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- ベクトルシグナルアナライザ(べくとるしぐなるあならいざ)
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(Vector Signal Analyzer)キーサイト・テクノロジーの89600シリーズの名称。略記:VSA。デジタル無線などで使われるベクトル変調信号の解析を主眼にした測定器。PCに接続して使用する。各種の解析ソフトウェアがオプションで用意されている。スペクトラムアナライザが変調解析機能を搭載したシグナルアナライザになる以前は、デジタル無線に使われる変調方式の解析に使われた。現在は製造中止。略してシグナルアナライザ(変調解析ができる測定器)とも言われたが、現在はシグナルアナライザというと最近のスペクトラムアナライザの名称である。
- ベクトル信号発生器(べくとるしんごうはっせいき)
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(vector signal generator) 信号発生器の分類方法の1つに、アナログ信号発生器とデジタル信号発生器があり、後者をベクトル信号発生器と呼称する。無線通信で使われるデジタル変調方式に対応した高周波の信号発生器。 国産のアンリツは無線通信計測器の世界的トップベンダで、2024年4月現在の信号発生器のラインアップは以下の3モデルである。 ・アナログ信号発生器 MG3740A(100kHz~6GHz) ・ベクトル信号発生器 MG3710E(100kHz~6GHz) ・RF/マイクロ波信号発生器 MG362x1A(9kHz~70GHz) まだアナログの無線通信が主流だった1980年頃の同社の信号発生器の品名は「標準信号発生器」だったと筆者は記憶しているが、現在ではデジタル無線通信用途のモデルの名称は「ベクトル信号発生器」であることがわかる。 キーサイト・テクノロジーは汎用のファンクションジェネレータ(Trueform)から任意波形発生器、パルス発生器まで、低周波から高周波のほぼすべての信号源をラインアップする老舗で、計測器メーカの中で信号発生器のラインアップが一番豊富である。無線通信用途のモデルの品名は、「アナログ信号発生器」と「ベクトル信号発生器」に統一されている(2024年4月現在の同社ホームページより)。 アンリツ、キーサイト・テクノロジーと並ぶ無線通信計測器3大メーカの1社、ローデ・シュワルツの信号発生器は9分類されているが、主要なタイトルは以下である(2024年4月、同社ホームページ)。 ・アナログ信号発生器(SMA100B RF/マイクロ波信号発生器など) ・ベクトル信号発生器(SMBV100B ベクトル信号発生器など) ・ベースバンド信号発生器 ・放送信号発生器 同社のアナログとデジタルの信号発生器の品名の名称も前2社と全く同じである。 1μHz(モデルAFG1002/1062)~20GHz(AWG7001B)と、低周波から高周波まで、汎用のファンクションジェネレータから無線通信用途の任意波形発生器まで、FGとAWG(両方の機能があるAFG)を広くラインアップするテクトロニクスは、通信・高周波(ワイヤレス)用途の信号発生器として次の2種類があると解説している(同社ホームページ、2024年現在)。 ・RF signal generator(日本語訳:RF信号発生機):ワイヤレス・アプリケーションに使用され、AM、FM、PMなどのアナログ変調も提供する信号発生器。 ・RF vector signal generator(日本語訳:RFベクトル信号発生器):デジタル通信アプリケーションのRF キャリア上でアナログとベクトルの両方の変調をサポートする信号発生器。 上記を筆者なりに説明すると、「RF信号発生器とは、標準信号発生器などの従来からの高周波(無線)の信号源で、アナログ変調(AM変調、FM変調、PM変調)機能のあるモデルも含む」。RF(Radio Frequency)とはMHz(~GHz)の無線通信に使われる周波数を指す。「RFベクトル信号発生器とは、アナログ変調だけでなく、現在の携帯電話などの移動体通信で使われているデジタル方式の無線に対応した、ASKやFSK、PSKなどのデジタル変調の信号も出力できる信号発生器」。つまり、ベクトル信号発生器とはデジタル変調機能があるモデルのこと、といっている。同社のTSG4100Aシリーズの品名は「ベクトル信号発生器」で、特長の1番目は「アナログおよびベクトル/デジタル信号生成機能」とある。(同社ホームぺージ)。なので、品名はRFベクトル信号発生器ではなく、ベクトル信号発生器となっている。 このように、主要な大手計測器メーカの無線通信向け信号発生器で、現在流行りのデジタルに対応したモデルは「ベクトル信号発生器」という名称になっている(驚くべきことだが、品名が統一されている)。1990年代にデジタル方式が登場・普及し始めたときはI/Q変調信号発生器やI/Qジェネレータという、I/Qという表記が多かったと筆者は記憶しているが、現在は信号発生器の名称としてはI/Qは過去のものになったようである。同様に、標準信号発生器という名称もほとんど見かけなくなった(標準信号発生器とは、高精度であることを「標準」という表記で表す、無線通信用途の信号発生器の代表的な名称・品名だった)。通信計測器は時代とともにある専用器が多く、信号発生器のような基本測定器でも、品名は10年もすると変わってしまい(流行がある)、オシロスコープやマルチメータのような往年の長く続く名称・品名ではない。 直交座標でベクトル表示をするときの2成分をI(あい)、Q(きゅう)と呼ぶ。I:In-Phase(同相)、Q:Quadrature-Phase(直交位相)。つまり、I/Qと「ベクトル」は同じことを意味している。表記はメーカによってI/QとIQの2通りがあった。同じメーカでもモデルや技術資料によって、ベクトル信号発生器やI/Q変調信号発生器、IQ信号発生器、などの複数の表記や品名が2000年代まではあったと筆者は記憶している。 計測器の品名には使われなくなったが、I/Q信号やI/Q変調ということばは、デジタル無線(デジタル変調)の基礎なので、いまでも良く使われる用語である。
- 変調(へんちょう)
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(Modulation) 伝達したい情報(映像、音声、データ等の電気信号・変調信号)に応じて、搬送波の振幅・周波数あるいは位相を変化させることを「変調」という。参照用語:復調
- 変調指数(へんちょうしすう)
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(Modulation index) FM変調(周波数変調)において、変調信号の周波数と周波数偏移(搬送波の周波数が無変調時から変調信号によって変化した変化分)との比。変調信号の周波数が1kHzで周波数偏移が5kHzなら変調指数は5となる。
- 変調度(へんちょうど)
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(Degree of Modulation) 振幅変調において、搬送波の振幅に対する変調信号の振幅の比。変調度mの値は0~1の間であるが、普通は100を乗じてパーセントで表す。100%を超えるとき過変調という。 変調度の測定器は、RFなどの電波ならスペクトラムアナライザ(FM変調に特化したFM直線検波器)、オーディオ信号(音声など)ならオーディオアナライザである。両者は高周波やオーディオの基本測定器である。光信号では株式会社日本レーザーの「光変調アナライザ OMA」やキーサイトの「光コンポーネントアナライザ」がある。放送インフラが無線から光(光ファイバ通信)になり、ハンドヘルドの光パワーメータと電波測定器(レベルチェッカー)を併用して光信号の変調度を測定する事例もでてきた。光信号の変調度測定をするこれらのモデルは汎用器ではなく、特殊用途の専用器である。 以前は変調度を測定するのはモジュレーションアナライザで、アンリツ MS616Bやキーサイト・テクノロジー 8901A/Bがあった。キーサイトの53310Aの品名はモジュレーションドメインアナライザである。計測器の知識がある年配者は容易に想像できるが、この形名はカウンタである。 TechEyesOnlineは53310Aを、周波数や時間の計測器である「カウンタ」に分類している。このカテゴリー(機種群)にはジッタメータもある。ジッタメータをラインアップしていた菊水電子工業は、KDM6380などのモジュレーション・メータもつくっていた。ただし、前述のようにRF分野で使うモジュレーションアナライザは「無線/移動体測定器」に分類している(MS616Bや8901A/Bなど)。信号発生器で変調度を設定できるモデルもある。変調度の関連測定器は多岐の機種群に存在する。
- 変調歪み(へんちょうひずみ)
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(Modulated distortion) 振幅変調(AM変調)をかけたときに何らかの原因で変調信号波の高調波が発生することがある。これを変調歪みといい、変調信号波の高調波を第2側波帯・第3側波帯・・・・と呼び、第1側波帯との電圧比から「変調歪み率」を測定できる。第1側波帯と第2側波帯のレベル差を-ΔdB [dB]とし、この時の歪み率(D)を%表示にすると、下式のようになる。参考用語:側波帯
- 偏波(へんぱ)
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(polarization) 電磁波や光は進行方向に垂直な面内で、電界と磁界が時間的・空間的に規則的な振動をする。振動の軌跡には偏りがあり、この状態を電波は偏波、光は偏光と呼ぶ(※)。偏波とは電波の空間に対する向きを表し、直線偏波と円偏波の2つがある。電界が常に1つの平面内に存在するのが直線偏波、電界が進行方向に向かって回転する場合を円偏波と呼ぶ。 テレビの電波を良好に受信するには受信したい中継局の電界の振動方向(つまり偏波状態)に合わせてアンテナを設置しないといけない。地上波デジタル放送(地デジ)などは一般には水平偏波が多いが、地域によって違う場合がある。地デジやFM放送は直線偏波だが、衛星放送は円偏波。TVやFMラジオなどのVHF、UHFの電波の受信は八木・宇田アンテナが使われることが多い。このアンテナはエレメントの向きが偏波面からずれると感度が低下するので、エレメントの向きを放送波の偏波面に合わせることが重要。電気工事の作業者の常識である。 シングルモードファイバは、その名の通り1つのモードだけを伝搬しているが、実際には直交する2つの偏光モードが伝搬する。光ファイバのコアは理想的には真円だが、側面からの外圧などにより真円ではなくなり、僅かな複屈折が発生する。この影響で直交する2つの偏光モードの伝搬速度に差が生まれ、信号波形が劣化する。この現象を偏波モード分散(PMD:Polarization Mode Dispersion)と呼び、高速光通信(10Gb/s以上)では問題となる。電磁波の1種である光が偏波なので起きる現象である。PMD以外に光ファイバの重要なもう1つの特性に波長分散がある。光は波長が違うと、光ファイバの中を伝搬する速度が違うため、伝搬時間の差(遅延)が発生する。光通信用の光源の波長にはわずかな幅があるため、単一の光パルスが光ファイバを伝搬していくと、波長分散によって、時間と共にパルス幅が広がっていく。この現象を波長分散と呼ぶ。偏波モード分散と波長分散は光ファイバ通信の重要な評価項目である。 電気を使わずに光で処理を行う光集積回路(光半導体)が、インテルなどの大手デバイスメーカで研究されている(シリコンフォトニクス)。NTTが2019年に発表したオール・フォトニクス・ネットワーク構想であるIOWN(アイオン)でも光半導体はキーデバイスである。光半導体からの光を受ける側の光導波路をプリント基板などに生成しないと、オール・フォトニクス・ネットワークは普及しないと考えられている。光導波路の特性は偏波に大きく依存する。そのため偏波依存性損失(PDL)を波長可変光源や偏波コントローラ、光パワーメータなどによって評価することが重要である。 (※)実際は光も偏波という表現を使うことが多い。たとえば上記の偏波依存性損失や偏波コントローラなど。ただし光の偏波の度合い(偏光度)の測定器は偏波計ではなく「偏光計」と呼ばれている。また偏波コントローラを偏光コントローラと呼称する場合もある。英語のpolarizationを翻訳時に、光の場合は偏波と偏光が、統一されずに日本語になっている(明確な定義を筆者は見たことがない)。解説者によって不統一なので、偏波コントローラが電波ではなく光の測定器であることは初心者にはわかりにくい。偏光コントローラならば、光測定器をイメージしやすい。計測器はまったく、知っている人達だけのニッチな村世界である。
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