の語源である。見方を変えると「(2本の線が)平衡(している)」、「(1本なので平衡していない、つまり)不平衡」という表現になる。 計測器は機種群(カテゴリー)ごとにその測定原理があり、それに沿った解釈や用語がある。そのため、全く同じ現象を別のことばで表現していることがある。オシロやプローブは差動やシングルエンド、有線通信では平衡、不平衡、と説明される。計測の初心者からは「どちらか1つに統一してくれ」という声が聞こえてきそうである。それ以前に、差動とシングルエンドが対になる用語であることを、その名称から推測することはほぼ無理である。

SCSI(すかじー)

Small Computer System Interface の頭の文字をとった言葉。パソコン本体と周辺機器の接続方法の取り決めのことで、ANSI(アメリカ規格協会、または米国国家規格協会、アンシーと呼称)によって規格化されている。HDDやCD-ROMなどとPCの通信インタフェースの規格として1986年~1992年にいくつかの名称の規格が制定されている。 計測器情報:SCSIが品名につく製品の例

スキャンツール(すきゃんつーる)

自動車の故障診断の仕組みであるOBD(On Board Diagnostics)で使われる計測器の1つ。OBDコネクタ(DLC)に接続しECUやDTC内部の情報を読み出す。株式会社アルティアはタブレット型スキャンツール SSS-T2+ (スリーエス-ティーツー プラス)などを販売している。参考記事:技術情報・レポート/市場動向レポート/「自動車の品質をより良くするために~リコール制度について」https://www.techeyesonline.com/tech-eyes/detail/TechnologyTrends-2111/

スター型(すたーがた)

ネットワークトポロジー(ネットワークの構成形態、配線の構造)で、すべての機器(ノード)が1つの集線装置につながっている形態。どれかのノードや集線装置までの経路で問題が発生しても通信可能(通信は維持される)だが、集線装置が停止した時は全ての通信が停止するリスクがある。他のトポロジーにバス型、リング型がある。資料によってはデイジーチェイン型を含めている場合もある。参考記事:車載ネットワークの歴史と規格概要~CANからLIN、FlexRay、CAN FDまでネットワークトポロジーの図解が図4にある。

sniffer(すにふぁー)

1990年頃に使われていたLANプロトコルアナライザの通称。当時はLANの導入・普及期で、各種のLAN機器が多くのメーカから発売され、LANのプロアナは重宝された。米国のNetwork General社が1986年にSnifferをリリース。1987年には東陽テクニカが国内の代理店権を獲得しSnifferの国内販売を開始。1989年に東陽テクニカは日本語化したラップトップモデルの販売を開始し、ネットワークの基礎からトレーニングを行う「Sniffer University(1996年から)」も好評で、国内で多くの販売実績を残した。LANのプロアナは国内の通信計測器メーカである安藤電気やアンリツもつくったがほとんど売れずに、LANプロアナといえばSnifferというくらい普及した。当時のSnifferはその時代の最先端のPCにソフトウェアを内蔵した構成で、外観はまったく可搬型のパソコンだった。そのためPCの変遷に合わせてモデルが毎年のように変わった。とうとう最後はハードウェアは無くなり、CDなどのメデイア媒体でソフトウェアを提供し、ユーザの保有するPCがLANプロアナになるという形態になった。その後、LANの普及が進むとオンラインモニタができるフリーソフトが出てきて(LANも円熟したのでプロトコル解析の需要は減少して少なくなり)、LANプロアナは計測器としては終焉した。 Network General社は現在はClearSight Networks社として100ギガビットイーサネットに対応するSynesisなど、「より高速のネットワークに対応するパケットキャプチャ装置」に注力している(プロアナの2極化、低速のラインモニタと高速のプロトコル解析機器の例といえる)。販売は引き続き東陽テクニカがしている。 ネットワーク機器の仕事を経験した年配の技術者は、いまでもLANプロアナのことを「スニファー」という。逆にスニファーと聞いて「1980年後半から1990年代に活躍したLANプロアナ」だと、瞬時に理解できないと、この年配技術者との会話は成立しない。このように計測器の通称を知っていることが、計測器業界(村社会)で粛々と仕事をこなすための基礎知識・スキルである。 参考用語:ギガビットLAN 参考記事:東陽テクニカ自社開発の大容量パケットキャプチャ/解析システム「Synesis」100GbE回線対応モデル・・ClearSight Networks社の100ギガビットイーサネット製品を取材。

スニファー(すにふぁー)

(sniffer)1980年後半から1990年代に普及したLANプロトコルアナライザの代表モデルの通称。LAN プロアナといえばスニファー、CANバスアナライザといえば Canalyzer (キャナライザ―)、というように、計測器の機種群(カテゴリー)を代表する名称として、特定メーカの通称が計測器のカテゴリー名のように呼称された例である。 一般にはsnifferは「においをかぐこと」で、 「嗅覚性探知機」などの説明もある。LANアナライザのsnifferがLANのデータをかぎまわって明らかにすることをイメージして命名したかは不明である。 参考用語:sniffer 参考記事:東陽テクニカ自社開発の大容量パケットキャプチャ/解析システム「Synesis」100GbE回線対応モデル・・snifferをつくった米国のNetwork General社の現在の主力製品。

スループット(するーぷうと)

(throughput) 機器が単位時間あたりに処理できるデータ量を指す(処理能力の指標)。コンピュータ、IT、ネットワーク、通信などの分野で使われる用語。たとえば通信回線のデータ転送能力や、コンピュータの処理能力など。計測器では有線の通信計測器(プロトコルアナライザ、ネットワーク関連測定器など)で使われる。 計測器情報:スループットが品名に付く製品の例 ・・通信計測器でスループットを品名にするものはほとんど見当たらない。振動解析や半導体試験で計測器の処理能力が高いモデルに「ハイスループット」、「高スループット」などの表記がある。

全二重(ぜんにじゅう)

(full duplex) 通信回線が双方向で確保されていること。双方向ではなく1回線を送信用と受信用に切り替えて使うやり方もある。たとえばトランシーバは2人の間で会話する時、片方が送信者でもう片方が受信者になり、自分が話したいときはボタンを押して送信者となる。それに対して、電話は双方向で会話ができる。duplexとは「重複」「二軒建て」「二連式」という意味で、フルにduplexを使う双方向通信を「全二重」、半分duplexの切り替え式を「半二重」と翻訳した。1980年代からPCの通信インタフェースに採用され、USBが普及するまで広く使われたRS-232Cは全二重である。 車載EthernetのPAM3 信号は全二重のため、一般には方向性結合器を使って送信と受信を分離して、オシロスコープ(オシロ)でアイパターンを測定する。テクトロニクスは独自技術によって、方向性結合器ではなく一般的なオシロのプローブで電流測定する手法が以下の参考記事で語られている。 全二重や半二重、平衡、不平衡、 調歩同期方式などは、データ通信の分野で良く使われる用語である。低速なデータ通信は計装でも使われるので、この分野のプロトコルアナライザであるラインモニタの技術解説では基礎用語である。

送信機(そうしんき)

(transmitter)信号を送信する機器のこと。部品から装置まで多様。アンテナは送信機と受信機の両方に使われる。別名:トランスミッタ

調歩同期方式(ちょうほどうきほうしき)

(start-stop synchronous communication)シリアル通信における同期方式の1種。一文字分の文字情報を送るときに、データの先頭にデータ送信開始の情報(スタートビット)、データ末尾にデータ送信終了の信号(ストップビット)を付け加えて送受信を行う方式のこと。データ伝送では専用の同期用信号線を使い、送信側と受信側で同期をとる方式もあるが、調歩同期は、データそのものに同期用信号を追加して同期を取っている。調歩同期は、同期用信号の分だけ通信効率が劣るが、同期用の信号線が不要で、自由なタイミングで情報を送信することができるというメリットがある。 調歩同期方式は、受信側がスタートビットによって送信側に関係なく一方的に同期をとるので、非同期方式(asynchronous communication)とも呼ばれる。シリアル通信の代表であるRS-232Cはこの方式で通信している。

通信計測器(つうしんけいそくき)

有線(光通信など)と無線(ワイヤレス)がある。新しい通信方式が開発されるとそれを評価する測定器が現れる。その時代の通信方式に対応するため、計測器の寿命が短い専用器が多い(2年位で次モデルになる場合もある)。基本測定器は有線では光測定器の光パワーメータ(OPM)、光源、光スペクトラムアナライザなど、無線ではRFパワーメータ、信号発生器、スペクトラムアナライザである。 有線の通信測定器は 1. プロトコルアナライザ(略称:プロアナ):RS-232Cなどの低速のオンラインモニタ(ラインモニタなど)と、バスアナライザ、超高速のギガビットLAN(参考記事あり)などのモデルがある。無線LANのプロトコルアナライザもある。 2.ネットワーク測定器:ここでいうネットワークとは通信回線網のことで、交換、伝送、IPなどの伝送品質を評価したり、端末や通信装置の代わりになってエミュレーションしたりする測定器。SDH/SONETアナライザ、BERT(ビット誤り率試験器)や疑似呼(コールシミュレータ)、IP負荷試験装置など。 3.光測定器:光通信の測定器や光ディスクなどのDVD評価用測定器。電磁波としての光を扱う測定器で、照度計や輝度計のような人が感じる光(明るさ)の測定器ではない。光パワーメータ(OPM)、光源、光スペクトラムアナライザ、OTDRなど。 4.ケーブルテスタ:OSI参照モデルの物理層(レイヤ1)の測定器。LANのケーブルテスタやTDR(障害位置試験器)など。5.アナログの伝送線路の測定器:レベルメータ、選択レベル計など。以前はアンリツや安藤電気がつくっていたがほぼ撤退し、今は大井電気がラインアップしていて、ユーザは工事会社が多い。上記2の機種群は高速になると電気でなく光通信になるので、光測定器の機能を持つが、それらは光通信の基本測定器ではなく通信方式に対応した専用測定器なので、2に分類される。3の光測定器はOPMや光スペクトラムアナライザなどの光の基本測定器と、OTDRや光ロステスタなどの光ファイバ用の専用測定器がある。 デジタル伝送品質の評価の1つであるアイパターンの測定は、主にサンプリングオシロスコープで行われてきた。インタフェースは電気と光の両方がある。アプリケーションは通信であるが、製品はオシロスコープ(&光測定器)である。代表例がキーサイト・テクノロジーのDCA(デジタルコミュニケーションアナライザ)だったが、広帯域オシロスコープ(高速オシロスコープ)が普及した現在では、生産中止になっている。 無線の通信測定器は、別名RF測定器や高周波測定器と呼ばれる。 1.基本測定器:標準信号発生器(SG)、スペクトラムアナライザ(スペアナ)、高周波パワーメータ。 2.通信方式に対応した専用測定器:移動体通信用のワンボックステスタや無産機テスタ、送信機テスタなどの変調解析機能があるスペアナ、シグナリングテスタなど。「無線LANのアナライザ」というと、RF(無線)の項目を評価するモデルはこの項目に分類されるが、プロトコル解析のモデルは(扱っているのが無線であるが)有線の測定器であるプロトコルアナライザに分類される。 ネットワークアナライザ(ここでいうネットワークとは高周波部品の回路網のこと、略称:ネットアナ)は有線の測定器だが、高周波の測定器なので、RF(無線の測定器)と並べて説明されることが多い。高周波デバイスなどを評価する専用器である。インピーダンスアナライザやLCRメータなどの回路素子測定器や材料評価用の測定器と同じ分類にされることも多い。 無線を中心に通信計測器全般を手掛ける老舗のアンリツでは、有線通信のことを「ワイヤード(wired)」と呼称している。無線通信のワイヤレス(wireless)は「線でつながっていない(線が無い=無線)」という意味で、広く普及していることばである。それに倣えば有線は「ワイヤード(線でつながっている)」と呼称するのが自然である。この説明は正しいが、有線通信は一般には「有線(通信)」や「光通信」と呼称されることが圧倒的に多い。通信を熟知した代表的な通信計測器メーカが使う表現が、他の通信業者も使うことばとは限らない。計測の世界の表現は統一されていない用語(方言)も多い。 計測器情報: (有線)プロアナ、光測定器、ネットアナ (無線)信号発生器(通信)、スペアナ、 無線/移動体測定器