計測関連用語集

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擬似基地局(ぎじきちきょく)

計測器としては、基地局を模擬した動作をする移動体通信の代表的なモデル。RFポートから規格に準じた信号が出力され、この信号を携帯電話などの無線端末に入れて、端末がネットワークにつながるか、またつながった後で想定通りに動作するかを確認する。新しい無線通信の規格ができると、それに対応した端末の一通りの試験ができる。別名、基地局シミュレータ、基地局エミュレータ、シグナリングテスタなど、メーカによって名称(品名)は異なる。 国産の無線通信計測器メーカであるアンリツはシグナリングテスタの名称で早くから擬似基地局を開発・リリースしてきた。同社はNTT(旧電電公社)に長年、計測器を納品してきた代表的な電電ファミリーである。 キーサイト・テクノロジーが2023年2月に発売した、ローカル5Gの規格(リリース17)であるRedCapに対応した擬似基地局の品名は「5Gワイヤレス・テスト・プラットフォーム」である。この名称からは擬似基地局であることは想像しにくい。 ローデ・シュワルツが2024年5月に開催したTechnology Symposium(90周年記念企画のイベント)では、2023年末に規格化された、最新の高速無線LANのWi-Fi 7に対応した「5G ワンボックス・シグナリング・テスタ」の講演と製品展示がされた。同社は無線機テスタの中の1モデル、と称しているが、上記のキーサイト・テクノロジーと同じ、擬似基地局である。無線機テスタのことをワンボックステスタと呼ぶことが多い(1台ですべての試験ができるテスタという意味)。 基地局シミュレータやシグナリングテスタを関係者は日常会話で「擬似基地局」と呼ぶことが多い。日本語の擬似基地局を直訳したpseudo base stationは、英語としては意味が通じないと思われる。英語の動詞 simulateは「似る」、「似せる」なので、シミュレータ(simulater)は「似せる/似ている 物」→「擬似」となる。ただし、日本語の擬似を英訳すると形容詞 pseudo(偽性、まがいの)で、シミュレータではない。負荷試験機も英語ではtraffic generatorやnetwork simulatorで、負荷をloadと翻訳すると、間違った英語になってしまう。 正規の基地局を模倣した不正な装置で、携帯電話の通信を傍受したり、フィッシング詐欺のSMSを送信したりする偽基地局(ぎきちきょく、IMSIキャッチャ:International Mobile Subscriber Identity catcher)の被害が近年、報告されている。擬似基地局というとこの偽基地局を指していると解釈される可能性がある。「本物を意図して模倣した」、「疑わしいほどよく似ている」ということで、悪い意味に擬似や疑似が解釈される例である。口頭では擬似基地局という表現はしても、計測器メーカの資料には擬似基地局という表現はほとんどみけけなくなっている(2025年現在)。

基台(きだい)

一般的に基台とは「装置を固定するための土台」のこと。通信機器やアンテナを設置する際の基本的な構造を「基台」、「チャンネルベース」、「架台」などと呼称している。オシロスコープのプローブで、オシロスコープとの接続側の部位(BNC端子などがあり、パッシブプローブでは容量補正のトリマが付いている)を基台と称している文献がある。プローブをオシロスコープに固定するための土台、なので基台と呼んでも間違いとはいえないが、多くのオシロスコープの解説書に共通する認知された用語ではない(基台といっている文献は限られる)。 基台は「基礎」、「基盤」、「土台」などからつくられた熟語と思われる。基台を英訳するとbaseだが、baseを日本語にすると基地や塩基などで、基台だけの意味ではない。英語にはない日本独特の熟語が「基台」である。

基地局(きちきょく)

(base station) 携帯端末(電話機)と通信を行う通信装置。端末から基地局への送信は上り(アップリンク)、反対は下り(ダウンリンク)という。基地局はカバーするエリアの範囲が決まっていて、ある程度等間隔で設置される。従来は高層ビルの屋上などに設置されてきたが、携帯電話などの端末の普及・増加によって数が増えた。また小型化が進み、最近ではsmall cell(スモールセル)と呼ばれている。日本でもキャリアの増加などによって、電柱に取り付けられているケースもある。自動販売機に基地局機能をつけるという事例も報告されている。 日本電気、富士通、Ericsson(エリクソン、スエーデン)、Nokia(ノキア、フィンランド)などが基地局メーカとしては老舗。最近の5Gでは中国メーカのHuawei(ファーウェー)やZTEが高シェアであることが報じられている。 基地局用の計測器としては、開発・設計から検査、設置工事・保守用まで各種のモデルがある。特に基地局は設置場所によって電波の受信状態が異なるので、専用の計測器(フェージングシミュレータやエリアテスタ、マッピングのモデルなど)がある。基地局からの電波の強さを確認するメジャリングレシーバが過去には活躍した(現在はハンドヘルドのスペクトラムアナライザが後継モデル)。主要な計測器メーカは世界の3大無線通信計測器メーカである、アンリツ(日本)、キーサイト・テクノロジー(米国)、ローデ&シュワルツ(ドイツ)。アンリツは通信測定器に特化している(有線通信もあるが無線の比重が高い)。ローデ&シュワルツも無線機から出発した会社なので、映像用のモデルも含めてRF測定器が主力である(最近はオシロやSMUなどのRF以外もラインアップを増やしている)。キーサイト・テクノロジーは直流から低周波、RF、マイクロ波まで幅広いラインアップがあるが、同社の屋台骨であるRF事業部門は名門で、世界No1製品が多くある。 国内の4Gの人口カバー率は99%で、通信事業者各社の保有する基地局用の鉄塔は重要な設備資産だが、2022年3月にNTTドコモは「鉄塔6000本を売却し、設備を通信事業者で共有し(インフラシェアリング)、ネットワーク投資を効率化する」、所有から利用への転換を発表した。

キャリア(きゃりあ)

(carrier)和訳は「搬送波」。無線通信を行うときに、送りたい信号を変調してのせる周波数の信号のこと。たとえばラジオ局のFM東京は80.0MHzである。これは80.0MHzの電波(搬送波)にFM変調した信号(音声や音楽)をのせて送信している。キャリアは無線通信の最も基礎的な用語である。NTTドコモやauなどの通信事業者も「キャリア」と呼ばれる。

キャリア周波数(きゃりあしゅうはすう)

搬送波(キャリア)の正弦波周波数のこと。無線通信ではキャリアはある周波数の値をもっているので、「キャリアは〇〇MHz」というようにわざわざ周波数とはいわないことも多いが、正式には「キャリア周波数は〇〇MHz」である。

QPSK(きゅーぴーえすけー)

(Quadrature Phase Shift Keying)日本語では「四位相偏移変調」だが、QPSKという表記の方が良く使われている。デジタル変調の方式の1つ。搬送波の位相の変化に4つの値を持たせる変調方式。PSKの1種だが、位相が90度ずつ離れた4つの波を切り替えて送る。無線LAN(IEEE802.11)などで利用されている。

共通線信号No.7(きょうつうせんしんごうなんばーせぶん)

(Common Channel Signaling System No.7) 公衆交換電話網で電話機同士を接続したり、ネットワークを制御したりするシグナリングの規格。国連のITU-Tや米国のANSI(アンシー)などが規定していて、1980年代に世界中で導入が進んだ国際規格。Signaling System No.7を略したSS No.7やSS #7、SS7などの表記がされる。共通線信号方式は1975年に開発が始まり、SS7は7番目(Ver7)の規格。音声用通信路とは別に共通線信号路があり、SS7の信号が送受信される。 2000年代になるとインターネット(IP網)の普及によって、それまでの電話交換網は使用率が落ち、日本(NTT)では交換機の更新もされなくなった。VoIP(Voice over Internet Protocol)が進み、交換電話網で使われるSS7の測定器も使われなくなった。1990年代まではSS7用のプロトコルアナライザや、SS7に対応した伝送/交換装置用測定器が現役で活躍していた。たとえば国産のエイブルコミュニケーションは1990年代前半に「SS7テストシステム DXV-100」を開発・販売している。

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